混沌少女が異世界から来るそうですよ?   作:香坂 夜狐

5 / 9
 じつは寅さんみたいな典型的なやられ役は好きだったりします。
 そして、原作の問題児や闇に棲みつくものからも、ちょっと内容が外れてしまいます。
 オリジナルの展開がダメな方はバック推奨です。

 そして気づけばお気に入り500超え…感謝感激にございますマス。
 週1の投稿ですが、これからも宜しくお願いします。
 そして、3点りーだー等々を教えてくださる皆様にも感謝を。

 戦闘描写が苦手です。

追記
なんで黒兎が神格にきづかないの?といった質問が多いですが、一応理由があります。
そこらへんは和ロリ神回で書くと思うので、ご確認ください。

さらに追記
ゲームの名称で森ならフォレストじゃね?的な質問が多いので説明を。
.野生動物がいる大森林、山林、密林はforest
.より狭い森、林はwood または woods
です。



第4話~森の中のようですよ?~

 

「はぁ……はぁ……ッ…」

 

 背の高い木々が立ち並ぶ森、その木々に光が遮られている藪の中を体が傷つく事も考えずに進み続ける男が一人。

 

 ―ソレは獲物を追いかけていた―

 

「…くっ…クソガあァぁァァ!!」

 

 その男の後方より追いかける異形の存在達。

 

 ―ソレは芋虫のような巨大な体をうねらせ常に変化させながら飛んでいた―

 

「…はぁっ!!」

 

 男が腕を振り、空気の刃を飛ばすがそれは素早い動きで回避する。

 

 ―ソレは蝙蝠のような1枚の翼を持ち、常に暗闇にひそみ時を待っていた―

 

「ちっ…っ!!?」

 

 男がひときわ大きな藪の近くを通った時、ソレがもう1匹現れ、男の腕に噛みつ―

 

 ―そしてソレは血と生命を求め、その高い知性を持って獲物を追い立てる―

 

「ガっ…Gaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」

 

 ―肉が潰れ、骨が砕ける音と共に男の腕を食いちぎった。 

 

 ―そう、ソレはまさに狩人であった―

 

 腕を食いちぎられた獲物―ガルドは腕を食いちぎられて、尚もその場から逃げようとする。そして、彼が森の中に入り込むまで見ている狩人。

 

(くそッ…なん…で…こんな目に…)

 

 彼の、いや、彼達の狩り《ハンティング》の始まりは1時間ほど前に遡る―――

 

 

 「ど、どこだ此処は!!?」

 

 いままで居た路地から、見慣れぬ森に突如移動したガルド。周りを見渡し、少しばかり冷静になった頭で呟く。

 

「っ、魔王のゲーム盤か…」

 

 流石は一応とはいえ組織の上に立つ者といった所だろうか、多少の慌てが見れる物の現状を打破する為行動を始める。

 

(くそっ!!まずはゲームのルールとクリア条件の確認か…)

 

 ガルドは先ほど受け取った黒い契約書類(ギアスロール)を取出し、中身を確認する。

 

 

―ギフトゲーム名"Wood of N'gai"―

 

―プレイヤー―

 ガルド=ガスパー

 

―ホストマスター側 勝利条件―

 ・プレイヤーの死亡。

 

―プレイヤー側 勝利条件―

 ・歴史の流れを正しく見届ける。

 

―プレイヤー側 制限事項―

 ・歴史の流れの阻害。

 ・ゲーム領域内の生物の殺害。

 

―報酬事項―

 ・プレイヤー側が勝利した場合、ホストマスターの所有権を得る。

 ・ホストマスター側が勝利した場合、プレイヤーの所有物を全て得る

  

―宣誓 上記を尊重し、ホストマスターの名の下ギフトゲームを開催します―

                         "Nyarlathotep"印

 

「………」

 

 ガルドは契約書類(ギアスロール)を何回も読み返しながら、思考を繰り返す。

 

