アークナイツRTA 『境界無き方舟』獲得ルート 作:ゲルゲルググ
カチカチと、己のモノでない指を動かし、肉の無い腕の感触を確かめる。
数多のイレギュラーにより、もう私の劇は目茶苦茶なんですけど…どうしてくれるんですかね、コレ。数多と言っても、全てあの巫山戯た黒コート一人の仕業ですけれども。
脇役である筈の貴方だと最初は侮っていましたが……本当にあの男は、私が超えねばならないフィクションなのでしょう。
「ですからまぁ、あの三人には最初から期待してませんでした。こんにちはイモータル、さっきぶりですね」
『あの三人が聞いたら多分泣いちゃうぞその言葉。まぁ知らんけど……そんでよ、実はお前さん宛に贈り物があってな。この二人の事なんですけど』
そう言いながら、変態不審者は両脇に抱えていた二人の女をゆっくりと降ろす。
「アルハイム…様」
「……………兄さん」
レティシア、テキサス…私の家族。あぁ、本当に貴方は、私の劇を壊すくせして、演出と言うモノを多少なりとも理解している。
あぁ本当に本当に――
「ヘドが出る!」
跳躍、接近。一瞬にしてイモータルへ肉迫し、源石剣を逆袈裟に斬り上げる。
だが、源石の刃は、イモータルが首にかけてたアクセサリの紐を切っただけに留まる。
『うぉっ?!』
「「ッ?!」」
「チッ!」
本当に反応速度だけは良い。だが、半分反射で後ろに避けたせいで、態勢は崩れかけている。レティシアとテキサスはまだ反応仕切れていない!このまま踏み込んで殺す!
そうして、一歩踏み出したと同時に、ヤツが着けていたアクセサリ…小さな写真を入れれるヤツが地面に落ちる。
いや待て、何かのアーツユニットの可能性がある。どうするか……いや、此処はゴリ押す!
源石剣を振りかぶる。それと同時に、アクセサリが地面に落ちた衝撃でパカリと蓋が開く。
警戒はしていた。だからソレも視界に収めていた………が故に、見えてしまった。
大事そうに仕舞われた私の顔写真と、蓋の裏にコレまた大事そうに仕舞われた、
……え?エ?ゑ???
「えぇ?」
ナニコレ?え?
『キャー!アルちゃんのエ゙ェ゙ッ゙ッ゙ッ゙ッ゙ヂィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙!!!!!』
まるで意味がわからなかった。何故私の顔写真を?どうして大事そうに?どうしてテキサスの顔写真と向かい合う様に?
どうして私はビンタされたんです?
「ブベラァ?!」
面白い感じにきりもみ回転しながら飛んでいき、地面に着地するギリギリで踏ん張って姿勢を整え、ズサーッと急停止するアルくんちゃん。
「え?えぇ?!ちょっお前、そのペンダントに何があったんだよ?!」
『気になる?残念だが、まだまだ子供なレティシアには見せないんだ。対象年齢が高くてね』
「どういう意味だよ!!つか子供扱いすんな!おいテキサス、お前はなん――」
レティシアはテキサスの方を向き……メッチャ怖い顔に言葉を失う。
「ヒェッ」
『え、こわ』
「………イモータル、見せたら殺す」
『ウィッス』
どうやら、テキサスにはあの特級呪物が見えていた様である。般若の顔がメッチャ怖いよテキサス。
そしてこのアクセサリは後で念入りに処分されるのは、もう少し先の話。
『さて……脳がバグってる今の内に捕縛じゃあ!』
「やる事が汚ねぇ!」
未だに着地した姿勢でぼっ立ちしているアルくんちゃんに向け、手の甲から捕縛用ワイヤーを発射。複数のワイヤーがアルくんちゃんを縛り………
突如わなわなと体を震わせたアルハイムが、勢いよく体の表面にデカい源石を生成して無理矢理引き千切った。
「いったい……いったい何のつもりですかソレはァ?!」
『ウッハwマジかよ、アレ移動都市を牽引する時に使うヤツなんだけど』
ギリギリの所で脳の処理が終わったアルくんちゃんが、顔を赤くしながら源石剣を向ける。
『つか何のつもりって、推しの家族カプを鏡合わせにしただけだがね。なんか文句あっかオルルァン?!』
「後で殺す」
横から怖い言葉が聞こえてきた。
「いえ、今ここで殺します」
前からも怖い言葉が聞こえてきた。姉妹で同じ感想が出てきてるの可愛いね。
『まぁいいぜ。やってみやがりな!だがこっちも抵抗するぜ!拳で!』
「その拳ごと全身を擦り潰して差し上げますよ!」
「来るぞ!」
「お、おうっ!」
『さぁ気合入れろ!
┌(┌^o^)┐
「死ねェェァァァァァァァァァ!!!!」
【キェェェェェェァァァァァァ!!!!!】
金属と金属がぶつかり合う音が、複数も同時に、途切れる事なく響き続ける。
アサルトの分身するアーツと、なんか分身している響音増幅型の剣戟が音を奏で、それに合わせる様に踊っているではないか。
スロー、スロー、クイッククイックスロー、スロー、スロー、クイッククイックスロー、素敵だ……。
(チゲェ!!!合わせられてんだよ!俺が!コイツに!)
