エレウシスの盃   作:通りすがりのアンパン

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終焉の時

 それは、ニコラが里を出て二週間が経った日のことだった。

 

「終わったぁー!流石俺、過ちを繰り返す」

 

 ふふっ、前世じゃ夏休みの課題は最後の日までやらなかったが、今回も最後までやらなかったぜ!おかげさま一日宿題に追われちまった。

 

 しかし、魔族語についてはそれなりに習得できたと思う。ネイラが魔族語を少し扱えるため魔族語の練習相手をしてもらった。やはり勉強はインプットとアウトプットが大事だな。

 

「にしても、やけに静かだな。クレオスも朝から出かけたままだし」

 

 宿題も終わったしオリオントのところでも行くか。

 

「あら?アーデ宿題は終わったの?」

 

 その台詞、懐かしいな。

 

「うん、終わったよ。ちょっと里長のところに遊びに行ってくるね」

 

「そう……わかったわ」

 

 ネイラに手を振って家を出る。

 

 

 

 何かおかしい……

 

 

 

 

「オリオント様〜?」

 

 オリオントの家に着くと異様な空気だった。何やら怪しい人が詠唱を行なっており床には六芒星の魔法陣が展開されていた。

 

「む、アーデか。ちょうどよい」

 

 オリオントがいつもの仁王立ちで出迎えた。

 

「どうしたんですか?なんだか今日は里も静かですし」

 

 オリオントは悩むように髭を撫でて、ゆっくりと口を開いた。

 

「落ち着いて聞け。今日『黒龍』が来る」

 

「へ?黒龍って……五龍神のですか?」

 

 黒龍バハムート。五龍神の一人にして、その力は天変地異を起こし、一人で国を滅ぼせるほどだとか。

 

「近頃魔物が活性化しているのは知っているな?」

 

「……はい」

 

 それが黒龍の来る理由なのだろうか?

 

「その原因が先日わかった。この里の上空に強力な魔力が集まっているのだ。おそらく、彗星級魔術ほどだ」

 

 彗星級だって?どういうことなんだ。

 

「黒龍はそれを止めにくるのだ。今日の朝、龍神の使いから知らせがきた」

 

 オリオントがそう言うと詠唱を行なっていた怪しい人がこちらを向いた。

 

 派手な紅の髪に紫の目、オリオントと同じくらいの長身であるが、体格は正反対といったところだろうか。いや、オリオントがゴツ過ぎるだけだろう。黒のタキシードのような服が禍々しさを醸し出している。

 

「バハムート様の命により来た『アドーニス』だ」

 

 男は手短に挨拶を済ますと再び魔法陣の方に向き直った。

 

「これは転移の魔法陣。非戦闘員はここから東方の国に逃がす」

 

「非戦闘員?ちょっと待ってください!さっきからなんなんですか!?ちゃんと説明してください!」

 

 妙な胸騒ぎがする。

 

「雲より上にある彗星級魔術。あれが今日発動する。標的はここ、デメテールだ」

 

 アドーニスは淡々とそう告げた。

 

『……は?それって何者かがここを狙って襲撃するってことですか」

 

 くそっ、判断材料が少な過ぎる。とにかく今日この里に彗星級魔術が落ちるってこと。それを防ぐために黒龍が来る。そして非戦闘員はこの転移の魔法陣から遠くに避難する。

 

 一体誰が?何のために?何故今日なんだ?

