アークナイツRTA 『境界無き方舟』獲得ルート 作:ゲルゲルググ
所でこの話には本走のネタバレ成分が検出されたので、まだ本走を見てない方はそっちから先に見て下さい。よろしくオナシャス、センセンシャル
温かい。
命の輝きをその手に感じる。まだ生きている、この命を助ける事が出来ると言う証明。だから彼女は、その命を取り零さぬ様に、ゆっくりと手に力を入れて――
「許さ…ない……」
首に添えられていた手を離す。違う、コレは違うと、必死に目の前の感染者の手を取って訴える。でももう、その子供の体に温かさは無くて――
半分に割れたガスマスクと、無くなった半分から覗く死んだ少女の顔が彼女を睨む。どれだけ弁明しようとも、どれだけ手を伸ばそうとも、あの姉弟を死へ追いやった事に変わりは無く…彼女だけ、静かな光に飲まれて目が覚める。
何も残せなかった今日に、目を覚ます。
「……あれ?ここは――」
目を覚ましたアーミヤの視界に入ってきた物は、随分と見慣れた天井であった。
「…ロドスの、ドクターの執務室……?」
彼女が睡眠へと意識を落とす瞬間に見た光景は、少なくともドクターの執務室では無かった。
「どうして……あれ?何か凄い変な気が」
厳密に言うと、目線の高さが少しばかり高いような気がするみたいだ。それに、何故だか彼女にある記憶のドクターの執務室よりもこの部屋は小物が多い。
正直あの様な出来事の後でこんな不思議な事が起きて、アーミヤは気が遠くなりそうになるのをなんとか堪え、丁度目についたオサレなデジタル時計を手に取る。
「8時…10分。日にちも違う……?!年代は――」
アーミヤの瞳が驚愕に染まった瞬間、執務室のドアが勢い良くスライドする。
「仕事だァァァ!!!(ヤケクソ)」
「わっ?!」
休憩終わりのドクターによるハイテンションな叫びにより、驚いたアーミヤは手からデジタル時計をうっかり離してしまい……
ドガッシャァァンと砕け散った。
「ギャァァァ!?!?イモータルから貰ったデジタル時計がァァ?!!?」
「あわわわわ?!ご、ごめんなさいぃぃ!!」
暫くお待ち下さい。
執務室にある机を挟んで、アーミヤとドクターはソファに座って向かい合う。ただしドクターの腕は机の上に散らばる部品をシャカシャカと組み立てていた。この速度のシャカシャカはバーニングアタックに派生できる(確信)
「いやぁ驚かせてごめんアーミヤ」
「いえ、その……」
「あぁ大丈夫大丈夫。このデジタル時計、強い衝撃でバラバラになる様に作られてるから」
「……あの、それってただの欠陥――」
「イモータル曰く、ただのデジタル時計じゃ面白く無いからパズルゲーム要素を追加したらしい」
「それを追加する意味はあるんですか?!」
HAHAHA!と笑いながらオサレなデジタル時計を組み終えるドクター。迷わずテキパキと組み立てていたのを見るに、何回も挑戦したのだろうか?とアーミヤは考え……
………………
「……どうしたのアーミヤ?気分でも悪いのか?」
「え?…あっいえ!別にそんな事は無いですよ?アハハ…」
「う〜ん……怪しいな?この後方舟との合同演習やるんだろ?一回ケルシー先生に診て貰う?」
嫌な感覚が積もる。アーミヤ自身にもわからない嫌な物が、己を少しずつ蝕んでいく様な気がしていた。膝の上で握り締めている拳が汗ばむ。
彼女の知らない単語が時折飛び出して来るが、それを一々追求する暇もない。
「本当に大丈夫かアーミヤ?」
「ッ――」
ハッとして顔を上げると、伺うように顔をすぐ近くまで近づけていたドクターと目が合う。
「顔が青いぞ。やっぱり一度ケルシー先生に診て貰おう」
「ッい、いえ!!」
その視線を切るようにガバッとソファから立ち上がると、そそくさと執務室の出入り口へ向かう。
「診て貰う程ではないので…少し、風に当たって来ます。本当に大丈夫ですので!」
そう言ってドクターの返答を待たずに執務室から勢い良く飛び出し、廊下を駆けていった。
それを執務室の入口から覗くドクターは、携帯端末を取り出して電話帳の画面を開き、ケルシーと書かれた欄をタップし、通話を繋げ…る前に、執務室の隅でジッと座っていた人形に声をかける。
「ゼロちゃん、ちょっとイモータルに繋げてくれないかな?」
【・・・チッ・しゃーねェな>ちょっと待ってろ>】
「ハァ…ハァ…ッ……いったい、どうなって――」
廊下の壁に手をついて、倒れそうになる体を支える。
