アークナイツRTA 『境界無き方舟』獲得ルート 作:ゲルゲルググ
チェルノボーグを8人と1匹は走る。この場にいる全員の目的は一致おり、その為にこの無駄に広い都市を必死に駆けずり回っていた。
「ていうか、なんで封鎖層のすぐ近くに置いてないのよ!バカじゃないの?!」
「煩いぞ戯け。俺の部下がわざわざトラックを送ってくれただけ感謝しろ」
「到着場所への行き方がわかってない奴がよくもまぁ自慢気ね?エーギル人ってば全員そうなのかしら?」
「潰すぞ」
「仲良くしている暇があるなら足を動かせ!」
「これの何処が仲良く見えんのよこの龍女!」
必死にしては随分と賑やかである。
「すまない、士爵。劣化の、日々を、辿ってきた、この体を……」
「礼はいらない。我々が全員生き残る為なら、このくらいの事は幾らでも実行する」
『(唸り声)』
「我慢しろ、Mon3tr」
「所でロドスのドクター。この道で本当に指定座標につくのか?」
「大丈夫、そこは私を信じてくれ!……あ、その角を右だ!」
中枢区画から去ってから、この8人はチェルノボーグから帰る術が無い事に気づき、スパラディがその事を部下へ連絡した事により、なんとか移動手段は手に入れた。問題はその移動手段の場所へ行くまでである。
一刻も早く行かなければならなかった結果、機動力の高いスパラディがアーミヤを胸の前で抱えた上でドクターを背負い、機動力が遅い上にデカいパトリオットを、Mon3trが背負って移動している。この愛国者、タルラを担いでいるのでクソ程重い。
そして、今はドクターがPRTSで座標までの最短ルートを教えて通っているが、スパラディはちょっと疑っていた。
「次の角を左」
「そこの民家を突き破って」
「あそこから下層に入って」
「そこの連絡通路を出たら……」
着いた。
「凄いなお前」
「期待に応えれて何よりだ」
素直に称賛した。凄い人を凄いと言える常識的なアビサルハンターである。
「運転は誰が?」
「必要ない。指定した場所へ最短で運んでくれる」
「また技術力の暴力してる…」
「早く後ろに乗れ。出発するぞ」
それぞれMon3trから降りたり、背中から降りてアーミヤを受け取ったりしてから後ろの貨物に入る。全員が乗ってから少しして、トラックのエンジンが掛かった。どうやら本当に運転手はいらないらしい。
「さて…コレか、いやコッチか。そこに兎と龍を寝かせておけ」
「中が広くなったりストレッチャーとカーテンが床から生えてきたり、どういう仕組みなのよこのトラック……」
「複数の技術を混ぜているからな。俺にもよくわからん」
トラックが発進。話す事が無いのか、貨物内の音はカーテンから漏れるケルシーとドクターによるアーミヤの治療の音だけとなる。
ふと、そんな音を漏らすカーテンの横で、スパラディと向かい合う様に座っていたチェンが口を開いた。
「お前、あの男のオペレーターだったな?」
「そうだ」
「お前は知っているのか?あの男が……何なのか」
その問の答えを皆は黙って待つ。アーミヤの治療を終え、タルラの安否を確認し終えたケルシーとドクターもカーテンの向こうで聞き耳を立てている。
「………さぁな」
「は?なんで知らないのよバカじゃないの?」
呆気ない答えに、つい口が出るW。スパラディは中指を立てた。
「俺は方舟の古参じゃ無い。そもそもアイツが引き籠もりだろうが、自称してる様に機械だろうがどうでもいい。そういう類の質問は、俺では無くロドスで寝てるエレキに聞くべきだ」
「エレキ…あのオニの男か……ふむ」
「ずっと思ってたけど、よくそんな意味不明な奴の言う事聞いてられるわね?信用する所とか皆無じゃないかしら?」
「他は知らんが、俺はその要素を抜きにしても奴に着いていく理由があるからな」
「あっそう……」
「それに――
アレに信頼や疑いなどを気にかけるなど、それこそ無駄の極みだ」
『もう一つ用意していたのか。その忌々しい体を』
『この私が、たかが人を模した義体に全リソースをブッ込むと本気で思ってたの?マジで?嘲笑っていい?』
黒蛇の掌から放たれたレーザー弾が、傾いたイモータルの頭部を掠める。顔を傾けていなければ直撃していた事だろう。
『どうだい?私の一部を取り込んだから随分とシックリ来るだろう?人間の体よりも』
『全部、私が半端な拘束術式を利用してお前の体を操る事すらも全部が、お前の計画通りだとでも言うのか!』
『イグザクトリー!その通りで御座います!』
指を鳴らしながら気持ちよく返事をしたイモータルは、地面に突き刺さっている大剣、龍門で使ったメタルフォモセスと同じ形状の二振りを引き抜く。それと同時に背中の装置が歪曲した大小の細長い板となり左右2つずつに別れ、その板から複数のパネルが生え、二対の羽となった。
まるでサンクタを現すかの様な大小の羽。だがその羽を天使の様だと言うには、些か機械的過ぎる。サンクタにとって必要不可欠な神への信仰が存在しない。
そりゃ無いに決まってる。天使でも、ましてや人間ですらないんだぞ。
『来いよ。俺でも兎としか散歩したこと無いが、一緒に遊んでやる』
『愚弄するのも大概にしろ!!!』
白衣を思わせる白いコートにマゼンダ色の血管の様な模様が全身に奔る。薄かったハートマークもマゼンダ色に染まり、相変わらず黒いのっぺらぼうにマゼンダ色のこれまた大少のひし形が1つずつ、大きな1つの目玉を思わせる様な配置で表示され、睨みつける。それと同時にレーザーソードと大剣がぶつかりあった。
『何?!』