 

「アーデよ。我から一生で一度のお願いだ」

 

 オリオントが膝をついて俺と目線を合わせる。こんな至近距離で強面の屈強な男が見てきたら普通ビビり散らかすだろう。

 

「な、なんでしょう」

 

「共に、戦ってくれ。あの魔術に対抗する術を持っているのは我とお前、そして黒龍とアドーニスの四人だけなのだ」

 

 たったの4人……?でも……

 

「……わかりました。アーデ・デメテール、竜人オリオント様にお供致します」

 

 膝をついて忠誠の意思を示す。

 すまん、と一言オリオントが小さく答え外に出る。

 

「皆の者ぉ!準備は整った!避難を開始しろぉ!」

 

 オリオントの大声と共に里の皆がオリオント家にやって来た。

 そしてオリオントの家の中に入り魔法陣へと踏み込んでいく。その時、皆オリオントや俺に頼んだ、申し訳ない、と各々一言残していった。

 

「アーデ……」

 

 最後にネイラが俺を抱きしめた。力強く。

 

「ごめんなさい……まだ幼いあなたにこんな使命を背負わせてしまって……」

 

 ネイラは泣いていた。

 ああ、そうか。下手すりゃ死ぬかもしれないんだなこれ。

 

「ずっと待っているわ。お父さんと帰って来てね……」

 

 思えば魔法陣に入っていったのは女性やお年寄りばかりだ。男はみんな戦いに参戦するのだろう。

 

「うん、大丈夫。きっと大丈夫だから。だって俺、兄になるだよ?」

 

「……っ!そうね……この子をちゃんと産んで二人で待ってるわ」

 

 そう、ネイラのお腹の中には新たな命がある。

 

 こんな急展開で正直焦っているが、ゲームじゃよくあるイベントだ。このイベントで主人公が覚醒したりするんだよな。

 

「ネイラ!」

 

 息を切らして駆け込んで来たのはクレオスだった。

 

「クレオス……」

 

「ネイラ。アーデは俺が絶対に守り切る。そして絶対に生きて帰る。剣術だってまだ教えきれてないんだ」

 

 クレオスは俺の頭に手を置き決心に満ちた目を合わせた。

 

「アーデ。お前は俺の自慢の息子だ。だから……」

 

「心配し過ぎ父さん」

 

 クレオスの言葉を遮り俺はしっかりと目を合わせた。

 

「こういうのは案外なんとかなるもんだよ。黒龍様も来てくれるし」

 

 呆気にとられた表情をしたのはクレオスだけでなくオリオントもだった。

 

「ガハハ!どうやらこの中で一番肝がすわっているのはアーデのようだな!

 

 いつもの軽快な笑いで少し場が和む。

 

 ネイラが転移するのを見届けるとクレオスとオリオントの顔が険しくなった。戦士の顔だ。

 

「ちなみにその彗星級魔術ってどんな魔術なんですか?やっぱり一撃必殺的な?」

 

「彗星級はほんの一握りの者でしか扱えない謂わば秘術のようなものだ。今我々の上に展開している彗星級は『地獄の門』。門から悪魔を呼び出し己に従わせる」

 

 アドーニスが答えてくれた。彼は転移の魔法陣を閉じ新たな術式を展開している。

 

「私もまだ使えない。世界で彗星級魔術を扱えると認知されているのは四龍神様方と、龍王ウロボロスだけだろう」

 

 なんか龍王だけ当たりが強いなこの人。嫌いなのだろうか?

 

「その、龍王様はどんなお方で?」

 

 アドーニスは嫌そうな顔をして低い声で答えた。

 

「今回の件はウロボロスが引き起こしたものだ」

 

「え……?」

 

「今は流暢に話している暇はない。お前にも身体強化と魔力活性の魔術をかける」

 

 地獄の門、悪魔、ウロボロス……聞きたいことが多過ぎるぞ!?

