ゆらぎ荘の帝王様   作:サンサソー

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一気に2話投稿…張り切ってしまった…。


第1話 地獄の帝王

━━魔界

 

そこは、魔物がはびこる闇の世界。

 

人間を狩り、戦いを楽しみ、暴力の絶えない…秩序など存在しない混沌の極み。魔物たちが好きに生きる地底世界。

 

力のある人間や神々に攻め入られたことも少なくなく、結束とは無縁な魔物たちは幾度も滅びの危機に陥ったこともあった。

 

上に立つものが必要だ。

 

魔物たちはこぞって争いあった。俺が、私が、我が、頂点に立つのは自分だと力を示しあった。

 

魔物たちにとっては力が全て。それは揺るぎない絶対の理であり、賛成はすれど反対するものなど皆無。

 

「まったくもって愚かしい」

 

例外が起こった。

 

━━━エスターク

彼は天賦の才を持った妖魔だった。強大な魔力と知略を巡らせ、史上初の魔界統一を成して見せた。魔界に秩序をもたらした彼は、魔物に富と力を与え、軍の編成・強化と秩序構築を徹底した。

 

2年。

魔界の全てを整えた時間だ。

呪文や儀式、魔法陣を用いた技術を編み出し、生産力・軍事力を向上させ、規則の制定や新たな取り決めを広めた。

魔物たちにとっては力こそ正義。上位者の命令に背くことはなく、全てがスムーズに進んだ結果がコレだ。

 

魔界を手中に収めた。次は外界、人間の住む地上だ。

人間は資源だ。食料にもなれば、儀式の生贄にもなり、労働力ともなる万能な資源。

人間の補充とともに、領土拡大のために軍が派遣された。

 

これには人間も神々も驚かされた。あの野蛮な魔物どもが隊を組み、作戦のもとに侵略してきたのだから。

強大な魔界軍は人間の抵抗などものともせずに進行した。村は焼かれ、城は陥落し、国が滅んでいく。

これには神々も黙ってはおけず、天使や天空人の軍勢が人間に味方した……が、もはや焼け石に水となった。出陣した神が1人、また1人滅んでいく。地上は地獄と化した。

人間達は、魔物をまとめあげ地獄を作り出した妖魔を恐れ、こう呼んだ。

地獄に君臨せし魔族の王。

 

━━━地獄の帝王

 

もはや完全制圧は目前。しかし、魔物たちは満足しなかった。自分たちは血湧き肉躍る戦いがしたいのだ。殺戮は十分に堪能した。

 

魔界軍はいったん侵攻を切り上げ、異世界へと手を出した。残り少ない人間や神を相手にするより、異世界の英雄や神々との戦いを求めたのだ。

帝王はそれを黙認し、戦神や主神などといった強大な敵には自分から出向き、討ち取った。いくつもの世界を征服していくうちに、他の魔王達との交流を深め、対等な存在として外交を執り行うなど、着実に帝王の収める魔界は力をつけた。

 

しかし、そう良いことばかりが起こり続けるほど、世界は甘くはなかった。いい加減に地上も完全に征服しようかと帝王が考えていた時、ついにアレが現れたのだ。

 

━━━マスタードラゴン

神々の頂点。天空城の主。全知全能の龍神。

そう魔物たちに呼ばれ、恐れられてきた絶対神が、残りの神々とともに魔界軍へ攻め込んだのだ。

異世界へと軍の大半を送っていた魔界軍は瞬く間に崩れていき、占領していた国も奪い返される始末。

 

帝王は焦った。いかに強大な魔界軍といえど、マスタードラゴンはあまりにも強大過ぎる。

今まで戦った神々とは比較にならない相手に対し、帝王は異世界へと送り込んだ軍団を呼び戻……さなかった。

もし、この戦いで敗北した場合、魔界軍のいない異世界はすぐに反乱を起こしてしまう。それでは他の魔王にも示しがつかぬし、魔界も危機に瀕してしまう。

 

帝王は地上に残っている軍団を全て魔界へ戻し、禁術の開発に励んだ。地上が取り返されようとも、再び征服すれば良い。今はとにかく、龍神への対抗手段を!

しかし、龍神は恐るべき早さで地上を取り戻し、魔界へと攻め入った。禁術はまだ完成していない。が、それでもやるしかない。帝王は、己の編み出した━しかし不完全な━禁術を体に施した。

 

━━進化の秘宝

術を施した肉体の進化を操作する禁術。

これを用いて、進化の果てにある最強の生物となれば、あの龍神であっても倒すことが出来るだろう。

しかし、まだこの術は不完全であった。成功させるには黄金の腕輪という呪物が必要なのだが、まだ作成できておらず、進化を操るどころか暴走させてしまう危険性がある。

 

結果、進化の秘宝は正しく働かず、強大な力を得たものの、帝王は記憶を失くした怪物となってしまった。

 

それでも全知全能の龍神を倒すには及ばず、地上に築き上げていた居城もろとも地の底へ封印されてしまった。

 

地上は帝王の力と龍神の力の影響により荒れ果て、その惨状をみた龍神は地上に干渉しないことを約束した。地上に降りたとしても、その結果が良いものとは限らない。己の力を過信していたことを悔やみながら、龍神は帝王を唯一倒せる存在、勇者の誕生を待ち望むようになった。

 

魔界軍は帝王の命令どおり異世界の領土を守り続けた。

地獄の帝王が、再びこの世に復活する、その時まで。

 

 

しかし、誰一人として知る者はいなかった。

進化の秘宝がもたらしたのは、記憶を代償に手に入れたのは、力だけではないことを。

 

 

帝王は無限に進化を続ける不老不死の怪物となっていた。

 

彼は寝ぼけ眼のうちに、勇者と戦い、異世界へと召喚されながら進化を続けていく。そして、再び彼は諸悪の根源と出会う。地獄の帝王が行く異世界物語が始まった。

 




感想くれたら私が喜びます。次の話を作成するための原動力となるので、よかったら感想ください。

次の番外編どれがいい?(締め切りは11/5まで)

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