アレーティアのオリジナル魔法。ライセン峡谷の魔力が霧散してしまう環境においても十全に魔法を扱えるようにと編み出した。体から魔力を放出せずに体の中で魔力を練り上げることで魔力の霧散を防ぎ、体に循環させることで身体能力を底上げ。そして剣を振るう一瞬の間にそれを放つことで、魔力が散るよりも早く超高密度の魔力が刃となって放たれる。射程は短いが、その切断力は恐ろしく高い。
・バーニングブレイザー
オリジンの必殺技の一つ。「龍神剣無双」を装備しているときにのみ使用可能。スコーピオンネオとの戦いでは圧縮したエネルギーを刃に纏わせることで破壊力よりも切れ味を重視したものを使用しているが、巨大なエネルギー刃を作り出したり、遠距離に向けて斬撃を放つなど、応用も可能。
二人は薄暗い洞窟の中を進んでいた。
「ん?これもスイッチか。“錬成”っ……と。」
「ハジメ。ここも。」
ところどころにあるトラップのスイッチを錬成して作動しないようにしながら、と言う言葉が必要だが。
ここはライセン迷宮。迷宮に立ち入りはや数十分二人は順調に歩を進めていた。最初こそ腹がたった煽り文も今や見つけるたびに湯悦に浸ることができるほどに順調だ。なにせさっきから聞こえるように、トラップのスイッチとなりえるであろう箇所を見つけるたびにそれを錬成して機能しないようているからだ。コレはハジメがネオであるがゆえに持つ以上に高い洞察力と、アレーティアが壁の中の魔力の流れを監視しているからこそできる裏技みたいなものだが、できてしまうならやるいがいの選択肢はないだろう。さっきからちょくちょく見受けられる煽り文に煽られるより汚い手を使ったほうがよっぽどいい。主にアレーティアの精神のために。
さて。順調に迷宮を進む二人だが、不意にハジメが後ろを見る。
「風の流れが変わった……。」
ハジメの言葉にうなずくアレーティア。迷宮の中を進むたびに、空気の流れが微妙に変化し続けている。
「また道が変わったのかも。」
一度気になって引き返してみたのだが、驚くことにそこにあったのはつい先程通り過ぎた道ではなく、いくつにも分裂した分かれ道だったことに驚いたのは記憶に新しい。
もしかするとこの迷宮は二人のことを監視しており、通り過ぎるたびに自らの道筋を書き換えているのではないか。ハジメはそんな予想を立てながら、見つけたトラップのスイッチを錬成して作動しないようにしてからそこを通り過ぎようと、
カコン
「……俺は何も触ってないぞ?」
何かが作動するような嫌な音がどこからともなく聞こえてきた。ハジメの言い訳も虚しく、前方の曲がり角の更に奥からゴロゴロという音が響いてきた。
「……何が来る?」
重厚そうなその音はだんだんと近づいてくる。そして、目の前の曲がり角に現れたのは、
「鉄の、玉?」
そう。鉄の玉だ。なんの変哲もないハジメの身長の4倍はありそうな鉄の玉が曲がり角を曲がってこちらへと突っ込んでくるのだ。それを見た二人は、特に慌てることもなくむしろ「なーんだただの鉄の玉か。」と安心したような顔で互いに目を合わせる。
「どうする?」
「腹がたったから斬る。」
アレーティアはそう言うと、一歩前に出てマクロスのグリップに手をかけた。
「こっちは色々と神経使いながら進んでるのに……。」
体の中で魔力を練り上げ、それを全身へと巡らせる。
「使えなくしたトラップを無理やり使うなんて、ズルを……するなっ!」
抜刀。魔力を纏わせた刀身が深紅の軌跡を描きながら上から下へと振り上げられる。
「“魔刃斬”今度やったら迷宮ごと真っ二つにしてやる。」
鉄球は一瞬遅れて中央から真っ二つに切断され、二人の両脇を通り過ぎて奥へと転がっていった。
体の中で魔力を練ることでライセン特有の魔力が霧散する性質をなるだけ無効化し、それを抜刀する一瞬の間に刃に纏わせることで、魔力が霧散するよりも早く攻撃を放ったのである。魔力操作の高等技術をあっさりやってのけるあたりやはり彼女のちからは本物である。
「……おっかね。」
そんな彼女の戦闘能力と今の言葉に、ハジメは肩をすくめてぼそっとつぶやくとアレーティアの横へと並ぶ。そして、「おつかれさん」と言って肩を叩いた。
「さ、行くぞ。」
「ふう……。了解。」
「おー。」
…………。
「………あ?」
「………え?」
二人は、聞こえてはいけない声が自分たちの足元で聞こえるてきたことに数秒の間動きが止まった。二人の心は一つ。今「おー。」って言ったやつ誰だ?である。思いつくのは、一人しかいない。ギギギギッと油の切れたロボットのように二人は顔を見合わせ、そのまま視線を下に向ける。
