仮面ライダーオリジン   作:御剣龍也

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おかしい……。2話で終わらせるはずだったのに……。今回も駄文にお付き合いくださいでは、どうぞ。


ファッツ・ユア・ネイム

「チッ」

 

ハジメは小さく舌打ちをすると、部屋の出口へと向かって駆け出す。先程飛び退いたことでほとんど目と鼻の先にあった部屋の出口にはほぼ一瞬でたどり着くことができた。

 

 「確認しておいてよかった……。」

 

ハジメは少女を出入り口に下ろすと、飛びかかってきた蠍の横っ面を回し蹴りで蹴り飛ばし、その進行方向をむりやり曲げる。蠍は壁に突撃しそうになっていたが、宙で体をよじり、足で着壁することで難を逃れた。

 

 「さっさと外に避難しろ。」

 

それを見届けるまもなくハジメは少女を外に追い出し、襲いかかってきた鋏を間一髪で避ける。

 

 ゴリゴリゴリッ

 

 「……それは鋏じゃなくてスコップなのか……?」

 

岩盤を十数メートルに渡り抉り取る鋏に対してハジメは軽口を叩く。しかし反対に、その心情は穏やかな物ではなかった。

 

 (魔物の匂いに混ざってネオの匂いがする……。)

 「一筋縄じゃ、いかない……か。」

 

嫌というほど嗅いできた化け物の匂い。それを感じたハジメは、小さく舌打ちをし、目の前の敵を睨みつけた。

 

 

 

 

 

 一方で、外へと外においだされた少女は、サヤに手を引かれて広間を通り過ぎ、通路へと退避していた。

 

 「お姉ちゃん、みず、のむ?」

 

差し出された水筒。その中にある水分を求めて少女はそれを半ば奪い取るようにして受け取ると、数百年ぶりにその口へと水を流し込んだ。

 

 「……ありがと……う?」

 

数百年ぶりの水分補給。それと同時に感じた違和感になんとも言えない顔をする少女。自分の体をペタペタ触り、その正体を確かめようとする。

 

 「……!?魔力が戻ってる……。」

 

そう言って目を見開く少女。しかもそれだけではなく、少女の痩せ細っていた体は幾らか健康的な体つきになり、キューティクルの剥がれきっていた髪も、数百年分の汚れこそ落ちてはいないが艶が戻り、美しい物へと変化……というより元の状態に戻っていた。

 

いま少女が口にしたのは、「神水」と呼ばれるもので、「神結晶」と呼ばれる鉱石から滲み出たものだ。神結晶は、自然の中に流れる魔力そのものが数百、数千年もの歳月をかけて偶然できた魔力溜りに蓄積、それが結晶化したものだ。結晶化して更に数百年ほどの時間をかけることで蓄積した魔力が飽和状態になると、それは神髄となって溢れ出す。

 

神水は、飲んだ者はどんな怪我や病気も完治するという。欠損部位を再生するような力はないが、飲み続ける限り寿命が尽きないとされ、神話の中で登場する不死の霊薬とも言われている。

 

なぜ彼女が神水が入った水筒を持っているのか。それは、サヤが目覚めたあの空間に元々あったものを、「なにかに使えるかも。」とハジメが採取しておいたのだ。なんとも軽いノリで採掘される伝説の鉱石。殆どの世界線で主人公を救ったというのに凄まじい雑さである。

 

その話はさておき、

 

魔力が回復した少女は、ハジメの援護に行くべきか、ここでサヤと共に待つべきか、頭を悩ませていた。彼女の経験則からすると、あの蠍はとてつもない強さだ。いかに自分を助けてくれた彼がここまでたどり着けるほどの強さを持っていたとしても、無事でいられるとも思わない。しかし、ここにサヤだけ残していく、というのも気が引ける。今さっきまでいた部屋の中のことしか知らないが、危険だ何だと言われていた自分を封印するのだから、それ相応に危険な場所であるということはなんとなく理解していた。

 

どうしようか。少女はう~んと首をひねる。とその時、クイクイっと腕を引っ張られる感覚に、少女はサヤの方を見る。すると、そこにはいつの間に持っていたのか、上から下まで一式揃った服が、差し出されていた。

 

 「さむく、ない?」

 

