魔刃斬の派生技であり、現在、アレーティアの最高火力技となっている。効果は作中通り。
・この手
前回、ミレディが使用した技であり奥の手。最後の試練の部屋にいるからこそできる芸当であり、部屋の中央に超重力の魔力球を生み出して部屋の内装に使用しているアダマンチウム鉱石をはじめとした岩石もろとも相手を巻き込み拘束する。シンプルかつ強力な技。一応これを使わせられればライセン大迷宮は合格ラインらしい。
「ふっふっふ。張り切りすぎちゃったかな。まさかこの手を使わされることになるなんてねぇ……。このあとの修繕大変なんだぞ。」
ボロボロになった内装を一瞥してから、ヒビの入ったバイザーの奥で部屋の中央に転がっている岩の塊を見つめるミレディ。
今の技は、壁や床に使われているトータスにおいて最高硬度を誇る金属、アダマンチウム鉱石をまとめて引っ剥がし、敵を巻き込んで一点に集めて圧縮させるというこの部屋にいるからこそ使える裏ワザのようなものだ。超重力で圧縮してしまう関係上この技に巻き込まれればほとんどのものが重力と岩の塊に押しつぶされ、死なずとももはや動くことはできないだろう。
「やっぱり若さかな?ツメが甘い甘い!」
なっはっはっ!と勝ち誇ったように笑うミレディ。過去にこの技を見せた仲間がドン引きしながら太鼓判を押した技だ。仕留めきれないわけがない。
そんな笑い声を、
アレーティアは鼻で笑った。
「ふっ。ツメが甘いのはどっちかな。」
「まあ確かに危なかったな。本気で殺しにかかってきてだろ。あれ。」
ハジメは安堵したように仮面の奥で息を漏らし、岩の塊に背を預ける。岩に押しつぶされそうになったあの瞬間、アレーティアは咄嗟に球型の障壁を張っていた。もちろん超重量で迫ってくる岩に耐えうる障壁を作るためには大量の魔力が必要になるが、ハジメが自身の生命エネルギーを魔力に変換して分け与えることで、魔力をなんとか維持しつつ障壁を貼り続けることに成功したのである。
今この岩の塊は二重構造になっており、ハジメたちはその中間にできた空気の層にて生存していた。もちろんそのままだと圧縮された空気に押しつぶされてしまうので、錬成で見つからないように空気穴をいくつか開けてある。ミレディの笑い声はその穴を伝わって聞こえてきているわけだ。
「しっかし…どうしたもんか。」
コンコンと壁を叩くオリジン。全身装甲の戦士が壁をノックしているその姿はなんともシュールで笑いを誘う。
「音からしてブロックやら甲冑やらは再生している。あの一撃を防がれたんだ。このまま戦い続けてもジリ貧だろう。」
ハジメの言うことは最もだ。不意打ちであの結果なのだから真っ向からやり合ってもなかなか勝敗はつかないだろう。むしろ持久戦に持ち込まれれば、自分のテリトリーで戦っているミレディのほうが有利だし、どちらにせよ不利なのはこちらだ。
「やつの裏をかく必要がある。」
アレーティアの言葉にオリジンは首を立てに振り、肯定の意を示す。
「その顔……何か策があるのか?」
ビシッ!
「へ?」
岩の表面にひびが入る。ミレディはそれを見てひょうきんな声を出しながら背筋に冷や汗が伝ったのを感じた。
「ウッソぉ……。」
『Burning thrust』
「ハアアアアッッ!!」
蒼炎の龍が星を破壊し、ミレディに向かって飛び出した。炎の牙を敵に向け、流星の如く空を駆ける。
「まさか無事だなんてねぇっ!!」
なんとか身をよじって直撃を免れたミレディ。炎の龍はアダマンチウムのコーティングが剥がれ落ちた壁面を安安と食い破り、あたりを灼熱に染め上げながら地中へと消えていった。
土煙が立ち込めるなか、オリジンがそれを振り払ってミレディへと突貫する。
「フゥゥ……ッデリャァ!」
「よっ……とぉ!?」
オリジンが引き絞った右拳を突き出しミレディがそれをいなす。しかしいなされた勢いを利用して回転したオリジンの回し蹴りが脇腹めがけて放たれ、それをミレディは若干高度を下げつつ肘内で打ち返した。
ガンッ!