『ちゃーんとコーティングしてるに決まってんだルルォ!!』
『黙れ!』
黒蛇が一歩踏み込んで掌から出したレーザーソードを振るう。片方を横薙ぎに払い、すかさずもう片方を振り下ろし、体を回転させて薙ぎ払った方の腕で勢い良く逆袈裟斬りと、攻撃途切れさせる事無く連撃をし続ける。対してイモータルはというと、無駄にデカい大剣の腹で攻撃を為す術も無く受け続けていた。
『お前、手を抜いているな?』
『さぁどうかな。抜いてるかもしれぬし、全力かもしれぬ。いや、もしややる気すら無いのかもしれんぞ?』
『……いいだろう。ならばその自信を引き裂き、己の選択が間違っていたと後悔させてやる』
黒蛇のハイキックが大剣の腹に直撃し、イモータルを吹き飛ばす。だがイモータルも、態勢を崩す事無く足裏で地面を抉りながら減速し、片方の大剣を大砲と見間違える程に大きいハンドキャノンへと変形させ、迎撃する。
向かってくる黒蛇に、刃に沿って縦に割れた大剣から覗く3つの砲口を向け、炸裂散弾を発射。黒蛇はそれを斬り払いながら交わし、連撃を加える。イモータルはその連撃を変形していない方の大剣で対処しながら至近距離でもう一度炸裂散弾を放つが、撃たれたそれはスパークウォールで相殺された。
炸裂散弾の爆発によって出来た爆煙が煙幕代わりなったのをいい事に、レーザー弾を空中に並べて固定してから奇襲し、イモータルが変形してない方の大剣で受け止め鍔迫り合いになると、直ぐに爆煙の奥へ退避すると同時に固定していたレーザー弾を発射する。
イモータルの方は鍔迫り合いのうちにハンドキャノンから元の大剣へ戻し、黒蛇が煙幕の中へ帰っていくと同時に元に戻した大剣の刃をブツ切りに展開、蛇腹剣へと変形させ、適当に振り回してそれぞれ体の様々な部位を狙って飛んで来るレーザー弾を弾道に重なる様に振り回した蛇腹剣の刃で受け止める。
そしてそれと同時に変形してない方を背中へ回し、正面のレーザー弾と同時に背後から再度奇襲してきた黒蛇の攻撃をガードした。
『チィッ!』
『いい奇襲だ、感動的だな。だが無意味だ』
煽る様な言葉と共に蛇腹剣で振り向きながら薙ぎ払う。黒蛇はそれをジャンプで躱しつつ、イモータルを飛び越えながらスパークボムを2つ投げる。
『マジか。一対一でそれ使うの?エフェクト喧しくない?』
蛇腹剣で適当に薙ぎ払うと、空中で真っ二つになったスパークボムが巨大化して固定される。その間を縫うように、白と黒のイバラが体を縛る様に絡まった。
『お返しだ。お前も同じ目にあわなければ、不公平だろう?』
イバラビームによる強制移動でスパークボムの中を通って黒蛇の目の前まで引き寄せられ、チャージされたレーザービームをゼロ距離で照射される。
『コレだけだと思うなよ』
レーザービームを間一髪といった風に防いだイモータルの体をイバラビームで絡め取り、強制移動で縦横無尽に動かしてあらゆる角度からレーザーブレードによる攻撃、レーザー弾による時間差攻撃、スパークボムの爆発範囲へブチ込んだり、スパークウォールに激突させるなど、あの手この手でイモータルを叩きのめす。イモータルもレーザー弾やスパークボムを蛇腹剣で斬ったり、スパークウォールやレーザーソードによる攻撃を防ぐ事しか出来ていない。
『滅びよ!』
最後にイバラビームで真上へ強制移動させて空中にいる己のゼロ距離まで引き寄せ、今度は両手でのチャージレーザービームを浴びせた。
照射されたレーザーにより地面は溶解し、勢い良く爆発してクレーターを生成する。クレーターの縁に静かに着地した黒蛇は思うだろう。タルラにも劣らぬ威力の光の奔流。それをゼロ距離から喰らえば、幾ら先民の中でも頑丈な種族だろうと耐えられる筈が無いと。
だからこそ、そのクレーターの中心で大剣を地面に突き刺し、空いた手で拍手をするこの存在には、生半可な死など生温いと怒りを募らせる。
『何時までその態度が続くだろうな?この短時間でお前の体にある技は殆ど使えるまでになった。それにこの体の血液である源石が全て無くなろうと、私がこの体を直接動かせるのだ。お前の体がこの大地にあるどんな物よりもカラであるからに他ならない……おい、何処を見ている。何故私から顔を背けている?!』
いつの間にか拍手をしながら明後日の方向を凝視していたイモータルは、黒蛇の言葉でゆっくりと顔を向けた。
『いやぁ……随分と遅かったなと思ってね。コッチで車を予め用意しておくべきだったと』
『何を呑気な事を……いいだろう。ならばお前から奪ったこの虚ろな体で今すぐ終わらせて――』
『終わらないさ』
『……何?』
拍手を止め、イモータルは徐ろにポケットに手を突っ込み……掌程の黒い板を取り出す。
『お前が幾ら体に慣れようと、成長しようと、私を倒せる事は絶対に無い』
『負け惜しみを――』
『ギャハハハ!!なんだお前、まさかとは思うが……自分が優位に立てる状況に見えているのか?』
『ッ――?!』
目玉の様なひし形に睨まれ、黒蛇は一歩後ろに下がる。下がった自分とその事実に動揺する。
『この私が、まさか……そんな事ある筈が無い!』
『因みにだがこの義体、従来の様に液体源石をガンガン消費する私の趣味全開で非効率なエネルギー変換をしていない。そのせいでコ↑コ↓みたいな所でしか運用出来ないが、何時までも長期戦出来るゾ☆』
『小癪なァ!』
イバラビームで己へ引き寄せながら、死角へ回ってぶった斬る為、黒蛇は突撃する。
『AI拡張・Level2>』
『なっ――』
