今宵は夏祭り。
恋人たちのデートにはうってつけのシチュエーション。
私の視線の先にも一組の男女が腕を組んで歩いている。
その二人の後ろを、少し距離を開けて私が付いていく。
はたから見たら、カップルの後をつける私はどう映るのだろうか。
でも、そんな心配はいらない。どうせ誰も私のことを気にも留めないのだから。
夏祭りにはとても似合わないおかしな格好をしていても、誰も私に気が付かない。
そういう風になっている。
私に気づけるのは唯一彼だけ。
その彼も、今は隣の恋人に夢中のようで他のことは眼中にない。
やがて二人が足を止めた。
つられて私も足を止める。
射的屋の前。
彼女にねだられて、景品のぬいぐるみでも取ってあげるのだろうか。
店主に冷やかされた彼が照れた様子で笑う。
それを見た彼女も嬉しそうに微笑む。
その姿を見れば、きっと誰もがお似合いのカップルだと思うだろう。
本当に幸せそうだ。
出会った頃の彼とはまるで違う。
彼の心が満たされているのがよくわかる。
——私の心はこんなにも穴があいているのに。
なんで?
なんであなたの隣にいるのは私じゃないの?
私はずっとあなたのことを見ているのに。
どうしてあなたは私のことを見てくれないの?
どうして?
どこで私たちは間違えたの?
あのステージに立っていたのが彼女じゃなくて私だったら、今あなたの隣にいるのは私だったの?
どうしたらあなたは私のことだけを見てくれたの?
「……そうだ」
ふと、ひらめいた考えを私は即座に実行する。
彼のすぐ後ろに立ち、背中側から彼の心臓に銃口を突き付ける。
「たしか、射的では景品を打ち抜けばお持ち帰りできるんでしたよね」
——ズドン、と。
私だけに聞こえる銃声と共に、彼の身体が崩れ落ちる。
傷もなければ血も出ようがない。
私の銃弾が砕くのは肉体などではないのだから。
今の今まで隣で笑っていた少年が声もなく倒れたことに、少女は驚き狼狽していた。
どうして? なんであなたが慌てるの?
彼の心配は私だけがすればいいのに。
本当、邪魔だなぁ。
——ズドン。
誰にも聞こえない二度目の銃声。
突如として二人の男女が倒れたことにあたりが騒がしくなる。
「ああ。うるさい、うるさい。今から彼は私とおうちに帰るんです。だから、騒がしくしないで!」
——ズドンズドンズドン。
銃声が聞こえるたびに私の世界から私と彼以外が消えていく。
「あは、あはははは、あははははははは……」
何もいらない。誰もいらない。
彼さえいれば私の世界は完成する。
それだけで私の心は満たされる。
そうすればやり直せるんだ。
正しい未来を。
私と彼の正しい未来を。
「大好きですよ、柊史君」
————あなたのハートにダイレクトアタック☆————
いかがだったでしょうか。
投稿本日8月10日ハートの日とせっかく夏なので夏祭りを掛けてみました。
……嘘です。
たまたま書いたのがあったのでハートの日にかこつけて投稿しました。
突然の寧々バッド、というか鬱√で申し訳ない。
でも私はたまにならこういうのも好物なのです。
特にTwitterの宣伝からおいでなさった人はだまし討ちみたいになって本当ごめんなさい。
え、そう来る? みたいな感想持ってくれてたら嬉しいです。
ちなみにいつも書きたいシチュエーションや言わせたい台詞が最初に決まってから書くのですが、今回は、
「たしか、射的では景品を打ち抜けばお持ち帰りできるんでしたよね」
の台詞を言わせたかった。
ちなみにこの時点では鬱√って決まってなかった。
ハッピー展開も余裕であり得てました。
この台詞でちゃんとハッピー展開書くのもいいかもですね。
最後に一言。
超楽しかったです!