STAR BEAT!~地球を撃ち抜く瞬間に~ 作:ナナバナナ
「ただいまー。」
俺は今朝貰った家の鍵を使い、玄関のドアを開けて、誰もいない家に入る。…なんか、帰ってきたって感じしないんだよなー。まだ他人の家におじゃましてる感覚だわ。でも挨拶大事だからね?
靴を脱いで、リビングに入るが、やっぱり優一さんは帰ってないらしい。どこ行ってるんやあの人…。とりあえず、自分の部屋に鞄を置いてきて、キッチンにある冷蔵庫の中を覗いてみる。
…すぐに腹を満たすことができる物がないことを確認して、冷蔵庫の扉をそっと閉じる。冷蔵庫の中身勝手に食べるのも悪い気がするしね。
まぁ帰ってくるまで我慢するか。そう思って、リビングのソファに行こうとすると、テーブルの上に書き置きがあることに気づいた。
『ここにあるお金使ってショッピングモールまで来てねー
フードコートで待ってるよー』
書き置きの横には2000円が置いてあった。なるほど、これは…
昼飯代込みだな。
はい、私は今電車に揺られています。書き置きの裏側に、道のりが記されてたので、それだけを頼りにショッピングモールを目指している。
お、この駅で降りる…はず…うん、合ってた。まだ来たばっかりだから駅もよくわかってないんだよなー。
電車を降りて、改札に切符を通して駅を出る。すると、目の前に大きな時計があり、それを取り囲むようにベンチが置いてあったのでそこに座る。もう一度、ショッピングモールまでの道を確認したいのだ。
…なるほど、だいたいあの大通りに沿って行けばたどり着く感じだな。さあ、行こうか「ふえぇ〜、ここどこ〜?」…え?
いや、ふえぇって何?鳴き声か?俺は気になってしかたなかったので、ふえぇの正体を探すべく、声のした方を見る。あ、あの人かな?水色のロングヘアの女の子が、スマホ片手にキョロキョロしてるのがここから見える。
「今、時計の前にいるから、ショッピングモールはこっち…?」
水色の女子がそう呟きながら行こうとする方向は、俺の手元にある地図とは真逆の方向だった。
いや、これどっちだ?!優一さんの地図が間違ってるのか、彼女の方が勘違いしてるのか…駄目だ俺には判断がつかない。
…あの人スマホ持ってるし多分向こうが正しいな。優一さんには後で文句言ってやらんとな(決めつけ)
なら本当の道を彼女から聞かないとな。初対面の女の子に声掛けるのめっちゃ恥ずいけど仕方ない!背に腹はかえられない…!
「あの…すみません、ショッピングモールまでの道のりを教えてもらいたいんですけど、お願い出来ますか?」
「ふぇ?!わ、私ですか?」
「俺もショッピングモールに用があって、あなたもショッピングモールに行こうとしてるのなら道を教えてもらいたいなって思いまして…嫌なら断ってくれて全然大丈夫ですよ。」
「あっ、嫌とかじゃないんです…ただ突然声を掛けられてびっくりしただけで…」
「あっ、すみません。」
「こちらこそ。」
2人で謝りだして、ごめんなさいが行き来する。ペコペコし合って話が進まないので、本題を切り出す。
「実は、ショッピングモールまでの地図を貰ったんですけどね?なんかその地図が間違ってるみたいで…」
「そうなんですか…」
「この地図だとあっちに行くことになってるんですけど、スマホの地図だとどうなってますか?」
聞きながら俺は迷子の女の子のスマホを見せて貰い、一緒に道を確認する。
「えっと…あっちです?」
「え?こっちじゃないですか?」
「あ、あれ?」
「ほら、駅がここで、ショッピングモールがここですから…」
「ふぇ、ふぇぇ〜。」
どうやら彼女が勘違いしていただけで優一さんから貰った地図は正しかったようだ。すまんな、優一さん。疑って悪かった。
「ご迷惑お掛けしましたぁ///」
「地図あってたみたいですね。スマホありがとうございます。」
「お、お恥ずかしい限りです…///」
「いえ、本当に助かりました。では、失礼させて頂きますね。」
最後に軽〜く会釈をして、その場を後にする。貰った地図は合ってたみたいなのでこれで安心してショッピングモールに行ける。やったね。
え、一緒行けばいいじゃないかって?いや、別に誘う勇気がないとかじゃないから。決して「よかったらショッピングモールまで一緒に行きましょうか?」って言って、苦笑いを薄らと浮かべられながら断られるのが怖いとかじゃないから。もし一緒に行くとしても?到着するまで気まずいじゃん?だから誘わないんだよ(オタク特有の早口)
まぁ?俺も鬼ではない。俺がショッピングモールに行くことを知ってるなら、あの子は俺のあとをついてくればいい…いい感じの距離を保ってついてくるはず…誰だってそうする、俺もそ「あっ、あの!」
突然声をかけられてびっくりしたが、振り返ってみると先程の水色の女の子がすぐそこにいた。…なんで??
