ゆらぎ荘の帝王様   作:サンサソー

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書き方をできる限り戻してみました。ちょっとぎこちないか…?



第42話 邪悪なるもの

「アークちゃんが……」

「地獄の帝王……」

 

見慣れた人の姿、その面影すらないほどの怪物となった我はさぞや恐ろしく映っているだろう。

 

人智を超えた力を持つコガラシ、そして鬼である呑子と言えども、次元を超えてその名をとどろかせるほどの怪物を目にすればこうなることはわかっていた。

 

「……お前も人が悪い。仮にも神官であろう……己から打ち明ける程度の甲斐性は見せてくれてもよかろう」

「ククク……いくら地獄の帝王と言えども、自分から打ち明けるのはなかなか難しいかと思ってな。余計なお世話だったかな?」

「グゴゴゴゴ……なるほど、覚悟はできているらしい」

 

脚を勢いよく振り下ろすと、床に大きな闇の渦が二つ出現する。その中へ手を入れ、我が愛用している二振りの双剣を抜き出した。

 

「良いのか?声をかけんで。それぐらいは待ってやってもよいぞ」

「グゴゴゴゴ……」

「フッ、もはや振り返りはせぬか。だがどうやら…」

 

「待ってくれ!アークさん!」

 

「…あやつらの方は、お前に用があるみたいだぞ」

「………………」

 

戦闘形態を既にとっている。もはや人型の時とは既に精神構造が違うのだ……故に。

 

「人型の時であればともかく、今の我には特に思うことは無い」

「ククク……本当か?」

「くどい。この地獄の帝王が、人間一人の声に耳を傾け、心を動かすとでも。我にあるは、お前を滅ぼし破壊神降臨を阻止することだけだ」

「そうか。それは残念だな」

「……貴様の時間稼ぎも終わりだ。さあ、儀式などする余裕は無いぞ、邪神官!」

 

剣を床に突き立てる。剣から床へと暴走する魔力が流し込まれ、ギラグレイド級の閃熱がハーゴンへと猛進した。

 

「魔力など!」

 

内なる破壊神の力を身に纏い閃熱を受けるハーゴン。しかし、大魔王級の超魔力はたとえ神の力があったとしてもそう易々と受けきれるものでは無い。

 

閃熱はハーゴンの魔力を食い破り空高く吹き飛ばした。

 

「ゴッ!?くそ……なっ!?」

 

空中で体勢を立て直すハーゴン。が、大魔王を相手にするならばその動作はいけない。

 

ハーゴンが地を見た時には、すでに眼前にまで剣圧が迫っていた。

 

━━帝王の一閃

 

とっさに魔力を纏い、簡素ではあるが結界を何重にも貼る。僅かながら威力が殺された剣圧は、ハーゴンの腹に深い斬り傷を負わせるだけにとどまった。

 

「ほう……」

「ぐ…化け物め!!」

 

ハーゴンの身体をベホマの光が包む。傷を癒したハーゴンは、魔力で足場を作り蹴ると、我へと突撃してきた。

 

━━破壊のカルテットッ!!

 

地面から魔力でできた悪霊の神々の幻影が現れた。アトラスの幻影が棍棒で殴りかかり、バズズの幻影が爪で切り裂き、ベリアルの幻影が口から魔力球を吐き出し攻撃してくる。

 

我は双剣を交差させ防御の構えをとる。神々の攻撃が我を打ち、そこへ凄まじいスピードで迫っていたハーゴンが、魔力を込めた蹴りを放った。

 

魔力が爆発し煙が巻き上がる。幻影が消え、地に降りたハーゴンは……地獄の雷に打たれた。

 

「ゴアッ!?」

「グゴゴゴゴ……」

 

ハーゴンの技によるダメージはあるが、傷ができるほどではない。頭の上で双剣を合わせ、勢いよく左右へ振りきる。剣にのった魔力は竜巻となり、ハーゴンを飲み込んだ。

 

━━地獄の竜巻

 

竜巻の中でもみくちゃに振り回されているハーゴンは、杖から破壊神の魔力を込めた魔力球を放ち爆発させることで竜巻をかき消した。

 

「グフッ…はぁ…ククク、クハハハハ!!なるほど、確かに噂に違わぬ圧倒的な破壊力、そして耐久力だ!だが…」

 

魔力で空中に浮いたハーゴンが、破壊神の力を再び右手に集中させ巨大な爪を作り出した。

 

「いくら地獄の帝王とて、この技を受けてはタダではすむまい!!」

 

━━邪神のツメッ!!

 

巨大な三本爪が迫る。対して、我は双剣に魔力を纏わせ一息に振り下ろす。それにより剣から必殺の魔力の剣撃が放たれた。

 

━━必殺の一撃ッ!

