仮面ライダーオリジン   作:御剣龍也

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よっしゃ投稿するぞー、と思って仕上げしてたらデータが全部吹っ飛んでてまた書き直してました。ちょっと雑ですが大目に見ていただけると幸いです。ではお楽しみください


実力の差は行か程に

 「これがこうで……ここが……こうだから……。」

 

時は早朝。ここは王城の図書館。右も左も本だらけのこの空間に一人、ハジメは机に向かい、唸りながら本を睨みつけていた。

 

ステータスプレートの騒ぎから一週間ほどが立ち、見事に生産部門への第一参加者になったハジメは、その活動もほどほどにして情報収集に奔走していた。図書館にこもっているのもそのためだ。インターネットなどの便利なシステムがない以上、図書館ほど歴史的な情報が集まる場所はそうそうないだろう、という考えのもとほぼ缶詰状態で情報を漁っている。のだが……、

 

 「う〜〜ん……。」

 

見ての通り状況は全く進展していなかった。と言うのも、

 

 「エヒトエヒトって、エヒト信じすぎだろ。大丈夫かこの世界。」

 

今のハジメの言葉の通り、この一週間で読み漁った、どの分野のどの時代のどの文献を読んでも、「エヒト様のお導き」だの、「エヒト様のために」だの、「エヒト大明神」だのと、重要な部分で必ずこの「エヒト」の3文字が出てきては欲かった情報をすべて白紙の状態に戻していくのである。お前は性能のいい消しゴムか。このエヒトとかいう迷惑神本人が目の前にいたら、迷わずグーパンを食らわせたくなるほどにこの一週間でハジメのフラストレーションは溜まりまくっていた。

 

 「あーあ。辞めよ。」

 

このエから始まるカタカナ3文字により、完全にやる気を削がれたハジメは、読んでいた本をポイッと放り投げた。その本はきれいなアーチを描き、本棚にぶつかることはなくスポッと前方の本棚に収まる。その衝撃で周りの本がピクリともずれることはない。絶妙な力加減と凄まじい記憶力により繰り出された神業だが、はっきり言って技術の無駄遣いだ。

 

ため息を付きながらハジメは座っていた席を立ち、出口へと進んでいく。出口に差し掛かったあたりでふとハジメは立ち止まった。

 

 「父さんと母さんが見たら……喜ぶのかな。」

 

辺りの本を夢中になって片っ端から読み散らかしていく両親の姿を思い浮かべ、ハジメは少し寂しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 それから数分で修練場についたハジメは、時間も早かったので軽く準備運動をすることにした。入念に体の筋や筋肉をほぐし、それからランニング。最後に、最近磨きがかかってきた錬成により地面の鉱物から一本のロングソードを作り出し、素振りを始めた。

 

 「シッ!フッ!」

 

短く気合をかけながら、剣はビュオッ!ビュオッ!と言う風切り音を立てながら縦横無尽に振るわれる。型など存在しない荒々しい剣はしかし、洗礼された太刀筋でブレることなく次々と斬撃を繰り出していく。いや、斬撃だけではない。時折小さな破裂音と共に繰り出される足技も素晴らしいものだった。

 

 

 

 『お疲れ様。ハジメ。』

 「?!」

 

不意に後ろからそんな声が聞こえた。ハジメはバランスを崩しつつもその声が聞こえてきたほうを見る。

 

そこには……

 

 「……って、そんなわけ無いか。」

 

もちろん誰もいなかった。ハジメは手で顔を抑える。

 

 「疲れてるのかな。」

 

不意にハジメの胸にネックレスのように首から下げている小瓶が、キラリと光る。ハジメがそれに気がつくことはなかった。

 

 気を取り直して、そろそろフィニッシュを決めるか。そう考え始めたときだった。ハジメは自分に近寄ってくるいくつかの気配を感じた。

 

 「よぉ、南雲。なにしてんの?無能が剣降ってどうなるんだよ。無能は無能らしく地ベタに這いつくばってろ。」

 「ちょっ、檜山言い過ぎ!いくら本当だからってさ~、ギャハハハ!」 

 「ロクに訓練もせずに毎日図書館に通うとか小学生かよ!マジ笑えるわ~、ヒヒヒ。」

 「あ、そうだ南雲。お前なんかもう哀れだから俺らで稽古つけてやるよ。」

 「それいいな!俺たちやっさしー!」

 

 (異世界に来てまで飽きないのかな。)

 「はあ。」

 

其処に居たのは檜山が率いる小悪党四人組だった。ハジメはギリギリで振るおうとしていた剣を止める。危ない。もう少しで四人の体を真っ二つにぶった切ってしまうところだった。ちょっかいを掛けてきた彼らは、そんなことに気が付きもせずに勝手に話をすすめるていく。ハジメは注意する気も失せて小さくため息をついた。

 

 (いや、まてよ。ちょうどいいかもしれない。)

