ありふれない守銭奴で世界最強 作:ゾラ!ヤクルトゾラ!誰のもの〜
通帳に刻まれる数が増えるたびに笑みがこぼれる。
赤ん坊の頃はさすがにわからないが、私が物心ついてから初めて笑ったのは母親にお小遣いを貰った時だった。
他の子どもが、かけっこで一番になった時やテストで100点を取った時に嬉しくなったり、喜ぶのと同じように、私はお手伝いをしてお駄賃をもらった時、親戚からお年玉をもらった時、祖父母から合格祝いとして現金をもらった時、etc.
金を手に入れた時に愉悦を感じた。
私は金が好きだ。金に執着していることは自他共に認めている。だからといって別に家が貧乏だったとか、逆に大金持ちだったから金に執着しているわけではない。世間一般的には金に執着するのは、あまり褒められたことではないのだろうが、これは私が生まれ持った、もしかしたら生まれる前からの
誰にも言ったことは無いが私はほぼ間違いなく転生者だ。私には前世の知識がある。記憶ではなく知識がある。
私が有しているのは、時間や場所、感情などの情報を持った個々の経験や体験。所謂、【思い出】を指すエピソード記憶ではなく、一般的な知識などに関する意味記憶にあたる部分なので厳密にいえば記憶なのだが、便宜上知識とさせてもらう。。
私は最初、自分がギフテッドなのではないかと疑ったのだが、ある一つの知識がそれを否定する。
それは、あるキャラクターの知識だ。
彼女の名前、容姿、能力、価値観といった知識が意味記憶とともに物心ついた時から存在した。
それは、例えるならば何かしらのキャラクターをGoogleの画像検索で調べた時みたいな感じだ。
時系列などお構いなしに、彼女の描かれているページが無造作に頭の中にあった。
だからこの漫画がどんなストーリーなのかも知らない。
そして私が驚いたのは、この漫画はいくら調べても見つからないことから、私の世界に存在しなかったこと。この点が私がただのギフテッドではないと確信した理由だ。
そして、彼女と私の名前が全くの同じだったこと。彼女の名前は同じ文字を二度繰り返しているというとても珍しいのにもかかわらずだ。
更に、これは成長するにつれて分かったことなのだが、私の容姿すら同じだったのだ。
これらのことから、もしかしたらこの知識は私の未来なのかもしれないと一時期思っていたが、彼女が戦っていた。化け物は見たことないし、烏を操るどころか呪力といったものを感じたこともない。
ならば、並行世界の私か?とも思ったが、そこまで行くといくら考えても仕方ないと思い。この知識の真相を探ることは諦めた。
だからといって、ただ無視したわけではない。容姿や思想が同じことから無視できるものでもなかった。
だから私は、鍛えた。知識にある彼女のように。
必死になって鍛えた。幸いなことに、これがゆくゆくは金のためになると思えば苦ではなかった。
彼女のように、斧を自在に扱えるように多種多様な武術を学べる近所の道場にも通った。
そして、金を稼ぐことにも力をいれた。これもまた幸いなことに意味記憶の中に勉強の知識もあったため、他の人が勉強にあてる時間を金を稼ぐために利用できた。その過程で漫画業界やゲーム業界といった少し特殊な業界にもコネができた。
私を、‟お姉さま”や‟姉御”、‟ボス”といった風に慕ってくれる者はいるが、全てを金で線引きする私には真に親しいと言える友はいない。
だが私に後悔や寂しさといった感情はない。そして自身の言動を顧み、直そうとすら思わない。
そして私をこんな歪な存在にした知識の存在を知ったら、その知識を恨んだり、私に同情する人間が現れるかもしれないが私は感謝している。
前世の私が、男か女かも分からない転生者というにはあまりに不完全な記憶だが、
より多くの金を稼げるのであれば悩む価値すらない些事である。
だから私は、冥冥として生きるこの人生になんの不満もない。
---ハジメside---
ハジメは、いつものように始業チャイムがなるギリギリに登校し、徹夜でふらつく体でなんとか踏ん張り教室の扉を開けた。その瞬間、教室の男子生徒の大半から舌打ちやら睨みやらを頂戴する。女子生徒も友好的な表情をする者はいない。無関心ならまだいい方で、あからさまに侮蔑の表情を向ける者もいる。極力意識しないように自席へ向かうハジメ。しかし、毎度のことながらちょっかいを出してくる者がいる。
「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」
「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」
一体何が面白いのかゲラゲラと笑い出す男子生徒達。声を掛けてきたのは檜山大介といい、朝の時間帯の教室で
