と、言うわけでハーレムを作らせないために独自要素が来ます。嫌な人は嫌かもしれない……。それでも良ければどうぞ。
『ksaaaaa…!!』
バターのように切り裂かれた甲殻。そして胸に深々と刻まれた斬撃痕から蒼い炎がチロチロと漏れ出し、スコーピオンネオの体を焼いていく。剣が手から滑り落ち、甲高い音を立てて地面を転がる。
「………。」
オリジンはその様子を黙って見つめる。
炭と化していく肉体。既に立ち上がるほどの力もなく、スコーピオンネオはガクリと膝をついた。
そのまま消え去っていくか。
そう思ったその時。
スコーピオンネオが突然、掌を胸の前へとかざし、ぐっと握りしめた。まるでハジメに対して敬意を称すかのように。
「ッ……。」
ハジメはその行動に目を丸くし、なにか言いかけるが、それよりも前にスコーピオンネオの体は崩れ去っていった。
「やっぱり、おかしい。」
変身解除したハジメはそうつぶやき、ふわりと消えていく黒い霧を見つめた。
ハジメが暫くそうしていると、少女とサヤがハジメに駆け寄っていく。
「おとうさん。だいじょうぶ?」
サヤの心配そうな声と、物理的にそうなってしまうものの上目遣いの潤んだ瞳に、若干たじろぐハジメ。すぐに気を取り直してポンポンと頭を撫で、ひょいと抱き上げる。
「おう、この通りだ。ごめんな。心配かけて。」
肩に乗せられたサヤは、「えへへ。」と笑いながらハジメの髪に顔を埋める。ハジメはひとしきりサヤの好きにさせると、少女へと向き直る。
「サヤのこと、ありがとうな。」
「……気にしないで。……それより、あなたは何者?」
疑いの瞳でハジメを見つめる少女。まあ、当然の反応だ。助けてもらったとはいえ、最強と歌われていた自分自身ですらおそれを抱く怪物に変貌した相手に、無条件に心を開けと言う方が無理な話だ。ハジメも似たような対応をされたことは何度もあった。
ハジメは自分の名前を名乗ろうと口を開く。
「あ〜、俺は、」
「南雲、ハジメだ。」
南雲ハジメ、そう名乗った彼は改めて少女の方を向く。
「そっちは。」
こっちは名乗ったのだからそっちも名乗れ。ハジメはそういう意味を込めて少女を見る。
「私の、名前は、」
そこまで言うと少女は口を噤む。いや、何か言おうとはしている。だが、まるで何かが喉に支えているように、その先の言葉が出ない。
俯き、黙りこくる少女。
「……いらない。」
ポツリと、少女が言う。
「名前なんて、いらない。」
まるで過去から目を背けるように、
「新しい名前、付けて。」
少女はそういった。
「………」
ハジメはその少女の顔を見て、口を詰まらせた。過去から目を背ける彼女が、どうしょうもなく自分と同じように見えてしまったからだ。御剣龍也と名乗れない、母親が付けてくれた大切な名前を口にできない自分と。
「「………」」
沈黙が流れる。サヤが心配そうに二人の顔を見比べる。
と、その時、
『キュー。』
ポフッ。
オリジンが結晶のようなものを抱えてサヤの頭の上に着地した。
「?」
サヤがオリジンの腕から結晶を受け取り、不思議そうにそれを眺める。黙って俯いていた二人の興味も自然とそちらへと引き寄せられる。
周囲は崩壊しており、部屋は戦いの余波で元々の大きさの数倍は広がっている。柱や少女を閉じ込めていた立方体だったものは見る影もなく粉々に粉砕され、何もかもが破壊し尽くされていた。が、
「見事にこれだけ残ったな。」
表面に傷があったり、若干ひしゃげているようにもみえるが、それでも明確な形を残しているのはこれだけだ。ネオとライダー。人知を超えた化け物同士の戦いの最中にしっかりと形が残るのは珍しい。というかほぼない。何なら国道を一本地図上から消滅させたこともあった。
だからこそ、興味を惹かれる。
「オリジン。スキャンできるか?」
任せろ。そう言いたげに首を振るオリジン。サヤから結晶を返してもらうと、ピピピっと言う電子音を鳴らしながらそのままじっと動かなくなる。