自分に言い聞かせる様に思いながら、刃を振り下ろす。そして同時に響音増幅型の左右後ろへ分身し、合わせて4方向からの同時攻撃。
だが――
【ブルルルァ!!!】
ガガガガキンッとリズミカルに鳴る剣戟の音。彼と同じく4つに分身したギターが、それぞれの分身の攻撃を受け止める。
「クソォッ!」
【ハッ!もう効かねぇンだよソレはよォ!!】
複数回の剣戟、からの唐突な足を狙った横払いにアサルトはギリギリで対応するも、無理な回避によって態勢をグラつかせてしまい、そこを逃さなかった響音増幅型の蹴りが入り吹っ飛んで行く。
【君の分身アーツの仕組みは、発動と同時に、現時点においてしなかった選択肢を具現化させる事で、分身を作っている。毟った髪の毛使って自分を増やしてンじゃなく、複数の平行世界から一瞬だけ自分を持ってきている。だから一瞬しか出来ないし、存在しないンだって話だなァ】
「ッ……クソッ!」
(んだよその理論意味わかんねぇぞ…それよりも、俺のアーツ術式の効果をもう見破られちまったッ!)
「分身を一瞬だけ作り出すアーツ」コレがフェイスレスの源石身体改造によって手に入れた、アサルトのアーツだ。だがさっき赤コートが言った通り、その仕組みまでを彼はそこまで熟知していない。
故に彼の分身は、持続が短く、最大4体までが限界。
そしてソレを解析した赤コートは、音楽アーツによって同じアーツ現象を再現している。塵界の音などの巫王関連の置き土産を解剖解析解体再構築する事で産まれた、旋律によって様々な効果をもたらすアーツで、わざわざ同じアーツ現象を使って戦っているのだ。
即ち、勝確する時によくやるホモの悪い癖!舐めプ!
「このカスがァ!あからさまに手ェ抜きやがってェ!」
【乱数調整と言って欲しいな青年!つか本気だよ、君を助ける為に今全力で戦ってンのさァ!】
「巫山戯んじゃァねぇぞォォォォォ!!!」
アサルトの分身と、響音増幅型の分身が激突。勝ったのは勿論、響音増幅型。
己のアーツの理解がまだ出来てないアサルトと、自己管理など朝飯前なホモとでは、矢張りアーツの精度に差が出るのは必然。しかも今のコイツは、追加アーマーにより音楽アーツを強化している。
それにより、本来アーツユニットであるエレキギターを掻き鳴らなければならない工程を、鍔迫り合う時の音、足音、空気を切る音、声、ありとあらゆる音で代用し、ただ動いてるだけで様々なアーツを発動可能状態にしている全身アーツ人間と化していた。
「なんでェ!なんでだァァァァァ!!!どうしてテメェはそんなにウザってェんだよォォォォォ!!!どうして手ェ抜いてんのに、俺よりも強ェんだクソがァァァァァ!!!」
【わからンか!教えてやろうか!
だが教えン!】
ガキィン!と、一際大きな金属音と共に、アサルトの刃が弾き飛ばされる。
【ワタシは人間的思考回路が少ない…つまり優しくないンでなァ、自分で考えてくれや】
次の瞬間、アサルトの顎が下からガツンとカチ上げられる。そして、カチ上げたアサルトに背を向け響音増幅型はギターを掻き鳴らす。
アーツの使用。しかも全身アーツ人間と化したのに態々術式の工程を行う……ソレ即ち出力の高いアーツの行使、及び複数同時使用。
宙を舞うアサルトの周りに、数十体の赤コートの分身が現れ、緑の雷光を纏いアサルトへ急接近。すれ違いざまにエレキギターから生やした緑の刃で斬り裂いていく。順番に、丁寧に、鮮烈に、容赦無く。
掻き鳴るギターの速度が速く成る程に、緑の閃撃も速くなる。
【いい事を教えよう青年。確かにワタシ達は手を抜いている。舐めプをしている。戦いにあるまじき縛りプレイをしている。
そしてソレは人を殺す事。殺すことだけに全力で手を抜いているンだよ。君たち人間にはさぞ理解できず、到底実現困難な事柄であろうよなァ!】
言い終わると同時に、雷光と共にアサルトが背後に着弾する。
【では休暇の時間だ。ゆっくりお休み】
瞬間、足でエレキギターを蹴り上げ、振り返りながら細い部分を掴み、雷光を纏った状態で地面に伸びてるアサルトに叩きつけた。
【それで、お仲間がNTR漫画の寝取られる女の如くやられた感想を聞かせてくれないかな!】
その直後に、千里観測型が大型機関銃を発砲。目の前まで迫っていた黒塗りの矢に着弾し、火花を散らす。
【慣れてきたぜ君の早漏ボウガン】
(ッ……クソッ!)
