T-800(守護者)になった俺の前線生活   作:automata

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いい天気なので海賊を殺しに来たんだ

「という訳で今日はいい天気なので海賊を殺しに出かけます」

 

 

開幕早々、会議室で物騒な発言をしたレナ。会議室に集められたAR小隊は特に驚くこともなく、ダラーと椅子に座っている。すっかり80年代のアクション映画脳に染まったようだ。

 

 

「海賊は豪華客船に立て籠もって、身代金300万ドルを要求、政府は金を渡したくなくて手をこまねいてたらあっという間に3ヶ月が経過、流石にまずいと思ったのかグリフィンに人質の救出と海賊の殲滅を依頼してきた…こんな所よ」

 

「要はいつも通りってことだろ」

 

「そういうこと。それでこれが船の見取り図。人質は全員船倉に囚われていて……」

 

 

レナは作戦の概要を話し始める。だが、やる事はいつもとほとんど変わりないので俺もAR小隊も半分聞き流していた。レナもそれを承知で概要の説明も適当気味だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真夜中の午前2時。月明かりしかない真っ暗な海で俺は音を立てないように気を配りながら、レナとAR小隊を乗せた複合艇(RHIB)を操縦して照明が落とされて、ゴーストシップと化した豪華客船に近づく。

 

 

「よし、この辺りで止めて」

 

 

レナの指示で船の後ろに止める。するとM16とM4がボートに積んでいたグラップリングフックを取り出して、船の手すりに向けて射出した。手すりに引っかかるとボートが波で離れないように固定する。

 

 

「準備オッケーね。行くわよ」

 

 

レナの号令でフックのワイヤーに昇降装置を取り付けて、船に乗り込んだ。俺もダミーの札束が入ったバッグとダットサイト、シュアファイアM900付きのノベスキーN4を肩にかけて、後に続いた。

船に乗り込むと船倉へと続く道を警戒しながら、進む。

 

 

「ねぇ、見張りがいないんだけど」

 

「動体探知も引っかからないです」

 

「3ヶ月も船の中で立て籠もってりゃ、流石の海賊も参ってるのかもな」

 

 

扉に着くまで歩哨の1人も遭遇しなかった。監視カメラも電源が入っていなかったので楽でよかったが、返ってそれが不気味に感じる。

 

 

ゆっくりと気密扉を開けて、人質が囚われている場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何ヶ月になると思う……3ヶ月だ!」

 

 

人質が囚われている場所に着くと海賊のリーダー格の男がマチェットを片手に部下が持ってるビデオカメラに向けて、そう叫んでいた。

 

 

「待たせやがって…こうなったら、こいつらで償ってもらう!」

 

 

 

「散開して囲いこむわよ。M4とM16は右、AR15とSOPは左に回り込んで」

 

 

冷静にレナはそう指示するとM4達は素早く静かに移動を始めた。

 

 

「たっぷり時間をやったってのに……上級国民様の命なんて無視って訳か。……なら、こっちだってもう知ったこっちゃねぇや!」

 

リーダー格の男が苛立ち、人質の中から1人の少女の髪を掴んで、カメラに映るように引きずって来る。

 

 

「やめて!娘だけは!」

 

「いやぁ!お母様ぁ!」

 

「悲鳴を上げるな!……神経が苛立つ!」

 

 

何故かジャックオーランタンのマスクを被った構成員の1人が少女に怒声を浴びせて、頭をAKのストックで殴りつける。

 

 

「いいか!1時間以内に金を持ってこい!持って来なかったら、ネット中継で人質を1人1人殺してくれと叫ぶまで痛ぶってやる!手始めにこの小娘のバラバラ死体を送ってやらぁ!」

 

〈〈指揮官、準備できました!〉〉

 

「了解、おじさん投げて!」

 

 

レナの合図でバッグを放り投げる。

突然バッグが降ってきて、海賊達は驚いて、持っていたAKを構える。

 

 

 

「待て!撃つな!」

 

 

リーダーの男は部下を抑える。

俺達も物陰から姿を現して、銃を向ける。

 

 

「てめぇら、何モンだ?」

 

「人質を解放しろ。そのカバンに現金300万ドルが入ってる」

 

「今更かよ……500万だ。500万用意して出直せ!」

 

〈がめつい海賊ね〉

 

無線越しにAR15が毒吐く。レナの方を見ると肩をすくめていた。

 

 

「いいか!金だ!金を持ってこい!」

 

「黙って受け取れ」

 

「はぁ…もういいわ。驚かせてあげましょう」

 

これ以上は平行線のままだと思ったレナは懐からリモコンのようなものを取り出して、ボタンを押す。すると、放り投げてたバッグから煙幕が噴き出す。

瞬く間に船倉に広がって1m先も見えなくなった。

 

 

「みんな明かりを消して!」

 