「えっと…私もショッピングモールまで一緒に行かせてください。お願い…します…///」
「あー、もちろん!いいですよ。」
…まさか向こうから声をかけてくるとは、予想外だよ。水色ゆるふわ方向音痴ちゃん(仮名)に、なぜか顔を真っ赤にしながら頼まれたので、俺たちは一緒にショッピングモールに行くことになった。
というわけでね、俺は今、方向音痴ちゃんと一緒に目的地を目指して歩いています。ショッピングモール自体は駅からかなり近いらしいからね。駅から徒歩で行くことにした。
テクテク…
テクテク…
それにしても気まずい。隣に並んで歩いているのに会話が全くない。靴の音と車の音、そして街の喧騒がやけにうるさく感じられる。変な緊張感があって、手が汗ばんでいるのが嫌でもわかる。
こうゆうとき、なんか気を利かせて話題を振るべきなのだろうか。いやでも話しかけるのは迷惑か?あーもう何が正しいのかわかんなくなってきた。
チラと彼女の方を見てみると、しっかりと目が合う。すると、彼女は慌てて目を逸らした。あぁ…すごくデジャブ。なんかついさっきもこんなことあった気がするんだけど。
目があってしまったならもう話しかけるしかない。それこそこのままアクションを起こさないのは、気まずくなる一方だからな。響真、奥の手使っちゃいます。
「ッスーーーーー…天気いいっすね…」
天気デッキ!!
天気デッキとは、初対面の相手や、あまり話したことない人との会話に困った時に用いられる会話デッキの一つである。
天気デッキの歴史は古い。一説によると、とあるコミュ障の男がまだあまり親しくない女性に対して使ったことが起源だとされている。会話デッキには、他にも死生観デッキなどがあるが、あれは上級者向けなので素人が手を出していいものではない。
天気デッキは話題性としては会話デッキの中でも最弱。しかし!その高い汎用性は数多の会話に困った人たちを救ってきたのであった!
初対面の相手なら天気デッキはかなり強い!これが俺のゼンリョクだ!さて、方向音痴ちゃんの反応は…?
「……………………そ、そうですね。」
あ、やべ…
ミスった!