悪態をつきながらスコープから目を離し…一瞬にしてその場から3つ隣の廃墟の屋上へ移動するホークアイ。その途中で、アタッチメントを装着したボウガンを乱射する。
狙いは、千里観測型……の後ろで戦っているクレアスノダール兵。
【慣れたと言った筈だZE!】
が、既に大型機関銃と大型散弾銃を連結させていた千里観測型の散弾掃射によって、計算された方向にそれぞれ飛んでいく弾丸と、彗速走行型の赫い軌跡が飛来する矢を砕き尽くす。
(チッ、デタラメ過ぎ!…だけどね、本命はアンタの方!)
【ッ!】
直後、千里観測型の頭へ飛来する矢。
【だァから言ってるだろうが、
緑コートは頭をずらしてその矢を当たり前のように避け、矢は緑コートの肩に装着されていたミサイルポッドに命中。ソレをパージし、傀儡達の方へ蹴り込む。
(ッ!?……あぁもう最悪!なんなのよアイツ!?)
思わず心でまた悪態をつく。避けられる事は織り込み済みだった。避けられる前提の射撃だった。奴が軽率に避けてくれればその後ろにいたクレアスノダール兵の脳天を直撃した筈だったのに。
(アイツ、ソレもわかって…わざと自分の武装に命中させたって言うの?!)
【イグザクトリー!その通りで御座います!】
直後、スコープから見える視界が、赫く染まる。
「ッ!」
咄嗟にアーツを使ってその場から飛び退いたホークアイが目にしたのは、さっきまでいたところに突き刺さる銀の鎧。
【・・・接近完了>】
「クソッ!」
彗速走行型は足を引っこ抜くと、アーツを使って逃げるホークアイを、足と胴体から展開した源石スラスターで追跡する。
廃墟から廃墟へ飛び移り、廃墟のビルへ入ってあちこち駆け回りながら地上へ降り、瓦礫と傀儡達の間から牽制射撃をしつつまた廃墟を複雑に駆け上がる。
廃墟から廃墟へ飛び移りつつ蹴りで屋上にヒビを入れ、複雑に降りるホークアイを追って壁や床をブチ壊しながら最短距離で追いかけ、瓦礫や傀儡達を雑に吹き飛ばしながら、彼女との距離を離さずにまた廃墟の屋上へと追い詰める。
ホークアイが一応追いつかれずにいたのは、矢張り小回りの問題だろう。ホークアイのアーツはスピードを速くするアーツだが、単純にスピード速くするのともう一つ、モーションそのものを速くさせる事が出来た。だから方向転換の動きすらも高速化させる事で、複雑な道を速度を落とさず進めていた。
対して彗速走行型はスラスター。しかも今のコイツは、槍翼と呼ばれる腕部のスラスターを持っていない。自由な方向へ向けれるスラスターが無いために、方向転換にいちいち速度を減衰させるか、大周りで方向転換する必要があった。
故に、着かず離れずの距離が続いていた。そしてまた、ホークアイは離れた廃墟へ飛び移る為に跳躍し………
赫い軌跡が、前方から打ち上がる。
目の良いホークアイだからこそ、その打ち上がったモノが何なのか理解した。そして、自分の今の状況がどうあるのか、理解できてしまった。
【待ってたぜェ!この瞬間をよォ!!!】
ソレは、足に槍翼をつけ、高く飛び上がった千里観測型。槍翼の推進量を抑えきれずに逆さまの状態で……自分の人差し指を第2関節から外し、ソレを装填したリボルバーを、こちらへ向ける姿だった。
(してやられたッ!)
跳躍した今の状態は、物理法則に従って飛んだ方向にしか進めない。最初から誘導されていたのか、少しでも遠くに逃げる為に、無理して遠くの方の廃墟へ飛ぶ瞬間を。
たった数秒間の、その瞬間を!
「ならお前だけでも殺す!」
無防備を晒しているのは向こうも一緒。ならばせめて相討ちにすると言う、最後の足掻き。
無論、そんな模範的な人間的思考回路、予測していない訳が無い。
【さァ勝負とイこうかァ!どちらが撃ち抜くか!土に埋もれるか!当然だが……
心臓を狙えよ!!!】
同時に発射される矢と弾丸は、互いに交錯し……
「カハッ――!」
【だァから言ったじゃねぇか、心臓を狙えってな】
矢は緑コートのフードに切れ込みを入れただけに留まり、対して弾丸は、ホークアイの胸に命中した。
胸に刺さった指から源石抑制アーツが流し込まれ、意識を失って落ちていくホークアイを遠目に、千里観測型は銃口から漏れる煙を吹き消すような動作をしてから、銃を指で回しながらホルスターに入れる動作で四次元空間へ収める。
【さァ、後は頼んだぜ
もう少しで終わるぞー!やり切るぞー!皆様もここまでお付き合い頂きありがとう御座いますァー!次回でフェイスレス戦決着予定です。それではまた次回、サラダバー!