闇の激流の中、私はコガラシくんらと共に中心部へと直進していた。魔力を纏っているため闇の影響は無いが、この濃度は歴代の大魔王にも匹敵する。
「真っ暗闇っすね」
「こ、これはちゃんと進めているのでしょうか?」
「案ずるな。一面の闇でわかりずらいだろうが、しっかりと進んでいる。我の魔力からはくれぐれも出るな。闇に肉体を削り取られるぞ」
「それは怖いわねぇ…」
それにしても、破壊神との戦いに彼らを巻き込んでしまうとは……せめて、傷つかないように守らねば。
「破壊神だかなんだか知らねーけど、俺たちの世界を破壊させやしねえ」
「はいっ!破壊神さんには悪いですが、帰ってもらいましょう!」
「あらぁ、2人ともやる気満々ねぇ〜」
そんな私の心配を他所に、コガラシくんたちは気合を入れている。悪霊の神々やハーゴンと戦ったというのに、凄まじい闘気。素直に感心できる。
「……むっ、光が見える。中心部に着くぞ」
「よっし!散々な目に合わせられたからな。拳骨をくれてやる」
拳をポキポキと鳴らすコガラシくん。呑子さんもゆらぎ荘から持ち出した『鬼殺し』を10本開け、一息に飲み干した。
やがて光が大きくなり……私たちは蒼天の中へと飛び出した。着地するのは無限に広がる水面。揺らぎすら起こさず、鏡のように空を映す様は幻想のような景色だ。
「ここが……暗黒球の内部っ!?」
「綺麗ですぅ〜!」
「……2人ともぉ、はしゃがないの。ほら、神様がお待ちかね見たいよぉ?」
呑子さんが上空を指さした。そこにはつい先程に見た青い巨体。力を溜めていた破壊神が、その目を開いた。
「っ!スゲー、殺気だけでこんだけ…」
「こ、こここコガラシさぁん…!」
「ちょ、落ち着けって幽奈!」
「はぁ……呼び出されて早々っていうのは同情するけどぉ、あたしたちも色々とされたしぃ……10升モードぉ…!」
呑子さんが角を生やし戦闘態勢をとる。それと同時にコガラシくんと幽奈さんも鋭い視線を投げた。
対し、破壊神もまた腕を広げ唸り声に似た声を上げた。
「わが…なは……はかいの…かみ、し…どー…」
「っ!まさか、言葉を…!」
「きさまら…に……さずけ…る…は……ハカイ!」
破壊神シドーが言葉を口にすることに面食らったが、名乗りを受けて返さぬは無礼というもの。もとより返すに能わぬ名など持ち合わせてはいない。
「我はエスターク。地獄の帝王!破壊神よ、貴様はこの暗黒球より外へは出れぬ。ここで滅びを与えてやろう!」
「……おろ……か…な…。われの…もとめるは……ハカイのみ!」
━━いなずまッ!
シドーの手から激しい稲妻が放たれた。私が剣で受け流そうとすると、稲妻が突如不自然な動きをし、地へと軌道が逸れた。
「これは…幽奈のポルターガイスト!?」
コガラシくんの声を聞いて幽奈さんの方を見てみると、身体は震え青い顔をしながらも、懸命に前を向く幽奈さんの姿があった。
恥ずかしさなどによって、心を大きく動かした際に発動してしまうポルターガイスト。破壊神の威圧により本能的な恐怖を常に呼び起こされている今の状況は、幸いポルターガイストを発動しやすくさせていたのだ。
「は、破壊神さんの攻撃は私が引き受けます!」
「グゴゴゴゴ……ありがたい」
━━かがやくいきッ!
━━しゃくねつッ!
私の吐き出した冷たく輝く息を相殺せんと、シドーもまた灼熱の炎を吐く。しかし、それはコガラシくんが放った拳撃が消散させたことで吹雪はシドーへと届いた。
「どんどん行くわよぉ〜!」
呑子さんの鬼火砲が放たれる。それはかつてないほどの威力を誇り、シドーの注意を向けさせた。
次々と放たれる鬼火砲。煩わしそうにシドーがその手に雷を迸らせるが、そこで私も攻撃を準備する。
━━ジゴスパークッ!
━━ジゴスパークッ!