「……うにゅ?」
「「。」」
なぜここにお前がいる。二人は心のなかでそう叫ぶ。そこに居たのは、灰色の髪に済んだ青色の瞳の少女。
「サヤ……!?」
ハジメが絞り出すような声で言う。そう。そこには、迷宮に入る前にシアとともにブルックへと送りり返したはずの少女が彼らの足元にキョトンとした顔で立っている。
二人の思考が完全に停止するのと同時に、二人の後ろから凄まじい音が響いてきた。具体的に言うとダッシュするときに立つ足音を限りなく大きくした感じの音だ。
ハッとした二人は、迷宮のトラップが作動したのかと、とりあえずサヤのことを背後に庇い戦闘態勢を取る。しかし、次の瞬間その目に飛び込んできたものに、二人は「あ、」という顔をして戦闘態勢を解いた。
なぜなら、
「サヤちゃん!?サヤちゃん!!!」
そこに居たのがよく見慣れた人物だったから。ウサミミを振り乱しながらこちらに駆け寄ってくるのは、サヤを預け、ブルックで待機しているはずのシアであった。
彼女はサヤのことを見つけると、叫びながらブワッと涙をにじませてサヤに抱きついた。
「よがっだでずぅ〜〜!!」
二人の間を超高速で駆け抜け、サヤに抱きつくシア。いまいち状況が把握できていない二人は、また顔を合わせて首を傾げるしかなかった。
「で、何があったんだ?」
ひとしきり騒いだシアが落ち着くのを待ち、ハジメはシアがここにいる理由を訪ねた。シアは「それが……」と切り出す。
「信じられないと思うんですが、あれから暫くブルックに向けて走ってたんですけど、サヤちゃんの様子を見ようと思ってサイドカーの方を見たら……。
誰も乗ってなかったんですぅ……。」
その言葉にピクリと眉を動かすハジメ。シアが続ける。
「それでぇ、まさかどこかで振り落としたんじゃないかと思って慌てて逆走して探したんですが、血の一滴どころか飛び降りたあとすら見当たらず……。最後ののぞみをかけてここまでやってきたんですう……。」
シアがちらっとハジメの方を見る。サヤのことを任されたにもかかわらず、その役目を果たすことができなかったことに負い目を感じて、怒られると思っているのだろう。しかし、
「……やっぱり……いや……でも……。」
「あれ?ハジメさん?ハジメさーん。」
顎に指を添え、ブツブツとつぶやきながら思考の海に浸るハジメはそのシアの様子を認識してしなかった。ぐるぐると回る思考。それと同時に押しては引いていく波。そのまま更に深い場所へと沈もうと……
「ハ、ジ、メ、さんッ!」
「うおっ。」
シアが耳元で名前を叫んだことで思考の海から飛び出すことになったハジメ。「また悪い癖が……」とぼやきながら頭を掻く。そこへ、
「ねえ。」
唐突にアレーティアが口を開いた。その目は真剣そのもので、まっすぐハジメのことを見つめている。
「どう考えても今の話はおかしい。結果はここにあるけど、その過程の説明ができない。ハジメ、なにか心当たりがあるんでしょ?」
アレーティアの言葉に、ハジメは目を逸らす。
「いや……あるにはあるが、まだ確証がない。変なことを言って混乱させたくない。」
だから待っていてくれ。と言いながらアレーティアの方を再度見るハジメ。アレーティアは呆れたような軽いため息をつくと、ハジメの胸を小突いて先へと進んでいってしまった。
「シアさんは、どうする?」
その姿を見て、「敵わないな。」と苦笑しながらシアへと尋ねるハジメ。シアはハッとした表情になり、腕を組んで「むむむ……。」と考えを巡らす。サヤのことで頭が一杯で、過去にここでできた嫌な思い出のことはすっかり忘れていたらしい。
そうして暫くすると、シアはすべてを諦めたような顔で深く深ーくため息をついた。
「どうせ引き返したところで外に出しては貰えないでしょうし……。私も行きますう……。サヤちゃんのこともしっかり守らせていただくですぅ!」
シアが全身で、特に耳をを立てたり萎びさせたりで感情を表すその様子を見て、「忙しいやつだな。」と心で呟くと、ハジメは自分の後ろに立っていたサヤを抱き上げ、自分の前に立たせる。
「?」
「シアさんに迷惑かけたんだ。言うことがあるだろ?」
サヤにむけそう言うハジメ。暫く考え込むようにぽーっとしていたサヤは、ハジメの言う、言うべきことを導き出して、潤んだ目でシアのことを見上げる。
