主役になれないモブが使い魔作成でラスボス討伐後の崩壊世界を生き延びるようです   作:きんたろう

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二十、親としての初仕事

「ここにいたのか?」

 

 鉄郎はその青い髪の少女の姿を、いつだか燕と掃除したビルの屋上で見つけるのだった。

 

「あー……なんだ、鉄郎……」

 

 少女は杖を突いて歩く鉄郎に一瞥をくれただけで、仰向けのまま空を見続ける営みに戻る。

 

(冷たいな?)

 

 どこか突き放した様な態度を感じる鉄郎。

 

(何かしたっけ?)

 

 顎に手を当てて考える。

 

(いや、何もしなかったのか)

 

 一人納得すると、少女の横に胡坐をかく鉄郎。

 

「空に何か、あるのか?」

「いんや?別に、ただ……あたしの髪と同じ色だなって」

 

 鉄郎は少女の髪を見やった。

 確かに、その深い青は空にどこか似ている。不思議と燃える前髪は夕焼けに見えなくもない。

 

(いや……)

 

「お前の髪は、空ってより火の色だろ」

「火?火ってのは赤いか黒いかだろ?」

「いやいや……そうか、見たことないのか。生まれたばっかりだもんな。火ってのは酸素がうまく供給されて温度が高くなると青くなるんだ」

「ムズかしい話はわかんねえよ」

 

 少女は興味無さそうに言い、鼻を鳴らした。

 鉄郎は屋上の床、コンクリートにできた模様を目で追い始める。

 

「つまり、強くて熱い炎ってことだよ。凰」

「は?」

「ん?」

「今何て言った?」

「だから、青い火は強くて熱いって――」

「そこじゃねえその後だ!!」

「凰って言ったな。おおとり」

「なんだよそれ?」

「お前の名前だよ」

 

 その少女――凰は、勢いよく身を起こした。

 

「は――てめ、ふざけっ!」

「え?何?気に入らなかった?」

「そうじゃねえ!!そうじゃねえよ……」

 

 凰は鉄郎の胸倉を掴んだが、すぐにその気迫は萎えてしぼんでしまう。

 

「な、な、なんで。あたしの名前。そんな簡単な風に」

「いや、忘れてたなって思って。いい名前だろ?由来はだな――」

「ふざけんなっ!!お前は一週間も寝てたんだぞ!!!あたしに名前をくれずに、一週間だ!それを、なんだって?忘れてた?」

 

(しょうがねーだろ死にかけてたんだから)

 

 と、言い訳したくなる口をどうにか抑える。

 

「名前が無いのがどういうことか分かるか!?居なかったんだよ!居るのに!生まれてなかったんだ!生まれて来たのに!」

 

 凰の頬に一筋涙が伝った。

 

「誰もあたしの名前を呼べない。誰もあたしの名前を知らない!!それがどういうことか、あんたに分かるか!?」

「悪かったよ……ごめん」

「ごめん、じゃないよ……このくそ主人……」

「……」

「あたし、このままあんたが死んだら、どうなるのかって、ずっと、ずっと……!」

 

 凰は泣き顔を見せまいと鉄郎の胸に顔を埋めて、その胸板を叩いた。

 

「今日がお前の誕生日だ。お前は不死鳥みたいに蘇った。だから、鳳凰から一文字取って、凰。いい名前だろ?」

「うん、うん……!」

「誕生日おめでとう」

 

 人間であれば、名付け親と言うのは何も実親である必要はない。物心ついたら、自分で名付けるのもいい。

 だが、使い魔は違う。悪魔に近い精神的な存在である彼女らは名が無ければ存在できない。いずれ消えてしまう。

 

(けど、そんな理屈以前に、名付けってのは親の負う一番最初の責任だ……こんなに遅れて、俺はいい親じゃないんだろうなぁ)

 

 鉄郎は凰の頭を撫でる。ふわふわとした髪は触り心地が良く、鉄郎はいつまでもこうしたいと思うのだった。

 

「そう言えばお前の燃えてる髪、熱くねえな」

「てか、何で燃えてるんだ?」

「さあ?もしかしたらヒトカゲみたく消したら死んじまうかもな?」

「恐ろしいこと言うんじゃねえよ……」

 

 二人は、燕が食事だと呼びに来るまで、そうして抱き合っていた。

 

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