オタク扱いすることが朝の挨拶だとでも思っているのかと疑問に思ったことがあるが、檜山たちの言うようにハジメはオタクだ。と言ってもキモオタと呼ばれて思い浮かべるような身なりや体形や性格をしているわけではない。
世間一般ではオタクに対する風当たりは確かに強くはあるが、本来なら嘲笑程度はあれど、ここまで敵愾心を持たれることはない。では、なぜ男子生徒全員が目の敵にするのか。
その原因は彼女にある。
「南雲くん、おはよう! 今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」
ニコニコと微笑みながら一人の女子生徒が南雲のもとに歩み寄った。ハジメに声をかけてきた女子生徒の名前は白崎香織、この学校の
そんな彼女が不真面目なハジメに構い倒しているのだ。
当然といっては少し変だが、男子生徒からは目の敵にされ、女子生徒からは香織に面倒を掛けられているのにも関わらず生活態度を改善しようとしないことに不快さを感じているようだ。
そのことに、肝心の香織本人が気付いていないのでハジメはいつも肩身の狭い思いをしている。ハジメがどうにか会話を切り上げるタイミングを図っていると、三人の男女が近寄って来た。
「南雲君。おはよう。毎日大変ね」
「香織、また彼の世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな」
「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」
三人の中で唯一朝の挨拶をした女子生徒の名前は八重樫雫。香織の親友で香織と同じく、三大女神の1人でもある。
彼女の実家は八重樫流という、剣術をはじめとした武術道場を営んでおり、雫自身、小学生の頃から剣道の大会で負けなしという猛者である。ちなみにその道場には、ハジメに後ろに疑問符が付きそうな挨拶をしてきた2人と、ハジメが良くお世話にもなっている三大女神の内の最後の1人も通っている。
次に、些か臭いセリフで香織に声を掛けたのが天之河光輝。いかにも勇者っぽいキラキラネームの彼は、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人だ。
最後に投げやり気味な言動の男子生徒は坂上龍太郎といい、努力と根性が大好きな脳筋で光輝の親友だ。
「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。はは、まぁ、自業自得とも言えるから仕方ないよ」
「それが分かっているなら直すべきじゃないか? いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君に構ってばかりはいられないんだから」
思い込みによって少しズレた正義感でハジメに注意した光輝は「それに」と言葉を続ける。
「南雲がそんなんだから、状況が改善しないんだよ?」
「いや~、あはは……」
ハジメは笑ってやり過ごそうとする。が、今日も変わらず我らが女神は無自覚に爆弾を落とす。
「? 光輝くん、なに言ってるの? 私は、私が南雲くんと話したいから話してるだけだよ?それに
ざわっと教室が騒がしくなる。いつものようにざわっと教室が騒がしくなる。男子達はハジメに対して嫉妬と憎悪の視線を向けるが、
「え? ……ああ、ホント、香織は優しいよな」
どうやら光輝の中で香織の発言はハジメに気を遣ったと解釈されたようだ。
「……ごめんなさいね? 二人は悪気はないのだけど……」
この場で最も人間関係や各人の心情を把握している雫が、悲しみを孕んだ表情をしながら、こっそりハジメに謝罪する。ハジメは光輝のことに関して「仕方ない」と肩を竦めて苦笑いするのとともに、人のいい雫に対し結果的に余計な心配をかけてしまっているので少し罪悪感を感じるのであった。
そうこうしている内に始業のチャイムが鳴り教師が教室に入ってきた。教室の空気のおかしさには慣れてしまったのか何事もないように朝の連絡事項を伝える。そして、ハジメは最早ルーティンと化した夢の世界へ旅立ち、当然のように授業が開始された。
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教室のざわめきに、ハジメは意識を覚醒していくのを感じた。居眠り常習犯なので起きるべきタイミングは体が覚えている。その感覚から言えば、どうやら昼休憩に入ったようだ。
ハジメは、突っ伏していた体を起こし、十秒でチャージできる定番のお昼をゴソゴソと取り出す。
なんとなしに教室を見渡すと購買組はすでに飛び出していったのか人数が減っている。それでも初めの所属するクラスは弁当組が多いので三分の二くらいの生徒が残っており、それに加えて四時限目の社会科教師である畑山愛子先生が教壇で数人の生徒と談笑していた。
ーーじゅるるる、きゅぽん!