寒い、とは?疑問に思った少女は自分の体を見下ろす。そして、凄く今更ながら気がついた。自分が、すっ裸であることに。

 

 「…………ありがとう。」

 

何ともいたたまれない気分になりつつも受け取った衣服に袖を通す。ハジメが予備で用意したものなので少女にはかなりサイズが大きかったが、体を隠す意味では十分機能している。

 

 「ふう……。」

 

忘れてしまうほど長い期間衣服など身につけていなかったが、やはり着ているとなんとも言えない安心感がある。少女はせっせと袖や裾を折り曲げて自分に丁度いいサイズに調節すると、もう一度礼をいう。

 

 「ありがとう……。」

 

サヤはその言葉に嬉しそうに頬を緩める。にっこりとはいかないが、見るものを安心させる不思議な力を持った笑みだ。

 

 「おねえちゃん。」

 「なに……?」

 

少女はサヤが自分のことを呼んだ事に首を傾げる。他になにかあっただろうか。身なりもそれなりにはなったし、魔力わ体力も回復している。もしや体臭でも気になるのか?

 

しかし、次にサヤが発した言葉は、少女の予想からは遠く離れたものだった。

 

 「おねえちゃん。なまえ、なに?」

 「な……まえ……?」

 

言われてみれば。少女は自分が名前を名乗っていなかったことを思い出す。色々と衝撃的なことがあったせいですっかり忘れていた。なんとなく拍子抜けした少女は、一度咳払いをして、名前を名乗ろうとする。

 

 「私は……。」

 

名前を名乗ろうとした、その時。

 

『ーー』

 

記憶の中で、見慣れた一人の男性が、自分を見下ろしながら、名前を呼んだ。

 

 

 

 

 

 「……っ」

 

それが頭をよぎった瞬間、喉まで出掛かった名前がそのまま引っ込んでしまう。何度言おうとしてもおなじだ。自分の名前が口から出てこない。

 

 「おねえ……ちゃん?」

 

サヤが心配そうにその顔を覗き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて。視点をハジメに戻そう。

 

ハジメとサソリの戦いは、ハジメの一方的な猛攻で蠍がずたずたにされ続けていた。

 

しかし、

 

 (どういうことだ……。)

 

ハジメの表情は、攻撃を加えるたびに険しくなっていた。

 

 (やつからネオの匂いがする。これは間違いないはずだ。なのに……。)

 

ハジメは襲いかかってきた鋏を傾けた刀身で受け止めて受け流すと、そのまま回転斬りにつなげてその鋏を根本から切り落とした。が、

 

 「やっぱり再生しない……。」

 

ネオの代名詞とも言える異常な代謝機能による再生能力が全く発動しない。

 

 (それに……人形じゃないネオなんぞ見たことないぞ?)

 

さっきからハジメが警戒している理由。それは、ネオとしての能力が何一つとしてこの蠍から感じられないことだった。先程の再製能力然り、形然り。本来ネオは人間から変質するものだ。ゆえにネオの殆どは人形。もしくは体の半分以上は人の形をしている。が、目の前にいるこの蠍は、360度どこから見ても巨大化した蠍そのものである。

 

まるで力を隠しながら戦っているようで、気に入らない。

 

 「まあ、いい。そっちがその気なら」

 

ハジメは今一度刀の柄を握り直し、地面が抉れるほどの力でその場から飛び出す。

 

 『ksaaaa!!』

 

もちろん蠍も黙ってみているわけではなく、残った鋏と尾を使い、ハジメを叩き落とそうとする。が、

 

 「悪いな。」

 

上から襲ってきた鋏に刀身を滑らせて避けると剣を上に放り投げ、目の前に迫ってきていた尾を蹴ることで更に上へと翔ぶ。

 

 「そんな見え透いた攻撃に当たるほど……」

 

手の中に舞い戻ってきた剣を握り、そのままの勢いで蠍の体を一刀両断……

 

 「甘かねe……ッ?!」

 

ギィンッ!

 

金属音とともに腕に走った衝撃。ハジメは蠍の外殻を蹴り、無理やり自分の体を後ろへと弾き飛ばした。着地同時に剣を地面に突き立てて勢いを殺すと、今さっきまで自分がいた場所へと視線を向ける。そこには、突き刺さるチューブ状のなにか。それは、ハジメが切り裂いたサソリの背中から生えてきている。

 

 「はー。なるほど。」

 

ハジメは納得した。と大きくため息を付き、頭を押さえる。

 

 「そのデカブツは隠れ蓑ってわけだ。」

 

 

バキッ、メキメキメキッ!

