侵略異変   作:しゅーえん

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しゅーえんです。今回から前書きの方に書かせていただきます。
さて、タイトルが不穏ですね……一体どんなことが起こるのか……


10話 悲劇

神霊廟での修行が始まって一週間。俺は……布都さんと

屠自古さんに手も足も出なかった。

 

「はぁ……はぁ……はぁ」

 

弾幕の量、体術……何もかもが俺よりも格上。

妖夢とは別格の強さを持つ二人に俺は、為す術がなかった。

 

「大丈夫か、夜音……」

 

「今日はここまでにしよう。最近恨を詰めすぎだからな」

 

「いや……まだ…やれます」

 

フラフラになりながら、何とか立ち上がりそばに落ちていた景正を拾う。

 

「だめだ。このまま行けばお前の体が壊れてしまう。

今日はもうゆっくり休め」

 

「は……はい」

 

この言葉をもう何回聞いただろうか……。毎日毎日ボロボロになりながら修行を続ける日々。心も体も疲弊しきってきた。そんなある日、空中で布都さんと弾幕のトレーニングをしていた。

 

「ではいくぞ!夜音!」

 

「はい!」

 

合図と共に無数の弾幕がいっせいに放たれる。

布都さん弾幕は一つ一つが重い………。妙無ほどではないが、それでもいちいち対処していてはジリ貧になる。

 

(くそ!くそ!くそ!くそ!くそ!)

 

自然と動きは単調になり、力任せに弾幕を弾くようになってしまう。

 

「夜音!単調になっておるぞ!しっかり見極めるのじゃ!」

 

布都さんの声が頭に入ってこない、ただひたすらに目の前の弾幕を弾いていく……。しかし、弾き損ねた弾幕が腹に直撃した。そのまま落下していき、頭から地面に激突した。

 

「夜音!大丈夫か!」

 

慌てて見ていた屠自古さんが俺の体を起こしてくれる。

 

「すいません。屠自古さん……ちょっと油断しました。

でも、次は大丈夫です」

 

「だめだ夜音、少し休憩しよう。霊力もカツカツじゃないか

とりあえずなかに」

 

「大丈夫ですよ。困難でへこたれてちゃ妖夢に笑われるので……」

 

俺が立ち上がってまた飛ぼうとした時

 

パチンッ

 

急に視線が横を向いた。その後すぐに左頬にジーンとした

痛みが続いた。そこで俺は、屠自古さんにビンタさせたのだと気づいた。

 

……………………………………………………………………

 

屠自古の行動に私は目を見張った。普段の屠自古なら

するはずのないこと、今、私の目の前で行ったのだ。

 

「と、屠自古さん?……」

 

夜音をあっけらかんとしている。すると屠自古が口を開いた。

 

「なんでそんなに急ぐんだ。一年だぞ?一年あれはお前なんかすぐに私たちに追いつける。なのに……どうしてそんなに自分を追い込むんだ?」

 

「………嫌いなんですよ」

 

「えっ?」

 

「俺は、弱い俺が嫌いです。誰かに助けられないと生きれない自分が………」

 

自然と夜音の瞳から涙が溢れ始めた。

 

「だから、俺は早く強くならないといけない……守られる側じゃなくて。俺が……守る側にならないと……そうじゃないと……『俺がこの世界にいる意味が無くなってしまう』」

 

白玉楼の主から彼についてはある程度聞いてはいたが、

彼の過去は何も聞いてない。だからそこ、今、なぜそんなに

この世界にいる意味に固執しているのかが私には分からない。

 

「夜音…」

 

私は夜音の近くまで歩を進め、彼の後ろに手を回し抱き寄せた。

 

「布都……さん?………」

 

ぽかんとしている夜音だったが、やがて顔が紅潮していき、

最終的には彼の顔は真っ赤になっていた。

 

「夜音、我らはお主の過去は知らん。だから、こうして慰めてなることしか出来ない……すまないな……」

 

「えっ?」

 

自然と目元が熱くなる。そうか、私も今泣いているのか……

 

「夜音、少なくとも、我らはお主がここにいる意味が無いなどとは思っておらぬ。だからお主は自分のペースでいい、

ゆっくり実力をつけていけばいい、まだまだ修行は始まったばかりだ。計画的に行こう」

 

手を(ほど)き彼の顔を見ると、彼は笑顔を見せた。

たとえそれが偽物であっても、師として私は嬉しかった。

 

「今日はここまでにして人里に行こう」

 

そういうこと屠自古の提案に賛成し、その日は人里で

甘味処を巡った。

 

……………………………………………………………………

 

布都さんの言葉から心機一転気持ちを切り替えていこうと

俺は無理しない程度に修行を重ねた。あれから二ヶ月がたった頃、正午、屠自古さんと修行するために外へ出ると

 

