仮面ライダーオリジン   作:御剣龍也

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懲りずに帰ってまいりました作者です。

前作の「仮面ライダーオロチ」は、設定やら何やらがぐちゃぐちゃだったので、もう一度練り直してきました。リメイクではありませんが、まあ生暖かい目で見ていただけると幸いです。

ではどうぞ。


日常は儚く散る

 「お願い。私が、私でいられるうちに……。」

 

ここはとある街。規模の大きな大きな立派な街だった。しかし、今や道路のアスファルトはめくれ上がり、敷石は砕け、ビルはいくつも倒壊し、あちこちから火の手や煙が立ち上り、街の原型は残されていない。住民は避難しているのか、悲鳴が聞こえてきたり、血の匂いがしたりしないことが唯一の救いだろうか。

 

 地獄。そうとしか言い表すことのできないその光景の中に、たった2つの人影が佇んでいた。一人は少女。銀の髪を頭の左で束ね、青い瞳が悲しそうに微笑んでいる少々。一人は少年。少女より一回り背が大きく、赤い瞳を震わせる少年。彼は、今にも砕けそうなほどに歯を食いしばり、真紅の瞳を大きく見開いた。

 

「ウァァァァアッ!ァァア”ア”ア”ァ”ア”ア”ア”!!」

 

咆哮。少年は拳を地面に叩きつけ、泣きながら叫んだ。その声ににじむのは、後悔かそれとも怒りか。

 

 どこからともなく現れた機械仕掛けの龍が、少年の腰に巻かれた金属質なベルトのバックルに収まる。それと同時に少年の体には、青を基調とした銀の鎧が構成されていく。

 

それは力。守ることも、救うこともできぬ、ただ破壊するために作られた、醜く哀れな龍の鎧。

 

 顔を隠した仮面の下で、少年は少女の名を呼んだ。

 

「サヤさぁああん!!」

 

ドゥンッ!!

 

龍が飛んだ。暗雲立ち込める空から差し込む一片の光りに向けて、心の奥底で燃え上がる紅蓮の炎を身に纏い、高く、高く、飛んでいく。

 

反転。

 

右足を突き出し、炎の翼をはためかせ、少女のもとへと一直線に翔けていく。

 

少女は微笑んだ。安らかな、優しい微笑みを少年に向ける。まるで怒り狂う龍を諌める聖女のように。

 

「ハジメ。」

 

「ッッ!………うアアアアアアアア!!!!」

 

突き出された右足が、少女の心臓を、捉えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 月曜日。それは基本的に一週間の始まりの日であり、多くの学生、社会人が理不尽な怒りの眼差しでカレンダー越しににらみつける曜日の名前だ。

 

時間とは、万物に関係なく必ず訪れ、過ぎ去っていくものだ。つまりどれだけ妬み嫌おうが、遠ざけようが、この世界すべての存在に月曜日という曜日は平等に訪れる。たとえ心の時計が止まっていようとも。

 

南雲ハジメ。もちろん彼にも月曜日は巡ってくる。高校生である彼は、通学路を淡々と足を前へと運び進んでいる。彼はふと空を見上げた。ポッカリと穴が空いたような空虚な瞳に映る雲一つなく澄み切った青い空。

 

「……サヤさん。」

 

ポツリ。彼自身も気が付かないほどに自然と口から漏れた言葉は、空にたどり着くまもなくどこかへと消えていった。

 

また前を向き、先程と同じように淡々と歩をすすめる彼の口からまた独り言が漏れた。

 

「晴れは嫌いだ。」

 

網膜の奥に焼き付いた青い色は、あの青い光と重なった。いつも自分を受け止め、迎えてくれたあの眼差しと、重なって見えた。

 

 

 

 

 ガラッ。

 

ハジメが教室のドアを開ける。それと同時に今まで聞こえていたはずの話し声がピタリとやみ、一斉にハジメへと大量の視線が向けられる。そこにあるのは妬み、怒り、殺意など、とてもではないが、普通の学生が持ち合わせているようなものではない。

 

「……」

 

ハジメはそれを一瞥する。しかし、まるで興味を抱くこともなく目を伏せ自分の席へと向かおうとした。だがその時、彼の行く手を数人の人影が遮る。

 

「よお!キモオタ!」

 

ハジメは顔を上げ、そこにいる誰かを確認する。なんとなく誰なのかは分かっていたが、予想通りすぎることへの若干の落胆を覚えながら口を開く。

 

「おはよう。檜山君たち。悪いんだけど席に行けないからどいてもらえる?」

 

優しく、諭すように言うハジメだが、実のところそんなふうに言おうとは思っていない。キモオタなどと呼ばれて腹が立つ、立たない以前に「どうでもいい」という感情が前面に押し出されているのだ。感情を荒立てるのもめんどうくさい。そう思っているだけだ。

 

しかしそれを面白く思わない彼らは、イライラした顔で更に声を荒げる。

 

「はっ。どうせ徹夜でエロゲでもやってたんだろ!」

「うわっ。キッモ!!」

 