 

 

蠍の外殻をこじ開け中から姿を表したのは同じく蠍。しかしそのフォルムは正しく人のもの。そう。魔物に混ざってハジメが感じていた気配の正体。

 

 「名付けて『スコーピオンネオ』ってところか。」

 

紫色の金属光沢を放つ外殻が、ハジメの引きつった顔をを映し出した。

 

 

 

 『kyaaaaaa!』

 「チッ……!」

 

睨み合う間もなく、スコーピオンネオの腰辺りから無数の毒針が現れ、音速にも近い速度でハジメを狙う。なんとか身を翻してそれを避けるが、いかんせん数が多い上に今のハジメは変身していない。変身するには一度オリジンを引き抜き、再読み込みをする必要があるのだがその隙がない。

 

 「ツアッ?!」

 

ハジメの着地した地面からも毒針が生える。よく見るとスコーピオンネオは毒針を数本地中に潜らせていたようだ。となると、どこもかしこも岩の壁であるこの部屋はやつのフィールドということになる。

 

 『kyaaaaaaa!!』

 

ハジメの思考に焦りが交じる。右、下、左、上、前、後。あらゆる方面から向かってくる毒針を避けたその先に、もう一本の毒針が迫ってきていた。

 

 「しまっ」

 

なんとか避けるものの体が完全に宙に浮いた。これでは身動きがとれない。チャンスと見たのか一斉に毒針をハジメに向けて放つスコーピオンネオ。

 

しかし、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「残念。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメはニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『キュイイイイイイ!!』

 

ギュルルルルッ!

 

ベルトから弾かれるようにして離脱したオリジンが、ハジメに向かってきていた毒針をすべて弾き飛ばした。そのままハジメの掌に収まるオリジン。ハジメは宙に浮いたままオリジンをベルトへと差し込んだ。

 

 

 「変身。」

 『Alteration』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……うぐっ!?」

 

突然洞窟内に吹き荒れた爆風通路や部屋の壁が剥がれ、少女とサヤの真横をすれすれに吹き飛んでいく。

しばらくし、ようやく目を開けられるようになった少女は、通路の影から蠍とハジメがいるであろう場所を覗く。そして、

 

 「なに……あれ……?!」

 

驚愕に目を見開いた。

 

なぜならそこにいたのは、蠍でもハジメでもない。

 

 『kysaaaaaaaaaa!!!!』

 「オオオオオオオオ!!!」

 

互いに向き合い雄叫びを上げる人の形をした化け物。スコーピオンネオと仮面ライダーオリジンだったから。

 

 名前のことが一瞬頭から吹き飛ぶ。少女の視線の先で、2体の異形がぶつかりあった。

 

 

 

 

 

 

 「行くぞ虫ッ!」

 

 

 ガギャリイイイッッ!!

 

 

剣と甲殻がぶつかり合い、凄まじい金属音があたりに響く。

 

 

 

 ギンッ!

 

 

 

 ガギンッ!

 

 

 

 ギャィイインッッ!!

 

 

 

幾度となくぶつかり合う剣と発達した甲殻。堅牢さと素早さが数段上昇したスコーピオンネオに、オリジンの攻撃はそれに呼応するかのごとく苛烈なものとなっていく

 

何度目の衝突か。オリジンの振り下ろしを受け止めたスコーピオンネオが、腕を傾けることでその剣を受け流した。しかし、オリジンも瞬時に対応し、流された力を利用してしゃがみながら回転。足元に向けて強烈な斬撃を放った。余りに鋭い斬撃は、岩の壁を無惨に抉り取る。

 

が、

 

 「チッ」

 『ksyaaaa』

 

スコーピオンネオは片脚を犠牲にすることで上に飛び斬撃を避けると、腕に絡みつかせた毒針をドリルのように回転させながらオリジンへと拳を振り下ろす。範囲こそ小さいが岩の床をたやすく貫く。喰らえばひとたまりもないだろう。横っ飛びにそれを避けたオリジンは、立て続けに襲ってくる毒針をなぎ払いつつ目の前の相手を分析をする。

 

 「外は硬いしすばしっこい。サラには体の再生に物を言わせた負傷前提の攻撃か。……俺はやりたくないけど。」

 

前方から迫ってくる無数の毒針。

 

ズガガガガッ!