 

 

そう指示して、船倉にある照明を全て銃で壊す。真っ暗になると自動で暗視モードに切り替わり、レナもサーマルゴーグルを装着する。

何も見えず、手当たり次第に銃を撃つ海賊達を人質に当たらないように点射でテキパキと撃ち殺す。

 

 

「SOP、人質の女の子を“持ってこれる”?」

 

 

〈任せて〜。……はいだらー!〉

 

 

SOPの方を見ると左腕の義手の外装が分離して、少女をこっちに引き寄せた。まんまMGSVのハンドオブジェフティだ。

俺は人質の少女が突然消えて混乱していたリーダーの男を撃ち殺した。

 

 

突然視界が真っ白になった。咄嗟に目を閉じて、暗視モードが解除される。恐る恐る目を開けると生き残った海賊共がまた赤髪の女性にマチェットを突き立てていた。

 

 

「金だ!金を持ってこい!でなきゃ殺す!」

 

 

「いやー!お母様!」

 

「おわっ!ちょっと!」

 

 

SOPが抱えていた少女が悲鳴をあげる。どうやら彼女の母親のようだ。

 

 

「ラストチャンスだ。300万持ってさっさと失せろ。500万くらいこれを元手に投資で手に入るだろ。ソマリアの海賊も投資に成功して、豪邸を建ててるぞ」

 

 

でまかせに言ってるように聞こえるが身代金を元手に投資してるソマリアの海賊もいるらしい。他にも海賊に投資して身代金の分け前を貰う投資市場がオープンしたりと凄いことになっている。

 

 

 

 

 

ブー!ブー!

 

 

「何だ?」

 

「あっ、私の携帯メールだ」

 

「メール?誰から?」

 

「多分、カリン。出掛ける前にフルーツジュース箱買いしたから」

 

レナの携帯のバイブの音がなった。あまりにも舐め腐った態度をとる俺達に海賊共はとうとう堪忍袋の尾が切れた。

 

 

「ぶっ殺してやるー!」

 

 

ブチ切れて、マチェットを振り上げた。その瞬間1発の発砲音がした。海賊共の額から血が吹き出て、全員倒れた。レナやM4達もほぼ同時に発砲したため、1発だけ撃ったように聞こえていた。

 

 

念のため海賊共の脈を1人ずつ確認する。仕事の内容は海賊の殲滅だし、ここで死んだふりしてたら、最後の悪あがきで人質を襲いかかるかもしれない。

その間にAR小隊が人質達の拘束を解く。

 

 

「全員の死亡を確認…人質も全員無事…っと。さーて任務終了ー」

 

 

「指揮官!海賊っぽい怪しい人を見つけました!」

 

 

M4が大の大人を引きずってきた。この豪華客船の乗員乗客とは思えない薄汚れた服に布で顔を隠してたりと海賊共と似たり寄ったりな格好をしている。

 

「俺は海賊なんかじゃねぇよ!ゴミさ目糞鼻糞さ。なぁ、頼むよ俺は本当に海賊じゃないんだよ」

 

「クソが!」

 

「M4どうしたの!?」

 

「あっ、すみません。さっきこの人からシナモンロールの匂いがしたら突然発作が…」

 

どんな発作だよ。毎日食べさせられても別に嫌いなわけでもないらしいがこれ発作というより癖か?

 

 

「おい、そいつなんか様子が変だぞ」

 

 

M16が遠巻きから指摘した。男を見るとうつ伏せの状態で動いていなかった。

 

 

「おい、どうした?大丈夫か?」

 

「ううううううぅぅぅ……」

 

男をひっくり返すと白目剥いて口から泡を吹いて小刻みに震えていた。

 

 

「まさか……この人、心臓に持病があるわ!?」

 

「マジかよ!」

 

マジで発作を起こしてた。

スキャンすると心臓が変な動きして止まりかけてるじゃねえか!?

 

「あわわわ…姉さん、どっどうすれば…」

 

「確かこの上にAEDがあった筈だ!M4ー!AEDだ!AED持って来ぉぉぉぉい!!」

 

「はいーー!!」

 

M16に言われて、M4はAEDを取りに船中を駆け回った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談というか今回のオチ。

あの後、救助部隊が来て、乗員乗客は無事に家に帰ることが出来た。心臓が止まりかけた海賊っぽい男はAEDで復活した。取り調べをしてみたら、海賊の一味ではなく、ガチでただの乗客だった。何でも海賊が襲撃した時に運良く見つからずにそのまま3ヶ月間、息を潜めていた。食料や水の調達は服をわざと汚し、布で顔を隠してそれっぽく振る舞って船内を歩き回ってた。しかも一度も気づかれず、何なら会話も交わしていたらしい。

 

 

持病持ちとはいえ、こいつ無駄にサバイバビリティ高くね?

 

 

 


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