ヒロインとの裏話   作:やなや

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「卒業」をお題に一本書きました。

今回和奏ちゃんをメインに書きましたが、和奏√というわけではありません。
保科、海道、和奏は普通に親友です。


ピンク色に染まる頃(仮屋和奏1)

 「あーあ、ついに来たなこの時が」

昇降口を抜け、多くの生徒がそれぞれの輪を作る中を三人で歩きながら海道が小綺麗な筒を握りしめ感慨にふける。

 そんな海道と、その隣を歩くアタシと保科の胸には手のひらサイズの花が飾ってある。

 

 「柊史はいいとしてさ、和奏ちゃんは俺らと一緒にいていいの?女の子たちのところいかなくて」

「いいよ。もう十分に喋ったし、女の子同士ならSNSで頻繁にやり取りするし。海道はともかく保科はそんなにやらなそうじゃん?」

 話ながら歩いているとちょうどいい感じに空いたスペースを見つけた。

 

 「それにさ」

 

 そう言ってそのスペースに飛び込み、くるりと振り向くと保科たちを見上げながら言う。

「最後はあんたたちと過ごすって決めてたんだよ」

「嬉しいこと言ってくれるじゃん。どうしたよ柊史、ずっと黙ってて。我らが姫がこう仰せだぞ」

「いや、オレも嬉しいよ。友達なんてはっきり言えるのはオカ研を除いたらお前たちしかいないからな」

「お前はお前で悲しいこと言ってくれるね…」

「と・に・か・く!」

 アタシはそこで会話を切り、宣言する。

 

「高校生活最後の時間だ。存分に語りつくそうぜ、野郎ども!」

最後、という単語に胸がきゅっと締め付けられた気がした。

 ピンク色に染まった花びらがアタシたちを見下ろしている。

 今日、アタシたちは高校を卒業した。

 

 

 

 

 

 「やっぱさ、一番の思い出って言ったらバンド演奏だろ!」

「ああ、あれは最高だった」

海道の叫びに保科が同意する。もちろんアタシだって。

「和奏ちゃんは弾いて歌って大活躍だったもんなー、あの人気ぶりの欠片だけでも俺に分けてほしかった」

「オレたちも一緒にステージに立ってたのに全くちやほやされなかったからな」

「海道は普段の評価のせいでしょ。チャラチャラしてないで黙ってれば見てくれはいいのに。保科はオカ研の子にちやほやされてたでしょ」

 

 本当、いつもと変わらない。また明日からも同じ日常が続いていくようかのようにくだらない話を続ける。

 

 「海道はよく授業中にふざけて怒られてたっけ」

「それはそっちだってそうだっただろ!二人とも逃げるのうまいから結局俺だけ怒られちゃってさー、それ見てまた笑ってんの」

「あんまり見慣れちゃったからな。それにお前にとってはご褒美だろ」

「相手が早苗ちゃんならなー」

 

 この三年間で見慣れた笑顔が、今とても手放しがたい。

 

 「そういや和奏ちゃん、バイトはどうするの?」

「ん?続けるよ。アタシの進学先は実家から通えるところだからね。オーナーも喜んでくれた」

「それはよかった。相馬さんも働き手が減ると大変だろうからな」

「ちょっと保科、アタシまだ海道に喫茶店教えちゃったこと根に持ってるからね?二人でよくたまり場にしてくれちゃってさ」

「ごめんて。仮屋も休憩中は楽しそうにお喋りしてたからいいだろ」

 

 この時間ももう終わる。

 

 「そういえば本気で喧嘩したこともあったよな、なんだっけ仮屋のこと泣かせちゃったやつ」

「あったあった、和奏ちゃん泣かせちゃって俺らめっちゃ焦ったもんな。なんでだっけ」

「ちょっとちょっと!アタシのこと泣かせといて二人そろって理由覚えてないの⁉」

 

 本気で喧嘩したこともあった。喧嘩した理由なんて実はアタシも覚えてないけど「明日から一緒に笑えなくなっちゃうのかな」と思った瞬間涙が抑えきれなくなったことだけは覚えている。

 

 「毎日三人一緒にバカやったよね」

「笑えない日なんてなかったな」

「三人でいるのが当たり前だったな」

 

 アタシたちはこれから一人で旅立つ。

 共に過ごしたこの場所から別々の道を歩む。

 この思い出だけを胸に。この日々を思い出しながら。

 ああ、本当に。

 

 「本当に、たのし、かった…」

 

 気づいたら溢れていた。もう止まらない。拭っても拭っても抑えられない。

 二人が少し驚いて…それから微笑んでいるのがわかる。なんだよ、人が泣いてるのに笑うなよ。なんでずっと黙ってるんだよ、何か言ってよ。

 

