ノイントとアハトが使用するライダーシステムの通称。正式名称は「ヴァルキリーライダーシステムアルファ」「ヴァルキリーライダーシステムオメガ」で、それぞれ最後のアルファとオメガの部分で呼ばれている。アルファは鴉、オメガは白鳥をモチーフにしており、まるで正反対な色調、性質をもっている。
・仮面ライダーノイント/仮面ライダーアハト
ヴァルキリーライダーシステムで変身した二人の姿。ノイントはアルファ、アハトはオメガをそれぞれ使用する。デザインはそっくり鏡合わせだが、色合いや模様は真逆の雰囲気をしている。また、ノイントは左半身、アハトは右半身が欠落したような姿をしており、まるで一つの存在が何かしらの要因で分岐してしまったようにも見える。
「貴様……ノイント!?」
何故ここに?と驚きに目を見開くエヒトに、ノイントは相変わらず芝居がかった笑顔を浮かべてそこに佇んでいる。
「数百年ぶりにお姉様の気配を感じましてねぇ。それを辿ってここまで来たんですよ。相変わらず醜く生にしがみついているようで何よりです。博士は……居ないようですね。まあいいです。」
ノイントは口元を指で隠し、エヒトのことを嘲笑うように言う。そしてブーツのヒールをカツカツと鳴らしながら近づいていき、エヒトに手を伸ばした。
スカッ。
「やはり……体は滅びたままのようですねぇ。それ、死んでいるのと同義では?」
空振った手を眺めながらそう言うノイントに、ようやく我に返ったエヒトはその笑みを忌々しそうに睨みつけ、手のひらを向ける。
「“動くなっ!”」
「おっと。」
そこから放たれた光線をノイントは下がりながら体をねじることで難無く躱し、ダンスでも踊るようにその場でくるっとターン。スカートとエプロンをひらめかせて気取るように体制を立て直す。光線は部屋の壁にぶつかるとともに消滅した。
「おやおや。神ともあろうお方が随分と弱くなったようで。」
余裕綽々。今の一連の出来事にノイントの笑みは更に露骨なものとなり、対してエヒトの表情は恐怖に塗り替えられていく。
「な、なぜ私の言霊が効かないっ!?」
「はぁ?当たり前でしょう。それは格下にしか効きませんからねぇ。今の貴方では私の髪の毛一本細胞一つ好きに動かすことなんてできませんよ。」
驚愕するエヒトを馬鹿にするように、今起きたことを丁寧に説明していくノイント。
狼狽えるエヒトに今度は鋭い視線を向け、全身から凄まじい量の魔力を放出させて威圧する。
「それよりも……計画というのは何なのですか?トータスを滅ぼそうとでも?」
「だ、だったら、なんだ!?このトータスをどうしようが神であるこの私の勝手だろう!!」
エヒトの言葉を聞き、「だめだこいつ」とでも言うように大きなため息をつくノイント。右手を腰に当て、もう一度エヒトのことを睨む。
「困るんですよ。トータスを滅ぼされると。」
「なに?」
困惑するエヒト。ノイントは話を続ける。
「好きなんですよ。今の生活。ギルドに行って、依頼を受けて、仲間たちとそれを熟して、テーブルを囲み酒を飲み交わす。そんな今の生活が。まあ、勇者召喚とか言うはた迷惑な遊戯のせいでパーになりましたけど……。かわいい弟子も出来ましたしまあいいです。もっとも、あなたにはわからないでしょうがね。それに、ネオですらない上死にかけの人間程度に世界の命運を決められてはたまったものではありませんし、そんな今を守るためにも……。」
ノイントの纏う気配が変わる。威圧から敵意。敵意から殺意へ。
「力のない今のうちにあなたを殺す……いえ、」
漆黒の粒子が右手に集まり、引き伸ばされ、一本の禍々しい槍へと姿を変える。
「消えろ。」
槍にはこれまた禍々しいエネルギーがまとわり付き、それを構えるノイントの右の瞳もまた漆黒に染まる。
「よせ…!やめろっ!?“来るな!”“来るなぁっ!?”」
「そんなもの効かないと……言っいるでしょうっ!」
ノイントの放った鋭い突きは、苦し紛れに貼ったバリアをいともたやすく貫き、寸分違わずエヒトの胸へと吸い込まれ……
ギィィイイン……!