 

追い払おうかと思ったハジメだったが、ふと全くと言っていいほど上昇しないステータスプレートの数値を思い出した。最初は一律5だった数値は、今ようやく10.つまりようやくこの世界の平均値へとたどり着いたわけなのだが、全くと行っていいほどその恩恵を感じないのだ。本当になにか変わったのか。ハジメは詐欺にでも引っかかったような気分になっていた。確かめようにも相手はおらず、はてどうしたものかと思っていたのだ。そこへまさにちょうどいい被験体たちがやってきたのだからこれを利用しない手はないだろう。

 

周囲に目をやると、全員目をそらしたりして止めようとする気配はない。なら断る理由もなかった。

 

 「いいよ受けて上げる。あ、一応稽古をつけてもらう側なわけだから、お願いします、かな?」

 

ピキリ。四人の額に青筋が立ったのをハジメは愉快そうに笑って見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10分後。

 

 「ぜー……、ハー……!」

 「ゲホゲホッ!ヒュー……。」

 「ハヒー!ハヒー!」

 「……」

 

最初の威勢はどこへやら。息も絶え絶えといった感じの檜山たち小悪党集団は、無様に地面を這いつくばっていた。それに対してハジメはというと、

 

 「あのさ。真面目にやってくれない?」

 

どこか呆れたような表情を浮かべ、涼しい顔をしている。何なら軽くストレッチをする余裕すらある。

 

あれから程なくして始まった4対1の稽古と言う名のイジメ。人目につかない建物の影に連れ込み、一斉に剣やら槍やら魔法やらでハジメを袋叩きにしようと目論んだ檜山たちだったのだが、その目論見は簡単に敗れ去った。一向に彼らの攻撃はハジメに当たることはなく、むしろ魔法の使い過ぎで魔力は枯れ、無駄の多い太刀筋で必要以上に体力を消耗し、結果リンチする側の4人が地面に倒れ、リンチされるはずだったハジメはピンピンしているというシュールな光景が出来上がっていたのだ。

 

 「な、舐めてんじゃ……ねえぞ……。」

 「おー。威勢いいね。」

 

檜山がなんとか立ち上がろうとする姿を見たハジメは、関心はするもののそれそれほど興味が湧いた様子もない。もうステータスによる強さの補正や魔法の威力など、大体知りたかったことは理解できた。無論誤差などはあるのだろうが、大まかな部分が分かればそれでいい。むしろ今後からまれないようにするにはどうすればいいのか、ということを考えることにしたハジメ。もう絡まれるメリットなどどこにも存在しないのだから当たり前だ。

 

 「あぁ、その前に……」

 

しかしハジメはふと思考を止め、思い出したように顔だけ後ろを向けると、建物の影になっているところに向かって言った。

 

 「……いい加減出てきたら?」

 

その言葉に、建物の影から一つの人影が姿を表した。その人影はカツカツと足音を立てながら近づいてくる。それを見て、ハジメは皮肉るように言った。

 

 「なかなかのヒーローショーだったろう?天之河君。」

 「ああ。朝から面白いものを見せてもらったよ。」

 

人影ーー光輝は、ハジメから2メートルほど離れた場所で立ち止まると、ハジメのその言葉にクツクツと笑った。ハジメが少し拗ねたように言う。

 

 「助けてくれても良かったんじゃない?」

 「冗談言うな。あれでどう助けろって言うんだ?」

 

確かに。もっともな言い分にハジメは少し考える。

 

 「うーん……勇者の不思議なパゥワーとかで?」

 「ははっ。そんなもの俺にはないさ。」

 

ハジメが言ったわざとらしい「勇者」という言葉に少し眉をひそめながら、自虐気味に笑う光輝。その顔には苛立ちと焦りが見える。

 

 「そんな便利な力があるなら、全員生産部門に押し込んでるところだ。」

 

光輝が焦る理由。それは生産部門の参加者が異常に少ないことにある。具体的に参加者の数は、ハジメと清水という男子生徒の二人しかいない。というのも、訓練初日に判明したハジメのステータス。あれのせいで「生産部門に入るのは弱いことへの言い訳」「みんなが戦うのに後ろでコソコソするなんて卑怯だ」などなどの風潮が広がり、さらにクラスメイト達にもはや心酔レベルで支持されている光輝が戦いに参加することを表明していたために、ほぼ全員が戦いに参加することをを希望してしまっているのだ。はあっ、と短くため息をつく光輝。全く思い通りに進まない現状に疲れているのだろう。

 

 二人は未だに地面とキスし続けている四人組を半ばいないものとして認識し、話を続けることにした。

 

 「で、なにかよう?わざわざつけてくるなんて。」

 「あ、そうだ。南雲。君に頼みがあるんだが。」

 「頼み?」

 

ハジメが聞き返すと、光輝は頷く。

 

 「ああ。南雲、俺と……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ではルールを確認する!」

 