 

地面へと突き刺さり、土煙を上げる。その中から毒針を避けきったオリジンが飛び出し、足が完全に再生する前に剣をを横薙ぎに振るおうとー

 

 「?」

 

そのとき、スコーピオンネオの右手に、紫色の毒が集まり始めた。嫌な予感がしたオリジンは、その感を信じて剣をの軌道を捻じ曲げる。

 

直後、オリジンの腕に走る鈍い衝撃。

 

 「ぐうっ……!」

 

ぎちぎちと音を立てて、オリジンの剣とスコーピオンネオの右手に握られていた紫色の剣らしきものが競り合う。

 

 (こいつ、毒を硬質化させて武器を作りやがった。)

 

それを筋力に物を言わせて無理やり弾くオリジン。すぐさま翻した剣と剣とがぶつかり合い、剣技の応酬となる。

 

 「ッ〜!」

 

剣を交える毎に鋭く、速くなっていく紫色の刃に、ハジメは冷や汗を垂らした。

 

 (こいつ……俺の剣を模倣してる……。)

 

異常。あまりに早い学習能力。そして応用力。基本ネオは学習こそすれど応用というのはあまりしてこない。当たり前だ。赤ん坊に説明書も渡さずにプラモデルを渡したとして赤ん坊はそのプラモデルを完成させることができるか?否。そんなことはできない。それはなぜか。想像できないからだ。それがどんな形になるのか、どんな動きをするのかがいっさいわからない。それはネオも同じこと。二度と同じ手を喰らわない、というのがネオの厄介な点だが、それは一度見て聞いて学習したからこそできることであり、その攻撃がどういった技から繰り出されるのか想像して避けることができない。それに、同じ攻撃を避けるのと、同じ攻撃を模倣するのとでは難易度が違う。いかに相手の攻撃を理解し、躱すことができたとしても、自身がその動きをできるかと言われれば答えは否。相手が自身で取得し、自身に一番あった動きをしているのに、それを模倣することなどできない。できたとしても完成度は低く、威力もない。が、

 

目の前の敵はどうだ。一度見せたオリジンの技を模倣し、あろうことか本人と打ち合っている。

 

 「元が剣の達人だったか……それとも、」

 (まさか……な。)

 

ハジメは頭を横切る思考を振り払うと、与賀横薙ぎに迫ってきていた剣を、刀身の曲線に沿わせるようにして頭上にいなす。

 

 「シャッ」

 

更にそこから短く気合を込めながら無防備になった腹を蹴り飛ばし距離を取る。

 

 「時間をかけると面倒だ。これで終わらせる。」

 『Charge up』

 

刀を納刀するようにして左腰に構えるオリジン。ゼノホーンに収束したエネルギーが、身体から右腕、そして刃へと流れ込み、赤く輝いた。

 

 『………』

 

チャキッ

 

何かを感じ取ったスコーピオンネオは剣を両手で握り、日本の剣術にある構えの一つ、霞の構えを取った。

 

 

 

 「………」

 『………』

 

 

 

静寂。今までの激しい打ち合いとは似ても似つかぬ張り詰めた気迫が空気を張り詰める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ッ!」

 『……sya!』

 

 

 

 

 

閃光。

 

 

 

 

 

二筋の蒼と紫の二筋の光が、交差した。音すら置き去りにするその攻撃は、部屋の壁を深々と切り取り、地面に落ちるまもなく消滅させた。

 

 

 「『………』」

 

2つの影は、剣を振り切った体制からゆっくりと体を起こし、互いに振り返った。しんと静まり返るその空間の中で、オリジンの声が、やけに大きく聞こえた。

 

 

 「討伐、完了。」

 

 

 

 『Burning blazor』

 

 

 

振り払った刀身から、蒼い炎が溢れた。

 

 




次回、仮面ライダーオリジン

 「やっぱり、おかしい。」
膨らむ疑問

 「私の、名前は」
少女の名前

 『……久しぶり』
過去と向き合うことができるのか。
 

        次回、「マイ・ネーム・イズ」


生きろ、最後まで。
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