一瞬だった。まるでイバラがどういう軌道で飛んで来るのかわかっていたような反応速度で回避しながら黒蛇へ近づき、イモータルは義体の顔へハイキックを喰らわせ吹き飛ばす。
さっきまでとは明らかに動きが違う。
黒蛇を蹴り飛ばした後、イモータルは板を持っていない方の手を後ろへ差し出す。すると地面に刺さっていた大剣が一本、勢い良く地面から引き抜けてイモータルの掌に飛び込んできた。
そのままキャッチした大剣を逆手持ちして、変形させる。大剣の腹から推進機が左右一つずつ飛び出し、刀身が中折れして3つ目の推進機が顕になる。そして、余った刀身や表面、持ち手部分がそれぞれスライド、分離、回転し、肘から下に纏わりつきながら形が洗練され、あっという間に大剣は彗速走行型の内蔵武装である槍翼と同じものへと姿を変えた。
槍翼のエンジンが起動し、噴射口から赫色のエネルギーが溢れ出す。だがイモータルはそのエネルギーによる推進力をゴリ押しで抑えつけながら、槍翼を纏った腕を空へゆっくり掲げる。
その光景を見た黒蛇は、咄嗟に義体の内蔵武装であるリフレクと言うシールドアーツを発動した。
結果的に、その選択は正しかった。六角形が繋がった透明な膜の外で、掲げられた槍翼は更に火を吹き、先端が赫色に染まる。
そして――
『少し本気を出すとしよう』
黒蛇という概念が、消えかける。
中枢区画が閃光に包まれる。その光は方舟やロドス本艦には勿論のこと、龍門にすら微かな明るさを届かせた。
そして、チェルノボーグから出たのを確認するために外の景色を投影し、薄暗かった貨物内が賑やかな色になったばかりで目が少し慣れて無かった8人の内の6人は、その特大閃光に目をやられジッタンバッタンした。
黒蛇はと言うと、いつの間にか横たわっていた己を理由も分からぬまま起こしていた。そして横たわっていた理由は直ぐに理解出来た。
『何が…起きた……?』
いや、理解には少し時間を有した。要は、タルラと戦う為に作られた義体に備わった防御アーツ…それを破壊する威力の一撃が振るわれたと言う事。その一撃が生み出した赫白の破壊は、己をそのものから破壊しようとした事。
だが後者を理解する前に、目の前の光景をわかり易く説明しよう。
中枢区画一帯が、文字通り消滅した。
『ホント、ボジョカスティは凄い男だ』
タルラの炎すら掻き消え、少し暗くなった中枢区画だった場所。まるで天災による大きめの隕石が直撃したかの様なクレーターの中心で、黒コートは唐突に称賛する。
『私はね、彼と刃を交える度に、
地面へ打ち付けた槍翼を引き抜き、大剣へ戻しながら、もう片方の手に持った板を掌で弄ぶ。
『そしていつもこの結果を出す。幾ら長寿のウェンディゴと言えど、鉱石病と寿命ってのは矢張り酷いものだとね。主に源石、アレほんまマジゴミ』
『何を突然……』
『でも今の愛国者を殺すには、私も4割増しで相手しなきゃならないんだ。スゲェだろ?今回もお互い不殺とはいえお前の体で2割増しにならざるを得なかったし……矢張り全盛期はこの体で5、6割増しの
『本気、だと…?』
突然の意味不明な称賛。だが、この称賛を聞いたことにより、黒蛇の中で1つの疑問が生まれた。
『お前、一体何処まで手を抜いていた?!』
『……ボジョカスティにも言ったが、私は何時だって全力さ。まぁ最も――
今まで、全体の約1割の演算領域でどうにか頑張っていたのだがね』
『―――は?』
絶句。今までの行動…パトリオットとの拙い交渉事や、チェルノボーグ事変での方舟の計画、その全てには、人間の様な不完全さがあった。
故に黒蛇は、初めて出会った時からずっと、目の前のホモを口先だけの臆病者だと思っていた。
『おいおい、驚いてくれるなよ。入力された事を完璧に実行しない機械なんて、壊れてるにしろなんにしろ、フルスペックじゃ無いに決まってるだろ?』
『ならばお前は、本当に……!』
『あっそうだ(唐突)お前の体の痛覚回路起動して無かったな』
爆発スイッチを押す感覚で黒蛇にとって最低最悪なスイッチを
『ッ?!おい待て!今私に何を繋げ―』
『さぁて!私の出力の話が終わった事だし……今からAIをLevel3まで拡張する。演算領域の3割をコッチに回して、先ずはお前の心を殺す』
『チィッ!……心、心だとッ?』
『だってお前、体を壊しても意味は無いだろう?だから痛みと恐怖で分からせるかなって。洗礼礼装も100%機能するかわからないし。ツー訳で手っ取り早く心を……いややっぱ
そう言って、弄んでいた板…否、仮面を、のっぺらぼうの顔へ貼り付ける。目の位置を切り裂く横線と、その真ん中を貫く短い縦線。そして綺麗に噛み合った、鋭い牙が並んだ口は、嗤っているかの様に口角を上げている。
空いた手でもう一振りの大剣を手繰り寄せ、十字の目がマゼンダ色に光り……睨む天使は、嗤う悪魔へと姿を変えた。
『私の心を殺すだと……出来るものか!この千年も続くウルサスの愛を、我が不屈の意志を壊す事など、断じて出来ぬと教えてやる!』
『あっそう』
AI・Level3>
『じゃあ死ね』
弓となった大剣から撃ち出された赫白の閃光が地面を削り取り、移動都市の装甲も容易く貫通して遥かまで飛翔する。黒蛇がこの赫と白の奔流を避ける事が出来たのは、千年以上の人生経験によるモノと、ついさっきの己が崩れる感覚のお陰だ。黒蛇にとって今この時が一番、明確な死を幻視した。
無理にローリングした事で痛みを生じさせ、ソレを初めてまともに感じたであろう黒蛇は驚愕する。
『一々驚くなよ。コレからだぞ』
