STAR BEAT!~地球を撃ち抜く瞬間に~ 作:ナナバナナ
響真「優一さんの指示でベースの練習をすることになった石動響真。日本一のベーシスト。俺、なります!その後なんやかんやあってコブラフルボトルを使えるようになりましたとさ。第5話も楽しんでってね。」
俺がコブラフルボトルを生成できるようになった翌日、昨日の気だるさは全くなくすっきりとした目覚めだった。実に清々しい…まるで生まれかわったみたいだ。あれだね、一度生死を彷徨うレベルの地獄を味わうと、何の変哲もない日でも甘美なものに感じられるな。雀のさえずりでさえ美しく聞こえてしまう。なんてことを考えつつ、俺は部屋を出てリビングのドアを開ける。
「おはよう、響真。気分はどうだ?」
「おはよー、めっちゃいい感じだわ。」
すでに起きて朝食を用意していた優一さんと軽く会話しながらテレビをつける。適当に星座占いをやっているニュース番組にチャンネルを変えて、キッチンに向かう。
「うわ、響真最下位じゃん。ドンマイ。」
「一瞬で気分下がったわ。」
今日の最下位は双子座のあなた。やることなすこと全てうまくいきません。ラッキーアイテムはキヌガサダケのスープです。今日一日頑張ってください!
なんてこと言うんだ、このアナウンサー。そんな占い初めて聞いたぞ。言い過ぎやろ。しかもラッキーアイテムが入手出来そうにないのですが。
「それで?ボトルの生成は?」
「完璧よぉ」
俺は優一さんの目の前で、コブラフルボトルを出してみせる。昨日は精神を集中させないと出せなかったが、今は片手間で出せるくらいにはなった。特訓の成果ってやつだよ、これが。
「へぇ、やるじゃん。」
「まあな。慣れちまえばこっちのもんよ。」
「いやーよくやった。一時はどうなるかと思ったが、よかったよかった。待ってろ、今コーヒー淹れてやるからな。」
俺は精一杯の笑顔でいらないと言ってやったのだった。
さてこれから三日ぶりに学校に行くわけだが、その前に俺は戸山さんに会わなければならない。昨日一緒に行こうって言われちゃったからね。そりゃ行くしかないでしょ。それにしてもあんな美少女と一緒に登校できるなんて、ここはギャルゲーの世界か?
そんなことより、集合時間とか決めておけばよかったなって、家出てから気づいたわ。戸山さんまだ家にいるかな?いるよね?…気長に待つか。
10分後
だ ま さ れ た(血涙)
この時間になっても戸山さんが出てこないとなると、もう先に行ってるとしか考えられない。陰キャに優しい女子なんていなかったんだ。きっと教室に行ったら「ごめ~ん。陰キャ君、昨日の約束忘れてた~ww。許してwww。」されちゃうんだぁ。別に辛くなんかないもん!つらくないもん……はぁ、俺も行くか…
「大丈夫、走れば間に合うから!行ってきます!!」
ちょうど俺が学校に行こうとしたとき、戸山さんが勢いよく玄関のドアを開けて飛び出してきた。ちゃんといました。っぶねー、待っててよかったー。
「え、響真君、待っててくれたの?!」
「昨日誘ってくれたから…もしかして迷惑だったか?」
「ううん、うれしい!一緒に行こっ!」
「ああ、急がないとな」
昨日のあれが社交辞令だったらどうしようかと一瞬考えたが、どうやらそんなこともなさそうだ。俺と戸山さんは遅刻を免れるために、走ってで学校に向かうのであった。
はい。というわけで帰宅フェーズでーす。いやー、三日も休んでたらクラス内でそれなりにグループができてたのは驚いたね。席が近い奴らが話やすい人たちばかりで助かったよ、ほんと。
「それでさ、響真君は何部にするの?」
「んー、陸上かな。」
帰り道が一緒なので、俺はまた戸山さんと並んで歩いている。今日の給食の話が終わり、今は部活について話している。ちなみに俺たちが通ってる中学は課外活動にかなり力を入れていて、必ずどこかの部活動に所属しなければならないのである。その中でも陸上部は結構緩い部活みたいで幽霊部員も多いらしい。ベースの練習のことを考えると帰宅…陸上部一択なんだよな。
「そっかー、私どうしよっかなー。」
「まだ決めてないの?部活動見学してきたじゃん。」
「いやー、どれも楽しそうで…」
「ふーん、まあ、まだ時間あるし気長にいけば?」
戸山さんは陽キャ気質だから女テニとか女バレとかかな。ちょー偏見なんだけどね。ごめんなさい。
「でも部活が始まっちゃうとこうやって一緒に帰れなくなっちゃうねー。」
「朝一緒に行くからいいじゃん。」
