T-800(守護者)になった俺の前線生活 作:automata
「3番席、フライドチキン2。16番席はシーフードピザの注文です!」
「先生!24から34番席で暴動が!」
「唐辛子スプレーで鎮圧しとけ!」
ガチャガチャと金属やプラスチック製の調理器具が奏でる雑音と飛び交う怒号。
なし崩し的に鉄血の厨房で働くことになって、2日目。
死ぬほど忙しい。
いやね、ここって研究員と警備員と戦術人形しかいなくて、料理ができる人がいないんすよ。猫の手も借りたいけど、研究員は何故か毒ガスになるわ、警備員は名状し難い暗黒物質に変化するわ、戦術人形は力の配分を間違えて調理器具を壊してしまう。だから、俺がワンオペで頑張ってる。
特に朝の7時、昼の12時、午後15時と20時は地獄のラッシュタイム。あのだだっ広い食堂が人で埋め尽くされていて、津波の如く注文が殺到する。作っても作っても終わらない。
最初はバイキング方式にしようかと考えたが、天然の生鮮食品も使ってるし、料理は少なからず残って、食品ロスになってしまう。あとはせっかく作った料理も冷めてしまうことからやめた。食えるだけありがたいくらいに世紀末だからなこの世界。
更にこいつら家事スキルも皆無だから、大抵の職員の部屋は汚部屋だし、服はずっと同じものを着てるからくたびれてるしで発狂しそうだ。おうちにかえりたい。
「精神的に疲れた…」
「お疲れ様です、先生」
昼のラッシュタイムが終わった。机に伏していると代理人が水を差し出した。
俺がいなくなってもある程度の家事が出来る人材を育てるために代理人なら家事スキルを習得できそうだと思って、色々と教える予定だ。それで何故か先生って呼ばれてる。
俺は水を飲み、一息つく。
「じゃあ、今日から始めるぞ」
「はい、よろしくお願いします」
「まずは洗濯だ。服は白いものと色のあるものを分けて、洗濯機に入れる。洗剤はこれくらいの量で大丈夫だ。俺はシミ取りをしてくるから終わったら呼んでくれ」
「はい」
洗剤はきちんと渡したし、服は事前に分けておいたし、こんなの子供でも出来るさ。
パァァァァン!!
「どうした!?」
「先生…」
謎の破裂音がして、慌てて駆けつけると部屋は泡まみれ、洗濯機は破裂し、代理人は涙目でへたり込んでいた。どういうことだ…。
「次は洗濯物を畳んでみよう。ここを折ってだな」
「はい、これなら私も〈ビリビリ!〉…すみません!!」
「……」
「よっ…よし、今度は掃除だ。掃除機をかけて…」
「今度こそ、絶対〈ボォォォン!!〉……ヒィ!掃除機が爆発した!」
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その後、色々試したが中華鍋を飴細工のように捻じ曲げるわ、包丁を持たせると刃が根元からポッキリと折れるわ、コンロに火をつけると火炎放射器の如く火を噴くわ、で思わず「そうはならんやろ」とツッコんでしまった。
そうこうしていると、もう夜になった。そして晩のラッシュタイムも凌ぎ切り、誰もいなくなった食堂で代理人と2人で座る。
「なぁ、代理人」
「はっ、はい…」
「自律人形で料理が出来るようになる便利なモジュールがあるんだが、取り付けられるか?」
「その…私達ハイエンドモデルは戦闘に特化した設計でして、その…ネジの1本に至るまで専用設計なのでそういったモジュールは取り付けられないです」
どうすんだよ!こんな某フローレンシアの猟犬みたいなやつ、どうやって育てりゃいいんだよ!
クソ、こうなると家事が出来る人を雇うくらいしかないか。いや、こんな所に家政婦を何人も雇っても過労で倒れるよな。あれ? じゃあ、俺が全部1人でこなせるのって結構異常なのか。
まぁ、そんなことはどうでも良くて。
どうすれば……あっ、そうだ。
「代理人…俺、明日から本気出すから」
「??」
〜翌日〜
「こちらにサインを」
「ああ」
「はい、ありがとうございましたー」
俺が思いついた策。それは家電を全て最新で壊れにくい新品に買い換えるという頭の悪いゴリ押しだった。当然全て俺のポケットマネー。研究所にあった洗濯機とかは結構古い型だったし、全部分解したら、長らく放置されてたせいで色んな部品が痛んでいた。そんな状態で動かしたから昨日の惨劇が起こった。
「あの先生、本当にいいのですか?」
「これも未来への投資だと思えば安いもんさ」
まぁ、来年にはこんな投資パーになるんですけどね。初見さん。
さて、道具も揃ったし、あとは付きっ切りで代理人に包丁の持ち方から教えるか。