アークナイツRTA 『境界無き方舟』獲得ルート 作:ゲルゲルググ
「くそっ!一体何がどうなってるってんだ?!おいロドス、あのフェリーンのガキはどこに行った!」
「ちょっと待っててよ!私達だって何が起こったかわからないんだから!」
叫ぶ盾兵にそう言い返したブレイズは、さっきまでロスモンティスがいた場所を調べるアーミヤの元へ向かう。
「どう、アーミヤちゃん?何かわかった?」
「いえ、これだけではなんとも……ですが、相手はロスモンティスだけを狙っていたと言う事は明白だと」
「そうね。それに、あの時ロスモンティスは剣を全部使って防ごうとしてた。つまり、相手はアーツを使った剣ごとロスモンティスを吹っ飛ばせる様なパワーを持ってるってことになるわね……どう考えても危ない奴じゃない!」
地面の抉れた後の前でブレイズは頭を抱える。それもそうだ、ロスモンティスはエリートオペレーターの中でも上位の戦闘力を有している。ケルシーに切り札として扱われていると言われれば、その強さはわかり易いだろう。
そして彼女のアーツユニット兼巨大な武器である4本の大剣は、攻防を両立する。そんなロスモンティスが吹き飛ばされたのだ、大剣ごと。その意味を理解しているブレイズは顔に焦りを浮かべる。
「それに、ロスモンティスさんの精神状態はよくありませんでした。早く迎えに行かないと不味いです」
「なら私が行くわ。距離もそう遠くないし、ひとっ飛びで連れて戻って来るわよ」
「いえ、それは危険です。相手の情報が不足しすぎていますし、幾らエリートオペレーターといえど、単独行動は危険です。何より、司令塔側からの砲撃に押され気味な状態でエリートオペレーターが一人も居なくなるのは不安が大きいんです」
「でもこのままじゃ――「つまり、お前に匹敵する奴が居ればいいんだな?」
突然響き渡った声に、ブレイズとアーミヤ、一部のオペレーターと構成員達がその方向へ顔を向けた。そしてアーミヤとブレイズは、その方向にいた部隊の中に居る人物を見て、驚く。
「Ace!どうしてここに?!」
その部隊の中から、Aceとスパラディが前へ出て、アーミヤ達の元へ来る。
「話は聞かせて貰ったが、時間が惜しい。話は後だ」
「ここら辺のレユニオンは俺達が掃討した。襲撃の心配は無いだろう」
「だそうだ。ブレイズ、ここは俺達に任せろ。お前はロスモンティスを無事に連れ帰って来い」
チェルノボーグ、司令塔付近の住宅街にて。
本来様々な家が建ち並ぶ場所は、一週間程前の天災で半分が崩れ去った。そして今、残りの家も壊さんとする勢いで、剣と剣がぶつかり合っていた。
まぁぶつかり合っていたと言うには、些か一方的に過ぎる光景だった。現に矢印の形をした刃の無い大剣を引き摺る黒コートは、一切の傷を見せていない。対して、まだ倒壊していない家に隠れているロスモンティスは、目立つ傷が幾つもついていた。
そして、黒コートもとい狂撃制圧型は、ロスモンティスが隠れている家の玄関前に迷い無く立つと、ドアノブへと手を伸ばし………ドアを突き破って来た大剣をその手で受け止める。
その光景に最早ロスモンティスは驚きもしない。が、その中の物を吐きそうな顔に焦りを浮かべる。ロスモンティスのアーツである精神実態は、人を容易く握り潰したり、封鎖層の上昇を抑え込んだりするなど、常軌を逸した力を持っている。その精神実態が、パワー負けしているのだ。少しずつ、少しずつ、狂撃制圧型がアーツユニットである大剣と、アーツユニットを持っている精神実態を押し返している。
ならばと、ロスモンティスは残り二本のアーツユニットを両側面から狂撃制圧型へ突撃させる。
(これで………!)
