T-800(守護者)になった俺の前線生活 作:automata
ありゃ嘘だ。(屋良版)
ーー休眠状態を解除します。再起動開始。
休眠機能が解除されて、俺はベッドから起き上がる。
外はまだ暗く。時計を見ると朝の4時だった。いつも通りの時間だ。
キッチンで水を一杯飲むとトレーニングウェアに着替えて、日課のジョギングをするために外に出た。
ルートは基地の外を回る感じでいいだろう。
「………」
無呼吸で走る。機械である俺には肺も無ければ、心臓も無い。
生体組織は内部で生成される酸素が供給されるので例え水中に居ても何ら問題は無い。重いから泳げないが。
基地を10周回った後、タオルで汗を拭く。早く新しいルートを開拓して行かなくてはな。
これからはこの時間帯でも作業する人が来るかも知れないから邪魔にならないように基地の外で走りたい。
俺は自室に戻り、キッチンで朝食の準備をする。
シェイカーでバニラ味のプロテインと牛乳を溶く。それをミキサーに入れて、プロテインシリアルや色々とぶち込む。
勢いよく入れていると材料がガタンと音を立てて、床に落ちた。急いで拾って、それもミキサーに入れる。3秒経ってないし、セーフやろ。
後は、よく混ぜて特性プロテインの完成。
(一日において、朝食が一番大切だからな)
そう思いながら、プロテインを一気飲みした。
うん、我ながら酷い味だ。
プロテインを飲み終えると俺はトレーニングウェアから何時も服に着替えて、レナに渡しそびれた銃と自分用の銃をカバンに入れて、執務室に向かった。
「それでは今日から指揮官業頑張っていきましょう!その前に本日から配属になる人形の方達がもう間もなく到着するようです」
さあさあとカリーナはヘリポートまで連れて行かれる。
少し待っているとグリフィンのエンブレムが描かれた輸送ヘリが着陸し、4人の少女たちが降りて来た。
「M4A1です。指揮官……よろしく…お願いします」
「M4 SOPMOD-II、指揮官、よろしくね!」
「コルトAR-15よ。正式に貴殿の部隊に加わります」
「よぉ、M16だよ。荒事は私に任せな!」
「私はレナ・オーウェンズ。みんな今日からよろしくね」
「カール・B・オーウェンズ。よろしく」
「カリン、この子達の基地の案内任せてもいい?」
「分っかりました!料金は50ドルです!」
「ほい」
(ここでも金をとるのか)
軽い挨拶からなんて自然で違和感のない料金請求。レナからお金を取ると、カリーナは俺のほうを向いて、ケッケッケという笑い声が聞こえそうな嫌味ったらしい笑顔を浮かべた。
(資本主義者め…)
「おじさん、早くいこ」
「…ああ」
カリーナに彼女達の基地案内を任せて、俺はレナと執務室に戻り、書類仕事を始めた。
カタカタとキーボードを叩く音とプリンターの唸る音をBGMにただひたすらパソコンの画面とにらめっこして、キーボードを叩き、プリンターから印刷された書類を取る。
そんな単純作業を淡々とこなしていると気がつけば、印刷された最後の1枚を俺は持っていた。それを紙の山に乗せると今日の書類仕事は終わった。
「うーん…終わった〜」
レナも仕事は終わったらしい。背伸びをして、肩の凝り固まった筋肉をほぐしている。
時計を見ると2時間しか経ってなかった。
「ふぅ、指揮官の机仕事って意外と楽勝かもしれないね」
「いや、もしかしたらこれくらいはまだ少ない方かも知れんぞ。これからどんどん量が増えるんじゃないか?」
そうかも、と言う。俺は立ち上がって、コーヒーメーカーを動かす。
「あっ、おじさん。私はミルクと砂糖入れて」
「りょーかい」
カップをセットして、ボタンを押す。
カップにコーヒーが注がれて、湯気と香りが立つ。レナのにはミルクと砂糖を入れて、渡す。
「ありがと」
2人でコーヒーブレイクをしていると無機質な電子音が聞こえた。
音の発生源はレナの後ろの壁に設置された大型モニターだった。
ひとしきりに音が鳴ったあとモニターの光が灯り、グリフィンの赤いコートを着て、レティクルをかけた女性が映し出された。
合コンの負け犬と名高いヘリアントス上級代行官。ゲームでは彼女はプレイヤーの上司に当たるが、ここでも立場は同じという訳か。
〈仕事中に失礼するオーウェンズ指揮官。着任早々にすまないが緊急の任務がある〉
「はっ、任務についてお聞かせください」
さっきの緩い雰囲気は鳴りを潜め、キリッとした表情でヘリアンに敬礼した。
これはレナの仕事人モードと言ったところか……これも…イイ!
〈つい先ほど本部直属の人形部隊が移動中に消息を絶った。無線記録の解析の結果、S09地区とS03地区で活動しているスカベンジャーの集団に襲撃されたらしい。敵はS09地区とS03地区が隣接する区域にある廃ホテルを根城にしている。貴官らには人形たちの救出とスカベンジャーの殲滅を命ずる〉
「はっ、承りました」
最後にヘリアンは幸運を、と言い残してモニターの光が消えた。
するとレナはふにゃと姿勢が崩れて、いつもの雰囲気に戻った。
「はぁ〜やっぱ、これは慣れないね」
たはは、と笑って、残ったコーヒーを飲み干した。
「おじさん、最初の仕事よ。みんなを集めて」
「承りました指揮官殿……なんてな、ハッハッハ」
さっきの仕事人モードのレナのセリフを茶化して笑うとレナも釣られて笑った。
次は絶対ドンパチやります。