「_______________ ベポ? ちゃんと野菜も食わないとさー。」
「ペンギンだって肉系ばっか食べてるだろ!」
「ところでさァ、あの真ん中で踊ってるコ、さっきから俺と目が合うんだけど。」
「あんなかわいい子が? よくある勘違いだと思うよ?」
「いやいや、あの子ゼッタイ俺に気があるって。」
「「あーあるある。」」
「ちぇっ、あしらうなよなー・・・あッ、それ俺のカニ!」
色気のない俺達が待ち望んでいたディナーは
棟の真下にある野外レストランでのエスニック料理だった。
少し水が張ってある床の下、アチコチに大きなローソクの炎が揺らめき
さざ波の音に混じるBGMと踊り子のオネーチャン達が民族衣装で踊ってたりする様な?
正直な所、船長以外の男連中じゃ浮くってぐらい高級なレストランなんだろう。
だって何食べても美味いんだから。
「うまッ!!!!シャチ兄ィ!このペキンダックっての最高っすよ!!!!美味し!!!!」
「おぉ、そりゃ良かったな・・・・。」
「一度は着てみたかった」と云う青い、セクシーなチャイナドレスに身を包み
ハルトは俺に、”コレコレ!”と指差してはフィンガー・フードになってるソレにガツついてる。
ドレスが似合ってるんだからそれなりに振るまえよな。と、俺は言いたい;
まー・・・衣装は船長の”女の差別は良くない”的な、気遣いだろーと思われ。
そう遠くない過去で、クルー同士の諍いゴトを避ける術をあの人は身に付けたんだろう。
早い話、赤髪の船で___その時からアンジェラにツバ・・・イヤ、手・・・イヤイヤ、目をつけてたのか。
『 エビチリも凄く美味しいな・・・。隠し味はなんだろうか 』
「・・・ん?お前、作ったことあんの?」
『 W7で一時世話になってた船大工に作ってやって以来だな 』
「・・・・・・船大工?・・・・ガレーラか」
あ!!!バカお前!!!
船長が反応したじゃね~~か!!!
あの顔!!!待ってる、待ってるぞぉおぉお!?
アンジェラ!船長が、お前の口からそれ以上のコトを聞けるのをな!??
『 風の噂じゃ、今はG・Cの社長になったそうだが・・・懐かしいな 』
”考え事か?冷めると困る・・・ほら、アァ~ンして”
”ちょっと待て!! アァ~ンとか!!!どゅこでそんな破廉恥な事を覚えてきやがった!! ムグムグ”
”パウリー、食べるか怒るか赤くなるか、どれかにしないとダメだ ”
『____とか、云ったもんだ・・・・。』
シーン・・・・。ハルト以外のクルーは船長の様子を見るのが恐ろしくて目を反らさなかった。
イヤイヤイヤ!どーゆう経緯でそんな新婚さんゴッコみたいなシチュになってたんだよ!!?
「・・・・・・・・・・・・・・。」
横目に俺はチラッ・・・うああ!あのヒトは帽子の下、もう陰すぎて殆ど人相塗り潰されてるし!!?
エ、俺の見間違い?いや、でも・・・怒ってる?それとも憎悪!??アレじゃ読み取れね~~よ;
「つまり・・・・、一緒に住んでたってこと?」
煽るなよベポ・・・・頼むから。ツッコミ様によっちゃお前、首だけ船長室に飾られるからな。
『 一週間ほど世話になっただけだ。その時はいろいろあって、
CP9の連中にクスリを飲まされた上に催眠術でオカシクなってたんだ 』
「ナニ、そのヤバ気なお話は!!?センパイの過去ってどれほどディープなんスか;」
それを聞いたせいか、間もなく船長の顔の影も引いていた。(ホッ;)
大体いつも話をカットし過ぎるんだ、アンジェラは・・・・。
「ハルト、海賊の過去なんて大体はイビツなもんだ・・・コイツの場合、少々特殊だがな。」
船長がそう云うと説得力あんな、やっぱ。
特殊ちゃァ、そうだ。アンジェラスは政府機関を裏切って海賊になったんだし。
それでまだMISSINGでいられる方がキナ臭い。
聞けば、ベガパンクが彼女の存在に気付いたのはこの2、3年の事だと云うし、
それまで赤髪んとこに居た間は、海軍を通して政府だけが探してたって事になる。
(まぁ・・・相手が相手だけに、政府側も手出ししなかったのかもな・・・・。)
_______________
「そいや、ハルト。お前、以前はナニやってたんだ?」
「え、前って・・・・フツーに女子高生でレディース・・・・・。」
「じょしこーせい?なにそれ?」
『 ・・・・・・・・!! 』
「あら!?センパイ?何を・・・・?」
急にセンパイがアタシのオデコに触れたんだ。
『 いや・・・顔が赤いので熱でもあるのかと思ってな 』
え;アタシそんな焦ってたんかナ???
それともジュース代わりにチマチマ飲んでたお酒が効いたか。
だってさー・・・・、「実は違う世界から来ました~(・ω≦)テヘペロ!」
とか、万が一ヤラカシちゃったら完全に”キてる”扱いされるだろ?
やっと馴染んできたってのに・・・そんなん絶対イヤだし!!!