塞がれるとしても、対処出来るのは片側のみ。別にこれで倒せるとは、狂撃制圧型と剣を交えたロスモンティスはもう欠片も思っていなかったが、それでも機動力を少しでも削れる筈だと、そう思っていた。
「……うそ…」
絶句するしか無かった。片方のアーツユニットは素早く振り上げた大剣をタイミング良く振り下ろして地面に叩きつけた。そこまでは良い。だが、その大剣と片脚を支えにもう片方の脚で反対側から来るアーツユニットを蹴飛ばすとはロスモンティスも予想していなかった。無理な態勢から素早く繰り出された、人体だと関節を壊すこと間違いなしな角度まで振り上げられた脚が、この黒コートが人の形をしたナニカだと理解させる。
【殺ス>】
狂撃制圧型はさっきまで押し返していたアーツユニットをいきなり引っ張ると、アーツユニットの柄の近くの空間を大剣で斬りつける。そしてそのままアーツユニットを真っ直ぐにロスモンティスへ投げつけ、ロスモンティスはそれを精神実態で受け止めた。
「くぅ……!」
【オマエヲ殺ス>】
まるで狂乱したかのように大剣を振り回し、家を壊しながら接近する。ロスモンティスは投げつけられたアーツユニットを持ち直すと、自分が乗っているアーツユニット動かして狂撃制圧型の突進を回避。リビングの長机を叩き割った狂撃制圧型は、直ぐにロスモンティスに向かって方向転換しながら薙ぎ払うように攻撃し、ロスモンティスはソレをアーツユニットで防ぐ。そのままアーツユニットと大剣の剣戟が始まる。
だが、それも長くは続かない。閉所だろうが関係無いと言わんばかりに力任せな大振りの攻撃を高速でする狂撃制圧型に、ロスモンティスはどんどん受け身にならざるを得なくなり、アーツユニットは大剣の攻撃を受けるたびにベコベコになっていく。
【殺ス・ゼッタイニ殺ス・カクジツニ殺ス・メラット殺ス>】
「くぅ……あっ――?!」
遂に、大振りな横薙ぎを受け止めたアーツユニットが真っ二つに折れ曲がり、ついでにアーツユニットを持っていた精神実態も刎ね飛ばされた。彼女に残った防御手段は自分が乗っているアーツユニットのみ。そして狂撃制圧型は、振り切った大剣の切っ先をロスモンティスへ向けて、突き出す態勢になっている。他の精神実態はどうしたかだと?そんなもの再生した所に大振りの攻撃があたって刎ね飛ばされたよ。
そしてロスモンティスは、自分が乗っているアーツユニットを盾の様に前に突きだす。彼女が生き残るには、この方法しか無い。そして、その判断の結果も、わかりきっている事だった。
「ッッッ―――!!!………うぐっ!?うぁっ――!!」
狂撃制圧型の突きを受けたアーツユニットは中央を深く凹ませながら、後ろにいたロスモンティスと共に家の窓を突き破る。ロスモンティスは窓ガラスの破片で更に細かい傷を作りながら、その家の近くにあった公園の地面に着弾。一回バウンドしてからゴロゴロと転がり、アーツユニットはシーソーの上がっている側に着弾して、下がっていた側を跳ね上げながら二度と使い物にならなくした。
「ッ………だめ、逃げちゃだめ……私が、私がなんとかしないと」
皆が死ぬ。そんな確信がロスモンティスにはあった。
ロスモンティスが何故、こんな誰もいない場所で狂撃制圧型と対峙し続けているのか。それは、幾ら逃げても追ってくるからだ。最大速度で逃げようとすれば、ソレを超える速度で大剣を投擲するか一瞬で先回りをされ、潜伏すれば、さっきの様に簡単に看破してくる。
だが何よりも問題なのは、この黒コートとロドスを合流させてしまう事だ。ロスモンティスでもこの有様なのに、それが他のロドスメンバーを襲うとなれば、その後の光景は容易に想像出来てしまう。
それだけは駄目なのだ。だからロスモンティスは立ち上がろうとする。腕に力は入らないが、足はまだ歩ける。精神状態も、狂撃制圧型の殺意で一周回って冷静になり、アドレナリンと家族を守ると言う決意で正常をなんとか保ち続けている状態だ。そんな状態になってまで、彼女は狂撃制圧型をここに縫い留めようとしている。そして彼女は、シーソーに突き刺さったアーツユニットへ向かって足をゴグチャ
「うっ!……あれ?なんで…早く、立たな――」
