さて、前回は襲撃に手も足を出なかった夜音でしたが、
今回で考えが分かっていきます。
では、どうぞ!
大晦日の夜、時刻は23時、もうすぐで新年を迎えようとする頃俺は居間で刀の手入れをしていた。
神子と布都さんは寝てしまい目の前にいる屠自古さんも、うとうとしている。
「と、屠自古さん。眠たいのなら寝た方が……」
「だ、だめだ。新年を迎えるまで私は寝ない!」
「なんですかその、強情さは……」
しかし年越しまであと数分とゆうところで屠自古さんはダウンしてしまった。
「結局無理だったのかよ……」
俺は屠自古さんを部屋に運び自分の部屋に戻ると
布団の上に人魂が浮かんでいた。
「………えっ?」
なんで人魂?………そう思っていると
「はぁい、あけましておめでとう夜音」
人魂から幽々子の声が聞こえてきた。この声を聞くのは何ヶ月ぶりだろうか。前まで聞いていたふわふわとした声がとても優しく感じる
「お、おめでとう幽々子……てか、なんでここにいるんだ?」
「私は冥界の主人よ?人魂を操るなんてお手の物よ」
「な、なるほどな……そんで?年明け早々なんの要件だ?」
「別に用はないわよ。ただ、新年の挨拶をしようと思っただけよ」
「なるほどね。あけましておめでとう幽々子」
「ええ、おめでとう夜音。修行はどうかしら?」
「おかげさまで順調さ。でも……まだ妖夢には届かないかな」
あれから……魑魅の襲撃があった日から俺はより一層の
修行に励むようになった。その成果もあり、着実に実力はついているように感じる
「そう………まだあと7ヶ月もあるのだからゆっくり頑張りなさい」
「わかったよ、幽々子」
自分に合ったスタイル型はだいぶはまってきた。あとは単純な実力勝負だ。
「今日は本当にそれだけよ、それじゃね夜音」
「あぁ、またな幽々子」
俺が手を振ると人魂はフワフワと神霊廟を出ていった。幽々子と話して目が覚めたため俺は縁側へ出る。
夜空には満月が煌々と光っていた。
「綺麗だな………」
こんな風に満月を見るのはあの日以来か……
あの日は本当に最悪な日だった。
兄より出来の悪かった俺はしょっちゅう外に追い出されていた。
目が覚めると全く知らない場所に捨てられ、親戚が見つけてくれるまでただただ彷徨っていた時もこんな満月だったな……
「あの時は地獄だったなぁ……」
でも、今は違う………。
今はちゃんと俺のことを見てくれている人たちがいる。
「これが……妖夢と見れたらなぁ……なんてな」
不意にそんな言葉が漏れてしまった。
なんだか妖夢に会いたいと、そう思ってしまった。それだけで後の七ヶ月を頑張ろうをゆう気が湧いてくる。……………
でも妖夢はどうだろうか……妖夢は………本当に俺の事を大切に思ってくれているのだろうか。もしかして、妖夢が大切なのは……俺じゃなくて…『この世界を救う俺』なんじゃないのか?……
俺が影化しかけた時も、俺じゃなく俺がこの世界を救ってくれるからたすけてくれたんじゃないのか?………
(ッ!!だめだだめだ)
首を横に振る。大丈夫だ……大丈夫………妖夢はそんなこと思うわけが無い……そんなな………こと……
(本当にそうなのか?……)
もし妖夢が俺ではなく能力などのために俺に優しく接してくれるなら……おれは……その期待に応えなければいけない…
「なら……もっと……もっと……」
妖夢を失望させないように……妖夢に……自分を見てもらうために……俺は日が昇るまで刀を振り続けた
……………………………………………………………………
(やっぱりそうなったか……)
夜音が刀を振る中、陽晴はため息をついた。
やはり夜音はまだまだ未熟だった。期待を全て正面から受けてしまう。そのせいで……彼の心は荒んでいってしまう。
(これに関しては………俺はどうすることも出来ないしな)
それは何故か、それはたとえ陽晴は注意したとしても
根本的なことは解決してないからだ。
この前の夜音の発言「この世界にいる意味」についても、
夜音自身が気づかなければ意味が無い……
(たのむから、面倒なことになるなよ夜音)
しかし、陽晴の思いとは裏腹に、夜音の考えはどんどん
おかしな方向へ進んでいく……
……………………………………………………………………
年が明けてから夜音君はいっそう鍛錬に励むようになった。それは屠自古や布都が疲れてしまうほど……
「や、夜音君。少し休憩した方が……」
「だめだ。もっと、もっと頑張らないと……俺は…」
彼は体がよろけ膝を着く
「ほら、やっぱり疲れてるんだ。」
「だめなんだ神子。俺が……俺が頑張らないと……」
何かに取り憑かれたように刀を振る夜音君。時々陽晴が無理やり変わり休んでいるがそれでも彼は修行をやめなかった。
その夜、
「太子様……最近の夜音は少し頑張りすぎかと」
