T-800(守護者)になった俺の前線生活 作:automata
大した任務もなく何時ものように料理の仕込みをしていた時だった。レナからの呼び出しがかかった。
久しぶりの任務だと肩を回しながら、執務室に入った。
部屋には404小隊もいて、俺は(あっ、これダークサイドな仕事だ)と一瞬で察した。とうとう404小隊の汚れ仕事の片棒を担ぐ時が来たのだ。と言うかこんな仕事、新米指揮官にやらせますかね普通。
「ブリーフィングを始めるわね」
45が懐からファイルを取り出して、紙を数枚、机に広げた。
この手の仕事は45達の方が手慣れているという訳で45が指揮を執る。
「内容はある武器商人の暗殺よ。これがターゲットの写真」
数枚の写真を見せた。白いスーツに金と宝石のアクセサリーをジャラジャラつけた如何にも成金野郎だった。
「ただの武器商人なら、良かったんだけどこいつは人権団にロボット人権団体の過激派に武器を売ってるの。後、麻薬に人身売買と色々やってるわ。取引の時以外は滅多に顔を出さないの。だから、ここはカールの出番よ」
「え、俺?」
みんなが一斉に俺に視線を向けた。
「カール、あなたはこの武器商人から武器の取引をして欲しいの。私達があなたの後を追うわ。好機だと分かったら、一気に叩くのよ」
そう言って、45は地図と現金がぎっしり詰まったバッグを渡してきた。
「殺し屋達が集まる酒場があるの。ターゲットはそこで客を待っているからコンタクトを取ってね」
俺はバッグを担いで、執務室を後にした。
車で行ってみると場所は何と高級ホテルの中にあるバーだった。
中はとても落ち着いた雰囲気でイメージしていた殺し屋達が集う酒場とはえらい違いだった。
辺りを見回しているとカウンターに例の武器商人がいた。
俺は隣に座った。
「武器を買いたい。強力で足のつかないやつが欲しい」
単刀直入に言った。すると、武器商人は俺を睨みつけた。
「ハッ、俺が鉄砲店のオヤジに見えるか?人違いだ、とっとと失せろ」
シッシッと手で払われる。俺は「そうか」と言って、彼の前にバッグを置いて、現金を見せた。
すると現金を手にとって匂いを嗅ぎ始めた。それで本物だと分かったのか目の色を変えて俺を見た。
「本物の金か…お前、サツじゃないよな?トラブルは御免なんでね」
まぁ、疑われるだろう。映画でもこの手の商人は見知らぬ客が突然金をたんまり持ってきたら疑ってたもんな。
俺は武器商人から金を取り上げて、帰ろうとするそぶりを見せつけた。すると、慌てて俺を止めた。
「待て待て、ただちょっと確認しただけさ。このご時世何処から警官なりグリフィンなりがいるかもわかんねぇからな。外に車がある。乗ってくれ」
男は立ち上がって俺を車に乗せて、廃工場に連れていった。
廃工場に到着すると中には黒いバンが2両あり、筋肉ムキムキの男達が椅子に座ってタバコと酒を楽しんでいた。
廃工場の窓は鉄板で塞がれていて外から見えないようにしている。
「おい、オメェら客だ!銃を持ってこい!」
パンパンと手を叩いて、武器商人は部下であろう男達は立ち上がると積み上げたガンケースを机代わりにバンから大量の銃を持ってきて、陳列させた。
テロリスト御用達のAKに民間モデルのAR15、骨董品のボルトアクションライフル、どっから取り寄せたのか特殊部隊向けのMP5Kなどが並べられた。こいつら戦争でも起こす気なのか。
「ほら、これはどうだイングラムのMAC11だ」
武器商人がサブマシンガンを持ってきた。俺はそれを受け取るとコッキングレバーを引いたりして物色する。
「380ACPだ。元はセミだが、フルオートに改造してある」
〈カール?、聞こえる?45よ。今着いたわ。これから発電機を止めるから少し時間を稼いで〉
〈銃で破壊出来ないのか?〉
〈頑丈にシールドされてるから無理ね。ハッキングで止めるから10分ちょうだい〉
〈了解…〉
10分か…。案外長いなぁ。俺は深呼吸してMAC11を商人に返す。
「もっと口径のデカイ銃は無いのか?」
「ド派手に決めたいって訳か」
商人は笑うとバッグの中から巨大なリボルバーを俺の前に置いた。
「スミス&ウェッソンのM500、8インチ。50口径で世界一強力な拳銃だ」
そういや、ラストスタンドでもシュワちゃんが片手で使ってたなぁ、と思いながら持つ。
本当は2kgとかなり重いのだが、体が機械だからか軽く感じた。
「試し撃ちしてもいいか?」
すると、商人が弾の入った箱を机に置いてくれた。
箱を開けて、弾を取り出すと1発1発ゆっくりシリンダーに弾を込める。このリロードで少しでも時間を稼がなくては。
5発入り終わると適当なコンクリートの塊に狙いを定める。
「おおっと、ちょっと待ちな」
突然、商人が銃身を握って、止めた。まさかさっきのリロードで不審に思われたか…!