ミレディは重力を駆使し、オリジンは翼をはためかせ、衝突と離脱を繰り返す。
「シッ!」
「ハアッ!」
拳を拳で弾き、脚を脚で迎え撃ち、剣と斧とがぶつかり合う。時折ミレディはブロックや甲冑の波状攻撃やフェイントなどを放つがその悉くをオリジンが放つ攻撃の余波が吹き飛ばす。
「「ラァッ!デアッ!ダダダダダッ!」」
そんな中、ミレディは時折自分の体を掠っていく攻撃に内心冷や汗をかき、尚且頭はこれ以上にない速度で回転させて打開策を模索していた。
(危なっ!……っと、いま考えられる最善策としては、強力な技を出すと見せかけブロックを連射わアッ!?……バランスを崩したところで私の体重を耐えられるギリギリまで増加させてこいつを地面に叩きつける。私もダメージを食らう諸刃の剣だけど、体格と重量が高い私のほうが有利だ。)……と、ヤツが考えていることはわかっている。だから、敢えて術中にハマったふりをして……。)
「「ハアッ!!」」
オリジンとミレディはすれ違いざまに武器による斬撃を放ちつつ距離を取り、膠着状態だった戦況を一度リセットする。
「よおおし、いっくぞおお!」
「ッ」
と、ミレディはハルバードを腰だめにし、ぐっと握りしめて構える。対するオリジンは無双を投げ捨て、ベルトのボタンへと手をのばす。
『Charge u……』
ドゴゴッ!
オリジンの背にブロックが直撃。衝撃で羽ばたくことを止めてしまったオリジンの体はそのまま落下を始める。
「逃がすかああ!!」
ようやく訪れた千載一遇のチャンスを逃すまいとオリジンに飛びかかるミレディ。自分の耐えうる最高出力で重力魔法をかけ、猛スピードでオリジンに迫っていく。地面に激突するほんの数秒。その半分もかからず得物に追いついたミレディは逃すまいと手を伸ばしーー、
(届い……)
「……甘いな。」
「んなっ?!」
突如オリジンの全身から吹き出した蒼い炎にその手を阻まれる。更に、至近距離で超高温の炎に当てられたせいで一瞬目が視覚が遮断される。
「マズ……!」
慌ててオリジンがいた方へブロックと甲冑を重ねて盾を作り、防御姿勢へと移るミレディ。
だが、
ミレディは忘れていた。
「チャージ完了。“魔刃斬”」
この試練の挑戦者が、
「必殺必中!“紅郡姫縷《グングニル》”ァアッッ!!」
一人はないことを。
キイイィィイイイッッ!!
「ギッ……ァガっ……?!」
ミレディの背中から胸にかけて、一筋の真紅の閃光が魔力のスパークを撒き散らしながら貫く。防御魔法を何十にも施した装甲をいともたやすく貫いたそれは、もとに戻った重力に伴って落下しようとするミレディの体を熱したナイフでバターをすくい取るよりもたやすく両断した。
「ほー……。ありゃ喰らいたくはないな。」
離脱したハジメはその景色を遠巻きに眺めながら独りごちる。その頭には、先程アレーティアと交わした言葉が蘇っていた。
『今、あれの注意はハジメにほぼ100%向いている。私の捕縛が上手く行ったのも私にほとんど意識を割いていなかったから。たしかに私はハジメより弱い。でも、だからこそそのスキを突くことができる。』
そして説明された作戦というのは、ハジメがとにかく全力の派手に戦い、ミレディの注意を引く。そしてその間に、アレーティアが魔法の準備をする、というまあ作戦と呼べるギリギリのものだった。結果オーライではあるが。
『多分、さっきのを防がれたところから見て真っ向から戦っても勝てない。勝てたとしてもギリギリの戦いになると思う。そうなれば、サヤを悲しませることになる。』
『勝算は?』
ハジメの言葉に、アレーティアは悪い笑みを浮かべながら頷いた。
『フッ。なければこんな話しない。』
で、その作戦の結果が目の前に見える景色なわけだ。
「魔刃斬の要領で練り上げた魔力をマクロスに溜め込むことで圧縮。切っ先から前方に向け指向性を持たせて放つことで、突貫力にステータスを全振りしたような超高密度の魔力の刃を作り出したわけか。未完成と言っていたが……凄まじいな。」
そう。あの技どうやら未完成らしいのだ(本人談)。魔力のチャージに時間はかかるし、まだ圧縮の練度が足りない故に集中力の大半をその工程に割く必要がある上放てば魔力は少しずつ霧散し、遠方にいる敵には効果が薄い……らしい。
「俺が言えた立場じゃないが……たいがい人間やめてるな。ありゃ。」
