ゆらぎ荘の帝王様   作:サンサソー

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第26話 魔神降臨

『朧……生まれは違えど、あなたもあの方の子。私の子も同然と思っているわ』

『勿体のうお言葉にございます、御前さま』

『……今のままではいずれ、外の神々に敵う者が玄士郎ただ一人になってしまうわ。朧…玄士郎を一人にしないで。強い龍雅家を作って…!』

『承りました御前さま。ありとあらゆる手段を厭わず……龍雅家を強く…!』

 

 

 

 

「さて、幽奈と狭霧をはなしてもらうぜ」

「こ…こここコガラシ…さん…!?」

「信…じられん。一体…なに…が……?」

 

腕をグルグルと回しながら幽奈たちへと近づくコガラシ。目の前で起こった神退治に幽奈と狭霧は頭の整理が追いついていないようだった。

 

「お…お逃げください朧さま!玄士郎さまを下す相手など我々ではとても…!」

「……幽奈さまと狭霧さまは渡せん」

「しかし…!」

 

主が倒され、次は自分たち。魚人たちはなんとか朧を逃がそうとするも、朧にとっては龍雅家を強くするために、幽奈と狭霧はなんとしても手に入れておきたい。手放してはまたどれだけの期間、龍雅家が外の神々に脅かされるのか。

 

「ここは私にまかせよ。おまえ達は玄士郎さまを」

「は…ハッ!」

「御武運を…!」

 

朧はコガラシへと歩を進める。その右手を黒い刀へと変化させ、構えた。

 

「…やる気か?」

「下郎めが…!」

 

朧は足を少し動かし……次の瞬間には消えていた。

 

「ハッ!」

「うおっ!?」

 

後ろに一瞬で回り込んでいた朧がコガラシを斬りつけた。それにより凄まじい音が響いたのだが……それは金属同士がぶつかったかのようなものだった。

 

「私は先代黒龍神の尾より生まれ出でた護り刀……神刀・朧」

「俺は冬空コガラシだ」

 

コガラシが拳を振るうと、その拳圧が地面ごと抉りとっていく。至近距離で放たれたために、朧の着物が少々破られてしまった。

 

「私の本気の斬撃ですら薄皮一枚斬れぬとは……嫌になる程頑強だな。そしてこの拳撃……玄士郎さまは狭霧さま以上の結界を何重にも纏っている。それを只の一撃で全て破り尽くしたということ…!まともに喰らっては、私では塵も残らぬだろう」

 

朧がその速さでコガラシの拳撃を躱していく。その顔はコガラシと自分の戦力差に苦々しくなっているが、それでも戦意は失っていなかった。

 

「だが勝算はある。たしかに聞いた……『女だけは殴れぬ』…と」

「……へ?」

 

破れた着物から飛び出たのは、小ぶりながらもしっかりとした女性の胸だった。

 

「お…オマエ女だったのか!?」

「やはり気付いてなかったのだな…!」

「こっコガラシさん!?どう見ても女の子じゃないですか!」

(あの従者、女だったのか…!)

 

気が付いていたのは幽奈だけ。これには普段は冷静沈着な朧も怒りを顕にしていた。

 

「…斬る!」

 

再びの超加速。四方八方からの鋭い斬撃がコガラシを襲った。

 

「冬空コガラシ!貴様さえ…貴様さえ邪魔しなければより強い龍雅の家を成せるのだ!」

「こ…コガラシさん!」

「……心配ない。冬空コガラシは、おそらく殆どダメージを負っていない。速さは朧が上のようだが…すでに速度が落ち始めている。殴れずとも捕らえて終いだ。この勝負…朧に勝ちの目はない」

(私が手も足も出なかった相手を……冬空コガラシ、只者ではないと思ってはいたが、まさかここまで……!)

 

朧が再び背中に斬りかかろうとした時、突然朧の刀を掴む者がいた。

 

「やぁっほぉ〜!みんな元気みたいねぇ〜」

「呑子さん!夜々さん!」

 

鬼のツノを出した呑子と、欠伸をしながらこゆずを頭に乗せた夜々がそこにいた。

 

(私の刃を素手で……この女も強い!)

「狭霧ちゃん、幽奈ちゃん!」

「こゆずさんも!ご無事だったんですね!」

 

変化で小さくなっていたこゆずが幽奈に飛びつく。涙ながらに、こゆずは状況を説明し始めた。

 

「ぼっボク、狭霧ちゃんが捕まってもうダメだと思って…助けを呼びに地上に出たんだ!そしたら呑子ちゃん達が…!」

「狭霧ちゃんに連絡貰ってすぐ車飛ばしてきたのよぉ〜!もぉビックリしたわよぉ!せっかく助けに来たのに、もう敵の親玉殴り飛ばされちゃってるんだものぉ!コガラシちゃんがあんなに強かったなんてねぇ……これじゃあアークちゃんの出番もないわねぇ」

