仮面ライダーオリジン   作:御剣龍也

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はいどーも作者です。内容薄い上にあんまり核心に至れてない……。それでもよければどうぞ。

あ、あとアンケートもはじめましたので良かったら覗いてください。


心と体とそれから俺と

「…よって異端者南雲ハジメを、創造神エヒト様の名において即刻処刑する!」

 

 ハジメは自身の名前を呼ばれたことに反応し、俯けていた顔を上げる。

 

ここは聖教教会の一室。地球で言うところの裁判所だ。正面にはイシュタルを中心に何人かの僧侶達が、床から一段高くなっている席に並んで座っている。さながら裁判官のような立ち位置だろうか。その割に検事も弁護士も姿が見えないが。その反対側にある傍聴席には、光輝を始めとし、クラスメイト達一同が座って、事の行く末を見守っている。

 

 そしてたった今名前を呼ばれたハジメはと言うと、

 

 「……」

 

その中央に、雁字搦めに拘束された状態で、更に護衛の二人の男に挟まれた状態で立っている。顔を上げたことで顕になったその表情は何も浮かんでいない上、その瞳は死んだように濁りきっていた。 

 

 

 

 

 

 

 あの迷宮での一件の後、変身を解いたハジメはその場にいた騎士達に取り押さえられた。人間は自分の理解できないものに恐怖する。仮面ライダーとしてのハジメの力も、その恐怖の対象だったのだろう。そのまま王都へ連行されたハジメは、拘束されたまま一週間、王都で一番警備の厳重な独房へと放り込まれ、今ここに立っている。

 

その間で、話を聞いた愛子や香織など、一部の人間はハジメのことをなんとか擁護するために奔走していたが、勿論ほんの数人の力でどうにかできるわけもなく、何ならあのベヒモスの一件はハジメが犯人なのではないか、と言う話すら出てきている。

 

ちなみにハジメを助けるために動いていた人物は、この裁判への出席が禁止されている。

 

 「ちっ……。」

 

 傍聴席で、判決を言い渡す僧侶をギロッと睨みつけながら、檜山は不機嫌そうに舌打ちをした。そもそもこの裁判自体が、魔女裁判のようなもの。その場に立った瞬間、いや、この裁判が始まる前にすでに有罪が決まっている。わざとらしいその演出に、檜山のイライラはさっきから膨らみ続けていた。

 

 そしてついに裁判が終わろうとしていたその時、

 

 「待ってください!」

 

傍聴席の最前列から、待ったをかける人物がいた。

 

 「光輝殿……?」

 

立ち上がった光輝は見よ乗り出しながら、イシュタルに向けて訴える。

 

 「お願いです。どうか、彼を殺さないでください!」

 「光輝殿。それはできぬ相談ですな。」

 

しかしイシュタルは、珍しく感情を顕にした険しい顔でその言葉をはねのける

 

 「これはエヒト様の使者の名を語った魔物まがい。それを生かしておくなど言語道断ですぞ!」

 

怒り心頭といった様子で怒鳴るイシュタル。彼にしてみれば、ハジメは憎むべき悪である魔物と同類。そんな存在が、エヒトが送り込んできた光輝達勇者一行に紛れ込んできたことが許せないのだろう。

 

しかし、その迫力にも怖気づくことなく、光輝は訴え続ける。

 

 「お願いです!どうか、どうか話だけでも聞いてください!」

 

あまりに必死な光輝の表情。勇者のそんな姿に、イシュタル以外の僧侶達は、チラチラと目を合わせる。あの勇者があそこまで言うのなら、もしかしたらなにかあるのかもしれない。そんな考えが頭をよぎる。

 

 「……いいでしょう。」

 

ついにイシュタルも折れ、光輝の訴えに耳を傾ける。光輝はそれを見て、安堵した表情を浮かべながら、一旦息を落ち着かせ、自分の考えを大きな声で話し始める。

 

 「彼は、僕の大切な仲間です。たとえ魔物と同等の存在であったとしても、僕には彼を見殺しになんてできない。」

 「話になりませ「彼に迷宮の調査をさせて見てはいかがでしょうか?」……ほう?」

 

光輝のその言葉に、イシュタルの表情は、呆れたような顔から面白そうなものを見つけたような顔へと変わった。

 

