今年から偏頭痛になってしまいました。
「終点です」
おっと、どうやら目的地に着いたようだ。
私は木崎の様子をうかがいながら、恐る恐る席を立った。
木崎は私の方を見続けてはいるが、先程のように突然ナイフを突きつけたりはしなかった。
私は電車から降りた。
後から木崎も降りてくる。
あれ?木崎の眼から殺気が消えている。
いつもの木崎の穏やかな眼だ。
何故だ?
私をビビらせて満足したのか?
まあ何にせよ、有り難いことではある。
私は木崎の顔色をちょいちょいうかがいつつ、一緒に駅のロビーに移動した。
数分後、私と木崎は駅のフードコートでクレープを食べていた。
この駅は都会の中心部に位置する駅で、デパートや遊園地が併設されている。
今はそのデパートの二階にあるフードコートで腹ごしらえをしているところだ。
因みに、私が食べているのはチョコバナナクレープ、木崎が食べているのは宇治抹茶クレープだ。
代金は、お互いに自分の分を支払った。
話は変わるが、読者諸君は『ワリカン』という支払い方についてどう思う?
私は、あまり良い支払い方だとは思わない。
できる限り避けるべきだと考えている。
(全員の代金÷人数)で一人当たりの代金を概算するというのは、確かに合理的だと言えよう。
だがよく考えてみろ、(全員の代金÷人数)で算出されるのは一人当たりの代金の「平均」なのだ。
決して「一人当たりの代金」ではない。
そんなことはわかっている、そう言いたそうな顔をしているな。
安心しろ、ここまでは前置きだ。
ここからが、私が『ワリカン』を嫌う本当の理由だ。
まず、私は小食だ。
したがって、私が会食に参加してその時の支払方法がワリカンだと、私は確実に損をする。
だから、私はワリカンが嫌いだ。
…少々自分勝手か。
だがまあ、人間が物を嫌う理由なんて、そんなものだろう?
「それでは、行きましょうか。」
と言って、木崎が席を立った。
私は尋ねる。
「行くって、どこに行くんだ?」
「近くの警察署ですね。」
「えっ?」
「あなたの話を聞く限り、その佐々木という人物はこの辺りの反社会的勢力の者でしょう。そういった方々に関する情報は、警察の方に聞くのが最も手っ取り早いのですよ。」
「もし仮に他の方法が存在するのであれば、そちらの方法を使ってほしいのだが。」
「ありますけど、お勧めはできませんよ?」
「因みにどんな方法だ?」
「近くの反社会的勢力の方々の事務所に凸して、その場にいる人達全員に尋問を行います。」
「ああ…うう…ぐう…」
「大人しく警察に頼りましょう、ね?」
「うう…でも…警察は…」
「大丈夫ですよ。今のところ、あなたの行った詐欺警察には一切見つかっていません。」
「おいおい、そんなわけないだろう?」
「本当ですよ。」
「ははは、優秀な日本の警察が私のような詐欺師を見落とすわけがない。」
「そうですね。本当ならとっくに捕まっているでしょうね。」
「何が言いたい?」
「さあ、なんでしょうね。」
「答えるつもりはないのか。」
「答えなければわからないほど難しいことを言っているつもりはありません。」
「私にはわからない。」
「そうですか。」
「・・・」
「それでは、近くの警察署に行きましょうか。」
「わかった、それでいい。だが一つ条件がある。」
「何ですか?」
「変装させろ。」
「理由を教えてください。」
「私に関する情報を、警察に伝えたくない。」
「わかりました。では30分程待ちますので、変装が出来たら、あのオブジェの前に来てください。」
木崎が指さした方を見やると、そこには銅像があった。
少し遠くにあるのでよく見えないが、あれは侍の銅像だろう。
「わかった、では30分後にまた会おう。」
私は木崎にそう言い、近くのショッピングモールへ向かって歩き出した。
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