私が自己満足のために書き始めた作品ではありますが、お気に入り登録・評価・感想・ここすき投票までしてくださり、感謝の念が堪えません!
これからもこの ゆらぎ荘の帝王様 をよろしくお願いします!
いつもの騒動で目が覚め、ある程度までゲーム制作・運営の仕事が片付いた頃。
機器の電源を切り、ググッと体を伸ばしていると、ドアの向こう側から声がかけられた。
「アークさん。昼食の支度が出来ましたよ」
「分かりました仲居さん。すぐに向かいます」
もう昼か。集中すると時間を忘れてしまうな。
立ち上がり、ドアを開けて居間へと向かう。いい匂いがするな……それに声も聞こえる。もうみんな揃っているようだな。
「あっ、アークさん!隣空いてるっすよ」
「ああ、ありがとう。ふぅ……」
コガラシくんの隣に座ると同時にお膳を持った仲居さんが現れ、私の前に食事を置いてくれた。
「では、頂きましょうか!」
『いただきます!』
うん、仲居さんの食事は体に染み渡るなぁ……この味噌汁も気持ちが落ち着く優しい味だ。
「なあ、夜々を呼びに行った時に、夜々が屋根から落ちそうになったんだけどよ……猫神が助けたんだ。なんか、そういった特別な契約とかあんのか?」
さらっと怖いことを言わないでくれ。まさかそんなことが起きていたとは……屋根から落ちそうになるってそうとう危ないぞ。
「猫神は宿主を守る習性があるんだ」
「習性?」
「猫神は気まぐれに人間を宿主とし、宿主に様々な力を与える。誅魔忍軍では、基本的には無害とされている妖怪だ」
「ふ〜ん…そんなのが夜々に取り憑いてんのか」
「……誅魔忍軍?」
初めて……ではないな。坊さんたちが来た時に幽奈さんが言っていた記憶がある。だが、詳細まではわかっていない組織だ。
「ああ、アークさんには伝えてませんでしたね。闇夜に紛れ、人に仇なす暴虐非道の妖怪共に、神秘霊妙の奥義を以て天誅を下す、女性の霊能力者によって構成された忍者集団です」
「ふむ、それで狭霧さんは霊力のクナイを扱うのか」
「はい。他の誅魔忍は、手裏剣やまきびしなど、得意とする忍具にも個人差があります」
「ほうほう、なるほどなるほど」
忍者と言えばその情報収集能力と様々な術。さすがに我が軍を見つけ出すことは出来ないだろうが、それでも拠点外で活動する際には用心せずに越したことはあるまい。
「でも、猫神がなんで夜々に?」
「仲良しだから…!」
「そんだけ!?」
まあ、神と人が仲良くなり生活を共にするというのはよくある話だ。異世界でもよく見たし……恋仲になっている者とかな。舌打ちが止まらないよ。
「普段は夜々の中で眠っているらしいが、夜々から出て外で遊ぶ姿もよく見かける。ちゃんと夜々の所にかえってくるあたり、夜々が気に入られているのは間違いないだろう」
「いいなぁ、猫神様は。大好きな人といつも一緒にいられるんだね。ボクにも憑依能力があったらなぁ……」
「千紗希さんのことですか?」
「うん。やっぱり千紗希ちゃんのおっぱいはボクの理想だからさ……あっ!ここの皆のおっぱいも素敵だよっ!?あくまでボク個人の話で…」
「なんのフォローだ」
う〜ん、この子の情操教育はもう諦めたが、こう……胸の話ばかりするのでは今後に支障が出ないだろうか?
「でも、ホントにコガラシくんや幽奈ちゃんには感謝してるんだ。仲居さんのご飯を毎日食べられるなんて、こんな幸せないよ〜…!」
「うんうん!仲居さんの料理は絶品よねぇ〜」
「こゆずさんがすごく喜んでくれるので、私も作りがいがあります〜。でも、アークさんの料理の方が素晴らしいんですよ〜」
「う。アークの料理はすごく美味しい」
「ホントに!?アークさんっ!ボクにも作ってよ!」
「あ〜……わかったよ。期待はしすぎないでね」
こう、褒められるのはやはりくすぐったい気持ちになるな。素直に褒めてくれるのは嬉しいが、そういったことがあまり無かった分よけいに感じてしまう。
「ところで皆さん。私…明日から温泉組合の慰安旅行なのですが、本当に私いなくて大丈夫ですか?」
「勿論です!朝夕の食事を皆で分担する手筈です」
「数日くらい大丈夫だろ!」
「楽しんできてください!」
「仲居さんも、たまにはゆっくりしなきゃあ〜」
「ありがとうございます!では、お言葉に甘えて…」
「いってらっしゃ〜い!」
しかし、いかに私がいるとはいえ、仲居さんの存在はあまりに大きかった。こうして快く仲居さんを送り出した私たちであったが……。
「朝ごはんできたー」
「……これは?」
「…?朝ごはん」
「猫缶って書いてあんぞ!?」
「せめて人間用を用意してくれ!」
「まあまあ、キャットフードではないんだ。猫缶も基本は美味しい缶詰だよ。ねえ、夜々さん?」
「う。美味しいの」
「だからって朝メシ缶詰はないと思うぜ…」
「みんな〜!夕ごはんの準備できたぞぉ〜!たぁんとめしあがれぇ〜♡」