 もう、息が苦しくて言葉がまとまらない。最後なのに。最後だから。こんな泣き顔見られたくない。この気持ちを伝えられない。

 

 だからアタシは二人を抱きしめた。右手に保科を、左手に海道を。二人の間に顔をうずめて…。

 

 

 ただ時間が過ぎるのを待った。二人はずっと待っててくれた。すこし気持ちが落ち着いてきて呼吸も整ってきた。

 二人から腕を離し、ゆっくりと数歩下がる。顔をあげると少し困ったような照れたような表情の二人がいる。

 まだ言いたいことはたくさんある。伝えたい気持ちも抱えきれないほどに。でもこの時間をいつまでも続けていいわけじゃない。あーあ。

 

 

 

 「あーあ、魔法があったらよかったのに」

 

 

 

 魔法?と保科が怪訝な顔をする。そりゃいきなりこんな突飛なこと言いだしたら不思議にも思うだろう。

 「魔法があったらさ、この楽しかった時間をもう一度過ごせたり、なんならずっと一緒に遊んでられるのになって」

 保科が今度は苦い顔をする。そんなうまい話あるわけないだろって感じの顔。もしもの話でそんな真面目に取らなくていいのに。

 

 「まあ、魔法は置いといてもさ、そう思えるくらいにあんたたちと過ごした時間は最高だったよ」

 二人の胸にそれぞれグーを叩き込む。いつもと違い花飾りつけた制服に本当に終わりを実感する。

 

 

 

 「魔法なんていらないさ」

 

 

 

 保科が言う。

「高校を卒業してもオレたちは終わりじゃない。オレたちの作った物語も消えない。明日やその先へつなげるだけだ」

「そうそう、俺たち高校卒業しただけだぜ。まだまだ楽しいこともバカもいろいろやって笑いまくるんだ。むしろこれから始まることの方が多いってもんさ」

海道が続く。

 

 二人は当たり前のようにそう語る。それが私には嬉しくて嬉しくて。

 

 「そっか、そうだね。これからも一緒に笑えるよね」

「当たり前だ。魔法なんかなくてもオレたちはなにも変わらない、だろ?」

「おうよ!三年間も毎日一緒にいたんだぜ、今更変われるかよ」

 

 だから最後に思いっきり笑えた。いつも通りの笑顔で。明日からもそうであるように。

 

 「よーし、だったら明日からのことを決めよう!二人とも、4月入るまでは暇だよね?遊び尽くそう!」

「いいねー、あっ俺腹減った。和奏ちゃんのとこの喫茶店で飯食いながら予定たてようぜ」

「このまま直行?なんだか卒業後も普通に入りびたることになりそうだな…」

「はーい、お得意様二名ご案内でーす!あ、卒業祝いにってオーナーがサービスしてくれるかもよ」

 

 

 

 結局、いつもと同じようにくだらない話をしながら最後の校門を抜ける。

 足を止め後ろを振り返ると三年間お世話になった校舎がそびえたつ。

 いろいろな思い出があった。たくさん学んだ。大事な人たちと出会った。

 本当に本当にお世話になりました。ありがとう。

 

 

 

 先を行く二人アタシが遅れたことに気づき声をかけてくる。それに返事をして小走りで追いつく。二人の間に入り、また笑いながら帰路を行く。

 

 

 

 本当、あんたたちと過ごせて楽しかったよ。

 




やなやは高校の卒業式の日には友人とラーメン屋に行ってグダグダお喋りしていた覚えがあります。
人それぞれの思い出があり、節目節目で思い出しては笑いあえる友人をこれからも大事にしたいと思います。

さて、実は「Hearts Grow」というグループの「物語」という曲がやなやはとても好きです。
内容は卒業にあたり、ずっと一緒にいた友人と離れる寂しさを歌ったものになりますが、別に卒業ソングとして好きというよりただ単純にこの曲が好きです。一番好きな曲です。
ただ、残念なことにびっくりするくらい知られてなくて当然カラオケなんかにも収録されてません。
確か、「NARUTO」の主題歌「ユラユラ」のB面に収録されていたはず…。
おすすめしようにもどこで聞けばええねんの状態。
とりあえずやなやはこの曲が好きなので節目節目の大事な時に聞きますし、当然自分の卒業時にもずっと聞いてました。

今回、その「物語」の歌詞を一部引用させていただいております。
といいますか、せっかく投稿というものを始めたのでこの曲を知ってもらいたい、というのが今回投稿した理由の80%ほどを占めております。
本当いい曲だと思いますので機会があったら是非お聴きください。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。
和奏ちゃんとイチャイチャするお話は現在まったり執筆中なのでそのうち投稿します。

最後に、高校に限らず何かを達成し無事修了・卒業を迎えた方々、本当におめでとうございます。
あなたのこれからに幸多からんことをお祈りいたします。
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