弓に変形していたそれは、連結部分に集中した砲口を6つに分離させ、一振りにつき3つに分かれて刃に沿って開いた刀身に収まる。刀身が閉じて柄頭を分離させ、二振りの大剣へと戻った。
『なァ!!このクソ蛇ァ!!!!』
大剣の峰が開き、推進機が火を吹かす。
『速ッ!?ぐっ…うぉぉぉ!!!』
大剣をジェットにして突撃。大剣がレーザーソードとかち合い、鍔迫り合いとなりながらも推進は止まらず、黒蛇をクレーターの外まで押し出す。
『アァァクソッ!このッ――』
『ギャハハ!!!』
レーザーソードを弾き、大剣を振り下ろす。黒蛇はそれをギリギリでガードするが、そこからイモータルによる連撃が始まった。
素早く力強い斬撃でガードをゴリ押しで崩し、黒蛇へ刃を叩きつけ痛みを与える。振り降ろし袈裟斬りゴリ押し気味にガードを崩し、片方で横薙ぎに払いながら体を一回転させ、遠心力と諸々が加算されたもう一振りで装甲に傷をつけ、そこからさらなるコンボへと繋げて行く。二刀である事を最大限活用したゴリ押し乱舞は止まる事を知らない。
二刀流は攻守のバランスが云々とはよく言ったものだがそんなものはどうでもいい。パワーisパワー、剣を2本振り回せば強いだろの精神だ。ジッサイ強い。黒蛇はまたガードを崩され、突きを喰らって吹っ飛んでいった。
『ウゴッ―!ヴッオ゛ァ゛ッ!!カハッ――!』
腹を抑え嗚咽の音声を垂れ流す。今黒蛇は全身が軋みを上げ、胴に穴が空いた様な痛みが続いている。その痛みに黒蛇は悶え苦しみ、体の中を吐き出したくなって仕方ない。ただの金属塊に出すものなど無いがな。
(オ゛ァァァ……!違ッ―こんな゛ッ…コレが痛み゛など…オ゛も――)
果たして黒蛇が痛覚というものを今まで感じて来たのかは分からぬ。感覚は憑依者の人格に都合よく押し付けていたのかもしれないし、タルラにさせた様な継承を千年以上も続けた結果、そういう感覚に慣れたのかもしれない。
だが慣れなど木っ端微塵にするほどの尋常ならぬ痛みが襲っているのは確かだ。立っているだけで足裏に痛みが生じている。最も、痛みがダイレクトに襲う理由は、義体を操る為に侵食した源石術式とその他の配線、その中にあった痛覚の配線と直接繋がっているからだ。自業自得である。
『あぁ、無事に痛がっててくれて何よりだ。ほら、人外や概念、神ってのはこぞって痛覚に鈍いってのが定番だからな。感度3000倍に設定したかいがあったってもんだぜェ!!』
コ レ は ヒ ド イ
地獄への道を悪意で舗装するどころか地獄そのものを作り上げやがった。相手を選ばなければ最低な行為である。そういうとこだぞホモ野郎。
『巫山…戯るなァ……!誰がッお前如きにィ!!!』
呪詛地味た声を吐き出す黒蛇へイモータルは地面を砕く勢いで一歩踏み出し、大剣を一振りブン投げる。投擲された大剣は丸く見えるほど回転しながら、投球の最速記録(テラ基準)を余裕でブチ抜く速さで黒蛇へ向かって飛翔し……弾き返される。
黒蛇、常時尿路結石の数千倍の痛みの中、それを怒りで圧し殺し、レーザーソードで迫りくる大剣を見事弾き返した。
『スマブラでよく見る反射対決か!良いね殺ろう!!』
『ッ――クソがァァァァァァ!!!!』
ホモによる無慈悲の弾き返し。もう一振りの大剣によってバッティングされた大剣は、さっきより弾速が上がってると来た。黒蛇はそれをキャラがブレる程の叫声を上げながら必死に迎撃した。ホモの一部を取り込んだせいで精神汚染されてるのかもしれない。知らんけど。
だがそれもどうでもいい。見てくれこの物騒なテニスを。例えるなら壁打ちスマッシュ(壁は人型とする)である。そう例えれるほど、一方的な攻撃だ。飛翔する大剣を何とか弾き返す。そしたら更に速い速度で打ち返される。そうして続けていれば、ガードが崩れてしまうのも時間の問題だった。
『ッガ――』
遂にガードしきれず、肩の装甲を傷つけながら後ろへ飛んでいく大剣。だがコレで漸く、地獄の様な応酬が終わっ――
『おかわりだァ!!!』
『ッ!?』
既に黒蛇の視界から消え失せ、明後日の方向へ飛んでいった大剣の先へと陣取っていたイモータル。そして大剣をさっきと同じ様に打ち返し、黒蛇へ痛みを与える。
『オラッ!オラァ!オラオラオラァ!!ドラァ!!!』
『グゥッ!この゛ォ―?!クソッ―!アガッ!ゴホォッ?!』
黒蛇を斬り裂いた大剣を更に弾き返し、フェイント地味た軌道での攻撃を増やしたりながら、無論それら全てを打ち返し的へ当てる。四方八方からの乱暴な遠距離攻撃によって、黒蛇の全身は痛みの絶えない体となった。アットホームだね。
『そろそろ次逝こうかァ!』
大剣とイモータルの速度が、分身して見えるほどの速さになった頃、まるで飽きた玩具を即刻捨てる勢いで攻撃を中断。飛翔する大剣を打ち返すのではなくキャッチし、柄頭を連結させ、そのまま黒蛇を斬りつけながら地面に叩きつけ、斬り上げながら吹き飛ばす。
最早黒蛇は声を上げる事すら出来なかった。痛みが酷すぎる。全身尿路結石と言っても過言では無い。気絶出来ればどれ程楽だったろうか。
そんな事を知っていながら分離させた蛇腹剣で黒蛇を巻きつけるイモータル。刃で締め付けながら伸ばした刃を元へ戻す力で引き寄せ、反対側の肩へ置く様に構えたもう一振りの大剣と引き寄せの力で勢い良く胴体を――
『ッッ――させ、る……かァァァァァァ!!!!』