突然地面に突き刺さったもう一本の槍に阻まれ、その動きを止めた。
「おや……。」
槍から膨大な魔力が爆発的に放たれ、ノイントは地面を蹴ってその爆発を躱す。
「お久しぶりですねぇ……。お姉様。」
「ノイント……。」
純白の羽を散らし、突き刺さった槍の直ぐ側に真っ白なドレスをたなびかせてアハトが舞い降りた。ノイントは目の前に現れた彼女を見ると、今までとは打って変わって嬉しそうな声をあげる。それに対してアハトは、表情を変えることなく、しかし困惑の混ざった声でノイントの名を呼ぶ。
ノイントが言う。
「どいてください?」
アハトが返す。
「拒否します。それより、何故、こんなことを。」
「なぜ?気に入らないんですよ。そいつ。自分を神だとか言ってる異常者。今すぐにでも消し去りたい。」
「主の意思は私達の意思でもあります。」
「はー。そんなんじゃあ時代に取り残されますよ?今どき社畜根性なんてウケけませんって。もっと自発的に動かないと。あっそうだ。こっちに来ません?お姉様なら大歓迎です。」
「拒否します。」
「あっちゃー。やっぱり駄目ですかぁ……。」
最後に大げさな動きで額を抑えるノイント。アハトはそれを見てもピクリとも顔を動かすことなく、エヒトのことをかばいながらその様子を見ている。
ノイントは「仕方ありませんね」と言うと、アハトと、その後ろにいるエヒトのことを見据え、今までの飄々とした芝居がかった笑みを消し、アハトと同じように、その顔から表情が消えた。
「なら、押し通るしかなさそうですねぇ。」
「……エヒト様。撤退を。ここを離れてください。」
アハトがエヒトに声をかけるため後ろを向いた瞬間に、ノイントの背後から黒い影が飛来する。しかし、それは同じくアハトの背後から飛び出した白いガジェットによって弾き返された。
「来なさい。オメガ。」
『クアア。クルル……。』
機械仕掛けの鳥……「ヴァルキリー・オメガガジェット」がアハトの眼前へと舞い降り、差し出した左の掌に停まる。
「おいで。アルファ。」
『ギャアッ!グアアッ!』
ノイントの身体を旋回するようにして現れたのは、オメガとは正反対。漆黒の「ヴァルキリー・アルファガジェット」。体の真横に突き出した右の掌へと舞い降りる。
アハトの腰に一本のベルトが出現。ノイントは左手に出現したベルトを、身体を一回転したその勢いで腰に巻きつける。
折りたたまれたガジェットを、アハトは必要最小限の動きでバックルのスロットに差し込む。対するノイントは、大きく円を描きながら手を顔の前に構え、口元を隠すようにしてから持っていたガジェットを落とせば、自動で真下のスロットに差し込まれる。
『『Awakening』』
そして、
「変身。」
「変身♡」
ガジェットが装填されたスロットをベルトと水平に倒し、その場は閃光と暗闇に包まれる。
『『Mounting』』
先程の光線では傷一つつかなかった部屋の内装にヒビが入り、閃光と暗闇のぶつかり合いによって発生するエネルギーが旋風を巻き起こす。
『model lostsuwan』
閃光を切り裂いて現れたのは、白鳥のような純白の鎧に身を包み、黄金を散らした仮面ライダーアハト。そして、
『model lostcrow』
暗闇を纏うようにして現れたのは漆黒の衣に身を包み、禍々しい赤銅の紋様に飾られた鎧をまとう女騎士。鴉の羽のように真っ黒なコートが右半身から伸び、左のの上半身にはまるでそこにあるはずの物が抜け落ちているかのように黒く飾り気のないプロテクターで覆われている。
その名は、
「フフフッ。お姉様と戦うのは久しぶりですねぇ。楽しみです♪」
「仮面ライダーノイント」。漆黒の天使が、今ここに降臨した。
「排除します。」
アハトは澄んだ青い眼を光らせ、槍ーー「オメガグレイブ」を構えて戦闘態勢を取る。
「さあ……はじめましょう。」
真紅の眼を不気味に輝かせ、ノイントもまた、「アルファグレイブ」を右手に身体をス、と半身に構える。アハト、そしてその奥で逃げ出そうとしているエヒトを見据え、
ギイイイ!!