クラスメートたちにあの技を見せたら大半が戦意喪失するのではなかろうか。ハジメはそんなことを思いながら、落下してくるミレディの体を眺めていた。
「………」
肉体のあちこちから鋼鉄の骨格をのぞかせながら地べたに転がり沈黙するミレディ。あちこち崩壊した肉体は再生する素振りも見せないままどす黒いどろどろしたナニカを吹き出し続けている。
「おい。」
変身を解いたハジメはミレディへと歩み寄り、割れたバイザーから顔を覗いた。必殺の一撃を2度も食らったせいで口や鼻から夥しい量の血が流れ落ちているが、その顔立ちは十分美しいと言えるだろう。だが、今の状況でそんなものは後だ。ハジメは鎧の胸ぐらを掴むと体を持ち上げる。
「いい加減その下手くそな芝居をやめろ。でないと顔面から地面に叩きつけるぞ。再生するだけのエネルギーも残っていないようだしな。」
「ちょちょちょ、声のトーンがマジで笑えないって。起きたからやめて。」
パチリと目を開けたミレディを見て胸ぐらを離すハジメ。ミレディは尻餅をつきかけるが瞬時に重力を操りしりもちをつくギリギリで自分の体を持ち上げた。
「うお……い!?危ないね!もう!」
「随分余裕そう。もう一発叩き込んでほしい?」
「いえ結構です。」
ハジメの後ろでマクロスを構える真顔のアレーティアに顔を引きつらせて即答するミレディ。そんな彼女に盛大なため息をつくと、ハジメはジロっとミレディの方を一瞥し、言う。
「さ、色々話してもらうぞ。生きた証言は貴重だ。」
「え“、まって。ミレディちゃんもう息絶えそうなんだけど。」
「バカを言え。お前の本体はあの先だろう。」
ハジメはそう言いながらシアたちが進んでいった方を親指で指す。ミレディは狐に鼻でも摘まれたような表情で口を開く。
「あり?バレちゃった?」
「この迷宮のラスボスはお前自身。そして攻略の最後の条件はお前を倒すことだが、シアさんが攻略したにもかかわらずお前は生きていた。」
「何よりこの迷宮の制御をしているのはお前だろう。お前がいなくなればこの迷宮の機能は停止する。詰まり神代魔法の継承もできなくなってしまう。一度しか攻略できないとなると、カタカナ3文字に対抗するための人間を求めているお前たちの考えに矛盾が生じる。一組しかその力を継承できないとなれば戦力もそれに応じて減る。それはお前たちも避けたいんじゃあないか?せっかくの人材を犬死にさせる理由はないからな。」
「んー。まあ、たしかにそうではある。」
「煮えきらないな。」
ミレディの様子に怪訝な顔で首を捻るハジメ。そこでミレディが補足を加える。
「いやー。ホントはどっちか死ぬまで、みたいになるまでやるつもりはなかったんだけど……ちょっち調子に乗りすぎちゃってさぁ。」
ミレディとしては、先程岩に閉じ込められたあの時点で二人は合格基準に至っしていたらしい。しかし、なら何故あのまま戦闘を続けたのか。ハジメが首をひねると、ミレディはバツが悪そうに目をそらした。
「その、さ。ちょっと楽しかったんだよね。うさちゃんもあそこまでじゃァ無かったし、久しぶりに全力でぶつかり会えて、止まらなくなっちゃった。」
あははは……。と力なく笑う彼女にハジメは少し考えたあと口を開いた。
「……そうか。俺には戦って楽しい、という感覚はよくわからないが、そう思ってくれたなら良かった。」
あとは本体に話をきけばいいか。
そう言って先に進もうとするハジメたちを、ハッとしたミレディが慌てた様子で引き止める。
「ちょ、ちょい待って。」
「ん?どうかしたのか?」
「?」
ハジメが振り返ると、ズリズリと芋虫みたく地面を這うミレディの姿が見えた。彼女は二人に近づくと、申し訳無さそうな顔で言った。
「実はさ、今の戦いの余波でこの部屋の機能が8割停止しててさ。この体、修復もしなきゃだし、向こうの部屋まで運んでくれないかな?!お願い!」
足元でモゾモゾ動きながらそう懇願するミレディを前に、ハジメとアレーティアの二人は顔を見合わせる。今までの戦いは何だったのだろうか。もう一度ミレディに視線を向けると、何とも絞まらないその光景に二人揃って大きなため息をついたのだった。
「次回。仮面ライダーオリジン
よぉ。大輔だ。これで神代魔法は2つ目か。まだ先は長いが、着実に先に進んでる見てぇだな。とっとと先に進んで新しい魔法を手に入れるのか?次の目的地は……商業都市……?
次回『花には団子。旅路には語らい』
生きろよ。最後まで」