斬り裂こうとした瞬間、間に現れたスパークウォールに防がれる。そして黒蛇は引き寄せの力を利用して巻き付く刃から抜け出し、その勢いのまま中枢区画から居住区の方向へと吹っ飛んで行った。コレが逃走経路だとでも言うのだろうか。実際逃走出来てるけども。
『まだまだ攻撃を冷静に防げる位元気じゃねぇか』
蛇腹剣を元に戻し、柄頭を連結させて弓の形態へ変形させる。刃に沿って割れた刀身からはみ出る6つの砲口を4つと2つに別けて合体、中心へ寄せる。
そして弓を空へ掲げ、連結した柄頭とその周囲の部分が小さく圧縮変形した弓弦代わりの引き金を引き……
『本当に面倒くせぇな……』
放つ。
『
とある一軒家に壁をブチ破って転がり込んだ黒蛇は、近くの家具を支えにフラフラと立ち上がる。
『カハッ!カハッ!…ぅあ゛っ……クソッ!許さぬ、絶対に許してなるものか!イモータルゥ!』
怒り。そして使命感。今の黒蛇はこの2つで己を襲う地獄をなんとか乗り切っていた。逃げてはならぬ。この都市でアレを殺さねば、ウルサスの繁栄において必ず邪魔になると。そういう心持ちが、黒蛇の原動力となるのだ。たかが痛み、何するものぞ。
だがその痛みが問題だ。最早動くだけで痛みの生じるこの体でどうやってアレに一太刀浴びせるかと、黒蛇は考える。最初の猛攻の時、この体にあるレーザーソードをわざわざ大剣で防いでいた。あの不快な性格をしているホモならば、防ぐまでも無いものは防がず、その優位性を全面に押し出して来る筈である。それを防ぐという事は、つまりこのレーザーこそ、あのホモを倒す唯一の手段なのだと黒蛇は結論づけた。だとしても矢張り、痛みをどうにかしなければならない。この体との定着が進む度に、痛みはますます高まっていく。だがこの痛みさえなければ、今の自分はアレと同じ位この体を動かせると確信していた。
後は、己の存在を崩そうとするアレが何なのかだが――
『今にッ、見ているがいい…!この体の仕組みを解き明かし、煩わしい痛みが消えた時が、お前の…敗北――』
ふと、黒蛇の視界に空が写る。
赤く、紅く、朱く赫く空を染める赫色の星々が……
雨の様に、墜ちて来る。
少し洒落た名前と共に撃ち出された大きく赫いエネルギー弾と、小さく白いエネルギー弾が空中で衝突、炸裂し、無数の雨となってチェルノボーグへと絨毯爆撃を開始する。
居住区へと飛んでいった黒蛇を炙り出す。ただその為だけに放たれた赫色の雨は着弾と共に大爆発を起こし、富裕層の豪邸を、家に残された子供達の小さな宝物を、少年少女の思い出が詰まった学校を、差別される感染者を治療していた診療所を、この事件で散っていった数多くの亡骸を、悉く焼き尽くして………
居住区の三分の一を、中枢区画の様に消滅させた。
『逃げるなよ』
いつの間にか目の前まで移動していたイモータルが音声を発する
爆風に吹き飛ばされ、存在のあちこちにダメージを負い地面の絨毯と化していた黒蛇が、イモータルの言葉に反応して震えながら体を起こし、睨みつけるかの様に顔を向けた。
『なんだキレてるのか?人間みたいで気持ち悪いな』
『お…前ェェ……!』
『そんな睨むなよカス。痛覚切ってやるから』
途端に体が軽くなる。あれ程体を蝕んでいた痛みが無くなり、黒蛇は年明けの朝に新品のパンツを履いた時の様な気分となった。
そして当然、わざわざ有利を捨てた事に不審を抱きながらも、飛び起きながらレーザーソードで攻撃を仕掛ける。勿論避けられるが、黒蛇はそのまま距離をとって着地した。
『なんの、つもりだ……?』
『いや、ただ痛みじゃ何時まで経ってもお前の心を殺せない感じだと思っただけだ。だからまぁ、やり方を変えようかなと』
『……ハッ!憐れだな。要は私を殺すなどと、端から無理であったという事だろう。その優位性が続くのも今の内だ』
矢張りこの黒蛇、いつ如何なる状況になろうと口が減らない所が強みの1つだなって。そんな感じの事を実感するイモータル。
『じゃあお前の手足を千切って吊るして、目の前でウルサスの数千年の歴史全てを塵に変えれば、少しは口数も減るか?』
その瞬間、黒と白のイバラが奔ると共に、黒蛇の姿が消えた。そして数秒後には、引き寄せられたイモータルの胸に、黒蛇のレーザーソードが突き立っていた。
痛みと言う枷が無くなった今、黒蛇はこの体を正しく、それこそイモータル以上に使いこなしていた。
『カハッ――』
『お前がウルサスの領土を滅ぼすだと?この私がやらせると思うか?!だが……フフッ、私を殺すが為だけにウルサスの全てを滅ぼすなど、お前も所詮は人間的な思考しか出来ぬ存在だ。やらせはせんがな!お前がそのつもりであれば、私は必ずお前そのものを掌握し、お前が集めた感染者達を焚き付け、扇動して、此度のレユニオンの様にお前の積み重ねてきたもの全てをウルサスの糧としてくれる!』
レーザーソードを更にギチギチと押し込む。勿論突き立てている胸部装甲の下にあるものは源石エンジンだ。即ち心臓である。ここを潰されれば、もう二度と稼働する事は出来ない。
『ッ―クソッガァ……』
『見事に侮りが仇となったな。だがもう遅い!己の過ちを嘆きながら滅びるがいい!』
『オ゛ク゛ァ゛ッ……ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛』
叫びが徐々に遠退き、大剣が手からずり落ちて大きな音を立てる。
短く響き渡る音が止んだ時、既に鉄の体は指一本すら動かす事は無くなっていた。
『なぁ〜んちゃってwww』
無論、虚偽である。
大剣を離した手で透かさずπタッチしている黒蛇の腕を掴みながら、口角を上げた口をしている仮面の様に、ゲラゲラと嗤う。楽しかったよ、お前に倒されるごっこ。
