私は山田太郎、詐欺師だ。   作:matome0101

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楽しんでいただければ幸いです。


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 私が小学校に入学する、その前日に、私は両親を失った。

 交通事故だったらしい。 

 両親が交差点で信号無視をして、横から高級車に突っ込まれて、死んだらしい。

 私は、それを信じていない。

 私の父は、とても真面目な男だった。

 私の母は、とても模範的な女だった。

 どちらが運転していたにせよ、私には、彼らが道路交通法に違反するような行動をとるとは到底思えなかった。

 彼らの乗っていた車には、ドライブレコーダーが付けられていた。

 真面目な父が、車を購入した際に、取り付けたのだ。

 私は、警察に、ドライブレコーダーを調べるように言った。

 

「そんなものはなかった」

 

 そう言われた。

 

 事故から数日たって、私は、テレビで、二人の事件の詳細を知った。

 件の高級車の運転手は、ある大企業の社長だった。

 私は、幼いながらも、なんとなく事故の全容を理解した。

 圧倒的な権力は、正しさを無視するものらしい。

 要するに、あの事故は、善良なる一般市民が権力者に殺された、そういうものだった。

 真実は歪められる。正しさは無力である。

 自分勝手な悪が、結局得をする。

 私はそれを学んだ。

  

 前置きが長くなったことを謝ろう。

 ここからが本題、木崎と私の出会いの物語だ。

 

 あの事故、いや、事件の後、私は父方の叔母宅に引き取られた。

 早紀はそこの一人娘だった。

 因みに彼女の方が年上だ。

 早紀は、優等生だった。

 正しくあることを美徳とし、私にも正しくあるよう、いつも説いていた。

 だが、私は正しさの弱さを知っている。

 彼女の話は、いつも、私の右耳から入って、左耳から出て行った。

 

 私がどんなに悪いことをしても、彼女は私を叱らなかった。

 ただ、私に、正しさを説いた。

 しかし、彼女の言葉は私の胸を打つことなく、虚空へと消える。

 だから、私は何度も悪いことをした。

 彼女は恐らくその度に、怒りに打ち震えていただろう。

 彼女は自分の怒りを表に出さない術を心得ていたが、それでも隠し切れぬほどの怒りが、説教をする彼女の瞳の奥に、いつも見え隠れしていた。

 

 今、彼女は探偵をしている。

 その情報収集能力は、世界トップレベルだ。

 だから、私は、本当にどうしようも無くなったときは、彼女に頼る。

 彼女は、それが正しいことであれば、手を貸してくれる。

 だから、今回も、山下と眼鏡を助けるために、手を貸してもらうことにした。

 

 彼女の情報収集能力の高さ故、私の詐欺の大半は彼女にばれている。

 だから彼女に会いに行くと、しばらくの間説教される。

 今回も13時間ほど、嘘をつくことの罪深さについて説かれた。

 しかし、今回の説教も、私の心には響かない。

 

 

 と、木崎早紀に関する説明は以上だ。

 まとめると、

 

 木崎早紀は優等生である

 木崎早紀は有能な探偵である

 木崎早紀は何度説教しようと改心しない私に怒りを覚えている

 

 因みに彼女は、いつか私が改心すると信じており、私の悪事を警察に教えはしない。

 その信念は理解できないが、私としては助かる。

 

「次は、終点~」

 

 どうやら目的地が近づいてきたようだ。

 下車の準備をしよう。

 




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