「夜音。ちょっと待て」

 

屠自古さんが腕を伸ばし俺の進行を止めた。俺は少々困惑し正面を見る。そこには中学生程の少年が立っていた

 

「誰だ?ここに何の用だ」

 

どす黒い霊力を漂わせながら少年はニヤリと笑う

恐らく災厄の三人のうちの一人…………俺は景正に手をかける

 

「夜音………すぐに太子様を呼んできてくれ」

 

「わ、わかった」

 

そうして俺が一歩後退すると

その刹那、屠自古の腕が肩から抉り取られた。鮮血が飛び散り辺りを真っ赤に染める

 

「屠自古さん!!」

 

「うぅ……ぐぁ……」

 

霊力をながし応急処置を済ませた頃に神子の布都さんがでてきた。

 

「屠自古!」

 

「屠自古!おのれ!屠自古に何をした!」

 

すると、少年はゆっくりと話し始める

 

「今日からここ一体はこの魑魅(すだま)の管轄下に置く。そのため、邪魔なお前たちには死んでもらおう。もちろん幻想入りの封雲もな」

 

すると魑魅は『屠自古さんの腕を飲み込んだ』。その瞬間俺の中の屠自古さんがいなくなってしまった。

 

「はっ?……えっ?」

 

名前は分かるのに思い出せない。半年も一緒にいたはずなのに彼女とどうやって過ごしてきたのか彼女はどんな人だったのか。それら全て……思い出せなくなった。俺はふと、二人の方を見る。

二人は屠自古さんの方を向き泣いていた。

 

「あぁ屠自古。思い出せない……ずっといたはずなのに……」

 

「屠自古ぉ……屠自古ぉ……」

 

二人もどうやら屠自古さんのことを忘れてしまったようだった。

 

「おまえ……何した」

 

「僕の能力は「記憶を消す程度の能力」さ。相手の一部を取り込むことで、その人物のとの関わりを消すことが出来るのさ」

 

ペラペラと能力について説明する魑魅。随分と余裕そうだな……

 

「なるほどな……どうしたら記憶は戻る?」

 

「僕の喰らったところを削れば玉が出て俺を近づければ元に戻るよ……まぁそんな簡単じゃ………」

 

「それだけ分かれば十分だ!」

 

俺は地を蹴り魑魅の腕に斬りかかった。そして刀は確かに奴の腕に当たった……しかし

 

「か……硬ってぇ……」

 

まるで鋼鉄を切っているように硬かった。

 

「言ったでしょ?簡単じゃないって」

 

そう言って魑魅は片方の腕で俺を軽く殴る。すると体の外ではなく内側にある筋や内蔵がぐちゃぐちゃになった。

 

「かっ……はぁっ」

 

俺は血反吐を吐きその場にうずくまった。少し小突かれた程度なのに……息をすることが出来ない

 

(これが災厄…黒い霊力の力)

 

妙無なんか比にならないくらい強力な力……いや、妙無もあれはまだほんの一部の力しか出していなかったのかもしれない……

 

「じゃあ、君の記憶もいただくよ。君は妙無君に殺せと言われているけど、ちょっと興味があるからね。それじゃあいただきます」

 

それだけ言い残し魑魅は口裂け女のように大きく口を広げた。酸素が回らなくなり俺の意識が朦朧としているなか俺の目の前に誰かが割って入った。結果魑魅はその人の腕を喰らった。そして俺の記憶が消えた瞬間俺を庇った人が誰か分かった。

 

「布都………さん?………!布都さん!」

 

銀髪の髪は血で真っ赤になり腕からはとめどなく血が流れる。

 

「布都さん!布都さん!」

 

俺は布都さんの体を必死に揺する。神子は呆気にとられていたがすぐに駆け寄ってきた。

 

「布都……そんな……」

 

「馬鹿だねぇわざわざ死にに来るなんて。そんな奴は救いようがないね」

 

魑魅の言葉に俺は激しい怒りを覚えた。あの時と同等の怒りが内から溢れてくる。

 

「くっっっそがぁぁぁあぁ!かぁっ!」

 

俺は大きく息を吸った。肋骨はバラバラで肺に突き刺さりすぐに吐血した。

 

「スペルカード……発動!「切り裂きジャック」!」

 

辺りに濃霧が広がり俺はゆっくりと立ち上がった。そして魑魅に斬りかかろうとしたとき

 

「そんな小細工意味ないよ……まったく」

 

魑魅はため息をつき大きく息を吸った。そして

 

「ああぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁ!!!!」

 

鼓膜が破けるほどの轟音。その瞬間、濃霧は消え去った

 

「!そんな……スペルカードの効果が…」

 