立ち上がろうとして、突然足に力が入らなくなって地面に倒れるロスモンティス。不自然に思った彼女は、自分の足へと顔を向けて……
「えっ?………あっ……これ、え?」
困惑する。だってまだ足は動く筈なのに動かない。当たり前だ。だって足は動かなくなったのだから。
「あ……あぁっ……」
では何故動かなくなったのか。決まっている。壊されたのだ。何に壊されたのか。それは足を下敷きにして墓標の様に地面に突き刺さっている大剣だ。一体誰が。さっきまで殺し合ってたというのに、もう存在を忘れるなんて酷いじゃあないか。
「あぁっ……あぁぁぁ!?」
状況を理解し始める。突き立てた大剣の柄に手を置いて佇む黒コートを見て、大剣を見て、その大剣に肉を潰され、骨を砕かれ、今尚血の池を広げている足を見て……その傷を、痛みを……死を、理解してしまう。
だがその理解する寸前、狂撃制圧型が大剣を引き抜くと、その矢印の切っ先をもう片方の足に勢いよく突き刺し、一泊置いて体重を乗せて丁寧に
ゴグチャ
「ぐぃっ――あッッあぁぁぁぁぁアァァァァ?!!?!!」
絶叫する。が、本能的に助けを呼ぶ声にしては、その叫び声は弱すぎる。ヒーローの耳に届くことは無いだろう。いるかどうかわからないが。
ならばと言わんばかりに、ロスモンティスに纏わりついていた精神実態が膨張を始める。精神の不安定によるアーツの暴走。アドレナリンも、家族を守ると言う決意も、痛みの前では全て瓦解する。結局の所、彼女は14歳の少女に過ぎないのだから、この状況で出来る事は、少女らしく泣き叫ぶか、己のアーツを暴走させて、ここら一帯を吹き飛ばす事しかない。
もっとも、暴走によって肥大化し始めた精神実態の最後は、狂撃制圧型の大剣に触れた瞬間風船が破裂したかのように霧散すると言う、随分と呆気ないものだったが。
「かはッッ!―――あっ!――はぁッ!―――……ッッ!」
目を大きく見開き、呼吸が荒くなる。だが幾ら空気を吸って、声を出そうとしても、出るのは空気だけだ。今の彼女の体に、声を出す余裕なんて有りはしない。両足の痛みで、目から光が失われ、涙が溢れてくる。今のロスモンティスは、アーツも使えない死にかけの少女だった。
【オマエヲ殺ス>】
大剣を引き抜き、上に掲げる。少女の命などどうでも良さそうに、切っ先の横に出っ張った部分でロスモンティスの頭をかち割る為に、その処刑人は、大剣を――
「私の家族に、何してるのよ!!!」
瞬間、鳴り響く音は肉が潰れる音では無く、金属と金属がぶつかり合う音。剣と剣が鍔迫り合う音だった。もっとも、炎を纏ったチェンソーを剣と言うのはどうかと思うが。
「ぶれ……い………ず?」
後ろから聞こえた怒声に反応したロスモンティスが、小さくその名前を呼ぶ。さっきヒーローは来ないなどと言ったが違った。彼女の家族が、彼女を守るためにやって来てくれた。
「ロスモンティスッ……!君、彼女の、子供の両足を……!どうしてそんな事出来るのよ!」
横から奇襲する形で攻撃を仕掛けたブレイズの攻撃を大剣で防いだ狂撃制圧型は、少しの鍔迫り合いの後に弾き飛ばし、ブレイズへ向けて適当に大剣を振り回す。
「くぅっ……!」
少しの間チェンソーと大剣がぶつかり合い、またもや鍔迫り合いになった。が、今度は狂撃制圧型がブレイズを上から抑える様な形でしている。そのため、体格とパワー、そして纏い直した炎が一瞬で霧散した事によって、ブレイズは誰がどう見ても不利な状態だった。それに、さっきの剣戟でロスモンティスから距離を離されてしまい、焦るブレイズ。
そして、ギャリギャリと鍔迫り合いをしているチェンソーからバキッと言う音が聞こえ、ブレイズの頬を何かが掠めた。
「ッ!こん、のぉぉ!!」
アーツを発動させる。発動場所は狂撃制圧型の目の前。自分もダメージを受ける覚悟で、近衛局の展望デッキを破壊した技の規模縮小バージョンを炸裂させる。
【ガガッ――】
(今っ!)
大剣を弾き、狂撃制圧型を胴体に蹴りを入れて押しのける。まぁ、1ミリも動かなかった上に反動で足を痛めたが、それはそれとしてブレイズはロスモンティスの元へ向かう。
(どうして方舟のオペレーターが……まさか裏切った?!だとしたら冗談じゃないにも程があるわよ!)
