第1章は次話で終了。長かった…ここまで長かった…。
『激怒状態』となったシドーが黒い呪いの瘴気を身に纏う。それはいつか見た大魔王のバリアを連想させる。しかしそれとは似て非なるもの。『無常の衣』と呼ばれるそれは、全てのダメージを半減させ状態異常を無効にする。
これも相まってダメージを与えずらい上に回復呪文ベホマまで使えるという鬼畜難易度。さらに破壊神は防御力を上昇させる強化呪文スクルトを使用し、その守りは鉄壁を誇る。しかしそれらも、とある技を使用すれば無効化する事が出来るのだ。
━━超いてつくはどうッ!
上位効果を消し去る上位版の『いてつくはどう』。通常のいてつくはどうでは消し去ることができない神の権能や大魔王の禁呪でさえ無効化するというものだ。これも数あるいてつくはどうの種類のひとつに過ぎない。これ以上の効果を発揮する技はまだ存在する。
破壊神がせっせと築き上げた防壁を一瞬にして消滅させるというなんとも言えない状態だが、それに気を取られるような油断はできない。シドーは戦闘開始時から凄まじい殺気を放っている。少しでも余所見をすれば瞬く間に殺される。
それはコガラシくんたちも本能的に悟っていたようで、決してシドーから目を離そうとしていない。
「グギャアァァアアッ!」
━━連続ドルマドンッ!
シドーが動く。手に3つの闇の雷球を生み出し上空へと撃ち放った。それはある程度の高さまで上昇すると、法則など無視した速度で私たち目がけて落下してくる。
━━ポルターガイストッ!
幽奈さんが両手をかざすと、最上位呪文ドルマドンへ霊力が干渉する。しかし相手は破壊神の大魔力。一つを逸らすことが精々で、残り二つは私が斬り捨てた。
「はうぅぅ……私のポルターガイストがあまり聞いてません…」
「グゴゴゴゴ……奴も本気を出したことで干渉するのが難しくなっているのだろう。だが効果が無いという訳でもない。幽奈はそのまま続けてくれ」
「は、はい!お任せ下さい!」
「呑子は幽奈を守れ。コガラシは我と共に行くぞ」
「うす!」
「りょぉ〜か〜い」
幽奈さんは呑子さんに任せる。何度も自身の技を逸らされれば注意が向くのは必然。その時に幽奈さんでは対処しきれないと思ったのだ。
━━バイキルト×2
━━スカラ×2
「うおっ!?いつもより力が湧いてくるぜ…!」
「相手は破壊神。用心に越したことはないと思ってな。さあ、来るぞ!」
━━ジゴデインッ!
━━ドルマドンッ!
神聖なる巨雷が私たちへ、暗黒の爆雷球が幽奈さんたちへと放たれた。幽奈さんはポルターガイストを発動、ジゴデインを逸らし、向かってくるドルマドンは呑子さんが鬼火砲を撃ち込み爆発させる。
その間に、私とコガラシくんは充分に近づくことができた。コガラシくんが拳を叩き込むと、目に見えてシドーが後退する。攻撃力を底上げされたコガラシくんの一撃はシドーに充分なダメージを与えられている。
先程の打ち合いで分かったことだが、シドーは接近戦よりも遠距離戦に長けている。無論その腕力や物理技も脅威だが、やはり遠距離戦での苛烈さはなりを潜めていた。故にシドーは私とコガラシくんから距離を取ろうとする。
━━邪神の咆哮ッ!
「グギャアアアァァァァアアアッ!!」
「ぬ……」
「うおわっ!?」
シドーの咆哮による衝撃波を踏ん張って耐える。だがしまった、コガラシくんが後方へと吹き飛ばされてしまった!
そしてシドーは私に目もくれずコガラシくんへと向かっていく。『邪神の咆哮』は相手にかかった上位効果を消し去る力も持つ。先程かけた私の呪文の効果が切れたことをシドーは察知したのだ。
「コガラシさん!」
幽奈さんの悲痛な叫びが響く。呑子さんが鬼火砲で牽制しようとするも、シドーは腕の一薙ぎでかき消してしまう。私も追いかけるが、一歩届かない!
━━邪神の爪ッ!
シドーの爪がコガラシくんを打つ。強固なコガラシくんの防御結界を破壊し、肉体を破壊神の魔力が駆け巡る。吹き飛ばされた彼を幽奈さんが受け止めようとするも、勢いを殺しきれず共に地へと叩きつけられてしまった。
「コガラシッ!?幽奈ッ!?貴様ァアアッ!」
━━大氷炎の斬滅剣ッ!
━━死滅の破爪ッ!