早速、午後のエネルギーを十秒でチャージしたハジメは普段なら香織達と関わる前に教室を出て目立たない場所で昼寝をするのだが、今日はある理由から席を離れることができない。
そんな理由で席を離れずにいると我らの女神が、ハジメにとってはある意味悪魔が、ニコニコとハジメの席によって来る。
ハジメは内心「しまった」と呻いた。今日は
「南雲くん。珍しいね、教室にいるの。お弁当?よかったら一緒にどうかな?」
再び教室に不穏な空気が満たし始める中、ハジメは心の裡で悲鳴を上げる。いや、もう本当になしてわっちに構うんですか?と意味不明な方言が思わず飛び出そうになった。
ハジメは抵抗を試みる。
「あ~、誘ってくれてありがとう、白崎さん。でも、もう食べ終わったから天之河君達と食べたらどうかな?」
そう言って、ミイラのように中身を吸い取られたパッケージをヒラヒラと見せる。断るのも「何様だ!」と思われそうだが、
しかし、その程度の抵抗など意味をなさないとばかり女神は追撃をかける。
「えっ!お昼それだけなの?ダメだよ、ちゃんと食べないと!私の弁当、分けてあげるね!」
(もう勘弁して下さい!気づいて!周りの空気に気づいて!)
「失礼するよ」
刻一刻と増していく圧力に、ハジメが冷や汗を流していると救世主が現れた。といっても他のクラスメイトからしたらハジメにとっての香織のように悪魔なのかもしれないが。
うっすらと笑みを浮かべながら他学年のクラスに堂々と入りハジメのもとにツカツカと歩み寄った。だが先程までハジメに向かっていた嫉妬など負の感情を宿した視線は彼女が教室に入って来た途端消え去り、クラスに入って来た侵入者に畏れや怯えといった視線や、先程までハジメに向けていた視線が嘘のように今度は同情や憐れみが含まれるものとなっていた。事実、ハジメに対してさんざんイジメ紛いなことをしていた檜山達ですら怯えて体をかすかに震えさせている。
名前を冥冥という。香織や雫と並んで学校で三大女神と言われる最後の1人。学年は2個上の先輩で、髪型は雫とほぼ同じポニーテールだが、雫の艶やかな黒い髪とは違い色素の薄く青みがかった灰色の髪。細く切れ長の目は鋭く、凛々しさと力強さが感じられる。
顔だけ見れば深窓の令嬢のような儚さと美しさを兼ね備えたようにも見えるかもしれないが、首から下は全くの別物。詳しくは知らないが女子にしては高い身長を持つ雫よりも背が高く、胸やお尻といった部分も大人の畑山先生と比べることさえ烏滸がましいほど(といっても比べる相手も相手だが)立派なものを持っておりそこら辺にいるモデルなら勝てないだろう。だがそれよりも特徴的なのは制服越しですらはっきりとわかる引き締まった体。引き締まっていると言っても雫のものとは違い、冥冥のそれは女性ボディビルダーさながらの肉体だ。
事実、その肉体は見かけだけのもではなく彼女を襲おうとした暴漢が十数秒前と比べて倍ほど腫れあがった顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしながら土下座して許しを請いていたのは有名な話だ。
そしてぼこぼこにした暴漢から多額の慰謝料もぎとったことが彼女を畏れさせている原因の一つだ。彼女はその容姿から質の悪い男性によく絡まれていた時期があったが、件の暴漢のように返り討ちにしたり挙句の果てに彼女に全く関係のない誰かがカツアゲをされていた時は、わざわざ首を突っ込んで、カツアゲをしていたチンピラに対し逆にカツアゲをしていた位だ。
「南雲君、
「はい」と僕は怯えた
「南雲くん!無理してこんな人にお金を渡さなくていいんだよ!」
「こんな人呼ばわりとは酷いじゃないか」
冥冥がそう反論すると今度は香織が普段ハジメがクラスメイトから向けられていた視線よりも鋭い視線をを冥冥に向ける。
「本当のことでしょ!南雲くんからこんなカツアゲみたいなことをしておいて…酷いのはあなたでしょ!」
空気がどんどん悪くなってきた中、香織の後ろに般若が顕現しそうになった時、香織を守るように光輝が、雫と坂上を伴って前に出てきた。雫が香織を一旦落ち着かせようとするなか光輝がさらに一歩前に出る。
「冥さん。南雲が一体何をしたかは知りませんが彼は僕達のクラスメイトであり仲間なんです。だからカツアゲなんてしないでください。こんなこと南雲どころか冥さん自身も傷つけることになります。」