「……」

 

彼らの勝ち誇ったようなその顔を見ても、なにも言い返さないばかりか、ハジメの心にはさざなみ一つ立つことはない。毎朝毎朝こんなことを懲りずに続けられたせいで慣れてしまった、というのもあるが、やはりどうでもいいという考えに至ってしまうところが大きいだろう。

 

しかし面倒なものは面倒なので、いい加減檜山とその取り巻きを押しのけて通ろうとしたとき、唐突にまた別の人物から声をかけられた。

 

「おはよう南雲君、今日もゆっくりだね。もっと早く来ようよ」

 

白崎香織。学校では二大女神と言われるほど男女問わず絶大な人気を誇る美少女。腰まで届くつややかな黒髪に少し垂れ気味の大きく優し気な瞳。すっと通った鼻梁に小ぶりの鼻と、薄い桜色の唇が完璧な配置で並んでいる。もともと美人な彼女は、更に非常に面倒見がよく責任感も強いため、学年問わずよく頼られる。

 

しかし、そんな彼女に話しかけられたハジメは、少しだけ眉をひそめた。どうにもハジメは、この完璧美少女である彼女が好きになれない。というより少し警戒している。数ヶ月前この学校に来てから、学校にいる間中は常に彼女の視線を感じ、一日に何度も何度も、彼女が言うには偶然ばったり遭遇する。極めつけは帰り道を、毎度毎度下手くそな尾行で後をつけてくる。感情の起伏が乏しいハジメでも、流石にそこまでやられると彼女に対して警戒心を抱いてしまう。

 

(本当に何がしたいんだろこの人。)

「おはよう白崎さん。」

 

関わり合いになりたくないハジメはそれだけ言うと、今度こそ檜山とその取り巻きを押しのけて自分の席へと向かう。友人でもなんでもない、特に仲も良くないただのクラスメイトに対しての対応などこの程度だろう。

 

 教室に入ってから5分ほどかかってようやく席についたハジメは、何気なく持ってきた本を開く。特にこの行動に意味があるわけではないが、時間を潰すのにはうってつけだ。ハジメはスマホからイヤホンをつなぎ、音楽をかける。今日の本は軽快な推理物なので、かける音楽は軽快なジャズで行こう。ハジメの意識は、すぐに物語の中へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 時は流れ昼。日本人の誰もが腹をすかせ、うまい飯を求める時間帯。ハジメは鞄からゼリー飲料を取り出した。パッケージに何も印刷されていない変わった容器に入ったそれを、ハジメはなれた手付きで開封し、一気に飲み込む。

 

……不味い。栄養価が高くなったとかなんとか言われたが、味は前より酷くなったのではなかろうか。思わずハジメは顔をしかめた。ほとんど味がしないゼリー状の物体の中にほんのり臭う血なまぐささ。とにかく不味い。栄養バランスは素晴らしいのだろうがもう少しなんとかならないのか。帰ったらそこのところを交渉しよう。ハジメはそう決意し、水筒の水を飲み干してまた小説を開く。しおりは本の真ん中を過ぎ、物語も加速してくるあたりで、今までの伏線が少しずつ解明されていく辺りか。ページをめくり読み始めようとしたその時、

 

「南雲君。珍しいね。良かったら一緒にご飯食べない?」

「……」

 

忘れていた。ニコニコと近づいてくる白崎香織の顔を見て、ハジメは深くため息をつく。思ったよりも小説のことで頭がいっぱいになっていたようだ。いつもであれば彼女に見つからないように教室を出て昼食を取るのだが、今日は小説の続きが気になり、そのまま教室で昼食をとってしまっていた。相変わらずな自分の性格を恨みつつ営業スマイルで香織の方に向き直る。

 

「いや、遠慮しておくよ。あんまり食べたい気分じゃないんだ。」

 

そう言ってまた小説を読もうと視線を移すハジメだが、香織はハジメの机の上に乗っていた銀色の潰れたパッケージを見つけると、慌てたように詰め寄ってくる。

 

「お昼それだけなの?だめだよ!私の分けてあげるね!」

 

彼女の言葉に偽りはなく、本当に自分のことを心配してくれていることは理解できた。しかし、だからこそハジメにはそれがひどくうっとおしく感じられる。自分だって腹いっぱいの飯を頬張りたい。好きでこんな食事をしているわけじゃない。色々な言葉や感情が胸の中で渦巻き、ぐちゃぐちゃにかき回される。それが喉まで出かかったその時、少し離れた席から声が聞こえた。

 

「香織、こっちで食べないか?邪魔しちゃ悪いだろう。」

 

天之河光輝。香織の幼馴染であり、いかにも、といった感じのキラキラネームの彼は、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の三拍子が揃った完璧超人と名高いハジメのクラスメイトである。

 

小学生の頃から八重樫流という剣術道場に通う門下生で、正義感と責任感が強く、皆からの信用度も高い。

 

「香織。無理にすすめるのは良くないわ。」

 