溢れ出る違和感、矛盾。得も言われぬ様な感覚に、今の精神が疲弊したアーミヤはどうする事も出来なかった。何時もの精神であれば、きっとドクターと共にこの不可思議な事態の解明に移れただろう。
だがそれも叶わない。今のアーミヤはあの姉弟を結果的に死に追いやってしまったが故に酷い状態だ。そして頼みの綱であるドクターと会話して……わかってしまった。何より無意識に使っていた彼女のアーツが、ドクターがドクターで有りながらもそうでは無いと裏付けてしまっていた。
確かにドクターはロドスのドクターだった。ただ、
「………早く、早く…帰らないと」
いったい何処に帰ると言うのか。彼女の家はこのロドスだと言うのに。
まぁそんな事や帰る方法とかを無駄に考えないまま、彼女は歩こうとして……ポケットからな鳴るアラームに足を止める。
アーミヤはポケットから携帯端末を取り出し、目覚まし機能を慣れた手付きで止め、ふと何を思いついたのか、そのまま携帯端末を操作しながら歩き始めた。
指で画面をスライドしながら、自分と同じ整理されたデータを片っ端から閲覧する。
今自分が何処を歩いているかも分からぬまま、ただ携帯端末の画面を喰い入る様に見続け、今日の予定と書かれたデータを開いた。
「AM10時30分から境界無き方舟との合同演習。演出場所は円形で高低差のある採掘場を想定した……ッ」
胸がズキリと痛む。
「こちらの演出参加オペレーターは、メランサさん、ラヴァさん、クルースさん、エリジウムさん、ガヴィルさん、ブレイズさん……」
そこまで言って、それ以降に表示されている名前を見て思わず口を紡ぐ。理由は単純だ、全く持って知らないオペレーターの名前が、さぞ当然の様に書いてあるのだから。
エレキ、アーキテウティス、グレイプニル、タチャンカ、羅小黒、九色鹿。己の知らない人物のコードネームを見る度に、本来であれば冗談だと笑い話に出来るような仮説が現実味を帯びていく。そして同時に、彼女の中に芽生えた疎外感は大きくなる。
画面をスライドする。演習相手である方舟のオペレーター名が目に入る。ミスカトニック、ホロロホルル、マクロケリス、カルカロクレス、ウォードレス、アクアクラウン、マグネットスパイク、クズリュウ、メナス、ヴォイドノイズ、そして………
「は…ははは……どうして、私――」
いつの間にか歩く事も止め、アーミヤは笑いながら膝を折る。膝の上に力無く放り出された腕と端末に、雫がまばらに落ちていく。
アーミヤはその歳の女の子にしては、中途半端に大人びている。製薬会社のCEOの立場だから、中途半端に頭も回る。もう薄々勘づいているだろう?この世界には、君の選んだ行く道も、君の行くべき道を見出してくれたドクターもいない。
『今ここには、君1人しかいないな』
端末に映るウルサス族の姉弟の顔写真を見てから、目の前にある食堂の入口から見えるウルサス族の姉弟を虚ろになりかけた瞳で見つめる。実に楽しそうに、二人は笑い合っている。流れ込んでくる感情も、光が満ちている。
『君も混ざるかい?あの中に』
彼女の後ろに立つ黒コートの男への返事は無い。
因みにモロクソ事案過ぎる構図だが突っ込む人はおらず、人々は彼女達の前を平然と通り過ぎている。偽装工作バッチリ。
「……あの」
『ん?』
「貴方が誰か、私は知りません。このロドスの事も、目の前の光景も………何も、何も知りません。だから教えて下さい」
『いいよ』
「レユニオンがチェルノボーグと龍門を襲った事件は、いつありましたか」
『4年ほど前だね』
「レユニオンは、どうなりましたか」
『幹部も指導者も全員居なくなって解散。まぁ今でもレユニオンに似た感染者組織はまばらに出来ては解散を繰り返してるがね』
「……境界無き方舟とは、なんですか…」
『私の組織だ。この大地で悲しむ感染者を問答無用で保護する為に作った。勿論レユニオンも例外では無い』
暫しの静寂。人々が忙しなく歩く音と、目の前の食堂から響く和気あいあいとした声だけが時間の流れを証明する。
それから幾ら経っただろうか。漸く、彼女はその重い口を開いた。
「…………私の居場所は、何処ですか?」
『そんなもの、ここには無いよ』
微かに乾いた笑いが、己の口から漏れた気がした。
『ロドスの信念も、これまでの歩みも、全てドクターとアーミヤの物だ。
わかっていた。最初に彼女の知らないドクターを見せられ、次に彼女の知らないロドスを見せられ、そして今、ついさっき己が死に追いやってしまった姉弟の幸せな姿をコレでもかと見せつけられて。