「?」
不思議そうな顔でその様子を見守る少女。しかし、オリジンの様子をじっと見守る二人につられ、自身もじっとオリジンを見つめる。
10分ほど立った。
『キュイッ。』
オリジンが不意に鳴き声を上げながら起き上がり、サヤの頭の上から地面へと降り立つ。
そして、何かを空中に映し出し始めた。
3Dプリンタのように、下の方から少しずつ形作られていく何か。
「……人、なのか?」
足、腰、腕、胴体。形成されていく男性らしき人間の姿。
そしてついに、顔が形作られた。
「えっ……?」
そこにいるのは一人の男性。悲しく、寂しい光を映像越しにでもその瞳のうちに見ることができる。その男性の姿を見た少女は、驚きに目を見開き、無意識のうちにポツリと呟いた。
「叔父、様?」
ピリピリピリッ。
オリジンか奏でる電子音声とともに、まるでビデオが再生されるようにその男性が動き出す。
『久しぶりだね。我が愛しの姪、アレーティア。』
アレーティア。おそらくはそれが少女の名前なのだろう。少女は完全に硬直している。
その映像に映る男性は、誰かに話しかけるように語り始めた。
『まず、代表して謝らせてほしい。すまなかった。
………いや、謝ったところでどうこうなるものじゃないな。それに彼を悪事に加担させたようで心苦しい……。』
男性は語った。自身の心の中に渦巻く苦悩と葛藤、そして少女への愛をその瞳に宿して。
全ての元凶はあのカタカナであること。それは自身が生きながらえるためにこの少女を器とし、魂を乗り移らせ、新たな肉体を手に入れようとしていたこと、そして、その野望から少女を守るためにここへ少女を幽閉したこと。
真実を話さなかったのは、自身の恨みにより生きる活力を見出させるため。一族を守ろうと彼女が戦わないようにするため。
全ては、彼女を守るため。
「そん……な……。」
さて、そう前置きをし、男性はずっと固定していた視線を外し、あたりを見回すような仕草をする。
『君がどこの誰かはわからないが、この映像を見ているということは、君は彼を見事うちたおし、アレーティアを助けてくれたんだろう。まず礼を言わせてくれ。私の、私の大切な姪を救ってくれてありがとう。』
ハジメは、返事が帰ってこないのをわかっていながらも自分のことを指差し、「俺?」と首を傾ける。
男性はハジメから若干外れた位置に視線を向けて話し始めた。
『まあまずは自己紹介をさせてくれ。私はディンリード。そこにいるアレーティアの叔父にあたる。どうだい?強かっただろう?彼は。』
彼。状況からしてスコーピオンネオのことだろう。ハジメは顔をしかめる。もしやこいつもネオを研究していたのか?そんな考えが頭をよぎる。
もちろんそんなことを考えているハジメに気がつくことはなく、ディンリードは言葉を紡ぐ。
『彼は珍しく我々の一族の中で魔法の素質が一切無くてね。そのかわり剣術の才能においては右に出るものはいなかった。そして、「神獣」になる素質も、我々の中でずば抜けて高かった。』
神獣。おそらくはこの世界で言うところのネオのことだろう。随分と洒落た名前だ。
『アレーティアを封印するとき、私は彼にそれを打ち明けた。彼は私にすごい勢いで詰め寄ってきてね。どうにかならないのかととにかくすごい勢いで問い詰めてきたよ。』
少し遠くを見ながらそう語るディンリード。
『でも、それ以外方法がないとわかった彼は、自身をアレーティアとともに封印してくれと懇願してきた。少しでもアレーティアの傍に居たいと。でもだめだ。アレーティアはいつ助け出されるかわからない。そして彼は、アレーティアのように不死身ではない。』
悲しそうな光をその瞳に宿しながら、少しだけ後悔するように話す。
『彼は、自身の身を神獣へと変えることを選んだ。神獣になれば永久の時を生きることができるからね。そして、アレーティアを、私の家族を守ってくれると。そして、それを助けに来た者の力を試すと。』