俺は刀を構えたまま膝を着いた。もう……息ができない………視界がだんだん狭くなっていく……

 

「君がここにいるからこの人たちはこんな目にあったんだ。君が!この世界に来たから!」

 

ケタケタと笑う魑魅。その言葉に俺は何も言い返すことが出来なかった。

 

………………………………………………………………………

 

夜音君は涙を流したまま魑魅を睨んでいた。

 

「本当に君は報われないね!君は!この世界に来た意味はあったのかな!?」

 

「意味?……」

 

「そうさ!君はこの世界を守るために来たんだろう?なのにこの世界の人々を犠牲にしてしまった!そんな君はここにいる意味はないよねぇ!」

 

子供のように無邪気に笑う魑魅。二ヶ月前、彼自身が言っていたこの世界にいる意味……それは、布都の慰めによって一時は収束したが、それを奴は蒸し返してきた。夜音君は小刻みに震え何やら呟いている。

 

「………ってる」

 

「えぇ?なんてぇ?」

 

「そんなこと……俺が一番わかってんだよ!」

 

夜音君はそう叫んだ。彼の霊力がだんだん黒く染まっていくのがわかった。

 

「殺す!殺す殺す殺す!お前だけは絶対に!」

 

「ダメだ夜音君!それ以上は!………」

 

「殺してやる!」

 

次の瞬間、彼を中心として雷雲が取り囲んだ。黒い稲妻がバチバチとながれ火花が散っている。

 

「あはは!いいねぇ!封雲夜音!怒れ!叫べ!怒りのままに行動しろ!」

 

すると魑魅は壁に打ち付けらた。

 

「かはっ……ぐっ…」

 

そしてその壁は粉々に砕け散った。雷雲の中から人影が現れた。夜音君だ……しかし様子が変だ。袴は黒いコートに、髪は色が抜け白色になっていた。

 

「夜音君……」

 

絞り出すように私は彼を呼んだ。

 

「大丈夫。神子……すぐ終わらせるから……」

 

そう彼はニッコリ笑い魑魅の胸に手を置くそして

一歩後退し

 

「弾けろ……」

 

拳を握りしめた。すると

 

「ギヤァァァァァァァァァァア!!」

 

天螭の腕や足がバラバラの方向に引っ張られていたそして両手両足はちぎれ胴体のみが残った

 

「やめろ……やめて……やめてぇぇぇぇ!」

 

そして再び夜音くんは拳を握る。胴体は膨張し

魑魅の体は弾け飛んだ。血飛沫が夜音君の髪を真っ赤に染める。

 

「夜音君………」

 

「いや……逃がした。まさか心臓だけ放り出すとは……なかなかやるな」

 

彼そう言って体についた血を吹き飛ばす。……いや、本当に彼だろうか………話し方がおかしい。それに声を少し高いような……

 

「夜音君」

 

「ん?どうした神子」

 

「君は……『本当に夜音君かい?』」

 

私の言葉に彼はへぇ……と声を漏らし

 

「やっぱり半年もいると分かるのか………初めてだよ、こんなにこいつを見てくれている人がいるなんて」

 

まさか影化により精神を乗っ取られたのか……いやしかし誰に……

 

「夜音君……いや、あなたは誰なんですか?」

 

夜音君ではない誰かは刀をしまい。

 

「俺の名前は陽晴(ようせい)夜音の裏の顔さ」

 

と笑って答えた。

 

「夜音君の裏の顔?」

 

「まぁ簡単に言えば二重人格だ。実際の影化じゃない。まぁ詳しいことは」

陽晴君は私の後ろを見て

 

「とりあえず、あの二人の記憶を戻してからな」

 

そう言って陽晴君は人魂のようなものを2つ取りだした。

 

「陽晴くん、それは?」

 

「屠自古さんと布都さんの記憶。さっき魑魅の腕を吹き飛ばしたときに取ったやつだ。」

 

そう言いながら屠自古と布都に人魂のようなものを近づける。すると二人の腕は元に戻り、そして

 

「あぁ覚えている。二人とすごした記憶が」

 

屠自古たちとすごした日々を思い出すことが出来た。

 

「時期に目を覚ます。とりあえず部屋に運ぼう」

 

「そうですね」

 

二人をそれぞれの部屋に寝かせた私たちは居間にいた。

 

「では、教えてくれますか?陽晴君。なぜ君が生まれたのか。厳密に言えば彼の過去を」

 

「まぁ夜音からは俺が出てきたらその場にいた人に話してくれって言われるからな」

 

そうして彼は話し出した

 

「夜音は別に特別な家庭に育ったわけではない。ごくごく普通の家に次男として生まれた。ただひとつ違うことは………親に愛情を恵んでもらえなかったことだ……」

 