 

「……!黒龍様がいらっしゃったぞ」

 

「うおっ!?」

 

 ズンッと地響きと唸り声が聞こえてきた。恐らく龍の声だろう。アドーニスは誰よりも早く外に出て主人の出迎えに行く。

 遅れて俺とオリオントが外に出るとそこには名前の通りドス黒い龍が佇んでいる。

 

「リュウマ様、こちら準備は整っております。なんなりとご指示を」

 

 リュウマ……?なんかこの世界には違和感のある名前だ……。

 

「ご苦労さん。向こうがカチコミしてきたんなら、こっちも黙っとらん。目には目をや、こっちも彗星級を使うで」

 

 俺はある確信を得ていた。それは黒龍と呼ばれる男の独特な話し方、服装から間違えない。彼は日本でいうヤクザだ。

 ボルサリーノ風の茶色の帽子、光加減で黒い眼光が見え隠れするサングラス、この世界には不釣り合いな紺色のボーダーのスーツ。正に漫画とかで見るあれだ。

 

「お、お初にお目にかかります。アーデ・デメテールと申し訳ます。親方様」

 

「ん?ああ、お前が加護持ちの……。大人の事情に子どもを巻き込むんは申し訳ない。アドーニス、しぃっかりその子を守れや。子ども死なせたなんてしたら黒龍の恥と思えよ」

 

「はっ!龍の使いの名に恥じぬよう命を張らせてもらいます」

 

 おいおい、こういうメチャクチャいい人感のヤクザ、漫画で見たことあるぞ!

 

「アーデと言ったな。我々は今からリュウマ様が彗星級魔術『メテオ』の準備をする時間稼ぎをする」

 

「露払いですね。わかりました」

 

 ふと、周囲が暗くなった。

 

 空を見上げると先程までの青空は消え、紫の禍々しい空間が空を覆っていた。

 

「始まるぞ」

 

【ピキィ……!!】

 

 空が、割れた。

 

 

 

 

「皆の者ぉ!我ら竜人の力を示す時!悪魔を討つぞ!」

 

「「おぉおおおお!!」」

 

 里の男衆が声を上げいよいよ戦闘が始まるのだと気を引き締める。

 

 空の割れ目に目を凝らしていると目が合った。

 

 

 

 

 

 

 ……目が合った……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グォォオオオっっ!!!」

 

 それは見間違いではなく、確かに目が合ったのだ。空の割れ目から俺たちを覗き込む悪魔と。

 

 全身血で覆われたような真っ赤な色をしており、同じく目も充血しているようだ。頭からは角が生えており、悪魔というよりも鬼に近い。

 

「アーデ!竜化だ!ジラ・ツァガニコスを使うぞ!!」

 

「はい!我、竜の化身!!」

 

「バハムート!お前も二人に加勢だ!」

 

 あ、バハムートってリュウマさんのことじゃなくて、黒龍の名前だったのか。ってそんなことは今はいい!集中……集中……

 

「我が合わせる!詠唱を始めろ!」

 

「いきます!」

 

 オリオントの顔を見て頷き合図を送る。気付けば周りには里の皆、クレオスが集まり俺たちに魔力を送ってくれている。

 

『『我が龍神の盟約に従い、森羅万象、全ての在るもののマナよ、集え。竜の名のもとに、雷を司る神よ我の望みを叶え給え。天より轟く豪雷よ、一閃の光となりて大地に降り注げ。奏でるは鳴神、大いなる曇天よ全てを覆いて、竪琴を奏でん!

 ‘白雷麒麟(ジラ・ツァガニコス)’!』』

 

 里全体を包むほどの巨大な魔法陣が展開され、そこから一閃の光が轟音と共に悪魔へ肉薄する。

 

 次元の狭間から這い出ようとした悪魔の腕を貫き破裂させ、左腕が木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

「ガァアアアっ!!」

 

 片腕を失っても悪魔は怯むことなく進撃する。

 

「ちっ!頭から逸れたか。アーデ!もう一撃いけるか?我は別の魔術を使う!」

 

「わかりました!頭部を狙います!」

 

 賢王級となると消費する魔力も相応のものになる。いくらオリオントほどといえども連続して使用するのは危険が伴う。だが、俺は並外れた魔力量を持っているため、3発までなら連続使用ができるのだ。

 

『────────!くらえっ!白雷麒麟(ジラ・ツァガニコス)!!』

 

 素早く詠唱を行い魔術を発動。先程よりも二分の一の大きさの魔法陣が展開され再び白い龍の形をした雷が悪魔へと迫る。

 

「ガァっ!!」

 

 しかし、悪魔の咆哮から放たれた光線により相殺されてしまう。

 さらにもう一撃悪魔の破壊光線を放つ。

 

「皆!避け───」

 

 一瞬だった。視界が真っ白に包まれ音を置き去りにした。

 

「アーデ!!」

 

 最後にクレオスの声が聞こえた気がした。

 

 

 その日、竜人の里オリオントは消滅した。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 …………あ?

