ゆらぎ荘の皆は出てこないです……。
地球のすぐそばに浮かぶ月。そこへ複数の青い渦が発生し、魔物たちが溢れ出てくる。
「やっとだ、やっと戦えるぜ!」
「悪魔だろうがなんだろうが、我ら帝王軍に死角なしよ!」
邪教団との戦いに胸を躍らせる魔物たち。久しぶりの戦に興奮しているのは、帝王軍としての大規模な戦闘が久しぶりだからだ。
列の先頭であった彼らは月の大地を踏みしめ、いざ一歩踏み出した……その瞬間、爆発に飲まれた。
「!?敵襲、敵襲ー!」
「これは罠だ!」
旅の扉から新たに到着した者たちが慌てふためく。旅の扉で攻めてくることを読んでいた邪教団は、魔力を感知すると共に包囲。ある程度出てきたところで奇襲をしかけたのだ。
「ククク……わざと呪いと魔力を使い転移したかいがあった。ここまで愚直に攻めてくるとはな」
姿を現した邪教団、彼らを指揮していたのは金色の怪人。コガラシたちを苦しめた、いにしえの魔神であった。
「猛威を振るった帝王軍と言うから、どんなものかと思って相手してみれば……この程度の奇襲で騒ぐか」
未だに混乱している帝王軍を嗤いながら、魔神は冷静に様子を見続けた。彼はその力で一国を滅ぼしたこともあるが、それはたんに力によるものだけではない。呪いを振りまき、部下が有力な敵に魅了されたことさえも利用し、確実に全ての生命を奪った。その目は力に溺れぬ、知性を秘めている。
そんな彼も耳にしていた。突如頭角を現してきた、地獄の帝王と呼ばれる魔族が率いる帝王軍。その圧倒的な力で瞬く間に数多の世界を掌握していったという。
しかし、どうしたことだ。あの慌てふためき様……あのような者どもが世界を支配できる軍勢には見えない。
「地獄の帝王が直々に出ていたのか、それとも弱い世界に当たっていただけか……どちらにしろ、我の敵ではない」
再び呪文を放つよう命令する。悪魔や神官たちが様々な呪文を唱え、帝王軍へと放たれた。それらは慌てふためく帝王軍へと直撃……することなく、透明なバリアに反射され跳ね返ってきた。
「なっ!?マホカンタだと!?」
跳ね返った呪文により悪魔と神官たちが吹き飛ばされていく。自身へ向かってくる呪文を腕の棘で切り落とした魔神は、立ち込める砂煙のなか、帝王軍へ光の炎を放つ。しかし、今度は逆風が吹き荒れ、光の炎までもが跳ね返されてきた。
「ぐ…カアッ!」
全身に力をため、棘の一閃で炎をかき消した魔神。帝王軍へ目を向けると、先程まで混乱に陥っていた魔物どもの姿は無く、統制された帝王軍の姿があった。
「な…バカな!先程のは……」
「我ら帝王軍が、この程度で怯むことなどない」
帝王軍の魔物たちが道を開けていく。姿を現したのは、魔族の王ピサロだった。未だに驚きを隠さない魔神へ、鋭い眼光を突きつけながらピサロは続けた。
「我らは魔物、強い闘争本能を持つために策を練るのは得意としない者も多い。だが、帝王様は我らが心置きなく暴れられるように、奇襲に備えた呪文や技の使い手を育成した。我ら帝王軍に死角はない」
「ぐ……おのれぇ!かかれ者共!邪神降臨の邪魔をさせるな!」
ギガンテスやサイクロプスなどの巨人が、悪魔神官やきとうしなどの信者が、アークデーモンやじごくのもんばんなどの悪魔が帝王軍へと襲いかかる。
それに対しピサロ率いる魔族王軍も、アームライオンやおにこんぼうなどを前衛に、だいまどうやグリーンドラゴンなどを後衛に陣を展開した。
互いの体が、呪文が、技がぶつかり合う。ギガンテスが棍棒で吹き飛ばそうとしてくれば、おにこんぼうが棍棒で迎え打ち、だいまどうがメラゾーマを放てば、アークデーモンがイオナズンで牽制する。
入り乱れ、激戦が繰り広げられる中、その中心にて魔神とピサロは戦っていた。
━━痛恨連打ッ!
