主役になれないモブが使い魔作成でラスボス討伐後の崩壊世界を生き延びるようです   作:きんたろう

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十四、暗幕

 ショッピングモールの屋上。そこは以前まで駐車場だったのだろう、車がいくつか放置されている。ほかに、塔屋の上に生存者グループが置いたらしい見張り台を兼ねたテントがぽつねんと置かれていた。

 時刻は朝四時過ぎ。空は白んできているとは言え、まだまだ暗い。

 

「見えますか?鳥本さん」

「ああ……確かに煙ですね」

 

 双眼鏡を差し出され、鉄郎はそれを覗いた。

 

「S・O・S……確かに見えます」

「でしょう?それで、どうしようかと……」

 

 煙――この場合は狼煙と言うのが正確だろう――が上がっているのはビルの屋上だ。そのビルから『SOS』と書かれた板が吊り下げられている。

 

「どうもこうも……」

 

 鉄郎は隣の燕を横目に見る。

 名も知らない誰かが助けを求めていて、そして自分にはそれを成す力がある。

 

(だから助けに行こう――とはならない)

 

 そう言うのは主人公ちゃん――木ノ実の仕事だ。と鉄郎は吐き捨てる様に呟く。

 考えるべきことは多い。

 

 まず、罠の可能性。と言うか、正直これだろう、と言うのが鉄郎の感想だった。

 世界が悪魔で溢れて六週間。あのビルの人物は一体どうやって生き延びたのだ?逃げ場のないビルで。逃げ回って追い詰められた生存者、と言う可能性もあるが、今まで見た外の生存者がのぞみと言う悪魔用レーダーを抱えたグループだけなのだ。

 加えて、この辺りは大分前に木ノ実が生存者を探しに出てきているはずである。

 

「助けられるなら、助けた方が……」

 

 いつものリーダーの男性が、どこか縋るような眼で鉄郎を見る。

 

「十中八九罠ですよ。行ってみたら、燃やされてるのが人で、待っていたのは悪魔、なんて御免ですよ」

「し、しかし……」

 

 人の良い人だ。と鉄郎は男性を見て思う。

 こんな時分に人の心配ができる余裕があるのは、やはりのぞみの存在が大きいのだろう。

 

「燕、どう思う?」

「うん?そうだねぇ、やっぱり罠じゃないかな~。あ、でも。そんな賢いことする悪魔。ここら辺に残ってるかな?」

「それも、そうか……?」

 

 ううむ、と唸る鉄郎。

 

「じゃあさ、わたしだけで行ってこようか?ご主人」

「なに?そんなことしてここの守りはどうするんだ?」

「のぞみがいるじゃん!悪魔に気付けるんだから、すぐ逃げられるでしょ?それにそんなに時間かからないって!悪魔だったら燃やしてくる!人だったら連れてくる!」

「おい、俺は……」

「それに、ご主人はわたしに飽きちゃったらしいしね?ちょっと距離を置いた方がいーんじゃないかな~?」

「……ったく。本音はそれか?」

 

 にしし、と燕が笑う。

 

「分かった。行ってこい。気をつけてな」

「あいさ!」

 

 そう言って、燕は屋上からジャンプ。

 その姿はすぐに闇に紛れて見えなくなり、着地の音すら聞こえない。

 

(こりゃ、帰ってくるまでに何か用意しないとな)

 

 二人の様子を見ていた男性が頭を下げた。

 

「すみません。私の我儘で……」

「いえ、気にしないで下さい。のぞみちゃんの所に戻りましょう」

「はい……そうです――ねっ」

 

 ごっ、と鈍い音。

 鉄郎が、自分が殴り倒されたのだと気づいたのは、地面を舐めた後。

 何かを疑問に思う間もなく、意識が遠のいていった。

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