 「彼は、強い。それも僕を超えるほどに。彼ならば、オルクス大迷宮の全制覇も夢ではないでしょう。」

 「もちろん僕が迷宮まで南雲を連れていきます。もしも僕が疑わしいのなら、見張りに騎士を同行させても構いません。」

 「どうか、彼にチャンスをやってください!」

 

イシュタルは、心のなかでほくそ笑む。自信満々に言ってはいるが、誰一人としてたどり着いたことのないオルクス大迷宮の最深部へと、エヒトの使者でもないただの魔物まがいがたどり着けるわけもない。それに、エヒトの使者を語ったこの魔物まがいに対しての怒りで我を忘れていたが、そっちのほうが面白そうだ。

 

 (せいぜい苦しんで死ぬといい。)

 

イシュタルは光輝に向け、慈愛に満ちた表情で、どこか芝居がかったような動きで話し始める。

 

 「おお。なんとお優しい。まさか光輝殿がそれほどまでに慈悲深いとは。このイシュタル、感服いたしましたぞ。」

 「で、では……?」

 「ええ。

 

 

ではこれを、今すぐにオルクスへと向かわせましょうぞ。」

 

今すぐに。準備などさせるつもりはない。食料も持たずに迷宮に入ればせいぜい餓死にするのが関の山だろう。魔物の肉は食べられない。それがこの世界の理なのだから。

 

 「フフフ…。」

 

イシュタルは、勝ち誇ったように笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「アッハッハッハッ!!」

 

オルクス大迷宮の1角に、大きな笑い声が響いた。

 

 「お、おい見たか?あのジジィの勝ち誇った顔よぉ。……ブフッ」

 

イシュタルのことをバカにしながら笑っているのは幸利だ。彼は、半日前に行われていた裁判で見た光景を思い出し、また吹き出す。

 

 「おい清水。そんなに騒ぐと魔物が……」

 「大丈夫だとおもうよ。そんな気配はないし……。そ、れ、に、いざとなったら光輝クンが助けてくれるでしょ?」

 

そう言って幸利を諌める光輝。更にその後ろからひょっこりと顔を覗かせるのは、あの眼鏡っ娘の恵理だ。随分とまとっている雰囲気が今までとは違うが、その場にいる全員が特に反応を示さないため、どうやら周知の事のようだ。

 

更に、

 

 「いやー。助かったよ。ありがとう協力してくれてさ。」

 

そう礼を言うのはハジメだ。裁判の間見せていた死んだような目は消え失せ、むしろ愉快そうに輝いている。

 

 

そう。あの裁判、この四人によって見事に操作されていたのだ。

 

 「それにしても……すごいな二人とも。」

 

光輝がそう言うと、幸利は少し照れくさそうに頬を掻き、恵理は光輝の腕に自分の腕を絡める。

 

 「いや、そうでもないぜ?中村の補助もあったし、まるっと洗脳するよりよっぽど楽だったよ。」

 「そうそう。それに、光輝クンのお願いとあったら、ね。」

 

二人は裁判の中、その場にいた人間に対して、「少し精神が不安定になる」効果の闇魔法を散布し続けていたのだ。もともと魔法特化に訓練されていた上、そこまで強力なものでもなかったため、二人は難なくそのミッションを遂行していた。ちなみに、見張りについてきた騎士達も二人の手によって意識を飛ばされて入口辺りに寝かされていたりする。

 

 「いや、それより僕は天之川君の演技にびっくりしてたんだけど。」

 「……そういうお前もノリノリだったろうが。」

 

もちろん二人のあの行動もすべて演技である。

 

 「地球帰ったら俺らで劇団でもやらね?」

 「それ……いいかも。でも、主役は光輝クン。ヒロインは僕だけどね。お前はモブだよ。」

 「えー。なんだよそれ。」

 

突然ギャイギャイ言い合いを始める二人に、ハジメはクツクツと笑い、光輝はため息を付きながらも頼もしそうに二人を見つめる。

 

 「あい変わらず緊張感ないねー。」

 「まあ、現にどうにか出来てしまうからな。油断さえしなければいいさ。」

 

ちなみに、ハジメの「いやー。助かったよ〜」あたりから、一行は魔物と交戦しているのだが、全員無傷で一方的にボッコボコにしまくっていたりする。

 