━━神速の剣技ッ!
魔神が繰り出す痛恨の一撃をピサロは目にも止まらぬ早業で威力を減らし、逸らしていく。魔神の棘とピサロの『魔剣士のつるぎ』が幾度もかち合っては一進一退の攻防が繰り広げられていた。
「速さでは敵わぬか……」
「フッ!」
━━神速の一閃ッ!
ピサロの剣を棘で防ぐも、その威力に後ろへと吹き飛ばされる魔神。地面へ着地した時には既にピサロが追いついており、その剣を振り下ろした。
「むぅんっ!」
「ぬっ!?」
魔神が拳を振るう。先に届いた剣が魔神の腕を切り落とそうとするが、高い音を発して止まった。一瞬の硬直、その間に魔神はピサロをなぐり飛ばした。
「くっ!」
「ぬう……」
着地したピサロが剣を構える。魔神はゆっくりと起き上がり、不機嫌そうな表情を隠しもせず言った。
「我は自身にバイキルトとスクルトをかけた……だというのに、今のですら大きなダメージにはならんか」
「なるほど、さきほどの異常な頑丈さの理由はそれか」
剣が止まったことに納得したピサロは、魔神の実力と判断力に舌を巻いた。吹き飛ばされながらも補助呪文を唱え、それを気づかせないように地面の砂埃を巻き上げたのか。
「魔神と名乗るだけのことはある。その強さであれば魔王の域にまで到達しているだろうな……提案がある」
「ほう?言ってみろ」
「今すぐ降伏し、傘下に加われ。帝王様は寛大なお方だ……降伏すれば命だけは助かるだろう」
「ククク……なるほど、我を邪教団から引き抜こうというわけか。面白い……だが、ことわる!!」
━━ちからためッ!
━━痛恨連打ッ!
魔神は全身に力を溜め、痛恨の一撃を連発した。ピサロは剣技でずらしていくが、魔神はさらにペースを上げていった。
「我は生贄を食らい、願いを叶える魔神よ。すでに契約は成っている!この我が、ハーゴンを裏切ると思うなぁ!!」
渾身の一撃がピサロを剣ごと吹き飛ばす。ピサロは剣を地面に突き刺し速度をころし足を地につけた。
「破壊神シドーの復活まで協力することが奴の願い。貴様らを倒せずとも、ここに釘付けにしておれば良いのだ」
「……そうか、ならば残念だったな」
「なに?」
ピサロの返しを訝しむ魔神。次の瞬間、爆発音が轟いた。
「なんだ、何が……っ!?」
爆発元を探るため辺りを見渡した魔神は気づいた。神殿の方角から煙が上がっていることに。
「なぜ神殿から……っ!まさか貴様ら!」
「そうだ……我々は帝王軍の一部、魔族王軍。他の軍団がいくつもの場所に旅の扉を繋げ、同時に進行していたのだ。我らを足止めしたところで、他の軍団が手を下すまでのこと」
「バカな……おのれぇ、おのれぇぇえええっっ!!」
「むっ……」
いにしえの魔神から赤いオーラが噴出した。放たれる神威が強まり、その目に瞳は無くなっている。これは力ある魔物が激昂することで入る『激怒状態』。身体能力の著しい強化と、技の威力が高まる形態だ。
ピサロは気を引き締め、剣を構える。いにしえの魔神は三つの目で睨みつけ、ピサロへと飛びかかったのだった。
いにしえの魔神の名台詞「だが ことわる!!」を出せて満足……さて、魔神はどこまで行けるのか。
次はオムド、クロウ、カルマッソの予定。
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