「酒の肴じゃねぇか!それもスナック菓子ばっかり!」
一日目にして皆が仲居さんの帰還を切望したのだった。
次の日の朝━━━
「おお〜!ようやくまともな食事が!」
「アサリの炊き込みご飯か〜!誰が作ったんだ?」
「わたしです〜!」
「っ!?幽奈が…!?」
「幽霊なのに料理までできるのか!」
「いっただっきま〜す!」
ふむ、これは美味しそうな……っ!?こ、この味は……。
「ブッフォオッ!?」
「!?」
あとで聞いたところによると、幽奈さんは醤油とコーラを、お酢と料理酒を間違えていた。お供えなしでは味見ができず、気付けなかったらしい。
いや、容器にコーラや料理酒の名前ぐらいは書いてあるのでは?と思ったが、確認してみるとラベル等が剥がされており、確かに間違えそうな似た容器になっていた。
結局、皆は料理を食べきることはできなかった。残った料理は私が残さず食べました。残すとバチが当たるからね……私はバチを当てる神の敵なのだがね。うっぷ、お腹が少し痛い。
その日の夜━━━
「どうやらまともに料理ができるのは私だけのようだな…」
「狭霧!」
狭霧さんが皆の夕食を作ってくれた。くれたんだが……。
ゴプッ…ブク……ドロ…ッ
名状しがたき物体だな。なんだこれは?死にそうになったバブルスライムにそっくりだ。
「裏山で採集した山菜のカレーだ!スパイスには雨野家秘伝の生薬を配合した!見た目や味に少々難はあるが良薬口に苦し!春には苦味を盛れとも言う!たまにはこういう健康食もいいだろう?」
「健…康……?」
「い、いただきま……っ!?」
ツーン…
ごと…ッ
「ど、どうした皆!?」
コガラシくんと夜々さんが机に突っ伏した。ああ、臭いだけで逝ったか……。
結局、私以外の全員が残した。私はもちろん完食したよ。体の調子が悪くなってきたけれど、ホームレスをしてきた私にとっては、食事がどんなに劇物でもありがたくいただくと決めている。
今、私たちの前にあるのは煌びやかな焼き魚とご飯や味噌汁。私たちが欲しがっていた
「ヤマメの塩焼きねえ〜!」
「こ、このオーラはいったい!?」
「う…美味すぎる!!」
「やっとおいしいご飯だよ〜!!」
素晴らしい。これほどの技は魔物でもそう多くないぞ。少々火を当てる時間が惜しいが、これはこれでなかなかの物だ。
「まるで生きているかのような躍り串も見事だが、何より火のとおり具合が神懸かっている!この焦げ目の異常なまでのムラの無さはなんだ!?およそ、人の手によってなされた業とは思えん!一体何者が……」
「俺だ」
「冬空コガラシ!?」
ほほう、コガラシくんか。まだ十数年程度の若さだと言うのに、人間の身で良くぞそこまで…!
「串打ち三年焼き一生。一生をかけ磨き続け、死の瞬間に極めた焼きの奥義を後世に残さんとする伝説の料理人がいた。その霊に取り憑かれ、修行させられたことがあってな……!」
「どれだけ波乱万丈な人生を送ってきたんだいコガラシくん……」
霊に憑かれすぎだろう。濃すぎる人生を歩んでいるんだな……。
「さ、さすが過ぎますコガラシさん〜〜!!」
「こんなお魚、ボク初めてだよ!」
「ふ…これは私の完敗だな」
「コガラシちゃんコレ、酒の肴に最高ねぇ〜!」
コガラシくんの胴上げが始まった。みんな、忘れているのかもしれないが、言ってくれれば私も料理作ったんだがなぁ……。ちなみに、私の当番の日はない。仲居さんと一緒に頑張ってくれているから自分たちにやらせてくれと言われたんだよ。
「すみません皆さん!ただいま戻りました〜……」
わーっしょい!わーっしょい!
「……なんの騒ぎです??」
「ああ、仲居さん。お帰りなさい。やはり、みんな料理が上手くできなくて……コガラシくんの料理が美味しかったことに感動してるんです」
「あー……」
苦笑いになる仲居さん。胴上げは未だ続いている……そろそろやめたら?コガラシくんが酔ったのか顔色が悪くなってる気がするから。なんなら頬もだんだんと膨らんできてるから!?
その後、私によってコガラシくんは救助された。美味しいご飯を作ったというのに散々な目にあったコガラシくんなのであった……。
皆さんアンケートへの投票ありがとうございます!
一票差で『しなくてもええで』の方が多かったので、後書きに解説は入れません。
しかし、『どんな技か解説お願い』にも同じぐらい票が入っていたので、本文で簡単な説明の文を入れるようにします。
次の番外編どれがいい?(締め切りは11/5まで)
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戦闘回
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日常回(魔界)
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ギャグ回