双剣を振り上げ、勢いよく床へと突き刺す。私を中心に暗い光を放つ魔法陣が展開され、指を向ければ雷が顔を出す。
━━ジゴスパークッ!
地獄の雷が放たれた。対し、破壊神は掌をこちらへ向け紫電ほとばしる黒雷を生み出す。
━━ジェノスパーク
黒雷は地獄の雷と少しばかり拮抗した後、突破。次の瞬間には私の身体を凄まじい痛みが襲った。
「グゥ…ヌァアアアッ!」
━━ドルマドンッ!
━━じごくのごうかッ!
右手の剣に闇の雷球を乗せ、左手の剣に地獄の業火を吐き纏わせる。右手の剣を振るい雷球を飛ばし、左手の剣で突きを行うことで業火の渦を破壊神へと放つ。
「ォォォオオオオ……」
━━ジェノスラッシュ
破壊神の右手に黒雷が溜められ……爆ぜる。振るわれた剛腕から黒雷の斬撃が放たれ、雷球と業火の渦は一瞬で掻き消される。
「ヌゥンッ!!」
双剣で斬撃を受け止めるも、あまりの威力に後方へと押される。なんとか耐えていると、破壊神はその口と龍の口に闇の魔力を集中させ、魔力砲を放つ。しかし、追撃が来ることは想定済み。
先程の撃ち合いでわかった。私は耐久力にものを言わせ圧倒的破壊力で相手を叩き潰す戦法を多用する。しかし、あの奇妙な破壊神は、単純な火力であれば私よりも上だ。
これでも、他の大魔王の中でも純粋な破壊力と耐久力は上位に位置すると自負している。現に傷を負わせるなど勇者や最上級の神々ぐらいにしか成した者はいない。だが、それでも私の技を難なく押し切られることなど無かった。
つまりは、私とあの破壊神の力はあまりにも乖離している。しかも奴が本気を出しているようには見えない。己に降りかかる火の粉を払おうとしているだけ。
真正面から挑めばどうなるか、それは想像に難くない。しかし私は地獄の帝王。手数で言えば私の右に出るものなど居ない。
━━帝王の構え
言わずと知れた我が構え。受け止めていた斬撃から剣を離し、迎え入れるように両腕を広げる。黒雷の斬撃と二本の魔力砲は私に当たり……破壊神へと跳ね返された。
「ォォオオオッ!?」
まさか攻撃が返ってくるとは思いもしなかったのか、破壊神は直撃を受けた。自分の力だからこそ、それは自身を傷つけるに能う脅威となる。
メタル属と呼ばれる魔物の種がいる。メタルボディと呼ばれる硬い身体と呪文への完全耐性を持つ彼らは、しかしマホカンタなどで跳ね返された攻撃や呪文にはその効果を発揮しない。
帰ってきた力は、元は己の力。それゆえに身体はどうしても受け入れようとする。それすらも通さないのであれば、力を振るうこと自体が不可能であるためだ。
それゆえ、確かに跳ね返された攻撃は破壊神に効いた。手応えはあった、悲鳴も聞こえた。しかし、煙から姿を現したのは無傷の破壊神。身体が特別頑丈なのか、はたまた無力化する術を持っているのか。私の魔力も込められた攻撃は破壊神を傷つけるまでには至らなかった。
「ォォォオオオオッ!!」
それどころか、破壊神の逆鱗に触れてしまったらしい。顔を怒りに染め、身体に赤いオーラを纏った。ある程度の強さを持つ魔物は、追い詰められると湧き上がる怒りによって『怒り』状態となる。その効果は身体能力や技の威力を高めるというもの。
破壊神はさらにその上、『激怒』状態となった。その上昇率は怒り状態とは比べ物にならない。
「グゴゴゴゴ……なるほど、ここからが本番というわけか」
破壊神の手に眩い雷が迸る。対し、私は空間に腕を突き刺し引き抜いた。手に掴み取ったのは禍々しい紫結晶。それを口に含み、噛み砕いた。
内なる力が活性化し、それは結晶となって体表を突き破る。その周辺は黒く変色し鉱物のごとく硬化した。
いつしかの記憶の一つ、勇者と神の軍勢を相手取った後に手に入れた異なる進化の形。
「ォォォオオオオッ!!」
「グォォオオオオッ!!」
━━邪神の雷撃ッ!
━━凶帝王の双閃ッ!
凶帝王となった私は、破壊神との真剣勝負に挑むのだった。
「どわわ!?っとと」
旅の扉より、一人の巨漢が転がり出る。
キメラのつばさによって山中の拠点に戻っていたカンダタだ。彼はまさに今、月にいるであろう帝王軍に現状を伝えるために月に転がり出たのだ。
作戦通りに事が進んでいるならば、それぞれの軍団は旅の扉を囲うように陣を構えているはず。もしそうでなくとも兵を置くことはされているはず。
「すぐに軍団長に取り次いでくれ!地球に……!?」
顔を上げたカンダタは見た。
旅の扉の周囲に陣は無く。
それどころか兵の一人も見当たらず。
今転がり出た旅の扉、それがある小さな地を除いて。
何も無い宇宙空間が広がっていた。
戦闘一辺倒にしたいのに、他の展開を書いとかないと後々になってグダってしまう。苦肉の策です……。