そして黒蛇は、目の前の状況を少しの間理解出来ないでいた。
『さて』
うわぁ急に落ち着くな
『心を殺すには、主に3つの手段がある。1つ目は痛みだ。お前もさっき経験したからわかるだろ?だいたい人間はコレで手っ取り早く死ぬ。2つ目は破壊だ。そいつにとって大事なモノを、文字通り壊し、殺す。そして3つの目が……』
一度説明を止めて、掴んでいる腕をゆっくりと引き離す。
黒蛇は驚愕するしかなかった。確かにレーザーは、イモータルの胸部装甲を焼いている様に見える。焼いているだけだった。いや寧ろ、焼いてすらいないだろう。
タルラの炎にも匹敵する閃光は装甲と接触した瞬間に散らされる。突き刺していたように見えたのは、マジックナイフの様に刀身が短くなっていたに過ぎなかったのだ。
『あ……あ………』
『3つ目は、抗う事など絶対に不可能であるという現実を押し付ける……絶望だ』
掌から白いレーザーソードを出しながら、斬り捨てる様に掴んでいた手を離す。何度か受けた攻撃による存在そのものが傷つけられる感覚と、痛覚とは別の痛みに思わず声を吐き出す。
もっと早くに思い至っておくべきだった。武器にしているというコーティングを、装甲に使っていない筈が無いと。
黒蛇が何をしようと、この体に封じ込められた時点で、イモータルの掌の上で踊っているに過ぎないのだ。
どう抵抗しようと、詰みである。
『ガッ?!……カァッ……!』
『安心しろ。私は嘘はつくが、有言は実行させる機械だ。ちゃーんとウルサスは滅ぼすとも』
『ッ…や…止めろ……!』
『止めるものかよ。お前は何も出来ないまま、私が好む結末をただ見ているだけだ』
歩み寄りながら音声を発するイモータルと、腕を庇いながらその歩みに合わせて後退る黒蛇。
『今のお前は私には勝てない。別に逃げてもいいぞ、私にも準備がある。その間お前は、他の黒蛇達に助けを乞うなり、利刃を使うなり、ウルサスを纏め上げて戦力を強化するなりすればいい』
そんな事を言わずとも、既に黒蛇はみっともなく逃げようとしていた。言葉をハッタリだと切り捨てられればどれ程気が楽になれただろうか。勝てないのは事実、そしてイモータルの言葉を簡単に切り捨てる事など出来ない。
何故なら、目の前の機械はちゃんと言った事をやって来たのだから。
『全員纏めて殺すがな』
逃げた。最早プライドだのなんだの有りはしない。全力でウルサスを、我が愛する国を守らねばならない。でなければウルサスは、あの中枢区画の様に、三分の一が消し飛ばされた居住区の様に、滅ぼされる。
だから今、全力で逃げ切るのだ。
『逃しもしねぇけどなァ!』
最初から逃げる事など出来ないが。
弓へ変形させ、砲口が6つの状態で引き金を引いて放つ。6つの赫い矢は真っ直ぐ黒蛇を追いかける。黒蛇が残りの居住区へと入り、家を盾にしながら逃げ続ける。
が、矢は当たり前の様に軌道を変え、家を回避し、1本も欠ける事無く黒蛇を攻めたてる。
『クソォ!』
それでも逃げて逃げて逃げ続け……交差点に差し掛かった時に、ふと視界の横に何かが入り込む。
『ッッ?!』
イモータルと目と目が合う。瞬間に感じたのは好意ではなく恐怖。そのままスピードを更に速くして突き進む。が、次の瞬間、黒蛇が走る道にある遠くの家をブチ壊しながら、イモータルが弓を引いた状態で現れた。
『ナァッッ?!?!』
咄嗟に急停止しながらスパークウォールを目の前に張る。それと同時に、痛覚3000倍が突然起動したのを実感し……
前後から計12本の矢と着弾時の爆発を大真面目に喰らう。
『―――』
『私の一部がまだ残ってるんだ。お前の体は私が好きなように設定出来る。痛覚は勿論、人工筋肉の再生とかもな』
膝から地面にぶっ倒れ痛みで声も出せない黒蛇。陸に打ち捨てられた魚の如くビクビクと痙攣している。顔の投影機能がまだ実装されていなくて助かったな。あったらきっと顔はエロ同人誌の様な顔になっていた所だろう。
『オラァ!』
『ッッ――ッッッ―――』
股間を蹴るのはマジでやめて差し上げろ。
『さて、そんな黒蛇君に朗報だ。お前の武装でも傷をつけられる部位があってね。この翼、周りの源石からアーツエネルギーを吸ってエンジンを動かしてるのだけど、その機構のせいで頑丈ではないの。だから壊されたら不味い訳ね』
黒蛇の頭へ移動し、体の痛覚をオフにする。
『今からはもう痛覚を起動させないからさ、頑張って………
狙って見やがれェ!!!』
そして勢い良く蹴り飛ばす。サッカーボールの様に吹き飛びながら、黒蛇は家やマンションを突き破り、そして態勢を立て直して急停止した。
『ハァッ―!ハァッ―!ハァッ―!』
今更弱点を晒して何になる。そんなモノを教えられた所で、散々勝てるビジョンを潰された今、イモータルの背中を取るなど世界が逆さまになっても出来ないと確信してしまう。
己が開けてきた穴の向こうに、イモータルが見える。ホモは大剣を変形……前後で刀身が別れ、持ち手が異様に伸び、切っ先側の刀身は折り畳まれ鋭利な物へ、柄頭側は槍翼の変形の様に3つの推進機が展開する。
そうして出来た槍が投擲され、一瞬で目の前へと飛翔する。
『出来るかァァァァァァ!!!!』
存在が修復された腕のレーザーソードで槍を弾く。だが弾かれた槍は推進機が爆発するように噴射する事で向きを変え、再び正常に噴射して真っ直ぐ黒蛇を襲う。