 さて。魔物との戦闘も終え、更に奥へと進む一行。しばらく進んだ辺りで、立ち止まった光輝がハジメへと向き直った。それに気がついたハジメもまた光輝の方を向く。

 

 「……南雲。そろそろ教えてくれないか。お前の過去というやつを。」

 

そう言ってハジメの顔を真正面から見つめる光輝。3人は、あの裁判でハジメに協力する代わりに、とある約束をしていた。それは、ハジメの過去を教えてもらうことだ。あの仮面ライダーとしての力、そして南雲ハジメのことを。

 

 「ああ。もちろんさ。君たちは信用できる。だから話すよ。包み隠さず全て、ね。」

 

ハジメはポリポリと頭をかくと、う~んと悩むような仕草をしてから口を開いた。

 

 「量が量だから掻い摘んで話すけど、まず1つ頭に入れておいてほしいことがある。」

 

ピン、と人差し指を建てるハジメ。

 

 「僕は……いや、」

 

少し溜め、自分にも言い聞かせるように言う。

 

 「俺はな、南雲ハジメじゃないんだ。」

 

 

 

 「……は?」

 「お、おいおいじゃあ何だ?お前は南雲ハジメに擬態した宇宙人ってか?」

 

幸利のそのコメントに苦笑いするハジメ。

 

 「はは。幽霊とか言わない辺り清水らしいな。」

 

その口調は今までの飄々としたものではなく、ナイフのように尖ったものに変化している。

 

 「まあ、DNA鑑定とかをすれば、俺は南雲ハジメだってことになるんだろうけど。」

 

頭にはてなを浮かべる3人にどこか笑いが込み上げてきたハジメは、クスリと笑い、くるくると指で宙に円を描く。

 

 「そもそも南雲ハジメという人物は、三年前にすでに死んでいる。」

 「「「はあ?」」」

 

突然意味のわからないことを言い出すハジメに三人は呆けた顔で間の抜けた声を出してしまう。しかしハジメは特に気にした様子もなく話を続ける。

 

 「近所じゃちょっと名のしれたカツアゲ集団に暴行の末に殺されたらしい。その日の昼間に子供連れのお婆ちゃんをそのカツアゲ集団から守ってたらしいからおおかたその腹いせだろうな。そのまま勢い余って殺してしまったと。」

 

 「いやいや、そんな話聞いたことないぞ?!そんな事件が起きたらニュースにでもなりそうなものだが?」

 

ハジメのあっけらかんとした物言いに困惑しながら光輝が口を挟む。ハジメと光輝の家はそこまで離れてはいないし、もしそんな殺され方をしているのならニュースにでも新聞にでもなりそうなものだが、そんな話は一切耳にしたことがない。

 

ハジメはそんな光輝の様子を見て、軽くため息をつくと吐き捨てるように言う。

 

 「もみ消されたんだよ。ぜ〜んぶ。俺を生み出すために。」

 「お前を……?」

 

恵理の困惑する声にうなずくハジメ。

 

 「俺の正式名称を教えておこう。俺の名前は『南雲ハジメモデル クローンネオプロトタイプ成功例 No.01 model Dragon』」

 

 「クローン……ネオ?」

 「つまり、あれか?お前は南雲ハジメって言う人間の細胞から生まれたクローン人間ってことか?」

 

 幸利の言葉に、ハジメは少し悲しそうな顔をし、自分の右腕を、顔の前へと持ってくる。

 

 「人間ならどれだけ良かったかな……。」

 

グジュグジュッ

 

 「「「ッ?!」」」

 

突然、見覚えのある黒いナニカに包まれたハジメの右腕。三人が警戒する中、それが少しずつ剥がれていき、そこから姿を表した右腕は、

 

 「俺は人間じゃない。」

 

まるで爬虫類のような鱗に覆われていた。それはどこか、あのベヒモスに似ているように見える。

 

 「俺はあれと同種。一匹の化け物さ……。」

 

その顔には悲しい微笑みが浮かび上がり、縦に割れた瞳孔は孤独な光を浮かび上がらせた。




次回、仮面ライダーオリジン

 「ネオって何なんだ?」
浮かぶ疑問

 「神って信じるか?」
語られる真相

 「じゃあな。」
訪れる別れ


       次回「五年前のあの日から」


生きろ、最後まで

オリジンに強化フォームは必要か否か。

  • 必要
  • 不必要

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