二本の槍が交差する。ぶつかりあった衝撃をそのまま速度に変換してノイントは片足でターンしながら回し蹴りを放つ。しかしアハトはそれを絶妙なタイミングで一歩引いて回避。すぐさま刺突を放つ。だがそれはアルファグレイブに打ち据えられてあえなく不発。
ノイントが攻撃を仕掛ければアハトはそのすべてを見切り、アハトが攻撃をすればノイントが上からねじ伏せる。
互角の攻防を続ける二人だったが、地面が凹むほどに力強い踏み込みから放たれた上段蹴りと、超高速の回し蹴りが二人の間で交差し、互いに衝撃で数mふっ飛ばされる。
「アハハハっ!!」
「……!」
ノイントは前方に跳躍するとともにアルファグレイブを突き出し、鋭い突きがアハトに襲いかかる。が、それはアハトの手で回転するオメガグレイブに弾かれ、逸れる。
しかし、
「ふっ!」
「っ!?」
ノイントは弾かれた穂先を地面に突き刺すとそこを起点に飛び上がり、一瞬の間にアハトの背後で逃げようとしているエヒトの目の前へと降り立った。
「なぁっ!?」
「逃がすわけ無いでしょう!」
驚愕の表情を浮かべて立ち止まるエヒト。だが、ノイントが横薙ぎにふるおうとした槍は、エヒトの身体を隠れ蓑のようにして飛来した純白の羽の弾丸に弾かれる。
「流石はお姉様!」
「シッ!」
槍を弾かれ、体制を崩したノイントの頭上から急襲をかけるアハト。しかしノイントは、体重と翼の羽ばたき、そして純白のエネルギーを込めたその一撃を、なんと右腕のみでキャッチするとそのまま地面に叩きつける。
カンッ……
そんな虚しい音が響く。そこにいるはずのアハトの姿がない。
「アハッ。」
ノイントの口から笑みが溢れる。後ろを向けば、そこには数十m離れた場所にエヒトをお姫様抱っこして立っているアハトの姿がある。触れることのできないエヒトの身体だが、自身の魔力を纏わせることで支えているらしい。
「あーあ。これじゃあ消すのは無理ですねぇ……。」
アハトの力を誰よりもよく知っているノイントは、今からあそこまで追いかけたところで姉には追いつくことができないことはよくわかっていた。
「白けましたねぇ……帰ります。」
久々に合った姉との戦いに燃え上がっていた心は急激に冷め、ノイントはため息をつくとくるりと背を向ける。
「な、何をしている!アハト!やつを殺せ!」
エヒトが自分を抱きかかえたままのアハトにそう言うが、アハトは遠のいていくノイントの背を注意深く見つめながら反論する。
「無理です。ここはまだノイントの射程です。今貴方様を下ろせばまた危険を晒すことになります。」
ノイントの力をよく知っているアハトは、今ここで妹を追いかけようとすれば主であるエヒトを危険に晒すことを良くわかっている。故に、スキだらけに見えるノイントの背を襲うことなどできなかった。
「ノイント……。貴方は……。」
喚くエヒトの声など耳に入らず、アハトは変わらぬ表情の奥に、小さな悲しみを宿した。
「あのときのようには……戻れないのですか……?」
ノイントの姿が消えるまで、アハトはその後ろ姿を呆然と眺めていた。
所変わって、ここはライセン峡谷。ハジメが目の前にあるとあるものを見てなんとも言えない表情を浮かべる
「ここが本当に……迷宮の入り口なのか……?」
そこにあるのは岩の壁。そして、
『おいでませ♪ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮♪』
と、丸っこい女の子っぽい文字。可愛らしい絵がそこに刻み込まれていた。
あれから四人は買い物やらなにやらを終わらせて一晩休み(何故かアレーティアは疲れた顔をしながら「漢女(オカマ)……」と呟いていた。)、そしてブルックからシアの案内の元オリジナル走らせてついに迷宮の入り口にたどり着いた……のだが、
「えぇ……?」
オルクスのように、ゲームのようないかにも迷宮らしい迷宮のほうが珍しいだろうとは思っていたが、だとしてもこれは流石に斜め上だ。
「私たちのときもそんな反応でしたねぇ……。」
しみじみ、といった感じで二人の反応を眺めるシア。彼女の反応も初見のときはこんな感じだったようだ。
「はぁ……。まあシアさんが嘘つくわけもないし……。それにミレディって名前は解放者か攻略者しか知らないはずだ。彫られたのもかなり前みたいだし、本物の迷宮なんだろう。よし、行くか。」