メルドが声を張り上げる。その眼前には、何事かと集まってきたクラスメイト達に囲まれた、訓練用の軽鎧を身に纏い、刃の潰されたロングソードを一本ずつ持ったハジメと光輝が向かい合って立っている。

 

あの後光輝から言われた頼みごとというのは、自分と一対一で戦ってほしい、というものだった。見せ物のようですあまり気乗りしないハジメだったが、どうしても、と頼み倒され、仕方なくその決闘まがいを受けることにしたのだ。

 

メルドがさらに声を張り上げて言う。

 

 「ルールは簡単だ。俺が戦闘不能だと判断するか、どちらかが降参した場合相手の勝ちとなる。さらに魔法は使用禁止、でいいな。」

 

 「じゃあ始めようか」

 「ああ。頼む。」

 

光輝はぐっと腰を落とし、剣を両手で中段辺りに構える。対してハジメは右手だけで剣を持ち、軽く半身になる。互いに深呼吸し、睨み合う。準備は整った。それを察したメルドが大きく腕を振り上げ、

 

 「始めっ!」

 

勢いよく振り下ろした。

 

 

 

 「……」

 「……ッ」

 

沈黙。ピリピリと皮膚に刺さる気迫のぶつかり合い。いつも騒々しいクラスメイトたちでさえその緊張感に何も言葉を発することができない。拮抗しているようにも見える勝負だが、それは光輝のほうが少し劣勢にあった。剣を打ち合ったわけでもないのに、その額には一筋の汗が流れ落ちている。

 

 「フッ…!」

 「ッ……デァッ!」

 

緊張が最高潮に届くか届かないかのところで、不意にハジメがその場から、光輝のいる方向に飛び出した。予期せぬハジメの動きに一瞬遅れ、光輝はその場で踏み込むと右側から迫ってきた剣をなんとか受け止めた。

 

ズンッ……!

 

 (重い……!?)

 

その瞬間光輝の腕に凄まじい力が伝わってきた。少なくとも並の剣の打ち合いで伝わってくるような衝撃ではない。もしかしなくても地球にいた頃の自分では受け止めることすら叶わなかったであろう。それほどまでにハジメが振るう剣は重たかった。

 

そこからは、数々の戦場をくぐり抜けてきた、騎士団長のメルドですら見入ってしまうほどの凄まじい剣技の応酬が始まった。

 

ギンッ! ギィン! ガギィン!!

 

 「ハァッ!」

 「な?!……グァッ!」

 

突如剣と剣の隙間から伸びてきた蹴りに対応しきれず、光輝はそれをまともに喰らい数メートル後ろの吹き飛んだ。辺りからは光輝への声援や、悲鳴などが上がる。しかし、光輝はそれがひどくうっとおしく感じられた。今聞こえてくる声は、どれもが一昔前の自分なら喜んで受け取っていただろうものだ。だが、今となっては自分の思考を乱すノイズでしかない。光輝はその一切を遮断し、自分に向かって振るわれている剣をどう避ければいいのかを考える。

 

 「っあ……!」

 

脳天に向けて振り下ろされた白金の閃光をなんとか横っ飛びに躱し、地面を転がりながら体制を整える。だが、その瞬間すぐ眼前の地面が穿たれ、光輝は尻もちをついてしまった。もうこうなればどうしようもない。

 

 (強い……!)

 「ハハハッ」

 

光輝の口から笑い声が漏れた。

自分もこの世界に来て、勇者という天職を得て、それなりには強くなったはずだった。なのに、目の前にいる無能と蔑まれる彼は、そんな自分をいとも簡単に凌駕してみせる。

 

 (悔しい。けどそれ以上に……)

 「すげえなぁ……。」

 

ハジメの迷いのないその剣の軌跡に、瞳に、いつの間にか光輝は強烈な憧れを抱いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピトッ

 

喉元に突きつけられる剣先。勝負は決まった。

 

 「勝者、天之河光輝!」

 

 「……」

 「いやー。参った参った。」

 

ヘラヘラ笑いながら剣を手放し、両手を上げるハジメ。その首筋には、光輝の持つ剣の切っ先が突きつけられている。

 

わぁっ!

 

凄まじい歓声が上がる。幼馴染達やクラスメイトたちに取り囲まれ、ねぎらいの言葉がかけられる。

 

「やっぱりすげえよ!」「天之河君カッコイイ!」「やっぱ勇者は違うな!」

 

だが、

 

 「ッ!!」

 

光輝の顔は、悔しそうに歪んでいた。




次回、仮面ライダーオリジン

 「休暇って何すればいいんだ?」
街に繰り出すハジメ

 「うぅん……」
あらたな出会い

 「こういうのも、悪くはないかな。」
動き始める時間。


       次回『時をハジめる少女』


生きろ、最後まで

オリジンに強化フォームは必要か否か。

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