そんな事を考えながらロスモンティスの元へ着くと、彼女の容態を確認する。ロスモンティスの呼吸は浅く、顔はどんどん色を失ってきている。
(出血が酷い!それになんて傷なの!これじゃあ、治ったとしても歩行はもう……でも今は早く治療しないと、ロスモンティスが死んじゃう。でも手持ちの応急キットじゃ時間がかかるし、あの黒コートが――)
一瞬、死を感じたブレイズは素早く後ろを振り向いた。もう居た。その黒コートが、もうブレイズの目の前へ来て大剣を振り上げた所だった。景色がスローになり、ブレイズの脳がフル回転し、走馬灯が流れ始める。
だが残念かな、ブレイズの今までの経験を持ってしても、この攻撃を防ぐ確率は0%、0%、0――
【ライダーキック】
吹き飛んでいった。何もかも吹き飛んでいった。狂撃制圧型が横に吹き飛んでいったし、ついでにブレイズがさっきまで考えた事も吹き飛んでいった。
【…不味いな。右腕、座標指定。左腕、空間跳躍。コードB、多人数空間転送】
【殺ス>】
「……ッ!ねぇちょっと――」
突如やって来た透過強襲型のキックで吹き飛んでいった狂撃制圧型が大剣を投擲するが、それが届く前に、3人は一瞬にして姿を消す。と言うか、その大剣は3人のいた場所では無く、少し逸れた場所に着弾した。最初から彼らを狙っていなかった様だ。
【・・・最優先ターゲット追加>ID7538315・個体名・透過強襲型>】
狂撃制圧型は大剣を拾うと、まるで行き先は決まっているかの様に、とある方角へ移動を始めた。
チェルノボーグ内の何処かの廃ビルのなかに、突然3人の人間が現れた。まぁ一人は機械だが。2人はキョロキョロと辺りを見回すと、透過強襲型は慌てて腕を弄りだし、ブレイズはロスモンティスに近づいた。
【っクソ!アイツ切断しやがったな!?】
透過強襲型が、何やら左腕を弄りながら悪態をつく。その横で、ブレイズがロスモンティスの首筋に手を当てながら、顔を青くしていた。
「待って、待ってよロスモンティス!お願い、目を…目を覚まして!駄目だよ!君は死んじゃ……君が、死んだら……!」
【……あぁ、こりゃ間に合わねぇな】
ブレイズの声が震える。そんな彼女に抱えられているロスモンティスは、もう息をしていない様にしか見えなかった。顔に生気が見当たらない。
そんなロスモンティスを一瞬でスキャンして淡々と現実を突きつけてきた透過強襲型を、ブレイズは涙ぐんだ目で睨みつけた。誰のせいでと言いたげに。
【落ち着けブレイズさん。ちゃんと助かる】
「巫山戯た事を……!」
【至極真面目だ。取り敢えず、右腕、念力】
秒で真逆の事を言い放った透過強襲型に、ブレイズが食いつく様に聞き返して来る。それに返事をしながら、透過強襲型はアーツを発動させてロスモンティスを楽な態勢で数センチ浮かして固定した。
【ブレイズさん、今からアンタがやることは、オレを信じることだ。まぁ多分無理そうだけど、出来る?】
「…………」
そりゃさっきまで信じていた協力者に裏切られて殺されかけたのだから、簡単に信じれる訳が無い……が、ブレイズは睨みを効かせたまま………………静かに首を縦に振った。
【よし、じゃあ早速始める。あぁ、ブレイズさん。彼女の口を塞いでてくれないか?腕を噛ませる感じでいいから】
「……何をするつもりなの?」
ロスモンティスの体を頭から足の爪先までゆっくりと撫でながらそう発音した透過強襲型に、ブレイズはロスモンティスの小さな口に自分の腕を噛ませながら怪訝な表情で聞いた。
【右腕、対象選択後、ラグタイムを経由して時間概念にアクセス…完了。左腕、逆行。コードT'、規模限定タイムリープ】
その光景に、ブレイズは驚愕する。何処かからやって来た―厳密にはさっきの公園からやって来たロスモンティスの血液が、スルスルと足の傷口へ入っていくと言う意味わからないものを見れば、彼女の様な反応は仕方ないだろう。
だが、足の傷口がバキッゴキッグチャっと音を立てながら治り始めた瞬間、いつまでも驚愕して居られなくなった。
「―――ぐっ?!ンンッ!?!?ウゥゥンンンンンンン〜〜〜!!??!?」
「ロスモンティスッ?!」
【奴にやられた痛みを最後から最初までゆっくりと追体験してるんだ。彼女には悪いが、こればかりは我慢してくれ】
「ンンンッ?!んふぅっ!ング!ンウゥ……ング、ウゥゥゥゥ!!!」
「いっ……ッ大丈夫!大丈夫だよロスモンティス!私は、私はここに居るから!」
「ひぐっ、うぐっ!……フーッ!フーッ!…うぐぅぅぅぅぅ!!!」
口を塞いでなお響く絶叫と、それに合わせて体が痙攣し始める。余りの痛々しさに、ブレイズは寄り添うようにロスモンティスの頭を抱き締めた。そしてソレを認識したのか、涙を流す目をぐっと閉じて、耐える様に声を抑え始めるロスモンティス。その行為がブレイズの心を更に焦燥させるとは知らずに。
「ねぇ!まだ終わらないの?!」
【落ち着いてくれ!世界規模なら兎も角、個人規模の時間逆行は繊細にしないと駄目なんだ!下手すりゃ脳だけ胎児レベルに戻って死ぬとかになるんだからな?!】
「っ……!」
何もブレイズだけが焦っている訳では無い。透過強襲型だって焦っているのだ。ブレイズのとは違う、別の事にだが。
ロスモンティスにとって……と言うか全アーツ術師にとって狂撃制圧型は天敵です。
そして私の性癖は口が塞がれた状態の女の子の声を聞くことです(唐突な性癖開示)