黒蛇は縦横無尽に襲い来る槍をレーザーソードで迎撃し続けるが、すぐ近くまで来たイモータルの元へ戻る頃にはボロボロになっていた。
戻って来た槍をキャッチし、そのまま槍の二刀流で黒蛇のレーザーソードと鍔迫り合いになる。だが突撃の勢いのまま黒蛇を押して家に突っ込み、そのまま斜めに地面へ突っ込んで下層フロアに場所を移したのを見るに、力の差は明らかだ。
(何が弱点だ!背後を取らせる気など無いだろうが?!考えろ、今この存在から逃げるには――)
地上を支える柱を壊しながら、斬撃と薙ぎ払いが打ち合う。吹き飛ばされ、投擲し、弾き返し、不意打ちで出した筈のゼロ距離イバラビームを軽々と避けられ、お返しと言わんばかりに体中に穴が空く。
痛みは無い筈なのに、体をなんの障害も無く動かせている筈なのに、攻撃を防ぐだけで精一杯。それどころか、天井を突き破って地上に放り出される頃には、体の装甲はひび割れ、所々から人工筋肉が見え隠れする程に傷ついていた。
己を壊す攻撃手段を持ち、愛するウルサスを滅ぼせる力を持ち、コチラのあの手この手を悉く踏み潰す戦闘能力を持つこの存在を打倒しろなどと。そんなの――
『どうやって戦えばいいんだ?!』
投擲された槍を弾き返す。槍はさっきの様に推進機で態勢を立て直し…家を突き破りながら明後日の方向へ飛んでいく。そしてイモータルは跳躍しながら手に持つ槍を横へ回転させる。その槍と明後日の方向から迂回してきた槍の切っ先同士が衝突と同時に接続。イモータルは2倍の長さになった槍へ乗り、また家を突き破りながら明後日の方向へ突き進む。
奇襲の為に姿をくらましている…にしても、突き破った家が倒壊するせいで丸見えだ。ほら、今もどんどん倒壊が大きくなり……龍が現れる。
『なんだとォォ?!!?!』
『ヒャハハハハ!!』
正体はさっきの槍が変形した蛇の様な鋼鉄だ。頭である部位は3つの巨大な砲口が三角に並び、その上にイモータルが仁王立ちしている。
そして龍は黒蛇を見下ろす様に陣取り、照準を合わせ赫白のエネルギーが溜まった砲口を開く。
『絶望とはこういうことだ!!!』
放たれたドラゴンブレスは黒蛇を飲み込み、都市を融解させる。これにも洒落た名前があるが今は省略だ。当たり前の様に大爆発が起こった後、溶岩の海と化した下層フロアと、その真ん中で壊れかけのリフレクを張りながら肩で息をする黒蛇がいた。今回は黒蛇の存在が半分吹き飛んだ。
すかさず龍から槍、槍から槍翼へ変形させ上から強襲し、推進機でブーストされた拳がリフレクをブチ割って吹き飛ばす。
溶けた金属をまき散らしながら接近し、態勢を整えたばかりの黒蛇へ拳を2発打ち込む。体を捻りながら飛び上がり回し蹴りを喰らわせ、逆の足で追撃。着地と同時に拳を1発ずつ喰らわせ、推進機のブーストがふんだんに乗ったアッパーカットでブッ飛ばす。
炎国に伝わる七破七旋の武術を受けて空中を舞う黒蛇へ向け、両手の指同士を組んだ拳を突き出す。槍翼が回転して推進機は砲口となり、今までよりも更に凝縮された赫白の奔流を――
『させるかァァァ!!!!』
『うぉっ』
放つ瞬間、イバラに絡まれた体は明後日の方向を向き、放たれた極太の奔流は一瞬にして残った居住区の2割を飲み込んだ。奔流が過ぎ去った後には何もなく、素晴らしい程に見通しが良くなった。
『ゲハハハ!ヤるじゃねぇか』
景色が黒く染まり、次の瞬間に全方位に配置されたレーザー弾が世界を照らす。どうやらイモータルがパトリオットへやった技を使うようだ。確かにコレなら背中を比較的狙いやすいだろう。
イモータルが人間ならばの話だが。
『来いよ!』
『撃てい!!!』
全方位掃射。それを槍翼を大剣へ戻しながら零コンマの差で先に到達するレーザー弾から叩き落して行く。
分身して見える様な勢いで片っ端から叩き落とす。ただ闇雲に叩き落とすだけでは無く、二振りの大剣で半分半分を余すこと無く補う様に、流れる様な無駄の無い剣舞を披露する。
弾速が上がる。弾数が増える。それらが一定以上になると、流石に大剣2本じゃあ厳しくなってきたのか、蛇腹剣へと変形して対応しだした。
それを好機と捉えた黒蛇は、更に弾速と弾数をあげる。
『おおっとそろそろ無理そ』
ここに来て始めて、内蔵されたリフレクのアーツを起動するイモータル。六角形が組み合った膜が円形状に全身を包み、レーザー弾を遮断する。
だが長くは持たなそうだ。既にヒビが入っている。
『小賢しい!』
『そりゃどうもね』
リフレクが割れる前に変形を開始する。大剣へ戻し、峰の中に埋め込まれている持ち手を回転させて外側へ出し、そして峰と峰を合体させる。2つの持ち手が連結して1つになり、刀身は伸びて切っ先が少し鋭利になる。
こうして大剣が2つ合わさった巨大なバスターソードへと変形した。だがまだ終わらない。最後にオマケと言わんばかりに切っ先付近の刀身の腹が開いて槍翼が飛び出す。
割れかけのリフレクを突き破り、槍翼のエンジンを点火。まだ空中に固定されているレーザー弾ごと、推進力に任せた高速斬撃で諸共を斬り捨てる。
『コレでも駄目なのかッ!!!』
『あぁそうだ』
『クソッ――ッ?!』
レーザー弾を全て斬り裂き、イモータルをドーム状に閉じ込めていたイバラビームも全て斬り裂いて、最後に狼狽えていた黒蛇の片腕を着地と同時にブッた斬る。
『人工筋肉の再生を無制限に設定』
『なっ―なぁッ?!なんだコレは?!』
結晶化した断面を内側から砕きながら、ピンク色の人工筋肉が悍ましく増殖する。
『イモォォォタルゥゥゥ!!!!』
『多重次元屈折現象、起動』
