トータスに住むヒトの一種。見た目は殆ど人間族と同じだが、森人族を除き、耳はうさぎや熊、狐などの動物のものになっており、腰にはそれと同じ動物の尾が生えている。
魔力を持たない個体が多く、王国などの魔法を神聖視する国からは迫害を受けているが、帝国などの実力主義な国からは魔力を持たないというハンデをものともしない、他のヒトを圧倒する身体能力から強者として認められている上、労働力としても一役買っている。
また、稀に魔力を持つ亜人が誕生することがあり、魔力を持つ子供は幼少から例外なく戦士として大切に育てられる。
ハジメはすべての個体から魔物、すなわちネオに近い気配を感じているが、詳細はわかっていない。
・ベビーネオ
胎児の時点でネオウィルスに感染、適合した個体の仮称。現在確認されている個体数は2。
2体とも以上に成長が早い、力が強い、などの理由から親から見放され、あまりに深い絶望、そして高い生命力、生に対する渇望のせいで強力なネオへと変貌している。
「暗闇で足掻く」に登場したあの少女もベビーネオであり、プロトタイプと同じように自我を保っている。
数キロ離れていたフェアベルゲンへものの数秒でたどり着いたオリジンは、こちらへと向かってくる魔法の群れをその目で捉える。
「数にして200くらいか。」
ドラグアイがスキャンした結果を一瞥すると、ハジメはオリジンへと指示を出す。
「オリジン。オリジナルをバトルモードにろ。操作は任せる。全部叩き落とせ。」
ハジメの目の前に「ok」と映し出され、次いで『Machine original transform.』という文が視界の隅に展開される。
大樹の傍に佇んでいたオリジナル。そのベッドライトが、突然ひとりでに点灯した。それを合図に駆動音を立てながらオリジナルの姿が変わっていく。
タイヤはボディの両サイドへ。格納されていたパーツも姿を表し、組み立てられていく。ボディを支えるのは二本の強靭な足。移動したタイヤを中心に翼が形成され、バランスを取るように尾が伸びている。そして、竜の頭部を模したヘッドライトは、格納されていた首が展開され、口が開き、本物の竜の頭へと変貌した。
『グゥウオオオオオ!!!!』
全長3メートル程の竜へと姿を変えたオリジナルは、その翼をはためかせ、己が主の待つ場所へと飛翔した。
オリジンは、自身の愛車がバトルモードへと移行したことを確認すると、迫る魔法の群れを見据える。バックルに手を伸ばし、一瞬何かを考えるような素振りを見せるもののすぐに気を取り直して右腕を真横に突き出し、エクシードリミッターを押し込んだ。
『Charge up』
「まずは……、」
オリジンの右腕に、先程のアハトとの戦いのときとは比にならない量のエネルギーが集中する。それと同時に腕部装甲が展開し、内部のフレアが露出。溢れ出した炎がまるで意思を持つかのようにうねり、龍の姿を作り出した。
『Burning thrust』
「オォラァッ!」
オリジンが拳を突き出す。それと同時に、オリジンの後ろに待機していた炎の龍が顎を広げ、全てを喰らわんと飛び出した。龍は、目の前に迫っていた魔法をあらかた焼き尽くし、その姿は虚空へと消えていく。
「あと70%。」
次いで、オリジンが操縦するオリジナルが、焼きそこねた魔法を、口からブレスを吐いたり、体当たりをすることで搔き消す。
「67%。あとは自分で叩き落とす。」
『Braid creation』
エネルギーはすぐに回復する。もう一度必殺技を打ってもいいが、そう何度も何度も撃っていればそのうち機械で言うところのオーバーヒートを起こしてしまうだろうし、そもそもエネルギーの消費はできるだけ避けたいところだ。そう考えたハジメは召喚した無双を握りしめ、まだまだ残っている魔法の群れへと突っ込んでいく。オリジナルもまた、ブレスやタックルでオリジンの援護を行う。
「62%」
「54%」
「46%!」
とうとう残りが半分を過ぎたとき、気が緩んでしまったのかオリジンから少し離れた場所をを魔法が通過していってしまった。
「おっと。」
だがリカバリーは可能な位置。急いで駆けつければそこまで問題はない。だが、オリジンが動くよりも早く、その魔法の玉は突如配後から飛来した真紅の槍に貫かれ、霧散した。
「なんか大変なことになってると思ったら……。」
声がした方を向くと、そこには風を纏い、宙に浮いているアレーティアの姿があった。
「ティアさん?」
ハジメがその存在に驚いていると、アレーティアが首を横に振り、自分の下を指差す。
「私だけじゃない。」
ギュンッ!!