「そうだぜ冥先輩。確かに南雲やる気ないヤツだが、だからってこんなことしていい理由にはなんないし、そもそも冥先輩は金に困ってないんだからこんなことしなくてもいいだろ?」
二人に責められた冥冥は気にした素振りもなく笑みを絶やさぬままその言葉にただ肩をすくめながら応える。
「全く心外だよ。私はただ
傍から見れば完璧に黒にしか見えない態度だが南雲と畑山先生だけはそれが事実だと知っている。実は冥冥は南雲の両親の仕事場でアルバイトをしているのだ。しかも要領がいいせいか働き始めてすぐ、即戦力とされているハジメ以上に仕事ができる。その為、冥冥が受け取ろうとしているの間違いなく正当な報酬なのだが、冥冥は態と勘違いされるように給料を受け取っている。むしろ
ハジメは自分の興味ある分野にオタクと言って拒絶するどころかハジメ以上に精通しており、香織や檜山、そしてクラスメイト達との肩身が狭く居心地の悪い関係より、人間関係を金により線引きしているサッパリとして分かり易い冥冥に自然と普段の生活の愚痴をこぼすようになっていった。親に言えば心配されそうで言えないことも冥冥になら、(金を払えば別だが)態々言いふらされるような心配もないし、冥冥自身も聞き上手だったため、言ってしまえばとても話しやすい相手だった。
ハジメから学校生活での愚痴を聞かされた冥冥は「私なら幾分かマシにできるかもしれないけどどうする?」と言われた。最初は同じ高校に通っているとはいえ、そこまでしなくても大丈夫と断ったのだが、
「もし雇主の息子がそのストレスで不登校になったり、自殺なんてしてしまえば仕事どころではなくなり、もしかしたら私の収入源のひとつがなくなってしまうかもしれないだろう?」
と言われ更に「君はまだ高校生だからと報酬は出世払いでいいよ」と金をとるのかよと思いもしたが、人間関係で悩んでいるハジメにとってはむしろ冥冥との金による関係の方が好ましく思い、その提案を受けた。
もともと口座に給料を振り込まれていたから少しだけ親に状況を言わなければいけなかったのが想定外だったが、冥冥さんのフォローもあってか、なぜか両親も乗り気になっていた。そして始まったのがこの寸劇だ。ただクラスメイトの前で僕が
寸劇が始まった当初に一度、檜山達もカツアゲをしてこようとしたが「私の分を奪うのか?」というような脅しをされて少しズボンにしみができていたのは、檜山達が逃げ出してから思わず大声で笑ってしまった。
そこから檜山達は冥冥に目をつけられている僕にちょっかいを出して逆に冥冥から狙われるのを恐れて檜山達から何かされる頻度がぐんと下がった。といっても今朝のように冥冥がいないと確信できるときは絡んでくるのだが。
そして月に一度、その寸劇をやっている中、ハジメと冥冥は畑山先生に呼び出された。ハジメは知らないことだが、檜山達やクラスメイトの悪い空気に気づかなかった香織も教室のド真ん中で行われるそれにはさすがに気づき、担任でもある畑山先生に密告、もとい相談したからだ。ちなみに檜山はもちろん他のクラスメイトは同情よりも「ざまあ」という感情のほうが強く、また自身が被害を受けることを恐れて黙っていた。
呼び出された二人は先生にもどうして寸劇をしているか説明し黙認してもらった。畑山先生は「私に何かできることがありますか?」と聞いてくれたのだが、下手に先生という立場の人間が介入し事態を悪化させることを防ぐため何もしないでもらった。ちなみに冥冥の担任には冥冥の内申に影響を出さないため初めにちゃんと説明してある。
ハジメはそんな背景をなんとなく思い出しながら、どうしたものかと思っていたがここで何をとち狂ったのか、天之河がずれはじめる。
「…!? 冥さん!お金のためだけにそんなことしないでください!道場での冥さんは僕にとって憧れでした。もっと自分の体を大事にしてください!確かにお金は大事なものです。でも冥さん自身はお金なんかよりもずっと価値があるんですよ!」
雫と坂上はその天之河の発言に思わず固まり、声の主を見つめ、香織はクワっと目を見開きぐりんと勢いよくこちらに振り向く。思わず体が勝手に逃げ出そうとするが香織は、何処からそんな力が出ているのかと突っ込みたくなるくらいの力でハジメの手をつかんで離さない。痛みと恐怖で目が少し潤んでしまった。
「君は私が金を払えば誰にでも体を売るような人物に見えるのかい?女性に向ける言葉としてはこれ以上にない侮辱に思えるのだが…これは訴えるべきなのかな?」