双剣に灼熱の魔力と凍てつく魔力を纏わせ斬り掛かる。対しシドーも世界をも滅ぼす力を爪へ纏い真っ向からぶつかりあった。
「グガアアァァアアアッ!」
「グギッ!?」
しかし接近戦では私に分がある。爪の合間へ剣を滑り込ませ地へ叩きつけると、地面ごと空へ打ち上げる。すぐさま体勢を立て直したシドーが全ての腕に闇の魔力を集中させた。どうやら大技を放ちたいらしく、空間にシドーから吹き出した魔力が充満し次第に何かを形作っていく。
「グゴゴゴゴ……悪霊の神々か」
アトラス、バズズ、ベリアルの姿をとった魔力。影とも言うべきそれは邪魔をさせんと襲いかかってきた。
「アークちゃぁん!ここはあたしに任せてぇ!」
鬼火砲が悪霊の神々の影を襲う。呑子は3升でアトラスを相手取れた実力者だ。消耗しているとはいえ、10本も鬼殺しを飲んだ彼女なら悪霊の神々を抑えられるだろう。
「すべ…て……に…、ハカイの…やすら……ぎ…を…!」
「グゴゴゴゴ……少なくとも我には安らぎなど訪れぬ。ただ一つ、眠りだけが我の安らぎなのだ」
恐らく放たれるは最大の技。であれば我もまた全力で応えねば、倒されてしまうやもしれんな。
「……いや、自分のことよりも皆のことを心配しているのが大きいか。やれやれ、我も随分と絆されてしまったものだ」
「ほろ…び…よ………せかい…と…ともに!」
━━破壊の宴ッ!
今まで以上に高まった闇の魔力が球となり、輪の配置で撃ち出される。そしてその口から球の輪を潜るように闇の光線が放たれた。
━━帝王の構え
対し私は腕を広げいつもの構えを取る。そしてシドーの最大の技をその身に受ける。その瞬間、闇の魔力球と光線が跳ね返りシドーへと猛進した。
「グゴッ!?」
流石に自身の技が返されるとは思っていなかったのか、破壊の宴はシドーに直撃する。その隙へ、私もまた最大の技で穿たんと魔力を練り上げた。
双剣を打ち鳴らし、灼熱の炎と凍てつく冷気を纏わせる。それらを束ね巨大な紫の魔剣を作り上げた。
「この世界に貴様の破壊は必要無い。滅び、魔界へと戻るがいい!」
━━天上天下断獄斬ッ!
振り下ろされる魔剣。それを見たシドーはなんと、急激に魔力を高め闇を放出した。
━━破壊の宴ッ!
まさかの2度目。そうそう連発できるような技ではないはずである。破壊神の執念か、はたまたハーゴンの全世界への怨念ゆえか。光線と魔剣が衝突し、鍔迫り合いの状態となった。
「グギャアアアァァァァアアアッ!!!」
「グガアアアァァァアアアアッ!!!」
互いに全力で魔力を注ぎ込む。空間が軋み、暗黒球がだんだんと崩壊を始めた。このままでは先に暗黒球が消滅し、鍔迫り合いの魔力の波動で外の世界に影響が出る!
と、その時。シドーの背中に衝撃が襲った。シドーが首だけ振り返れば、そこには幽奈さんに支えられながら拳を突き出した状態のコガラシくんがいた。
シドーを襲ったのは拳撃。霊力を消耗した状態ではあるが、意識を割かせた功績はあまりにも大きい。
一気に魔剣が光線を押し返した。それに気づいたシドーが魔力を込めるが、一度取られた流れを取り戻すには遅すぎた。
「グゴゴゴゴ……破壊神シドーよ。世の理を成す神よ。貴様は強かった……が、我に注意を注ぎ続けるというミスを犯したが故に敗北するのだ。そう……貴様は、ゆらぎ荘を舐めすぎた」
一刀両断。魔剣はシドーを切り裂いた。その傷から魔力が漏れ出し、光となって強まっていく。もはやベホマも効果はあるまい。
「わ……われ…は……ハカイ…のかみ……し…どー……。ああ…ま…た……なせ…ぬ…か……」
シドーの身体に亀裂が入る。光が吹き出し、ボロボロと崩れていく。破壊神の最期だ。
「すま……ぬ……はー…ご……ん……」
瞬間、凄まじい轟音と共にシドーが弾け、大魔力の爆発が起こった。それは崩壊を始めていた暗黒球と共鳴し、暗黒球までも同様の爆発を起こし始める。
「出るぞ、掴まれ!」
コガラシくんたちを回収し暗黒球の外へと転移する。暗黒球の内部にもう人は無く、ただ破壊神を象った杖が一本残るばかりだった。
暗黒球が光を発し巨大な爆発を起こす。それによりハーゴンの作り出した異空間も崩壊し、激戦の跡は尽く無に帰していった。
「暗黒球及び異空間の崩壊を確認。帝王様は破壊神を打ち倒されたようだ」
「よし、我らも城へ戻ろう。久方ぶりの、戦勝の宴だ!!」
帝王軍もまた元の世界へと戻っていく。魔物の持つ戦闘衝動を充分に満たした後はもちろん宴に酔う番だ。
邪教団は壊滅。地獄の帝王とゆらぎ荘によって、世界は守られたのであった。
破壊神シドー討伐隊の勝利。第1章が終われば、またゆらぎ荘での話に戻るでしょう。実に原作第2巻(16話)の3倍近く話を出してますが、最後は何話になるのでしょう。3倍で考えると、最終巻では209…210?話だから……630話、え゛っ。
え、ダークライ?誰ですそれ。