八重樫雫。香織の幼馴染パート2。ポニーテールとカッコいいという印象を与える鋭い切れ長の目が特徴であり、身長は百七十二センチと女子にしては非常に高い。

 

彼女の実家は光輝の通う八重樫流の剣術道場であり、彼女自身、小学生の頃から剣道の大会で負けなしという猛者だ。

 

「そんなのより俺たちと食おうぜ。」

 

坂上龍太郎。香織の幼馴染パート3。光輝の親友で、大きな体格と短く刈り上げた髪、鋭さと陽気さを併せ持つ瞳という見た目に反さず細かいことは気にしない脳筋である。

 

そして、彼は努力とか熱血とか根性など少年漫画に出てきそうなことやモノが大好きな人間で、ハジメのようになんとなくやる気がなさそうな人間は嫌いなタイプらしい。

 

性別、性格ともにバラバラな彼らは、一貫してクラスどころか学年の壁を飛び越え、この学校全体のカーストで上位を締めている、まあすごい幼馴染集団だ。

 

そんな彼らが手招きをしながら香織を呼んでいる。幼馴染からの誘いであれば自分から離れてくれるだろうか。ハジメなんとなく期待してみる。このままだと本当に色々とぶちまけてしまいそうで怖かった。

 

 しかし、ハジメの期待とは裏腹に、幼馴染からの誘いは彼女には全く効果はないようで、

 

「え?別に私南雲君の邪魔なんてしてないよ?」

 

(いい加減にしてくれ。)

 

全く悪意を感じないその言葉に、今まで感じていた憤りや怒りよりも、呆れた、という気持ちが勝ったハジメは、なんとも言えない脱力感に襲われつつ、誰にも聞こえないようにそう呟くとその場から離れようとする。立ち上がったところでふと光輝と目が合う。彼は申し訳なさそうな顔をしながら少し頭を下げた。

 

(すまない。)

(気にしないで。)

 

光輝から視線を外しながらどこで時間を潰そうか考え始めたハジメだったが、視界の端に写った何かにもう一度視線を光輝の方に戻す。

 

「なんだ?」

 

光輝の足元に突然現れた謎の円環と幾何学模様に、ハジメの視線は釘付けになった。面倒くさい予感がすると思ったその直後、その円環が一気に巨大化し、教室全体の床をすっぽりと覆ってしまった。ようやく自体に気がついた生徒たちは、今まで経験したことがない恐怖に包まれ、騒ぎを始める。ハジメはとっさに胸から下げている小瓶を握りしめた。

 

「なにっ?!これ!」

「うわああ!!」

「キャああ!!」

「ヒイッ!?」

 

何やら耳障りな音とともに円環から放たれる光りは強くなっていき、その光が最高潮に達した瞬間、ハジメ達は教室から消えていた。

 

 光が止み、そこに見えてきたのは、人間だけがすっぽりと抜け落ちた写真のような、そんな景色だけだった。

 

 

 

 

 

ピピッ

 

薄暗い、研究所のような施設のその一角。そこにはコードに繋がれた、分厚いカードのようなモノが4つ、01〜04とナンバリングされた台座の上に鎮座していた。そしてもう一つ、P01と書かれた台座の上に、他の4つとは少し雰囲気の違うカードがこれまたコードに繋がれて沈黙していた。そう。いまさっきまで。

 

 突然カードに繋がっていたコードが外れ、カードが発光を始める。一枚のカードだったそれに分割線が入り、少しずつ変形していく。

 

首のようなものが展開され、前足、後ろ足、そして尾。最後に背中から、青白いビームのようなものが生え、翼らしきものが形成されていく。それはまるで、おとぎ話の中に現れるドラゴンのようだ。

 

『キュイイイ…』

 

それは、まるで「よく寝たー。」と言わんばかりに、ぐぐっと犬や猫が体を伸ばすような仕草をし、頭と思われる部分にある一対のカメラのようなものであたりを見渡す。

 

 

突然、そのドラゴンの目の前に穴が現れた。空間がねじ切れるようにして空いたその穴の先を、無機質な光がじっと見つめている。

 

行かねば。

 

龍が飛んだ。少しあたりを飛び回り助走をつけ、一気にその穴へと突っ込む。そこにまた、彼がいることを確信して。

 

 

 

 

「やっぱりいない!」

 

しばらくして、その部屋に一人の女性が駆け込んできた。少しウェーブがかかった茶髪と黒縁のメガネがずり落ちそうになりながらあたりをキョロキョロと見渡す。目の前にあるのはP01と書かれた空の台座のみ。

 

「どういうコト…?なんで《オリジン》だけ起動したの…?」

「まさかまた、ハジメくんが何かに巻き込まれたの?」

 

女性はやりきれない、といった顔で虚空を見つめる。

 

「お願いハジメくん。無事でいて…。」

 

そして、祈るようにそう呟いた。




いかがだったでしょう。次の投稿は……いつぐらいになるかな。取り敢えず二週間以内を目指して頑張ります!では次回もよろしくお願いします。

感想ご意見お待ちしておりまーす

オリジンに強化フォームは必要か否か。

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