「そうだね、あっ!今日はごめんね、朝遅れちゃって…」
「いや、間に合ったし別にいいよ。」
「ほんとにごめんね!」
その後もどうでもいい会話をしていたら家に到着したので、俺は戸山さんと別れて家に帰ったのだった。
「たでーま。」
「おう、おかえり。鞄置いたらリビングに来て。」
「了解でーす。」
何事かと思い、俺は自分の部屋に鞄を放り出して、リビングに向かう。この前みたいに楽器やれとか言われるんかな。次はなんだろな。
「来たな、響真。まずはこれを見てほしい。」
そう言う優一さんの目の前には、かなり厳重なカプセルに保存された、赤いアメーバのようなものが鎮座していた。
「え、なにこれ。」
「エボルトの細胞の一部だ。」
「なんでこんなものが?」
「まあ、実験の副産物ってとこかな。」
「実験?副産物?」
「≪世界を旅する力≫でエボルトはこっちの世界にどうにかして来れないか色々と実験をしていたんだよ。その結果、意思を持たないレベルのエボルトの細胞や血液はなんとか侵入できることが判明したんだよ。」
「なるほど。それで、俺はまたこれを食べればいいのか?」
「食べる必要はないよ。こいつは近くにいる人間の中で最もハザードレベルの高い者に入り込むようにプログラムされている。つまり開けたら響真に取りつくようになってるんだよ。」
「もし俺よりも優一さんのハザードレベルが高かったら?」
「そんなことあるわけないだろw。響真はもう半分化け物みたいなものだから。人間の俺が勝てるわけないんだよ。」
「へぇ…」
「こいつと融合することで、響真は完全な地球外生命体になれるんだ。」
そうか、俺はもう半分人間じゃなかったのか。フルボトル出すくらいしかできないから全然実感わかないんだけど。
「じゃあ早速開けていくぞ。準備はいいか?」
「よっしゃこい!」
「言い忘れてたけど入り込むとき激痛で気絶しちゃうかも。」
「え、ちょま」
カシュッという音を立ててカプセルの蓋が開かれ、深紅のそれは這い出てくる。べちゃりと机の上に落下して、こちらに近づいてくる。そして俺の目の前で停止する。
数秒の間、俺はそいつを凝視する。そいつはプルプルと震えだした次の瞬間、俺に向かって勢いよく飛んできた!
ヒュン、パリーン
………
……
…
え?????????
なんかあれ吹っ飛んでったんだが?俺を飛び越えて窓割ってgo awayしたんだが?話と違うんだが??
「「…」」
二人でしばらくの間割れた窓ガラスを眺めてみる。時刻は午後5時。空も夕焼け色に染まり、カラスが飛び交う時間だ。今日の晩飯は何だろうなあ…
「やばい、やばい、やばいぞ、響真!」
「うん、そうですね。」
「今すぐ追いかけるぞ!」
ぶっ飛んでったエボルトの細胞を見つけるべく、俺たちは家を出てそこらじゅうを探しまくる。
最悪だ…うん、ほんとに最悪だ…。さっきの優一さんの話が本当だとすると、それはここら一帯に俺以上のハザードレベルの持ち主がいるということを意味する。俺よりも強いだなんて、近くに範馬勇次郎でもいるのか…?
埒が明かないと思った俺は一旦走るのをやめて、神経を集中させる。さっき見たエボルトの細胞の気配を探し出す。あんなに禍々しいオーラを持った物体だ…嫌でもすぐにわかる。
見つけた…!ここから3㎞先!駅周辺か?
俺はそこに向かって全速力で走りだす。何者かにとられる前に何としてでもエボルトの細胞を取り戻す!
しばらく走って、俺は目的地の駅にたどり着く。夕方の帰宅ラッシュの人混みをかき分けて、俺はエボルトの細胞を見つける…が、
(チッ、遅かったか…)
目の前にいる同年代の男は俺が元いた世界のフィクションでしか見たことはなかったが、こっちの世界でもあまり差はないんだなって思ってしまう。
「絶対万丈だあいつ…。」
なぜこの世界にも万丈がいるんだ。そしてなぜ若いんだ。学ラン着てるし俺とタメだろあいつ。あっ、エボルトの細胞が万丈の体に入っていった。あれも毒の塊みたいな物だから万丈倒れちゃうんじゃないか?
「痛っった!何?!何だ?!」
いや気絶せんのかーい。
エボルトの細胞が入り込んだのに万丈はピンピンしている。そしてそのまま改札を通り抜けて駅のホームに向かっていった。
…そういえば今日の占い最下位だったなー。そんなことを考えながら、呆けた顔で俺は駅の改札をただ眺め続けていたのであった。
この時点で、
響真→ハザードレベル2.5
万丈→ハザードレベル2.8
参考までに