二人の横を、一つの岩が猛烈なスピードで魔法の群れへと飛んで行く。岩が飛んできた方を見ると、ドームの屋根の上には無数の巨大な岩と、シアが投擲姿勢で立っている。もう一度アレーティアの方を見ると、また一つ魔法を叩き落としながらサムズアップをしているところからしてあの岩を持ち上げたのは彼女だろう。しかしそれもすごいことだが、生身で砲弾のように岩を投げ飛ばすシアもなかなかに常識はずれだ。どこぞの海軍中将だろうか。
「後で色々聞かせてもらうから。」
アレーティアがちらっとオリジンの方を見て言う。その視線に若干の怒りが込められていることに気がついたハジメは、一旦彼女の背後を通り過ぎていった魔法を腕から炎を放って掻き消し、口を開く。
「悪かった。今度はちゃんと相談する。」
「……わかれば、いい。」
アレーティアは「仕方ないなあ」とでも言いたげに小さくため息をつくと、握っているグリップから刃に魔力を通し、黄金の雷を纏わせて横に振り払った。
「“穿天”。さ、まだ終わってないよ。」
直線上にあった魔法の玉が天より下された雷に打たれ、消滅する。それを見たオリジンもまた、刃に炎を滾らせ、同じように。横に振り払う。
「ああ。そうだな。」
放たれた炎の斬撃が、無数の魔法を飲み込みながら飛んでいく。
二人は空で剣を構え、シアもまた巨大な岩を引き千切り手頃な大きさ(直径約3m)を作り出して、砲丸投げの要領で構える。少し離たところでブレスを撃っていたオリジナルも、オリジンの意思を受け取り、吠える。
「あと33%だ。行くぞ。」
「「オウっ!」」
『グオオオ!』
そこからオリジンたちは、もう凄まじい勢いで魔法を撃墜していく。オリジンが剣を振るい、アレーティアは魔法を放ち、シアは岩と言う名の砲弾を投げつけ、バトルモードのオリジナルが3人の援護をする。
ものの数分で殆どの魔法を撃墜した一行。最後に残ったものをオリジナルが蹴り破ることで、フェアベルゲンに迫っていた驚異は完全に消え去った。
『グルオオォォォオオオ!!!』
オリジナルが勝利の咆哮を上げる。オリジナルのセンサー類にも、危険なエネルギーは感知されない。
「……ふう。」
ハジメが安堵の息を吐くと、フヨフヨとアレーティアが隣までやってくる。そして、こちらを見ながらフッと笑いかけ、言う。
「守れた。」
「ああ。そうだな。ありがとう。」
ハジメがそう言うと、アレーティアはため息をつき、「やれやれ」とでも言いたげな顔でオリジンの胸を小突く。
「あなたが守ったの。」
「……?」
ハジメはその言葉に、仮面の下でぽかんとした表情を浮かべ、アレーティアの方を見る。
「今まで守れなかったなら、これから守っていけばいい。壊した分も、殺した分も。」
彼女はオリジンの目の前にもう一度拳を突き出す。
「私だっている。一人で守れないなら、頼って。」
ハジメはその拳をしばらくぼーっと眺める。そして、小さく微笑むとその拳に自分の拳を添える。
「そうだな。俺たちが守った。」
「フフッ。」
アレーティアが微笑む。ハジメもまた、笑う。
「これからも頼むよ。ティアさん。」
コツン。拳と拳がぶつかり合う、小気味のいい音が響いた。
こうしてフェアベルゲンをなんとか守り抜いた一行。地上に戻ってみると、先程の魔法の群れやらオリジンのことやらを根掘り葉掘り聞かれたり、長老達にも注意を呼びかけたり、その他準備や情報収集でてんやわんやし、結局フェアベルゲンを出発することができたのはそれから一週間ほど立ってからだった。
「まずはここから近いブルックの街に寄って買い出しやらをして、そこからライセンの迷宮に潜る。異論は?」
ハジメはオリジンにまたがり、横を向きながら言う。
「異論なし。」
「オッケーですぅ。」