 

 目が覚めると辺り真っ白な空間に俺はいた。

 

 俺は死んだのだろうか?だとしたらなんとも無念だ。せっかく異世界ライフで魔法も使えてこれから冒険も始まるってところだったのに。

 

「ようこそ、この世とあの世の狭間へ」

 

 うわっ!びっくりした……

 

 一目でわかる。こいつはこの世の人間じゃない。血が抜かれたのかというぐらい真っ白な顔に真っ白な髪、そして真っ白な目をしており、執事服のような黒の服を着ている。さながらホテルマンといったような印象だ。

 

「これはこれは、驚かせてしまい申し訳ない。私は魂を導く案内人でございます」

 

 ど、どうも……こんにちは。

 

 案内人と名乗る男?は手を胸に当て軽くお辞儀をする。

 

「さて、()()()()様」

 

 その名前にドキっと心音が早くなる。

 

 なんで、その名前を……?

 

「先程申した通り、私は魂を導く者です。ですので、魂に刻まれた名前は当然把握しております。あなたの場合は少し特殊なようですが」

 

 つまりの俺の魂の名前は前世の名前というわけか……確かに前世の記憶とか引き継いでるし、中身は誰ですかとなったら中年の男だ。

 

「しかし、随分と落ち着いていますね」

 

 まあ、人生2週目だし?一回死んでるわけだし慣れたってのはちょっと違うけど異世界転生経験した身からすれば、こういうのもあるんかなって。

 

「……輪廻転生ですか。前世は……ああ、なるほど。教師ですか。うむ、子どもたちからも人気で職場のムードメーカー的存在だったみたいですね。死因は……」

 

 そこまで言って案内人の言葉が詰まる。

 

「通り魔……ですか」

 

 ……思い出した。そうだ、俺は通り魔に刺されて死んだんだ。何度も何度も刺されて……うっ……思い出したら痛みの感覚がしてきた。

 

「カズヒト様の無念と生きたいという意思を持つ魂が再び別の器に入り込んだようですね」

 

 別の器……つまりアーデ・デメテールに俺の魂が入ったってことか?まてよ……そうなるともともとのアーデの魂はどうなったんだ?まさか俺がこの人の人生を奪ってしまったのか……?

 

 案内人は首を横に振った。

 

「いえ、本来この者は死産でした。しかし貴方の魂が入り込んだことで再び生を得たのです」

 

 そう、か……じゃあ、よかったんだな、これで。

 

 ネイラの初めての子どもが死産だった。それを俺が入りこんだことで歴史が少し変わった。でも、ネイラとクレオスの悲しむ顔を想像したら俺がこの子の人生の肩代わりをしたのはよかったのかもしれない。

 

「少し話が逸れましたね。現状をお話ししましょう」

 

 この世とあの世の狭間って言ってたし、もしかしてまだ死んでなかったりするのだろうか?

 

「カズヒト様はウロボロスという者が召喚した悪魔『ベリアル』の攻撃によって瀕死の状態になりました。デメテールの里は消滅、あなたの父親を含めた里の者はほぼ全滅しました」

 

 え、クレオス……死んだのか……?

 

「……はい。文字通り消滅しました。カズヒト様を庇い里と共に……」

 

 嘘……だろ、だってネイラが……もうすぐ子どもも産まれるんだ!ネイラは待ってるんだ……クレオスを……

 

「……ネイラという者が待っているのはクレオスだけなのですか?カズヒト様も含まれているのではないのですか?」

 

 ……!