「シアおねえちゃん。ごめんなさい。」
「はうっ?!い、いえそんな!気にしてないですよぉ!そんなことよりもサヤちゃんが無事で良かったですぅ。」
悲しそうな顔をして謝ってくるサヤを見て、慌てて屈んで頭を撫でるシア。彼女が自分のことを許してくれたことがわかると、今度はサヤは表情を明るくさせて言う。
「ありがと!」
「グハッ」
その言葉を聞いたシアはよろよろと後ずさると、屈み込んで顔を覆う。
「か、かわいい……!」
悶絶するシアの姿を見て、ハジメとサヤは顔を見合わせて首を傾げていた。
復活したシアを入れた三人は、先に行ってしまったアレーティアに合流するべく足をせっせと動かす。しばらく進むと、目を閉じ、壁に背をを預けて休んでいるアレーティアの姿が見えた。
「……ん。3人とも遅い。」
三人が来たことに気がつくと、アレーティアは目を開けて背を壁から離す。そして片方の手で通路の先を指差すと、もう片方の手を腰に当て、踏ん反り返るようにして言う。
「あらかた調べておいた。ハジメ。や〜っておしまい。」
「了解。」
ふんす。と反りくり返りながら通路を指差すアレーティア。ハジメは指示された通りにトラップのスイッチの溶接を行う。流石にここまで来ると手慣れたもので、初めの頃に比べると随分サクサクと作業を進めていく。
「……お。」
角を曲がると、そこに見えるのは今までのゴツゴツの岩でできた通路ではなく、丸いドームのような美しい建造物。
……なのだが、
「嫌な予感しかしないな。」
ハジメがボソッとつぶやく。両側の壁に鎮座する無数のやけにゴツい騎士甲冑を見てしまってはその景色を眺める気にすらならない。今までこの迷宮を攻略してきた経験からして、おそらくは……。
カコン
と、そこまで考えたところで、もう当たり前のように誰も動いていないにもかかわらず聞き覚えのあるいやーな音が響いた。
「もうトラップでもなんでもない……。」
呆れたように言うアレーティア。四方八方でガチャガチャと音を立てて起動する騎士甲冑を眺めながらハジメは小さくため息をつく。
「しょうがない。やるぞ。」
ハジメはオリジンから無双を受け取りアレーティアはマクロスを引き抜く。シアはサヤのことをおぶって二人の邪魔にならないように逃げ回る役目を任されている。ハジメとアレーティアでシアをはさみ、それぞれ戦闘態勢を取る。
「来る。」
なんの前触れもなしに、突然突っ込んでくる甲冑。ハジメはそれを股から頭にかけて両断すると、
「フンッ」
続け様に横から飛んできた甲冑を蹴り飛ばし、しゃがんだシアの頭の上で反対側から飛んできた甲冑にぶつける。が、
「……あ?」
地面に落ちた甲冑がまるで迷宮に吸い込まれるかのように消えていく。それを見たハジメの頭にイヤーな予感が走った。壁の方を向くと、案の定というか、今倒したのと同量の甲冑が壁の中からヌッと姿を表す。
「マジか。」
取り敢えず襲いかかってくるそれらを蹴散らしながら後ろを向くと、やはりアレーティアが甲冑を倒すたびに残骸が消えては壁から新たに甲冑が現れるという無限ループになっていた。
ハジメは数秒の間思考を巡らし、
「よし。」
一つの予測に行き着いた。
ハジメは手始めに、シアを狙って襲いかかってきた甲冑を心なしか殺意を込めて踵落としで地面に鎮めるとそれに手を当てて一言。
「……錬成。」
と呟く。すると、なんということでしょう。あの甲冑が、ただの金属の塊に成り果てたではありませんか。しかも金属塊になってしまうと迷宮が甲冑のことを認識できなくなってしまうのか、その姿が消えてなくなることはありません。甲冑の再生能力を無効化したのです
「よし。これでちゃちゃっと……ッ」
ピクッと何かに気がついたようにハジメの動きが止まる。だがすぐに動き出し、足りなくなった魔力を自分のエネルギーで補充しながら錬成を行い、迫ってくる甲冑を片っ端から鉄塊へと変身させていく。もちろん回収も忘れない。
そんなこんなで10ほどの甲冑を鉄塊へと変身させる頃には、生き残りの甲冑は警戒したのか襲いかかってくることはなくなり、かと言って離れていくわけでもなく一定の距離を保って付かず離れずでハジメ達の様子をうかがってくるようになった。そしてその奥には一本の道がある。
「これは、どういうふうに考えればいいんだろう……?」
ここのトラップは終わったと考えていいのか、それとも新たなトラップが手動で発動されるのが。アレーティアは測りかねるようにうむむむ、と唸る。すると、