増殖する肉でバランスを崩しながらも呪詛の様に叫ぶ黒蛇へ向かって、槍翼に変形させた両拳を広げ一歩踏み出し、推進機の力を乗せ全力でブン殴る。
最初の一撃を受けた瞬間、黒蛇の体に143もの衝撃がまったく同時に訪れる。しかも地面を容易く砕く威力のそれが音速を超える速度で、連続で、襲い来る。
『オラオラオラオラオラオラァ!!ハーレェェェイ!!!!!』
空気が破裂し轟音がなる。瞬間的に約1000発の拳を受けた黒蛇は、その衝撃で装甲を粉々に砕かれ、四肢の全てを失い、頭がピーナッツの様にバラバラになり、体は移動都市の先頭付近へとブッ飛んで行った。
『……まだ形状が無事だな』
遠くで肥大化する肉団子を見ながら、イモータルは移動都市の最後尾へとワープする。
『人の形すら失って生肉団子に成り果てたか。お前の願いを叶える手段が
大剣をバスターソードへ変形させ、空へ掲げる。切っ先付近の両側の腹に取り付けられた推進機も回転し、砲口が空を仰ぐ。
閃光が天を穿つ。
その赫白の光は龍門のみならず、リターニアやラテラーノを越え、ヴィクトリアやカジミエーシュ、炎国やレムビトリンの先民達にも目視で観測された。
赫の破壊と洗礼を凝縮した白は入り交じりて極光となり、それは矢でも奔流でも無く、万象を斬り裂く刃と定義することで、ここに幻想聖剣は天を墜とす。
(何が、方舟だ)
人工筋肉に埋もれながら、偶然にも残っていたカメラでその極光を視界に収める。
(お前の様な破壊の化身が、人々を救うなどおごがましい)
最早呪詛しか吐き捨てぬ。ここまでくれば負け惜しみとも取れるが、それは紛れもなく目の前の脅威への抵抗だった。
(あぁ、巫山戯るな。私の不甲斐なさが…愛しのウルサスを滅ぼしてしまう。こんな……こんな………)
迫る極光を諦観する。雲を斬り裂き、大地を…国土を斬断するその刃を振るう存在を、ウルサスの証人は人類の脅威だと定義づけた。
(天災に―――)
白き洗礼を全てに浴びて、その存在そのものを漂白されて。不死と謳われた黒蛇は、文字通り消滅した。
『未だ貫く事すら出来んか…まぁいい』
そう呟きながら空を見上げていた顔を前へと向けて、縦に分かたれたチェルノボーグを歩く。
そして、移動都市の先頭付近まで歩き、地面に転がる金属の匣を持ち上げ―――
『………ハッ』
嗤った。
数多の歪み、数多の命を拾い、あなたは神を殺した。全てではないが、悲劇は敗北し、あなた達は勝利した。祝杯をあげよう、終幕への歩みを祝って。
獲得実績
『機械変生』ロボットのタグを持ったキャラでゲームをスタートした
『人助け』怪我人を治療した
『発進!』移動都市を動かした
『拠り所』一定以上の感染者を保護した
『実家帰り』ライン生命へカチコミした
『時間短縮』ドローンで施設の作業を短縮した
『改造』移動都市の内部をリフォームした
『避難所』一定以上の感染者を保護した
『名乗りあげ』組織として名乗りをあげた
『機械上手』作製ツリーを2割解放した
『暗黒時代』チェルノボーグ事変へ介入した
『偽善者』レユニオンに所属する感染者を助けた
『人間の真似』人型の義体を作成した
『お仲間同士』ロドスと出会った
『鋼鉄母胎』一定以上の感染者を保護した
『深淵の世界』エーギルの作製ツリーを解放した
『I LOVE人間』人型の義体を複数作成した
『不法侵入』他国の都市へ不法侵入した
『相思相愛Ⅰ』レユニオン幹部、スカルシュレッダーをダウンキルした
『相思相愛Ⅱ』ミーシャを保護した
『アーチャー』一定距離以上先の飛翔物を撃ち落とした
『零点直下』フロストノヴァに凍結状態にされた
『快刀乱麻』龍門での戦闘に介入した
『赤狼』レユニオン幹部、クラウンスレイヤーをダウンキルした
『内に秘めた思い』レユニオン幹部、ファウストと和解した
『ダイヤモンドダスト』レユニオン幹部、フロストノヴァをダウンキルした
『希望都市』感染者の保護数がロドスを超えた
『機械達者』作製ツリーを6割解放した
『怒号光明』最終決戦へ参加した
『愛国者』レユニオン幹部、パトリオットをダウンキルした
『特殊消防員』鎮まぬ悪炎をノーダメージでやり過ごした
『ドラコの戦士』レユニオンのリーダー、タルラをダウンキルした
『神だろうと殺す』上位者に戦いを挑んだ
『不死殺し』不死の黒蛇をキルした
『暗黒落陽』チェルノボーグを破壊した
『境界無き方舟』悲劇を迎える筈だった感染者を救い、この大地に希望をもたらした
『■の■■』漸く、叶える事が出来そうだ
タイマーストップ!時間は76分22秒!
完走した感想ですが、
とはいえ無事に完走出来たのは本当に嬉しいです。最初の頃は空前のRTAブームということで便乗してみましたが、ここまで難しいものだったとは思はなんだ。余り原作キャラを活かせなかったのも辛いんですし、ライブ感で出したポッと出の新技やご都合過ぎる展開、主に敵キャラのキャラ崩壊ナドナド…反省点が多すぎる。
そんなぐだぐだな本RTAの二次創作品を見てくれた方々、本当にありがとうございました。こんな作品を面白いと言ってくれたり、この作品をきっかけの1つにアクナイ二次創作を書き始めた人がいたりと、もう読者に頭を上げられねぇ!売り出したばかりの小説家ってこんな気分なのかな?!いや本当にありがとう!!!
という訳で、後日談と久しぶりのプロファイルを投稿し、一旦完結とさせていただきます。呆気ない最後ですが、ここまで見てくれてありがとうございました。
それではこれにて、バイバイ。