まだ正気を保っていられるのが不思議だ。夢だと言いたいだろう。だが肌に伝わる床の冷たさが、コレは現実だと突きつけてくる。
「こんなモノを見せつけて……私にどうしろと言うんですか…ッ……私は、スカルシュレッダーを…ミーシャさん達を…助けられませんでした。殺したい訳じゃなかったのに……どうして…どうして!私は……」
あの姉弟に、あの笑顔をさせてやれなかったのだろうか。
『さぁな。それを悠長に考えるのは、目が覚めた後にしてくれ』
イモータルがアーミヤの頭部に触れ、アーツを発動させる。そして彼女はゆっくりと、身を任せる様に意識を手放した。
「それで、アーミヤの様態は?」
『心体共に異常無し!脳にも何も傷は無いし、アーツで干渉された形跡は私がさっきやった睡眠のアーツ以外に確認されていない!どういう事だよマジで』
「それはこちらが知りたい事だ」
身体検査を終えぐっすりと眠っているアーミヤの横で、ケルシーとイモータルは話す。
「まぁ、どうせ君の事だ。あら方何が起きたのかわかっているのだろう?」
『確証無いけどね』
(´Д`)ハァ…と溜め息を吐くような仕草をして、イモータルは切り出す。
『並行世界について考えた事ある?』
「どうした急に。頭のネジでも緩んだか」
『ちゃんと真面目だよコノヤロー!』
「まぁ、考えた事が無いと言えば嘘になるな。少し前に…暇を潰す程度でだが」
『まぁそれでいいさ。で、なんでその発想になったかっつーとな……何百回か作った事がある』
「クルビアの腕利きエンジニアを呼んでおこう。君にも偶にはメンテナンスが必要だろうからな」
『だから真面目だっつってんだろォがYOOOOOOOOO!!!!!』
遂に何処かから出現させたツッコミ用ちゃぶ台をひっくり返した。
『ハァ…ハァ…ったく、ほら前に言ったろ?私が今までやって来た事を』
「あぁ、それは覚えて……まさか、
『イグザクトリー!その通りで御座います!』
「mon3tr!」
『(殺意)』
『ギャァァァァァ!!!?』
ケルシー、キレた!そしてちゃっかりアーミヤから離れる様にmon3trを呼び出してイモータルを叩き潰そうとする辺り、まだちゃんとしている。
「君はこの大地を何度弄くり回せば気が済むんだ」
『っ仕方ねぇだろ?!あの時はチャートの成功率を少しでも上げる為に生まれ変わり達をバカスカ呼び込んでたからさァ!!!まぁお陰で
「mon3tr、メルトダウン」
『イヤァァァァァァ?!!?!』
暫くお待ち下さい
「つまり、今のアーミヤの精神は別の世界のアーミヤだと?」
『そ…そういう事、だ。イテテ…今のアーミヤの証言的に、4年前のチェルノボーグ事変。それも龍門郊外で行われたミーシャ奪還戦だろうな』
「時間も大幅にズレているとはな。それで、戻す宛はあるんだろうな?」
『あぁ、多分元のアーミヤはまだグッスリ睡眠中で、起こすには今のアーミヤの精神が邪魔だ。そういう訳で、俺が複数の精神操作アーツで今のアーミヤの精神を追い出す』
「………その場合、追い出された方の精神はどうなるんだ?」
『さぁね。でも存在そのものからこの世界と拒絶反応起こしてたっぽいし、案外すんなりと元の体に戻るんじゃないか?』
「…………」
憶測ばかりだな、という顔を向けるケルシーを他所に、イモータルは早速アーミヤへ向かってアーツを起動する。
『さぁ、そろそろ夢から覚める時間だぜ』
「………ぅん」
「おはようアーミヤ。ちょうどロドスについた所だよ」
「……ドクター…ドクター……?」
車の中で目を覚ましたアーミヤは、隣に座っていたドクターの腕を捕まえ、胸の前で抱え込んだ。
何か様子が可笑しいと思ったドクターは、慎重にアーミヤへ声をかけた。
「……怖い夢でも見たのか?」
「…………はい
誰もいない夢を見ていました」
どうも、矢張り何度やっても曇らせ展開を上手く書けないホモです。
少し前にリクエストされたこの回ですが、アクナイアニメ8話を見てある程度展開が掴めたので書き起こしました。時間かけると多分一生書けない感じでしたので。結果この始末です。本当に申し訳ない。
それとついでに、変態機械ホモがやらかしていた事と現在使わせて貰う事が決定しているリクエストされたオリキャラの名前を先出ししました。オリキャラリクエストは今もやっていますので興味のある方はどうぞ。