 

邪神のツメは薄紫色の魔力波と拮抗するが、やがてヒビが入り広がっていく。その威力は確実に押し負けていた。

 

「な、なんだと!?我らが神の力が!!」

「その一部を行使しているだけであろう。であれば、この結果は当然だ」

 

必殺の一撃は邪神のツメを砕き、ハーゴンを飲み込む。轟音と極光、その中で微かにハーゴンの悲鳴が聞こえた。

 

「……これで終いか」

 

煙の中から地に落下するものがある。ハーゴンだ。凄まじい勢いで地面へと激突するも、もはや悲鳴も出せないのか衝突音しか聞こえなかった。

 

……念の為、死体を粉々にしておくか。ハーゴンめはもはや虫の息であろうが……意識がまだあれば何をするか分かったことではないからな。

 

「…………?」

 

脚をハーゴンの落下地点へと進めようとした時、ふと背後に気配がある。

 

振り向くと、そこにはコガラシと呑子が立っていた。

 

「アーク…さん……」

「グゴゴゴゴ……なぜここにいる。ゆらぎ荘の中にでも入っていろ。後は全て我らが片付ける」

「……はぁ、アークちゃん?あまりコガラシちゃんを虐めないでちょぉだい?アタシたちぃ…あなたに話があるのよぉ」

「我には無い。あと少しで全てが終わるのだ…お前たちに時間を食っている場合ではない」

「そ、そんなこと言わなくてもいいじゃなぁい…」

「我がこの姿になれば、思考は戦闘や破壊よりになるのだ。今の我には何を言おうと…」

 

「アークさん!オレ、別にアークさんの正体なんてどうでもいいからな!!」

 

……………………

 

「確かに面食らっちまったけど、それでもオレにとっては…!」

「……アタシもおーんなじ。だから……ぜぇんぶ終わって、そしたらまた改めて話してもらわないとねぇ」

「……………………」

「それにぃ、霊能力者とかぁ……色々と嘘ついてるのバレバレだったしぃ?」

「ぬ……」

「とにかく……オレは、オレたちは待ってますから!」

 

初めて、振り返った。

 

この世界に戻ってきて、今に至るまで彼らの顔を一度も直視できていなかった。

 

『見慣れた人の姿、その面影すらないほどの怪物となった我はさぞや恐ろしく映っているだろう』

 

まったく……どうやら私は見くびっていたのかもしれない。いや、気付かないふりをしていたのかもな。

 

私と彼らとでは存在の格が違う。それ故に、今のうちに別れておこうとしていたのかもしれない。

 

……何が地獄の帝王か。人間と、ゆらぎ荘という場所で人間らしい生活をしてしまったことで、我の中にある()を……遥か遠い記憶を、感覚を蘇らせてしまった。

 

「……その時点で、すでにこうなることは決まっていたのか」

「え…?」

「……全てが終わったら……再び自己紹介をしよう。嘘偽りなく、全てを打ち明ける」

「アークちゃん…」

「今でも我をそう呼べるお前たちには驚いたぞ。異世界でも類を見ぬ者たち……この世界を選んで良かったと、まさかこの姿で心の底から思うとはな」

「そうだな、そしてそれが最大のミスだ」

『!?』

 

ハーゴンが…起き上がっている!?不敵な笑みを浮かべるやつの周りには、地獄のいかずちが音を立てていた。

 

「きさま…!」

「すでに神官どもは生贄にしてある!月で、すでにすべき儀はほとんど終わらせた!であれば、お前たちが話していた僅かな時間でも、降臨の儀はすぐに行うことができたぞ!」

 

いかずちが高速でハーゴンの周囲を回り始める。止めようと双剣を振るうと、ハーゴンは防御すらせずに双剣の一撃をその身に受けた。

 

「グブッ!?ク……ククク、もう遅い。もはや私を倒しても、世界を救えまい!」

 

ハーゴンの足元に黒い渦ができる。素早く我が下がるのを見たハーゴンは、口元をニヤリと歪ませ高らかに叫んだ。

 

「我が破壊の神シドーよ!今、ここに生贄を捧ぐ!!」

 

ハーゴンが渦の中に飛び込み、姿を消す。渦は消え、その代わり空に巨大な青みがかった闇の渦が現れた。

 

「……結局、降臨することになったか」

「あそこから、破壊神ってやつが出てくるのか…?」

「大きな渦……おっきぃわねぇ。あの渦を見てるだけで寒気がするわぁ」

「……?」

 

大きな渦……いや、大きすぎるぞ。破壊神シドーは、我と同等かそれ以下の背丈だったはず。あの渦は我が入ってもまだまだ余裕がある程の大きさ……。

 

なんだ、この込み上げてくる不安……嫌な予感がする。

 

渦から何かがゆっくりと出てくる。それは中がまるで見えないほどの密度の巨大な闇の玉だった。

 

 




一人称、二人称、三人称のどれかに慣れてしまうと、ほかの二通りがやりづらいですねぇ。
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