 

「カズヒト様が生きたいという意思があるのであればまだ助かる可能性はあります」

 

 ……俺は……帰る。ネイラの所に。伝えないといけない、クレオスのこと、里のこと……

 

「そうでしょう?ですので、今からお伝えすることを落ち着いて聞いてください」

 

 ……わかった。

 

「まず、あの悪魔について。黒龍とその使いによって悪魔の迎撃になんとか成功します。カズヒト様の魔術が効いていたのでしょう。その後、黒龍はあなたを回収しますが、現在カズヒト様は昏睡状態です」

 

 あ、待った。オリオントはどうなったんだ?

 

 オリオントも死んでしまったのだろうか。

 

「オリオントも消滅しましたが、そのうち復活するでしょう。何せ彼は魔王ですからね」

 

 ……ん?魔王?オリオントが?

 

「ええ、彼は竜人であり、魔王でもあります。魔王は死んでも再びどこかで復活します。封印か、何度も殺し復活までの時間を稼ぐ以外に魔王を倒す術はないでしょう」

 

 まじか、竜人と魔王って掛け持ちできんのかよ……

 

「では、カズヒト様の現状についてお話しします」

 

 なんかちょっと怖いな。今の俺って昏睡状態だよな。それ以外にあるのか。

 

「先程言った通り、カズヒト様は昏睡状態です。今ここにいる魂が此岸に帰ればあなたは目を覚まします」

 

 なるほど。で、良くないお知らせは?

 

 ここまで引き伸ばすならよっぽどなんだろうな……

 

「まずカズヒト様は左腕を失いました」

 

 おぉ……まじか。

 

 改めて左腕を見ようとしたら無かった。腕が。

 

「今カズヒト様が腕を失ったことを認知したため魂にもその影響が出ます」

 

 しかし、腕を失ったというのにこの落ち着きはなんだろうか?

 

「それは今カズヒト様が魂の状態だからです。腕がないことへの恐怖や痛みは一切感じません」

 

 へぇ……こりゃ目が覚めてからが問題だな。

 

「続いて、カズヒト様が昏睡状態になってから8年が経過しています」

 

 …………は?

 

「そう、8年です。デメテールの里が消滅して8年が経ちました。カズヒト様も13歳の見た目となっています。竜人の13歳となると既に青年の姿でしょう。おそらく最初は自分の姿に戸惑うかもしれません」

 

 8年……か。じゃあ正直もう俺って死んでるって思われてるよな

 

「はい。竜人の里は一夜にして謎の怪物により壊滅。竜人族の生き残りも僅かになってしまったというのが世間の認識になっています」

 

 ……誰が生き残ったのか、教えてくれるか?

 

「悪魔が来る前に逃した竜人族達とオリオント、ミュケ、そしてカズヒト様です」

 

 そもそも前から竜人族は少数民族だった。里から逃したのは7人。つまり竜人族は10人と他に旅に出ているかもしれない竜人だけになったのか。

 

 だが、世間は逃した竜人がいることを知らないため、ほぼ全滅したと思っているだろう。

 

「あと、8年も昏睡状態でしたから立ち上がることも困難でしょう。長いリハビリ生活が待っています」

 

 うわぁ……まじか。でも生きてるだけありがたい。クレオスが庇ってくれたからだろう。本当に……ありがとう。

 

「さて、話は終わりました。カズヒト様、心の準備はいいですか?」

 

 えっ、そんな急に?

 

「ここに長くいると帰れなくなります」

 

 案内人は指で空中に何かを描く仕草をすると俺の全身が光に包まれた。

 

 これは……

 

「今から此岸送りをします。カズヒト様、次会う時はじっくりとお話をしましょう」

 

 ははっ……なるべく来ないようにしたいけどな。

 

 光に包まれる中、最後に案内人が微笑んだのが微かに見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少年期 デメテール編 完
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