("Wood of N'gai"…か。このゲーム盤の名称か?いや、"歴史"とやらに関係した単語か隠語の類か?『歴史の流れを正しく見届ける』という事は時間経過系か、それとも謎解き系のゲームか?時間経過ならば"歴史"の現場を探さなければ"見届ける"事が出来ないが、この森全体が範囲となるのか、指定の場所があるのか。謎解きならば何か間違いのある"歴史"を"正しく"すればいいのか?『歴史の流れの阻害』…"阻害"とは手出し全般の禁止なのか、一定の行動の禁止なのか。『ゲーム領域内の生物の殺害』という事は死亡に至らない攻撃は大丈夫という事か…魔王側の勝利条件に『プレイヤーの死亡』があるという事は相当の危険があるという事、いや、魔王のゲームというだけで十分危険だ…『Nyarlathotep』…くそっ…聞いたことがない名前だ。どんなゲームか、検討もつかん…)

 

 繰り返し同じ様なことを考え続けるガルド、5分ほどその場で考えていたガルドは契約書類(ギアスロール)に向けていた視線を上げ一息つく。

 

「チッ…結局は"歴史"とやらについて調べるしかない、と言う事か。」

 

 呟くとガルドは森の奥へと1歩踏みだそうとし―

 

「……ッ…!!?」

 

 ―首の後ろに何かかゆい物を感じ、本能の指示するまま前に飛ぶ。直後―

 

―ドゥオオォォォォォォォン!!!!!―

 

 ―先ほどまでガルドがいた地点に巨大なナニかが降ってきた。

 

「クソ、敵か!?」

 

 ガルドは警戒して降ってきた衝撃で砂煙が起きている地点を見る。

 

「………」

 

 段々と晴れてくる砂煙、それと共に襲撃者の姿が明らかになる。

 

「な、なんだ…コイツは…」

 

 芋虫のような巨大な体、蝙蝠のような1枚のはね。常にうねる体。

 

―GAAAAAA!!!!―

 

 大きな雄叫びを上げる謎の名状しがたい生物がそこにいた。

 

 こうして、狩人とガルドの狩り《ハンティング》が始まった。

 

 そして冒頭に戻る―――

 

 

 ―――森の中、片腕を失い満身創痍のガルドが重い足に鞭をうち、のろのろと重い足取りで進む。

 

「…はぁ…はぁ…」

 

 ちぎれた片腕には布を用いた簡易的な止血が施されている。

 

「くっ…あれ、は…」

 

 ふいに、横を見てみると其処には開けた場所があり、中央には地面に突き刺さる形で大きめの平石が太陽の光に晒されている。

 このゲームが始まってから初めて目にする物にガルドは周囲に警戒しながらも近づいていく。

 

「これは、何かの手がかり…か?」

 

 その平石には顔の無い無定形の生物のような者が書かれていた。

 

「この平石だけか…ほかになにか…」

 

 ガルドが他になにか無いか周りを見渡すが特にこれと言った物はない。

 そこでガルドは後ろから何かの気配を感じとり後ろを向く。

 

「ッ…また、か!?」

 

 ガルドが顔を向けた方向には先ほどからガルドを追い、その片腕を食いちぎった異形の生物が森の中の暗がりからガルドの様子を窺っている。その数は目に見える数で2匹ほど、しかし気配を探ってみれば森に隠れた闇の中に多くの気配が有るのがわかる。

 

「………」

 

 無言で構えるガルド、そこで異形の生物の様子がおかしい事に気づく。

 

(…襲ってこない、だと?)