あんま反応よろしくないです!これ絶対心の中で「このクソ陰キャこんなつまんねぇ話しかできねぇのかよ。」って思っていらっしゃるに違いない!(被害妄想)
まぁ、天気の話なんて話が広がらないか。これは彼女は悪くない、天気デッキが悪いんだよ?(豹変)天気デッキ君…俺悔しいよ。
残念だが天気デッキ君との旅はどうやらここまでのようだ。天気デッキ君とはここでお別れだ。
ふと、彼女の方を見てみると、彼女の鞄にストラップがついているのが見えた。なんだろ、あれ…
「鞄のそれ、宇宙人ですか?」
「ふぇ?こ、これですか?クラゲですよ。」
「あーなるほど、好きなんですか?クラゲ。」
「はい…。プカプカ泳いでるのが可愛くて…」
「なんかわかるかもしれないです。」
突然、目を輝かせながらこちらを見る方向音痴ちゃん。何?その目、まるで同士を見つけたかのような…しばらく見つめ合っていると、彼女は顔を真っ赤にして目を逸らす。
「クラゲの可愛さ…友達に言ってもあまり理解してもらえなくて…あんなに可愛いのに…だから今、あなたにわかってもらえてつい嬉しくなって…」
「確かにクラゲは好き嫌い別れるかもしれないですね。」
少し笑いながら返して、俺は今がチャンスだと確信する。名前を知るチャンスだ。
「石動響真。」
「え?」
「俺の名前です、自己紹介しそびれて今更ですけど…」
「えっ、えっと…松原花音です…」
「松原さんですね。よかったら、俺とクラゲの話をしませんか?」
そこから方向音痴ちゃん改め、クラゲ大好き松原さんは、ショッピングモールに着くまでの間、クラゲについて語ってくれた。なんでも、クラゲの海を漂う姿は美しい様が好きで、この前見た水族館のカラフルな照明に照らされた姿がとても綺麗で感動したとか。それを楽しそうに話す松原さんを見て、松原さんのクラゲへの愛がよく伝わってきた。本当に好きなんだな、クラゲ。
「あ、見えてきましたねショッピングモール。」
「もうすぐかな?」
気づけばショッピングモールまであと少しのところまで来ていた。いやー、最初はどうなるかと思ってたけど何とかなるもんだね。
「ほんとに助かっちゃったな、石動君がいなかったら私、ここまでたどり着けなかっただろうから…。」
「よく迷子になるんですか?」
「うん…昔からなんだ。1人で目的地まで行けなくてね…」
「なるほど…」
思ったとおり、松原さんはリアル方向音痴だった。しかも筋金入りの。そのことを悩んでるみたいだけど、気にしないで!とでも言うべきか?考えているうちに、俺たちは入口の手前までたどり着いた。
「着きましたねー。」
「うん。石動君、今日は本当にありがとうございました。」
「いえいえ、このくらいどうってことないですよ。」
「石動君にとっては些細なことかもしれないけど、私はほんとに助かったんだよ。それじゃあありがとね。」
そう言って、松原さんはショッピングモールに入ろうとする。
…迷ったけど、どうせもうこの先会うことなんてないんだから、最後に言いたい事、伝えたい事全部言ってやろう。(フラグ)
「松原さん。」
俺の突然の呼び掛けに、松原さんは振り向いてきょとんとする。
「俺、迷子なことって決して悪いことではないと思うんです。だって目的地にたどり着いちゃえば、それは迷子じゃなくて長い長い寄り道って見方もできるじゃないですか。あ、もちろん時間は守って欲しいですけどね?」
まぁ俺の考えとかじゃないんですけどね。100%受け売り。
「もっと気楽でいいんじゃないですか?人生、笑っていれば大抵のことは何とかなりますし。それに道に迷っている間に新しい発見とか出会いとかあるかもって考えると、ワクワクしてきませんか?」
一瞬、彼女の瞳が大きく揺らいだ…気がする。
「ありがと…そんな風に考えた事、1度もなかったな…」
「そうですか?人生楽しんだもん勝ちですよ、笑顔でいきましょう。」
「ふふっ…うん、そうだね。石動君、今日はほんとにありがとね。」
「どういたしまして、それじゃあここら辺で。」
「うん。」
俺と松原さんは、それぞれの目的を果たすため、別々の方向に向かった。それにしても、戸山さんといい、松原さんといい、この街の女子のレベル高いな。まじで美少女。
色々考えつつ、俺は優一さんが居るであろうフードコートを目指す。わざわざ呼び出すくらいだ…きっと重大な話があるはずだ。
「響真、お前にはこれから楽器の練習をしてもらう。」
…まじで何しに来たんだろ、俺。
響真「師匠、クラゲはキラキラドキドキしますかー?」
香澄「クラゲ?ドキドキはしないかなー、でもカワイイよね!」
響真「勉強になります。」