彼が寝静まったあと屠自古と布都がわたしの部屋にきていた。
「やはり屠自古もそう思いますか……布都は?」
「夜音は使命感に駆られているのだと思います」
「使命感?」
「うむ。数日前、夜音は言っておった」
ー 俺は紫に呼ばれてここに来たんです。ならせめてこの世界の役に立たないと。 ー
なるほど……災厄を倒すために彼を呼んだとあの賢者は言っていたが……
「だから、夜音はあの時……魑魅の襲撃を受けた時に何も出来なかったことを悔やんでいるのでは?それに修行を始めて間もない頃、夜音の言っていた「この世界にいる意味」のため……では無いのですか?」
「なるほど……それは一理あるな……」
確かに彼はそれに固執しているのは分かっている。だが
なんのトリガーがあってあんなに変わってしまったのか
それ自体は全くの不明だ。
「ともかく……あと4ヶ月です。このままの調子で行けば。彼はいつか壊れてしまう……それだけは絶対にしてはなりません。これはこの世界のためでなく彼自身のためです。分かりましたか?」
「「はい!! 」」
しかし、彼が変わることはなかった。毎日刀を振り寝る間を惜しんでまで刀を振り続けた。幸い彼の心は壊れなかったが……結局最後まで彼があそこまで変わってしまったのか分からなかった。
「それでは……1年間……ありがとうございました」
あっという間に4ヶ月が経過し今日はついに彼が白玉楼を戻る日だ。一年前に比べ彼の霊力量は格段に上昇し弾幕の精度、力量もだいぶ上がっていた。
「あぁ、またな夜音。修行は程々にな……倒れたら元の子も無いぞ?」
「相変わらずお母さんしてますね屠自古さん……」
「おっ!おか………」
屠自古は顔を真っ赤にして目をそらす
「布都さんも、ありがとうございました」
「うむ。またな夜音。今度も勝つぞ」
「はっ、もっと腕を上げてやりますよ………最後に神子……」
彼は荷物を置き
「一年間。本当にお世話になった。ありがとう」
そう言って深く頭を下げた。
「顔をあげてください夜音君。君はすごい人だ。あそこまで修行を続けられる人は五人といないだろう」
私は彼の頭に手を置き
「さぁ、妖夢さんを驚かせてきなさい」
「ああ……ありがとう」
彼は顔をあげ、荷物を持ち神霊廟を後にした。
その瞬間確かに私は彼の心の声が聞こえた一年間聞こえてこなかった彼の声が……
ー もっとだ………もっと……… ー
彼はまだ自分に負担をかけるつもりなのか……そう思った私は思わず声が出てしまった。
「夜音くん!」
「……ん?なんだ?神子」
「……いえ……なんでもありません」
「なんだよ……それじゃあな」
苦笑いを浮かべ彼は再び歩き出した……黒い霊力を漂わせながら…………
……………………………………………………………………
数日前、神子は白玉楼を訪れていた。
「こんにちは幽々子さん」
「あらぁ神子さんじゃない。どうしたのかしら?」
「はい実は……彼のことで報告があって」
神子は幽々子の正面に座り、夜音が影化したこと、そして、夜音の影化は本当の影化ではなく、陽晴とゆう夜音の二重人格であることを説明した。
「なるほどねぇ。苦労かけてごめんなさいね」
「いえいえとんでも……それに最近の彼は誰かの期待に応えようと必死に刀を振っているんです……なにか……
心当たりはありませんか?」
神子がそう聞くと幽々子は首を傾げた
「さぁ?分からないわ。」
「そ、そうでしたか、ひ、ひとまず。彼は白玉楼に戻ってからも修行をする可能性が高いです。」
「……わかったわ。そこら辺は注意してみることにするわ」
「ありがとうございます。では私はこれで」
そう言って神子は白玉楼を後にした。
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「心配です……」
夜音君が見えなくなったあと、布都がそんなことを呟いた。
「気持ちはわかりますよ布都、でも、あれは恐らく彼の中で何か考えがあるはずです。それを無下にするのはあまり良いとは言えません。ここは、彼を信じましょう」
結局分からなかったが。彼は彼なりに何か考えがあるに違いない。目標に向かって努力するのはいいことだが、それが裏目に出ては全くの無意味になってしまう。
しかし今の彼はそうなってしまう可能性が極めて高い。
「まぁ太子様も白玉楼の主に状況を説明したんだ。
きっとあっちでも何とかなるさ」
屠自古の言葉に布都も少し気が楽になったようだった。
しかし……気になるのは最後の黒い霊力……あれは
陽晴君の時とは違う……つまり、夜音君の本来の影化による
霊力………
ー 夜音自身が本当に影化したら、恐らく霊夢たちでも手に負えないだろう ー
そんな陽晴君の言葉を思い出した。
(夜音君……どうか……)
そんな願いを込めて、私は天に祈りを捧げた。