 

 そう、異形の生物は暗闇からガルドの様子を窺うだけで襲ってこないのである。

 

(この平石か、もしくは太陽の光か…)

 

 即座に他の場所と違う点を挙げ、予測するガルド。

 

(どうでもいい…いまは休んで、このゲームの攻略方法を考えなければ…)

 

 いつ異形の生物たちが再び襲ってくるかわからないため、警戒だけは怠らず、ガルドはしばしの休憩に入った。

 

 ガルドが休憩に入った同時刻、どこか遠い場所―――

 

 

 ―――ガルドが居る森とは違う、どこかの建物の中。

 

 そこでは複数の人物により、混沌とした様子を見せていた。

 1人は部屋の中央、何やら円形の模様の中に不規則的な模様が書き込まれ、その隅には蝋燭が灯された魔法陣の傍で呪文を唱える男。

 男は1文字1文字に力を籠めながら呪文を紡いでいく。

 

「ふんぐるい

 むぐるうなふ

 くとぅぐあ

 ふぉまるはうと

 うがあ―ぐああ

 なふる

 たぐん 

 いあ!!

 くとぅぐあ!!」

 

 男が呪文を紡いでいる最中、その部屋の外では儀式を止めようとしているのか数人の男女が争う声が聞こえる。

 しかし、呪文を唱える男は気にも留めずに言葉を紡ぐ。

 

「ふんぐるい

 むぐるうなふ

 くとぅぐあ

 ふぉまるはうと

 うがあ―ぐああ

 なふる

 たぐん 

 いあ!!

 くとぅぐあ!!」

 

 そして、部屋のドアが勢い良く開き、儀式を止めようとする男女が部屋に入ってくる。しかし―

 

「ふんぐるい

 むぐるうなふ

 くとぅぐあ

 ふぉまるはうと

 うがあ―ぐああ

 なふる

 たぐん 

 いあ!!!

 くとぅぐあ!!!!」

 

 ―一歩遅く、呪文が完成してしまい、魔法陣の中央から炎が噴き出す。

 

「…私をよんだのは誰?」

 

 その炎の中から炎を纏った少女が現れる。

 その少女に対してひれ伏す男。

 

「おお!!偉大なるクトゥグアよ!!私です、私が呼びました!!」

 

 仰々しい様子で少女に語りかける男に対して、少女はその身に纏う炎とは対極の冷たい視線を男に向ける。

 

「そぅ…」

 

 少女が無言になったのを見て話を聞いてくれると判断した男は、少女に対してひれ伏したまま話を続ける。

 

「クトゥグアよ!!私はあなたに願います!!どうか、どうか悪しき邪神、這い寄る混沌、ニャルラトホテプの住処、ンガイの森を焼き払うため、力をお貸し願いたい!!」

 

 ニャルラトホテプ、その名を聞いた瞬間、少女の顔にニヤリとした笑みが浮かぶ。

 

「ニャルラトホテプの住処…ンガイの森…」

 

 少女の呟きを聞いた男は、その顔に希望の色をみせ、ひれ伏せていた顔を上げる。

 しかし―

 

「な、クトゥ――」

 

 その場にすでに少女の姿がなく、代わりに少女の残した炎が風に揺られる花弁のように舞い―

 

「――グアはどこにいっ――」

 

 ―炎の花弁が床に着いた瞬間―

 

「――!!!!」

 

 ―大きな炎が部屋どころか辺り一面を焼き尽くした。

 

 同刻―ガルドの居る森の中――

 

 

 ――遠い地の建物一面が炎に包まれてるその同刻、ガルドの居る森にも異変が及んでいた。

 

「な、なんだ空が…」

 

 空気が変わった事をいち早く察したガルドが空を見ると―

 

「…あかい」

 

 ―空は鮮やかなあかに彩られていた。

 

 しかし、異変はそれだけに留まらない―

 

 ―■■■■■■■■■■■■!!!!!!!―

 

 ―森に響く不気味な叫び声―

 

「!!?…奴らが…」

 

 ―先ほどまでガルドを追いかけていた異形の生物、その生物を赤い球体状の何かが追いかけ炎を使って焼き殺していた。

 

「…くっ、早く逃げなければッ!?」 

 