其処にはオリジナルに取り付けられたサイドカーに乗るシアとサヤ。そしてハジメの後ろにはアレーティアが乗っている。なぜシアがここにいるのか。それは、彼女がライセン迷宮の攻略者だからだ。つまるところ道案内である。ライセン峡谷は広い上に大陸を横断するほどに長い。つまり一度迷宮見逃すと往復して探す羽 目になるわけで。そんな馬鹿らしいことをするつもりは毛頭ないハジメとアレーティアは、すでにライセン迷宮の攻略者である彼女に道案内を頼んだというわけだ。
結果としては、
「まっかせてくださいですぅ。」
と、予想以上に快く承諾してくれた。彼女の人柄がうかがえる。彼女も他の大迷宮や神代魔法。何より大樹のことが気になっていたらしく、ちょうどよかったとは言っているがそれでもわざわざライセンの迷宮に付き合ってくれると言うのだからやはり人がいい。彼女が属するハウリア族の面々も、シアがそう言うなら、と快く送り出してくれた。うん。優しい。こうして確認をしている間もハウリア族の皆さんは見送りのためにわざわざ樹海の出口に集まってくれている。バルくんもいるし、涙が出そうである。
「んじゃ、行くか。」
「「「おー(ですぅ!)。」」」
グリップを握り込み、エンジンをかける。
「あんたたちにも世話になったな。また、頼む。」
「ハジメ殿も、娘を頼みますぞ!」
ハウリアの族長であり、兎人族の長老、そしてシアの父親であるカムが言う。ハジメはその言葉に頷き、手を顔の横でスナップさせた。
『『『いってらっしゃ~い』』』
そんな暖かな声を背中に、オリジナルは次なる目的地、ブルックの街へと出発した。
ときは遡り数日前。フェアベルゲンを防衛したその夜のこと。ハジメとサヤ、アレーティアは宛てがわれた部屋で、サヤを中心に川の字に並んで眠っていた。
「……。」
しばらくして辺が寝静まったことを確認すると、眠っていたはずのハジメがパチリと目を開ける。眠っていたのは演技だった。
二人を起こさないようにそっと布団を抜け出し、窓を開ける。二人の方を見ると、サヤが突然いなくなったハジメを探すように手足をモゾモゾと動かしている。それを見てフッと微笑むと、窓の冊子に足をかけ、跳び上がる。
一跳びで屋根の上にたどり着いたハジメは、何気なしに付きを見上げる。満月でなく、少しかけた楕円形の月だ。
「アハト……か。」
ハジメは、今日戦った相手の名前をつぶやく。彼女は自分と戦うことで成長してしまった。次合ったとき、また今回のようにあっさり行くとは思えない。
「オリジンネオ……ね。」
そして、久しぶりに聞いた自分の忌々しい名前。
「ライダーシステムを作ることができて、なおかつネオを育てることができる上あの名前を知っているとなると、だいぶ人数は絞られてくるが……。」
ハジメは、自分が立てていた仮説がガラガラと音を立てて崩れていくのを感じる。
「俺はてっきりサヤはベビーネオかなにかかと思っていたが、まさか……。だが、そっちのほうがたしかに納得できる。」
一番ありえてほしくない予想から無意識に目をそらしていた。だが、あんな出来事があって、なお目をそらし続けることはできなかった。
「生きているのか。ヤツが。」
ギリッ。
握りしめた拳からドス黒い血が滴り落ちる。それは地面に落ちる前に黒い霧となって消えていく。
「なんで生きてるのか、どうやってここに来たのか……そんなことはどうだっていい。」
ハジメの真紅の瞳がランと輝く。
「お前は……ここで仕留める。」
『笑って?龍也。泣かないで……。最後まで、生きて……。』
愛した人と交わした最後の言葉が、頭をよぎる。ハジメは首に下げてある小瓶を握りしめ、天を睨みつけた。
「俺が、最後まで生きるためにも。」
「次回、仮面ライダーオリジン
皆さまこんにちは。ノイントと申します。
フフフッ。あちらは大変なことがあったようですねぇ。それにこのタイミングであの人が出てきたということは……あれもかなり慌てているようですね。そろそろ私も動くときが来たようですが……。そ・れ・よ・り・ハジメ様達の旅路をゆっくり見届けるとしましょう。私のお楽しみはその後です♪。
次回、『アブナイ街、ブルック』
生きてくださいな。最後まで♪。」