ハジメはなんとなく気の抜けた声でそう言うと、自分にピッタリと張り付いていたサヤを抱き上げ、シアに渡す。
「じゃあ、サヤの事お願いするよ。迷宮は本当にいいんだな?」
「元々二度と入る気はありませんよ……アハハハ。サヤちゃんの事は任せてくださいです!」
シアは迷宮の質問にすごーく嫌な顔を浮かべるも、サヤのことに関してはすぐにビシッと敬礼する。ところが、てっきり自分もハジメ達と一緒に行くものだと思っていたのか、サヤは驚いたようにシアの腕の中でジタバタと身体を暴れさせる。ついでとばかりに手に持っていた魔法の杖からポンポンと爆発を起こすがその程度で彼女の腕を振り払うことはできない。
「や!わたしも、いく!」
「サヤ?ここは危ないところだ。連れて行くわけには……。」
「いやっ!おとうさんと、いっしょがいい!」
「サヤ……。」
オルクスの迷宮を、サヤを連れて攻略したのはそうするほか手がなかったからだ。一緒についていてやりたいのは本音だが、サヤを危険な目に合わせては本末転倒だ。だからこそ、危険の塊である迷宮に一緒に連れて行くつもりはなかった。ライセン峡谷の魔物に関してはそもそも敵ですらないため危険だとは感じていない。
「サヤ?ここはな、危ないところなんだ。俺はお前に怪我なんてしてほしくないし、それに……。」
「いやぁ!!」
なんと行ってもイヤイヤとぐずるサヤ。ハジメはその頭を軽く撫でると、申し訳無さそうにシアへと視線を向ける。
「悪い……。頼んだ。」
「わかりました……。ごめんなさいですサヤちゃん。」
罪悪感にかられながらもハジメとアレーティアは迷宮へ。シアは嫌がるサヤをサイドカーに乗せるとシートベルトを締める。そしてフェアベルゲンにいたときにレクチャーしてもらったとおりにオリジナルを起動させ、走り去っていった。
「……いいの?」
ちらっと後ろを見てアレーティアが言う。ハジメは小さくため息をつくと「仕方ないさ。」と返して迷宮へと向き直った。
「じゃ、行くぞ。」
岩の壁に手をついたハジメの姿が、忽然と掻き消える。正確には忍者屋敷のどんでん返しのように岩の壁が反転しただけなのだが、アレーティアやハジメのような超人的動体視力がなければまさに魔法のように姿が消えたように見えていただろう。
アレーティアもまた岩の壁に手をついて中に入る。すると、岩の壁が完全に閉まる直前に入り込んできた光が奥にあるなにかに反射して見えた。
「……。」
アレーティアが奥から飛来したそれらを避け、最後の一つを掴み取るとまじまじとそれを眺める。
「殺意が高い……。」
その手の中にあるのは黒い金属の矢。ご丁寧に光が反射しづらいように加工がしてある。しかも飛んできた場所はすべて一瞬前まで急所があった場所だ。こんなものが急所に突き刺さったらひとたまりもないだろう。アレーティアは視線を感じて横を見ると、ハジメが矢に当たらないよう通路の隅によってその様子を眺めていた。アレーティアの視線気がつくと、顎をしゃくって反対側の壁を指す。
「………?」
反対側の壁を見ると、そこには先程の入り口と同じような感じの文字や絵が書いてある。
『ビビった? ねぇ、ビビっちゃた? チビってたりして。ニヤニヤ』
「………。」
『それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった? ……ぶふっ』
「イラッ。」
誰も怪我もしていないし死んでもいないしビビってすらいないが、だとしてもここまで言われると腹が立ってくる。もしかしてこの先トラップがあるたびにこういったメッセージを読む羽目になるのだろうか。
「……シアの気持ち、わかった気がする。」
アレーティアはシアが浮かべたイヤーな顔でのことを思い出す。そして先のことを想像し、早くもうんざりした顔でそう呟いた。
「次回、仮面ライダーオリジン。
こんにちは。私はアレーティア。
迷宮が過酷なことはわかっていたけど……まさかあんな方法でストレスを与えてくる迷宮だなんて……。とりあえず作った本人にあったら一発殴る。決定。さて、こんなところさっさと終わらせて………、って、なんであなたがここにっ!?
次回、『ドタバタライセン大迷宮』
生きて。最後まで。」