「え、アークさんも来てるんですか!?」

「んーん……アークは後から来るみたいなの」

「そ、そうですか…」

「さぁ!みんな早く帰りましょお〜!仲居さんがお夜食作って待ってるわよぉ。アークちゃんも拾わなきゃあ〜」

「は…はい!」

 

しかし、そんなことを許すはずもない者が一人。朧は刀を人間の手に戻すと、今度は両方の手を刀へ変化させた。

 

「いいや帰さん。おまえ達全員……龍雅家に嫁ぐがいい!」

「待て待て!これ以上は被害が広がるだけだと思わねーか?それってオマエの言う龍雅家のためになるのか?」

「……なんだと?」

「俺は戦わずに済むならそれに越したことはねぇと思ってる。頭を冷やして考えてみろよ。それでもまだ戦うことが最善の一手だってんなら相手してやる」

 

 

 

『ありとあらゆる手段を厭わず……龍雅家を強く…!』

 

 

 

「……そう、だな。玄士郎さまを倒すほどの男と闘り合うなど……愚策も愚策だな……」

「朧さん…!」

 

朧は刀身を収め、構えをといた。それまでの緊迫していた空気が緩み、一段落ついた。

 

 

 

 

 

 

「それでは困る」

『!?』

 

不意に放たれた殺気に、上からかけられた言葉に全員が見上げた。

 

そこには、三体の異形が浮かんでいた。二本の巨大なツノと背丈より長く先が針なっている尻尾、そして両手の甲から一本ずつ生えている太い棘が特徴の金色の怪人。その後ろには二体の女性のような、しかし蝙蝠のような翼や手の形に蠢く服が特徴の怪人が侍っている。

 

「なんだアイツら……」

「龍雅の者ではない。貴様ら、何者だ!」

 

朧の鋭い声に、金色の怪人はクックッと笑いながらも答えた。

 

「我に呼ぶ名などはない。生贄を喰らい、人の願いを叶える魔神よ。だが……そうだな、とある人間は我を『いにしえの魔神』と呼んだ」

「いにしえの……」

「魔神……だと…?」

「龍神さまの次は魔神かよ…」

「だ、大丈夫だよ!コガラシくんは龍神を一発で倒しちゃったんだから!」

 

金色の怪人、いにしえの魔神はこゆずの言葉を鼻で笑うと、空気を踏み台に高く跳躍し、玄士郎のもとに迫った。

 

「な……玄士郎さまに何をする気だ!」

「ククク……今回は、我は手を出さん。その代わりとして、コイツにはまだ働いてもらおうと思ってな」

「っ!」

 

朧は瞬時に加速すると、両手を刀へと変化させ斬りかかった。その刀身はいにしえの魔神へと直撃したが……傷一つ付くことはなかった。

 

「くっ!?」

「フン……眷属風情が」

 

━━━光の炎

 

いにしえの魔神は口から聖なる光を宿した火炎を吐き出した。斬撃を肉体で難なく受け止められたことで硬直していた朧は避けきれず、コガラシたちのもとへと叩きつけられてしまった。

 

「ぐあっ!!」

「朧さん!」

「ククク……身の程を弁える良い機会になっただろう。我自らその身に教えてやったのだ、感謝するがいい」

 

いにしえの魔神は気を失ったままの玄士郎へ手をかざすと、魔神の手からどす黒い骸骨のようなものが湧き出始めた。

 

「さあ、黒龍神よ!屈辱だろう、見下していた人間に倒されたことが!喜ぶがいい、貴様は復讐の機会を得るのだ!我が盟友の『呪い』によってな!」

 

『呪い』がいにしえの魔神の手元を離れ、玄士郎へと向かう。気絶している玄士郎には抵抗の術が無く、『呪い』は玄士郎の胸へと吸い込まれた。

 

「ぬ…ぐグ、ギギギ……」

「玄士郎…さま…!」

 

玄士郎が苦しみはじめ、体を黒い霧のようなものが覆っていく。その霧は玄士郎を飲み込み、膨張し……一匹の巨大な龍と化した。眼は赤く光り、鱗の所々からは禍々しい呪いの霧が吹き出している。

 

「クハハハハッ!さあ暴れるがいい、黒龍神よ!」

「グギャアァァアアアッッッ!!!」

 

突風が吹き始め、天井に雷雲がかかる。黒龍神・強とも言うべきソレは、コガラシたちへと牙を向けたのだった。

 

 




ドラクエ9より、いにしえの魔神登場です。今回はハーゴン側として動いてもらいます。

玄士郎の龍の姿ですが、原作でちょくちょく出てくる龍神をイメージしてくださると。そこへドラクエ11の強モンスター要素が加わっています。

アンケートの方もご協力よろしくお願いします。

次の番外編どれがいい?(締め切りは11/5まで)

  • 戦闘回
  • 日常回(魔界)
  • ギャグ回
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