絶対零度の視線で冥冥は天之河に言い放ったがハジメは4桁~5桁万円払えばありえそうと思ってしまった。
そう。ここまでで薄々気づいている人がいるかもしれないが、冥冥は守銭奴なのだ。そしてこれは学年共通で認知されているまごうことなき事実である。
冥冥は学校で三大女神と言われるほどの美貌の持ち主だ。だが今まで告白された回数は圧倒的に少ない。彼女が1年生の頃、三年生のカーストトップに君臨するチャラ男先輩が冥冥に告白したらしいのだが、彼女はあっさりとフった。その時、その先輩に言い放った言葉が「それには時給が出るのかい?」といった趣旨の言葉だったらしい。チャラ男先輩はとても不満に思ったものの、金を払えばこの美女を抱くことができるならと、自身のバイトの時給の半分を提示したが。「桁が足りないよ」と突き放し、それに怒ったチャラ男先輩が襲おうとするも返り討ちにしたらしい。母親の仕事場で本人に確認したら事実だった。
その一件から始まり、先に述べたような似たようなことが何回もあったため、容姿端麗、成績優秀な反面、金に貪欲で成人男性すら軽く捻る冥冥は「女神は女神でも邪神(または死神)のほう」と恐れられている。
だから、思っちゃっても仕方なかったんだ。そんな風に心の中で言い訳していると、光輝の発言で固まっていた雫が一歩前に出る。
「光輝の発言は私が代わりに謝罪します。しかしだからといってカツアゲ紛いの行為はどうかと思います。」
「人聞きの悪い。言っただろう?ただバイト代を貰うだけだと。労働に対して雇用主は報酬を払う義務がある。」
「そうだよね、南雲君」と冥冥がこちらに話を振った。これ以上大事にしては色々とまずそうなので、渡りに船とばかりに掴まれている手とは逆の手で茶封筒を手に取り素早く冥冥に渡す。
ここまでのやり取りに加えて「南雲くん…」と香織の声が聞こえてきたため、罪悪感が凄いことになった。
茶封筒を受け取った冥冥は、この空気が分からないのか、それとも態と煽っているのか態々中身を出して数を数え始める。冥冥はハジメの母親の少女漫画とハジメの父親のゲーム会社でバイトしているのだが、働く日数は少ないくせに即戦力と称されるハジメより更に上の仕事をしている。そのため高給取りで万札が多く入っている。さすがに全部は出していないのだがそれでも学生がひと月で稼げるくらいの金を出しているので、香織や雫の顔が更に険しくなっている。
「確かに受け取ったよ」
冥冥はそう言ってクラスを出ようとしたところで…
凍りついた。
ハジメの目の前、光輝の足元に純白に光り輝く円環と幾何学きかがく模様が現れたからだ。その異常事態には直ぐに周りの生徒達も気がついた。全員が金縛りにでもあったかのように輝く紋様――俗に言う魔法陣らしきものを注視する。
その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。
自分の足元まで異常が迫って来たことで、ようやく硬直が解け悲鳴を上げる生徒達。未だ教室にいた愛子先生が咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。
数秒か、数分か、光によって真っ白に塗りつぶされた教室が再び色を取り戻す頃、そこには既に誰もいなかった。蹴倒された椅子に、食べかけのまま開かれた弁当、散乱する箸やペットボトル、教室の備品はそのままにそこにいた人間だけが姿を消していた。
この事件は、白昼の高校で起きた集団神隠しとして、大いに世間を騒がせるのだが、それはまた別の話。
Google検索のくだりが分からなかったら試しに検索してみてください。
アンケート投票ありがとうございました。
投稿して約1時間ですが、差が圧倒的だったのでもう変えさせていただきました。
ちなみに、現時点の冥冥は高専時代の歌姫と一緒に行動していた時の姿です。
タイトル変えた方が分かりやすいですか?
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変えなくていい
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ありふれない守銭奴で世界最強
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ノーコメントで