「あ。」
おぶっていたサヤを下ろしたシアが、何か思い出したらしくパンッと手を叩いた
「ここ見たことありますよ!この先が最後の試練ですぅ。」
「シアさん。それは本当か?」
「はい!あ、でも……前来たときは大きな扉があったような……?」
「ん。この迷宮は性格が悪い。通り過ぎるたびに地形が変わる。以前のゴールが今のゴールだとは限らないし、そうなっているとも限らない。」
あーだこーだとしばしの問答の末、ハジメたちは後ろに甲冑を引き連れてその通路を進むことにした。ガチャガチャと騒がしい上に怪しさマックスだが、まあ何もしてこないならそれでいい。騒がしいが。しばらく歩くと、突然床が抜けたような、巨大な穴が空いた空間があたり一面に広がっている。
「ほー。あれが重力魔法か。」
ハジメはその空間にポツポツと浮かんでいる立方体のブロックを見つけてそうつぶやく。おそらく足場に使え、ということだろうが、どうなも信用ならない。多分飛び乗ろうとすると逃げていく気がする。
「そういうときは……」
ハジメは宝物庫からとあるものを取り出して二人に渡す。
「これは?」
シアの問に、ハジメも同じものをもう一つ手に構えて説明する。
「ワイヤーガンだ。トリガーを引けばこの突起からワイヤーか射出される。先端の爪が引っかかったら後ろのツマミを引け。ワイヤーが巻き取られて、移動ができる。」
ハジメは手始めに一番近くにあったブロックをめがけてワイヤーガンを放つ。
バシュッという音とともにワイヤーが射出され、爪が引っかかる。ツマミを引くと、ワイヤーが巻き取られてハジメの体はブロックへ引き寄せられる。案の定ブロックが移動を始めるが、既にワイヤーで繋がったハジメを引き剥がすことはできず、きれいに着地を決める。
ハジメが後ろの三人にサムズアップをすると、アレーティアとシアも続いてそれぞれブロックに飛び移っていく。甲冑集団は、
4人のその様子を見てポカーンと突っ立っていた。実に愉快な光景である。
甲冑が再起動したときには四人とも穴を渡りきり、目の前に見える扉へと歩を進めている頃だった。
「あ、この扉ですね。前に見たの。」
「ならこの先が最後の試練か?」
警戒しながらも扉をこじ開けるハジメ。中に見えるのはオルクスの最下層でも見たような荘厳な空間。相違点を上げるとすれば、石の柱はなく、代わりに先程の穴の中でも見たブロックが、あたりを飛び回っていることだろうか。そして、何より眼を引くのはその空間のちょうど中央あたりに浮かぶブロックに座り、くつろいでいる一体の人型だ。
その人型は、四人の存在に気がつくとブロックから飛び降り、目の前に着地する。よく見てみると、2メートルほどの身長を持つその姿は、二本の足で地面を歩く人型ではあるものの、まるで鎧とニンゲンが融合したかのような、とてもではないがヒトと呼べるようなものではなかった。どちらかというと、ネオやアハトに近いものを感じる。
『……』
「「「「………」」」」
四人と一体は互いに無言で睨み合う。ハジメ達は急に襲いかかってきてもいいように戦闘態勢となり、人型の動きを観察する。
『……』
「「「「………」」」」
延々と続く膠着した状態にしびれを切らしたのか、こちらへと一歩踏み出す人型。ハジメ達は一歩下がり、それぞれ得物を構えた。
『……あのさぁ。せっかくミレディちゃん直々に出迎えてあげたのにさ、何なのそれ。』
「……あ?」
顔面を覆っているバイザー。そこから露出したが口が流暢に動き、随分とテンションが高い女性の声が聞こえた。ハジメ達がポカンとしていると、ミレディと名乗った人型は調子よく喋り始める。
「え?なに?どうしたの?もしかしてこの解放者のリーダー、ウルトラスーパーミレディちゃんのスペシャルボディに見とれちゃった?きゃー!照れちゃうな〜!」
イヤンイヤンとくねくねしながらそんなコトを言うミレディ。ハジメたちはその様子を見て、今まで感じた驚きと警戒心は霧散し、代わりと言ってはなんだがこう思った。
(うざい。)
「次回、仮面ライダーオリジン
よっ。ハジメだ。
随分と癖の強いやつが出てきたな。そして何よりもウザい。こんなのが解放者のリーダーとは世も末だな。ハァ。……まあなにはともあれ最後の試練だ。油断せずに挑むとしますか。重力魔法は必ず手に入れる……。それに、色々と聞きたいこともあるしな。
次回、『VS解放者のリーダー(ウザい)』
生きろ。最後まで。」