 いつ、その炎が自分に向けられるともわからない、逃げようと球体状の何かから背を向けるが背後の森は既に炎に覆われていた。

 

「チッ…!!?」

 

 ならば、正面突破と思い再度後ろを見ると目に入るのは鮮やかな赤。

 ガルドは既に炎に囲まれていた。

 

「ぁ…ぅ…」

 

 逃げられない炎、その炎に対して感じる潜在的、本能的な恐怖に対してガルドは1歩、また1歩と下がっていく。

 

「ッ!!!?」

 

 1歩ずつ下がっていくガルドの背に何かが当たる。

 ガルドはそちらを勢いよく振り返る。

 すると目に入るのは先ほどまで自分が休憩に使っていた平石。

 

「………」

 

 炎に囲まれた絶対絶命の最中、しかし、ガルドは平石…正確には平石に刻まれた顔の無い無定形の生物から目が離せないでいた。

 

「!?」

 

 数秒、平石を見つめたガルドが体を震わせる。

 

「来るな…こっちにくるなぁ!!!?」

 

 ガルドは何もない空間に対して攻撃を繰り返しながら平石から離れていく。

 

「やめろぉ!!!!まとわりつくなぁあぁぁ!!!!!」

 

 攻撃を止めたかと思うと突如、なにかを払うような動作を繰り返す。

 

「ああぁぁぁぁああぁぁあぁあぁ!!!!!!!!やぁめろぉお!!おれがわるかった!!だから、やめてくれぇぇえぇぇ!!!!ひっ、くるなぁ!!おれに、ちかずくなぁぁぁ!!!!」

 

 そしてガルドはなにかから逃げるように走り出す。炎に囲まれ、焼かれる事も気にせず、ひたすら、只々ひたすらに何かから逃げ続ける。

 

 彼の瞳に何が映ったのか、なにから逃げているのかは誰にもわからない。

 

 ―顔の無い無定形の生物か

 

 ―彼に裏切られたかつての仲間か

 

 ―彼が殺し、食べた女子供か

 

 ―彼に殺された者の遺族か

 

 ―彼を追いかけていた異形の生物か

 

 ―彼に旗印を奪われた者たちか

 

 ―はたまた、その全てか

 

 それは誰にも分からない。分かるのは彼自身であり、その彼は今や燃え盛る森の中だ。

 

 彼が走り去ったああと、その場に残されたのは顔の無い無定形の生物が描かれた平石のみであり、その平石も燃え盛る炎と倒れてくる木々にその姿を消した。

 

 

 

―ギフトゲーム名"Wood of N'gai"―

 

―プレイヤー―

 ガルド=ガスパー

 

―ホストマスター側 勝利条件―

 ・プレイヤーの死亡。

 

―プレイヤー側 勝利条件―

 ・歴史の流れを正しく見届ける。

 

―プレイヤー側 制限事項―

 ・歴史の流れの阻害。

 ・ゲーム領域内の生物の殺害。

 

―報酬事項―

 ・プレイヤー側が勝利した場合、ホストマスターの所有権を得る。

 ・ホストマスター側が勝利した場合、プレイヤーの所有物を全て得る

  

―宣誓 上記を尊重し、ホストマスターの名の下ギフトゲームを開催します―

                         "Nyarlathotep"印

 

―結果―

 ・全プレイヤーが死亡しました。

  報酬事項に則りプレイヤーの所有物の所有権がホストマスターに移ります。

  

 

 




はい。寅さん死亡のお知らせです。ゲームの内容は単純に【最終的にクトゥグア偽が出てくるからそれが帰るまで生き残ってね☆】という単純なゲームです。高火力+酸欠+クトゥグア眷属+ニャル子眷属+長時間の我慢大会。
そして、今後のノーネームのフラグ、総ブレイクの巻き。
闇に棲みつくもの要素はンガイの森だけな気がします。

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