互いに放った地獄の雷が衝突した。その合間を呑子さんが操る鬼火砲が進み、シドーへ着弾していった。
「グギャアアアァァァァアアアッ!!」
大したダメージにはなっていないが、鬼火砲の連打は怒りを誘えたようだ。しかし、それにばかり気を取られていると…。
「フッ!」
「グギッ!?」
コガラシくんを見逃す。背後からシドーへ飛び乗った彼は、その背中へと連撃を見舞った。彼は神を一撃で沈める拳を持つ。その威力はたしかに破壊神にもダメージを与えられるものだった。
「グゴゴゴゴ……コガラシ!飛べ!」
「っ!うす!」
コガラシくんがシドーの背中から飛び退いたところへ、私の双剣が破壊神を襲った。しかし流石は伝説の破壊神。すぐさま反応し魔力を纏わせた爪で迎撃に臨んだ。
━━帝王の一閃ッ!
━━邪神の爪ッ!
衝突が凄まじい衝撃波を生み、辺りを吹き飛ばす。空中で私とシドーは接近戦にもつれ込んだ。
━━たたきつぶしッ!
━━破壊の鉄拳ッ!
━━帝王の怒りッ!
━━邪神の怒りッ!
激しい攻防戦が繰り広げられる。ぶつかり合う度に衝撃波が発生し、コガラシくんたちも加勢に入れない。ここで私との接近戦を嫌ったか、シドーは幾度目かの衝突を利用し大きく距離をとった。
「ほろ……び…よ…!」
シドーの全ての腕が魔力を練り上げ、一つに融合させていく。凄まじい魔力量、一気に決めるつもりか!破壊の魔力はやがて禍々しくも神々しい光となり、辺りを照らし始めた。
迎撃のため、コガラシくんたちの前へ出て魔力を練り上げる。間に合うか…!?
━━真・完全覚醒ッ!
私が真の力を引き出した時点で、シドーは準備を整えていた。せめて盾となるべく、覚醒時に貼ったバリアに加えスカラ×2を唱える。
「ハカイ…!」
━━死滅の極光ッ!
放たれた破壊の光は私の肉体を容赦なく焼き、削り取っていく。後ろからコガラシくんたちの声が聞こえた気がするが、轟音のせいでハッキリとは聞こえない。
『死滅の極光』。聞いたことがある。破壊神シドーが世界を滅ぼす際に放つという技だ。本来、世界を破壊するために放つ力が、今や私へと向けられているわけか。
まったく、大魔王冥利に尽きる話しよな!
「グガアアァァアアアッ!!」
「っ!?」
━━必殺の一撃ッ!
双剣に暴走した魔力を纏わせ、一息に振り下ろす。必殺の斬撃は光を裂きながら進み、シドーに巨大な斬傷をつけ吹き飛ばした。
やっと全身を覆う痛みが消えた。片膝をつくも、まだまだ戦える力は残っている。
「アークさん!大丈夫ですか!?」
「無茶しすぎっすよ!」
「心配をさせないで欲しいわねぇ〜」
ああ、どうやらみんなは無事のようだ。ひとまず一難は退けられた。だが戦いはここからだ。気を引き締めねば。
シドーは未だに倒れていない。一旦攻撃をやめ、その傷を見ていた破壊神は手を添えた。
━━ベホマ
「……ああ、忘れていた」
「き、傷が…!」
私たちの付けた傷やダメージが全て癒えていく。そうだ、破壊神シドーは創造とも密接な関係にある。回復呪文や補助呪文にまで精通しているのだ。
であれば、こちらも惜しむ必要は無いというものだ。
━━めいそう
私は静かに目を閉じ瞑想する。これにより傷が癒え、数秒もあれば身体は戦闘前と同じ状態に戻っていた。
回復手段がある。互いにそれを知った。傷を付けても癒える相手を倒すのは一苦労だ。であればどうするか?
回復の余地すら許さない攻撃を叩き込むしかない。
「グギャアアアァァァァアアアッ!!」
「グガアアァァァアアアッ!!」
破壊神も同じ結論に至ったのだろう。『激怒状態』となり能力を底上げしていく。対し私もまた『激怒状態』となる。ここからは全力のぶつかり合い。そして、命の削り合いとなるだろう。
「行くぞ幽奈!呑子さん!」
「はいっ!微力ながらもお手伝いです!」
「今月もピンチだしぃ、早く終わらせなきゃねぇ〜」
「それはアンタの自業自得だろーがよ」
「コガラシくん酷いわねぇ〜」
戦場に似合わぬ空気を出しているが、彼らもまた決意の固まった目をしている。決着は、もうすぐそこまで迫っているという事だな。
ジョーカー作品だとシドーさん喋りますよね。でも他の作品だと余り喋らない。