山田、ごめん
あと、今回は、後半がかなり雑です。
山田、ごめん
「またお越しください」
というホテルマンの声を背に、ホテル左藤を後にする。
さて、これからどうしようか。
そうだ、薹璽臘に会いに行こう。
多分、いつもと同じように、公園にいるはずだ。
無論、彼が普通の老人であった場合には、だが。
公園に着いた。
公園内を歩き回ってみる
今は休日の昼間だから、子供たちが楽しそうに遊んでいる。
子供は好きだ。
理由は極めてシンプルだ。
子供は可愛いからだ。
子供というものは、大人から可愛がられるように、可愛くできているらしい。
つまり、子供の容姿というものは、大人たちに、「ああ、可愛い」と思わせるようにできているということだ。
子供は大人の助けなしに生きていくことは出来ないから、これは極めて合理的な事だと思う。
だから、まあ、つまり、私は子供が好きだ、と、言っておきたかっただけだ。
別に今すぐ忘れてくれても構わない。
このあとの話の進行には、恐らく、全く関わってこないだろうしな。
ところで、公園内に、薹璽臘がいないのは、どうしてだろうか。
いや、まあ、薹璽臘は、私を銀行に誘き出すための罠だったということだろう。
そうかー、やっぱり、私は騙されたのか。
人を騙す事を生業とする詐欺師にとって、誰かに騙されたというのは、大変な汚点だ。
何とかして、払拭しなければ。
ところで、公園内に点々と立っていた、黒服にサングラスをかけた、体躯のいい男たちが、このベンチを囲むようにして、公園の遊具や植え込みに隠れつつ、だんだんこちらに近寄ってきているんだが、これは、逃げた方がいいよな?私を捕まえに来てるよな?
取りあえず、ベンチから立ち上がる。
「捕まえろ!」
という誰かの声がした後、男たちが私めがけて飛びかかってきた。
頭の回転を速くする。
判断ミスは許されない。
0.0s
正面から来た奴を右に飛び退いて避ける。
0.1s
右側から私を掴もうと伸ばされた手を、素早くはたいていなす。
0.2s
後ろからの気配を察知して、振り向く。
目の前まで拳が迫っていた。
0.3s
拳を額で受け、バック宙で勢いを殺す。
後ろから男が三人襲いかかってくる。
このままでは着地の隙を刈られてしまうだろう。
ならばどうするか、答えは明快、着地しなければいい。
0.4s
空中で1回転半したところで地面に手を付き、跳ねる。
そのまま足で、三人の内ひとりの首を挟み、押し倒す。
残りの二人は少し面食らった様子だ。
さて、私の奥義を見せてやろう。
素早く立ち上がり、囲みの隙間目掛けて全力ダッシュ。
0.5s
できる限り姿勢を低く保ち、敵の手をかいくぐる。
敵の突き出す拳は虚しく空を切る。
遅い、それは残像だ。
0.6s
よし、囲いを抜けた。
少し振り返ってみると、二十人ほどの黒服の男たちが、私を追って、駆け出していた。
が、もう遅い。
スピードに乗った私に追いつけるのは、ウサイン・ボルトぐらいのものである。
0.7s
私はどんどんスピードに乗り、男たちを引き離す。
0.8s
公園を出た。
男たちの姿はもう見えない。
走る必要は無いだろう。
0.9s
私は悠々と、しかし速やかに、公園を立ち去った。
テクテクテク
歩く歩く歩く
さて、次はどうしようか。
薹璽鑞が私を釣るための餌であったことは、間違いない。
認めたくは無いが、私はどうやら騙されたようだ。
ああ、なんという屈辱。
この汚名は、何とかして晴らさなければ。
具体的には、そう、薹璽鑞をだまし返してやるのだ。
そのためには、彼の、本当の個人情報を調べなければならない。
まずは居場所だ。
恐らく、山下と丸眼鏡と薹璽鑞は、同じ人間から指示を受けている。
となれば、とりあえず、山下の上司である佐々木という人物を探して、接点を持たなければ。
彼がきっと、薹璽鑞の情報を持っている。
というわけで、山下に電話だ
プルルルルプルルルル
あれ、でないな
プルルルルプルルルル
おかしいな
プルルルル タダイマデンワニデルコトガデキマセン
ツーツー
おっと、切れてしまった。もう一度かけるか。
プルルルルプルルルル
プルルルルプルルルル
プルルルルタダイマデンワニデルコトガデキマセン
ツーツー
・・・可能性は二つに一つ。
寝てるか、そうじゃないか、だ。
前者が原因であったならば、私は今日も、ぐっすり眠れる。
だがそうでなかった場合・・・
私は、彼に嘘をついた。
彼は、私のその嘘を信じて、ホテル佐藤に小山田海人はいない、という情報を、佐々木という人物に伝えたはずだ。
恐らく、佐々木はそれを信じない。
いや、佐々木もピュアな奴で、私の嘘を信じた可能性も無いではないが、そうだった場合、山下は、何事もなく寝ているということになるから、もしそうだったならば、その内折り返しの電話が来るだろう。
まあ、とにかく、今は、山下が寝ていない場合を考える。
佐々木が、私の嘘を信じなかったと仮定したとき、佐々木は、山下を否定するだろう。
「お前等は騙されたんだ、その山田太郎という人物にな」
とか言って。
でも、山下と丸眼鏡は、素直な奴だから、
「そんなことはないと思います。」
「自分もそう思うっす」
となる。
もし私が佐々木の立場で、かつ、部下がそんなこと言い出したら、
「お前等、洗脳でもされてんのか?」
ってなる。
こうなってしまうと、もう、山下たちが信じて貰える見込みは無い。
精神科に連れて行かれて・・・いや、あいつら、明らかに堅気の人間じゃないし、堂々と医療機関には行けないだろう。
待て、山下たちなら、佐々木が
「お前ら、ちょっと精神科行ってこい」
て言ったら、素直に行くんじゃなかろうか。
いやいや、佐々木がよほどのバカでない限り、そんなふうに、自分の使える人員を、わざわざ減らすような真似はしないだろう。
・・・仮に、あの二人を、「労力」にカウントしていた場合には、だが。
佐々木に会いに行くときには、あいつ等のフォローもしてやらないとな。
私のついた嘘のせいで、あいつ等が職を失うというのは、正直、後味が悪い。
何度も言っているように、詐欺師というのは、騙すプロ、嘘八百の玄人だ。
プロを自称する以上、詐欺師は、完璧な嘘をつかなければいけないのだ。
完璧な嘘、というのは、「自分を完全に偽れる嘘」では無い。
真の意味で、完璧な嘘とは、嘘の内容によって起こる結果が、実際に起こる結果と一致する、つまり、「辻褄が完璧に合う嘘」である。
だから、つまり、どういうことかというと、私は昨日の夜、山下達に、もうちょっと完成された嘘をつくべきだったと、つまりそういうことだ。
まあ、今更悔いても遅いがな。
さて、本格的にする事が無くなってきた。
今だからいうが、山下に電話をかけてから、ここまで、やっていたことは、暇つぶしだったんだ。
する事がなくてな。
暇だったんだ。
あ、もちろん、電話は実際にかけたぞ。
でなかったけど。
・・・えっと、今日泊まるホテルでも探すかな。
お粗末様でした。
展開が家出したので、また投稿が、遅くなりそうです。
すいません
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