そこから彼の過去について陽晴くんは語り始めた。

 

「初めのうちは褒められるように色々頑張った………でも親は夜音ではなくあいつの兄にたっぷりの愛情を注いだ。そりゃあ俺も最初はなんでだと何度も思ったさ……」

 

彼は自分の頭を人差し指でつつき

 

「でも気づいたんだ。夜音とあいつの兄との差を……。それは、『才能』さ」

 

にわかに信じ難い。自分の子でありながら愛情を注がずに、才能で差別するなんて

 

「だから夜音は人の何倍を頑張った。もちろん親は夜音の道具は買ってくれない、自力で金を集めて兄に追いつけるように必死に努力した………でもどれだけ頑張ろうが、兄はさらにその先をいってしまった……」

 

「学校でも兄と比較され……家でも差別され続けた…………夜音はどれだけ頑張ろうが兄の背中すら掴むことが出来なかったんだ。夜音の努力は全て無駄なんだと思い知らされた……その時……夜音はどうすれば嬉しいのか……分からなくなった…」

 

「それで、彼は……」

 

「だから俺が消したのさ。あいつの感情の一部を」

 

陽晴君が言う感情とは嬉しさなどだろう

 

「だから俺にはあるが夜音には無い。それに、あいつは

今まで一度も、自分を見てもらったことがない。いつも兄のついで、兄の模倣品……そんな扱いだった。だから

妖夢や神子たちがしっかりと自分を見てくれると実感できなかったんだ。………許してくれ、夜音はああゆうやつなんだ。期待されたことなんてない……だから絶対に期待に答えようとする……たとえそれが……不可能だったとしても」

 

なるほど……そりゃあ彼があんな風になるわけだ。

環境が人を変えるとはよく言ったものだ。

 

「」おっと、そろそろ返すよ。だいぶ落ち着いたみたいだしな」

 

そう言って陽晴君は目を閉じる。

 

「それと、最後にひとつ……」

 

「?」

 

「夜音の影化は寸前で精神を俺に変えている。だが、もし夜音自身が本当に影化したら、恐らく霊夢たちでも手に負えないだろう……それぐらいあいつの影化は凄まじいものなんだだ。それだけは覚えておいてくれ」

 

それを最後に陽晴君は喋らなくなり。夜音君の体はまるで魂が抜けているように力なく倒れた

 

………………………………………………………………………

 

俺が目を覚ますと屠自古さんと布都さんは居間で座っていた。

 

「おっ、起きたか夜音。ありがとな」

 

「うむ、夜音は我の命の恩人じゃ!」

 

そう言って布都さんは俺に飛びついてきた

 

「おわっと、でも良かったです。本当に」

 

「さて……遅くなりましたが。屠自古、夜音君。私は今とてもお腹がすきました。」

 

「まったく。夜音、さっさと済ませるぞ」

 

「りょーかいです」

 

俺は軽く敬礼のポーズをして屠自古さんについて行った。晩飯を作って戻るとお腹がすいたと言っていた神子が気持ちよさように寝ていた。

 

「なんで言い出しっぺが寝てんだよ。まぁいいか」

 

(まぁ少しの間とはいえ…大切な従者がいなくなったんだもんな)

 

仕方ないと俺は呟きそのまま三人で夕食を済ませた。みんなが寝静まろうとした時も神子はまだ目を覚まさなかった。

 

「夜音。悪いが太子様を運んでくれるか」

 

「わかった。屠自古さんも布都さんも、また明日」

 

「あぁ、おやすみ」

 

「夜音。明日からはまた修行するぞ。今度はどんな相手が来てもいいように」

 

「分かりました。お願いしますね」

 

俺は神子を部屋に運んだ後自室に戻った。

すると陽晴が話しかけてきた

 

ー 夜音。お前、あの時俺が前に出てなきゃ危なかったぞ ー

 

(あの時は……ウン、感謝してるよ?)

 

ー そうならせめて棒読み感を隠せよ!………

まあいいか。元々俺の役割はそうだしな ー

 

(ごめんな陽晴。俺も頑張るから)

 

ー 俺はノープロブレムだ。それよりも今は修行して妖夢ちゃんをびっくりさせないとな ー

 

(あぁ、そうだな……あと)

 

ー ん?なんだ? ー

 

(俺の感情を無くしたの……さっきの理由じゃないだろ)

 

ー ああ、消そうしたのは本当にだが、実際に消したのはあの時だ。ー

 

(あのとき?)

 

陽晴のあの時に俺は一切思い当たる節がなかった

 

ー それはお前の感情が戻った時に教えるさ ー

 

(なるほど……そろそろ寝よう。おやすみ)

 

ー あぁ、おやすみ ー

 

そうして俺たちは眠りに落ちた。

 

 

 

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