今回はサウザンドアイズの店先までになります。
大通りから外れた露地。その隅でごそごそと何かをあさっている一つの陰。
「うーん、イイ物が無いですねぇ。ガルドさんのパンツとかいらないですよ」
その手には黒い
―ギフトゲーム名"Wood of N'gai"―
―プレイヤー―
ガルド=ガスパー
―ホストマスター側 勝利条件―
・プレイヤーの死亡。
―プレイヤー側 勝利条件―
・歴史の流れを正しく見届ける。
―プレイヤー側 制限事項―
・歴史の流れの阻害。
・ゲーム領域内の生物の殺害。
―報酬事項―
・プレイヤー側が勝利した場合、ホストマスターの所有権を得る。
・ホストマスター側が勝利した場合、プレイヤーの所有物を全て得る
―宣誓 上記を尊重し、ホストマスターの名の下ギフトゲームを開催します―
"Nyarlathotep"印
―結果―
・全プレイヤーが死亡しました。
報酬事項に則りプレイヤーの所有物の所有権がホストマスターに移ります。
・以下の
――――――――
一番したから先に並べられるのはガルドの所有していたギフトやコミュニティ“フォレス・ガロ”の所有権、多数のコミュニティの旗印等の価値ある物から始まり、ガルドの衣類やパンツ、夜の玩具に秘蔵の〇〇本、趣味の道具にガルド宅の食器等、ありとあらゆるガルドの"元"所有物が書かれていた。
そして最後に書かれているのが”ラプラスの紙片”、箱庭においては一般的にギフトカードと呼ばれ、所有ギフトの表示、ギフトや物の収納や所属コミニュティの表示等、様々の用途がある便利なカード型の
もとはガルドの所有物であり、現在ニャル子が所有するそれは元はガルド自身を主張するような虎柄模様であったが、現在はニャル子の「とりゃ」との軽い掛け声と共に白と黒の市松模様になっており、もとからニャル子が持つ
「う~ん、ごちゃごちゃしてて何が何やら、整理が必要ですかねぇ」
そのギフトカードをしばらく弄り、これが能力や所有物を表示し物の取出しが可能なものと判断したニャル子は、その物の多さに整理が必要かと思う。
おもむろにニャル子が手を横に突出し、指を弾くと周りの風景が一瞬で変わり、先ほどまでガルドが戦っていた森の平石の前の現れる。その森はどういう訳かあんなにも燃えていたにも関わらず、そんな事なかったとでも言わんばかりに背の高い木々が存在を主張している。
ちなみにニャル子はこのような
「さてと、まずは…」
ニャル子は少しばかり空いている場所を見つけると、自身がいらないと判断した物を次々と出して一纏めにしていく。
「これもいらない、あれもいらない」
次々と出されていく品々、ガルドのパンツにガルドの衣類、ガルド宅の食器に様々なコミュニティの旗印、ガルドの夜の玩具に秘蔵の〇〇本、コミュニティ“フォレス・ガロ”の所有権に旗印、ガルド宅の所有証明書やよく分からない書類等々。
それらを一纏めにするとニャル子は数メートル離れ、品々に一刺し指を向ける。
「メラ!!」
おもむろに叫ぶと指の先から火の玉が飛び出て品々に火をつけて次々と燃やしていく。
それを見ながらニャル子はビシッと何やらポーズをとり…
「私のメラは108式まであります!!」
…どこかに向かってどや顔をむけていた。
所かわって商店の立ち並ぶ通り。
「はぁぁ、結局ニャル子さんはみつかりませんでしたぁ」
「まぁ、そのうち見つかるわよ」
そこを歩いている4名の男女、黒ウサギ、十六夜、飛鳥、耀……それと猫。
頭を抱えている黒ウサギを飛鳥が慰めている。
彼らは世界の果てで蛇神に喧嘩を売っていた十六夜を黒ウサギが確保した後、別行動をしていたジンと合流。
今の黒ウサギたちの現状…破滅寸前のコミュニティ、広大な土地に対して少なすぎる資材等についての話を終えた後、十六夜達のギフトの鑑定を行う為にコミニュティ"サウザンドアイズ”という所に向かっているところである。
その道中、桜のような花を咲かす木を見て飛鳥が呟く。
「桜の木……ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」
その呟きに対して続けて返す十六夜と耀。
「いや、まだ初夏になったばかりだ。気合の入った桜が残っていてもおかしくないだろ」
「?今は秋だったと思うけど」
その互いの発言に、互いに顔を見合わせて疑問を表情に出す3人。
その3人の様子を見て、黒ウサギがくすくすと笑いながらも、3人の表情と前後の会話から全員が抱えている疑問に答える。
「皆さんそれぞれ違う世界から召喚されているのデスよ。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずです」
「へぇ?パラレルワールドってやつか?」
「正しくは立体交差並行世界論というものなのですけども……今からコレの説明をしてしまいますと時間がかかってしまいますので、またの機会ということに」
話を聞いて素直な感想を上げる十六夜に対して、細かな修正点を伝える黒ウサギ。
そこで目的地についたようだが、閉店の時間らしく、店の前には店じまいを行う女性店員がいる。
「ま「待った無しです御客様、うちは時間外営業をやっていません」
黒ウサギは店員に待ったをかけようとするが予測していたかのようにスッパリと切り捨てられる。
「なんて商売っ気の無い店なのかしら」
「ま、全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!!」
「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」
「出禁!?これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ!?」
テンション高く抗議の声を上げる黒ウサギに対して、あくまで冷静に対応する店員。
「なるほど、〝箱庭の貴族〟であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」
そこで黒ウサギが言葉につまるが、十六夜君の方が名乗る。
「俺達は”ノーネーム”ってコミュニティなんだが」
「ではどこの”ノーネーム”様でしょう。旗印の確認をさ…
コミュニティの名前を聞き、旗印の確認を店員が取ろうとした所で響き渡る2つの声。
「いぃぃやほおぉぉぉぉい!!久しぶりだ黒ウサギイィィ!!!!」
「うぉぉりゃあぁぁぁぁあ!!私、ふたたび参上おぉぉお!!!!」
突如、同じタイミング、同じようなテンションで別々の方向から飛んできた二人の少女…ニャル子と和装の少女…は黒ウサギの寸前で衝突し――
「「ずごっく!!?」」
――同じような悲鳴を上げ――
「「ぎゃん!!!!」」
――一緒に転がり道の横の水路に落ちていき――
「おぉ、黒ウサギとも違うがこれはこれでいいのぅ!!ほぅれ、ここが良いか、ここが良いか!!」
「え、ちょ、どこ触ってんですか!!?ぁ、ぎゃーーーーーーーーーーーーー!!!!」
――その場の空気を何とも情けのない物へとした。