「まァ、ウチでせいぜい楽しめ。現実の、海賊の苦楽をな___」
「!?」
・・・・え?船長? まるで、見透かした様なヒトコトだったな・・・・今の。
マー、此処まで来た中でも苦はあったよな;
嵐に見舞われてエライ目にあったり、海軍に砲撃されたり、同業者に出くわしたりとか。
けど過ぎてしまえば、それもなんて事ないんだよなー。
それも、船長やセンパイ、他のクルーが頼りになるお陰なんだケドねw
『 ハルトは最近、シャチ達の指導のおかげで腕を上げてる 』
「 「 え~、よせやい❤ 」 」
両アニキがなぜか同時に照れてる。あからさまに赤くなって頬を押さえるなってのw
「物足りなくなったら、アンジェラにも習えばいい。刃物、棒、銃、毒も扱える」
『 まるでヒトを暗殺者みたいに云うな 』
「そうだったじゃねェか。政府お抱えの。」
『 そんなコト、まだ覚えてたのか?コレだから頭のイイ奴は困る 』
「 「「「 イヤ‼?皆、覚えてるし!?? 」」」 」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
なに、そんなコト、軽~~く会話してんスか・・・・!?
(アンジーセンパイが、政府お抱えの元・殺し屋ぁあああアアア!???)
ゴーン・・・・・!!!
どうりで、最初出会った時・・・慣れ過ぎてる感はあったけど・・・・;;;
「センパイ。なのに・・・なんで、海賊になっちゃったんスか?」
『 ・・・・フフ、何でだろうな。切っ掛けはシャンクスの悪ふざけか・・・ 』
______________________
____悪ふざけねェ・・・・。
昔、酒の席でその話を聞いた時はヤツも酔狂だなとは思ったが・・・・。
__とある船の船長が仲間を連れ、町の酒場に入って来た。
互いにある程度、名の知れた船長同士だ。そんなトコで小競り合いもヤボだろう。
その船長が連れていた不釣り合いな少女に目が留まる。
そこでヤツは船長をポーカーに誘ったのだ。
”くそっ・・・もう俺は降りる”
”おいおい、今降りるのか? 負けを取り戻すんだろう? ところで・・・
なあ、船長さんよ。その、後ろに立ってる娘、アンタのなンなんだぃ?”
”いや・・この子は・・・・”
”まさか愛人ってんじゃねえだろうなァ?”
ヤツは彼女の服装が、この男の趣味である事を見抜いていた。
”ボ、ボディーガードだ”
一瞬シーンとなったが、テーブルのヤソップが真っ先にプッと吹き出したのを合図に
赤髪もバカ笑いしながらテーブルをバンバン叩いた
”だーっはっはっ! おい、もうちょっとマシな嘘つけよ。・・・よし決めた。
この子を掛けてもうひと勝負! 掛け金は3倍だ。どうする・・・?”
”おい、お頭・・・!”
”この娘は止した方がいい、他の女だったらいくらでも・・・3人ぐらいなら”
代わりに"5人でどうだ?"と食い下がる船長。
”いいや、その娘限定で、だ。”
ベックマンの制止も気に留めず、ヤツは言い切るとまんまと彼女を賭けさせた。
結果・・・哀れ、船長は最後まで勝てず、ご自慢だったボディガードを手放すハメに。
そして彼女はヤツに引き取られる間際、そこの船長の首を掻っ切ったという訳だ。
つまりアンジェラは暗殺の為、あの船に潜伏していたのだ。
予想外の事で、彼女はやむえず急ぎ働きをせざるを得なかった___
”ヤツにはもったいねェとは思ったんだが___まさかな”
(その時の、ショッキングな光景を思い出すと今でも身震いする位・・・綺麗な殺し方でな)
酒が入っていたとはいえ、心酔するかにそう語った赤髪を俺は忘れもしねぇ___
だがヤツも、よもや嘗てのライバルの育てた娘だったとは思いもよらず。
『 あの頃は酷く体調が悪くてな__常に寿命と云うものを覚悟してた 』
「・・・・・・・!」
「 「 「 ・・・・・!!! 」 」 」
『 半ば自暴自棄になっていた私にあの男が”生きる覚悟を決めろ”と云うんだ。
で・・・・気が付いたらウッカリ海賊に混じってたという訳だ・・・・転職の大した理由はない 』
何となくってか・・・お前らしい。
コイツは解ってないんだ、赤髪と云う男を信じ過ぎた自分を・・・・・。
____あの時、そう。麦わら屋に云った言葉だ
”悪口?本当の事だ、オマケに大嘘つきだ”
アレだけは、コイツの本心だと____俺は知っている。
裏切られたって感情は理解はしていないが、形のない感情として残ってるんだ。
痛む心なんか無いと___自ら信じてやがる
俺でさえ切なくなる・・・
今触れれば、”同情で抱こうなんて考えるな”と勘違いされるのは目に見えてるから
その細い肩にも手を伸ばす事はしない・・・・・。
「センパイ、・・・・・・・・・!?」
俺はその声にはっとなる__ハルトが何か聞こうとして表情を固まらせた。
想像は着いた。アンジェラスは俺の前でその質問はするなと声を飛ばしたのだろう。
_______________
”その質問には答えられない、すまんな”
私は察して____ハルトだけに声を飛ばした。
ハートの海賊団のマークを・・・・未だ背負う踏ん切りのつかない__その理由だ。
to be continued