パンパン
商人が手を叩くと部下は何かを物陰から引きずってきた。
「んー!んー!」
ボロボロの衣服を纏い、ロープで縛り付けられた金髪の少女だった…いや、この反応は…戦術人形?
「ハッハー!どうだ、いい的だろう?グリフィンのクソどもから1匹パクってやったのさ。このままブラックマーケットに安く売る予定だったんだが、まぁ売っても足しにならんしここで処分してもいいかと思ってな」
この男は…!俺は怒りを抑えて、銃の安全装置をかける。
「まずは普通にコンクリートを撃たせてくれないか?」
「んだよ、女子供は殺さない主義か?」
「そうじゃない、こんなモノを撃ってみろ。辺り一帯に肉片やらなんやらが飛び散って後始末が面倒だろ?そういうのは最後に取っておくもんだろ?」
怒りで頭が回らない中で俺は言い訳をする。すると商人はニヤニヤとしながら、俺に近づいた。
「へへっ、そうかよ。分かった。おい!そいつは最後に出す。元の場所に戻しておけ!」
少女はまた引き摺られて、元の場所に戻された。
〈聞こえる?45よ。発電機のハッキングが終わったわ。準備は?〉
〈いつでも。それと…〉
〈分かってる、捕まってる人形のことでしょ?ずっとあなたの視覚センサーから見てたから。スタングレネードで行くわよ…5…4…〉
45がカウントダウンを始めた。銃の安全装置を解除する。
〈3…2…〉
バレないようにコンクリートの塊に狙いを定める。
〈1…0!〉
バン!と電気が消えた。窓が鉄板で塞がれているせいで廃工場の中は真っ暗だ。
自動で暗視モードに切り替わり、真っ暗な中でもよく見えるようになった。突然の暗転で商人達はパニクっている。
俺はM500を商人の心臓に向けて、引き金を引いた。大砲のような轟音が工場内に鳴り響いた。商人に当たったことは確認せず、すぐに伏せて目を閉じ、両耳を塞いで口を開けた。
その刹那、工事内に閃光とキーンと頭に突き刺さるような轟音が発生した。
404小隊がスタングレネードで突入してきた。彼女達は突然の閃光と轟音で悶えている商人の部下達をテキパキと倒していった。
「クリア!」
「45姉、クリアだよ!」
「こっちもクリア…」
「了解。カール、お疲れ様」
45が俺に手を差し伸べた。俺は45の手を掴んで起き上がった。
「あの人形は?」
「大丈夫よ。416が保護したわ」
「そうか」
「それでターゲットは…これね」
45の指す方向には胸から血を流して絶命した商人がいた。俺の弾が当たっていた。
「これで任務完了ね。あなたこういう仕事に向いてるかもね」
「勘弁してくれ、もうクッタクタだよ。主に心が」
「ふふっ、あと5分でヘリが来るから休んでなさい」
俺は床にドガっと座り、今日の夕飯の献立を考えて、ヘリが迎えに来るまでの時間を潰した。
武器を売る人は大抵殺されるか酷い目に遭うイメージが強いです。(ターミネーターのアラモ銃砲店のオヤジが撃たれたり、コマンドーの軍放出品店でブルドーザーで入店された挙句商品を100%オフにされたり)