『神獣になれば、時間が経つに連れ強大な力と引き換えに自我は薄れ、記憶は殆ど消えてしまう。しかし、彼はやはり約束を守ってくれたようだね。私が見込んだだけはある。』
さすが私。うむ、とうなずきながら少しだけ自慢げに言うディンリード。
『彼の名前はヴェノ。私の友人であり……アレーティアの初恋相手かな?』
その言葉にはっと顔を上げる少女。
「ヴェノ……?ヴェノが……?」
『彼を打倒したというのなら言うことはない。私の大切な、大切な家族を頼んだよ。』
ハジメはその言葉に、目を伏せる。見ていたくなかった。逃げ出した自分になんてことを頼むのだと。もっと、もっとふさわしい人がいるはずなのに、なぜ自分が彼女を助け出してしまったのか。
隣では少女が泣いている。真実を知り、叔父の愛を知り、一人の男の覚悟を知り。
「お父……さん」
少女が、目の前の男をそう呼んだ。
「ッ……。」
血は繋がっていない。サヤとハジメのように仮初めの家族でもない。真の家族の絆。時を超え、ついに本物の家族となった男のと少女の姿を見て、そして、少女のために自らの全てを投げ捨て、ともに付き添おうとした男の覚悟を知って、
「あー。情けね……。」
過去から逃げようとする自分の手が、酷く醜い怪物の手に見えた。
暫く時間が経ち、映像は消えた。少女は泣きはらした目を擦り、その場にうずくまっている。
ハジメは先程までスコーピオンネオ。いや、ヴェノが立っていた場所まで歩いていく。砕け散った甲殻を拾い集め、錬成でとあるものを作った。彼に似合うものといえばこれしかないだろう。
「ほら。」
少女は上から聞こえてきたその声に顔をあげる。そこに差し出されていたのは、紫色の、美しい抜き身の短刀だった。
「お前の大切な人なんだろ?」
ハジメの手からそれを受け取る少女。手のひらの中で輝くそれには、まるで彼の魂が込められているようだった。
「ヴェノ……。ありがとう……。」
刀身を額に当て、涙を流す少女。
彼と少女の間にどんなことがあり、どんな物語を紡いだのか。ハジメにはそれを推し量ることはできなかった。しかし、それがどれほどに大切なものだったのか、ハジメには嫌というほど理解できた。
「アレーティア。」
唐突に少女が言う。つい先程まで、煩わしい過去のように感じていた自身の名前を。
「私の名前は、アレーティア。お父さんの、娘。」
叔父が、いや父親が自身に授けてくれた宝物。自分の愛した人が呼んでくれた名前を、誰もが見惚れるような笑顔を浮かべながら、言った。
「いい名前じゃないか。」
「……ありがとう。」
はにかむアレーティア。そこへててててっと駆け寄っていくサヤ。
「ティア、おねえちゃん?」
「?」
突然なことにキョトンとするアレーティア。するとサヤはパタパタと手を振りながら言う。
「あれーてぃあ?だから、ティアおねえちゃん。」
だめ?と首を傾げるサヤ。アレーティアはポカンとしていたが、ブンブンと首を振り、サヤを抱きしめた。
「ううん。ありがとう。そう呼んで。」
「ティアおねえちゃん」と言いながらアレーティアを抱き返すサヤ。ハジメはその様子を見ると、ふう、とため息を付き、口を開いた。
「程々にして、行くぞ。」
アレーティアはその言葉が自分にも向けられていることに気が付き不思議そうな顔をしながら問いかける。
「私も……?」
「どうせ行くところもないだろ?居場所を見つける間なら一緒にいてもいい。それに、サヤもお前のこと気に入ったみたいだしな。」
少女はハジメのその言葉に、コクリと頷いた。
「うん。よろしく。」
次回、仮面ライダーオリジン
「ついに来たな。」
たどり着く最下層
「大丈夫。行こう。」
覚悟は決まった。
『syraaaaa……!』
そこに現れるのは?
次回、「最低にして最高」
生きろ、最後まで。