受難の魔王 -転生しても忌子だった件-   作:たっさそ

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第10話 ブースト

 

 ゾンビドラゴン討伐に向かって1日目の夜。

 

 さすがにくたくただ。

 

 一日中走り続けた

 

 3歳児でも、24時間マラソンとかできるかもしれない。

 

 さくらーふぶーきのー♪

 

 あとは根性の問題かな。

 

 

 野営の準備をする。

 もちろん、僕もできるだけ手伝う。

 

 Cランク(グリーン)の冒険者たちは僕たちに気をかけてくれた

 まぁ、それでも僕の髪を見たら気味悪がられるんだろうけど。

 

 Cランク(グリーン)パーティ 『ガーディ』

 

 彼らは獣人のパーティだ。

 

 獣人とはなんぞや。

 獣みたいな奴らだった。

 

 顔がそのまんま雉《キジ》みたいなのもいれば、ネコミミを生やした男もいた

 

 毛深い犬そのままの顔の女の人もいた。

 

 猿もいたよ。でもそれは人間だった。ルパンみたいだった。

 

 聞いたら名前もルパンだった。もみあげぇ

 

 

「ルパン。僕になにか手伝えることってある?」

 

「手伝えることかい? うーん。あ、薪を拾ってきてもらえるかな。スープを作るから」

 

「おお、なにのスープなの?」

 

「Fランクのファンクックさ。たまたまその辺を歩いていたから、捕まえてきたんだ」

 

 

 ファンクック。鶏のファンなのかな。それとも船長?

 

 見たところ朝になったら『コケコッコー』となくあいつにそっくりだ

 ただしでかい。一匹で10kgはあるんじゃないかな。

 普通の鶏の2倍くらいの大きさだ。

 

 鶏ガラのスープ。期待しよう

 

「るー。薪を拾いに行こう!」

「まきー?」

「うん、えっとね木の枝のこと。」

「まきー!」

 

 ルスカはポテポテと走り出す。転んじゃうよ、気をつけて

 

「えへへー《さいくろ~ん》」

 

 ルスカは小さなつむじ風を呼び出し、その辺から木の枝を集めてきた

 

「Oh………わざわざ木から折らなくてもよかったのに」

 

 

 全体の3割くらいが、木が折れたものだ。もちろん、湿っている。

 

 ま、いっか。

 

 ここから乾いたものだけを持って行こう

 ルスカのおかげでわざわざ拾いに行く手間が省けた

 

 

「持ってきたよ、ルパン」

「あ、早いね。えっと、火魔法を使える人っているかな。俺のパーティ、火魔法を使える人っていないんだよね」

 

 じゃあいつもどうやって料理をしているんだい?

 

 そう聞いたら、マッチがあるそうだ。

 じゃあマッチ使えばいいじゃない。

 

 火魔法を使える人が居たら、それだけで節約できるから、消耗品はあまり使わないようにしているらしい。

 マッチってちょっとお値段高いんだって。

 

 日本だったら100円でライターが売ってあるのに。

 

 

「火魔法が使える人っていたかな………」

 

 いないな。

 Aランク(オレンジ)にはいたけど、Aランク(オレンジ)のあいつら嫌い。

 

「俺たちは一番弱いパーティだから、野営くらいでは役に立ちたいんだけどな………」

 

 

 だけど僕は自分の魔法は使わない。

 

 だってまだ3歳だし。

 

 魔力の訓練をするのが早くて7歳から。

 

 3歳から魔法を使っていたら異常だ。

 

 魔法の才能がない人は、剣を使う。

 この世界はそういう風になっている。

 

 剣士もそうとう強いよ。誰でも魔力を持っているから、剣士は剣士の魔力があるっぽい。

 ブーストって言うんだろうか。身体能力を瞬間的に増加するんだって。

 

 

「しかたないか………マッチを使おう。」

 

 

 ごめんねルパン。本当は僕、火属性なんだ。

 

 あ、ゼニスなら火くらい吹けるかもしれない。

 

 

 でももう遅いか。

 鍋に水魔法で水を入れ、かき混ぜる

 

 

 土魔法で鍋を作らないのかと聞いたら、それは7歳くらいから魔力の訓練をしているような化け物じゃないと無理だと言われた

 

 あれ、僕3歳でミスリルとか作れるんだけど。

 

 まぁ、魔王の子として魔力は最初からいっぱいあったしね。

 

 

 鍋なんかは常に持ち歩くから、かさばって大変らしい。

 僕はその場で作れるよ。大丈夫。

 

 ファンクックをさばいているところを見させてもらった

 

 さばき方は僕よりうまい。

 当然か。僕なんて1か月前に始めたばっかりなんだから。

 

 ガラを投入。そして、具材を投入

 

 

 おいしいスープができましたー

 

 Aランク(オレンジ )の人たちは自分たちで料理を作り、自分たちでテントを張った。

 

 Bランク(イエロー)の2パーティはテントを張り、くつろいでいた

 

 まぁ、この討伐隊にも序列はあるだろう。がんばれCランク(グリーン)

 

 

 料理が出来上がったら食べるとしよう。

 僕は歩きとおして疲れたよ。おなかは常にぺこぺこだ。

 

 

 Aランク(オレンジ)のソールは僕たちの方を恨めしそうに見ていた。

 僕たちは3パーティに交じって楽しく食べているよ。

 

 よかった。バンダナ買っておいて。

 

 

 

 討伐隊出発二日目。

 

 僕はAランク(オレンジ)冒険者に腹が立っていた。

 

 理由? あいつら、昨日ルスカを蹴ったんだよ。

 それだけで万死に………いや、億死に値するよ

 

 

 ということで、僕の有り余る魔力を消費するために、僕に1.1倍の重力を掛けつつ、Aランク(オレンジ)パーティ『グレイ』のみなさんには1.25倍の重力を体験して貰っている

 

 僕よりも筋力があるからね。自分の体重がそれだけ増えたら、体調不良を疑うだろう

 

 

「なんか体が重いぞ」

「ソールはゼニスの一撃を受けたからだろう」

「くそっ、ゾンビドラゴン討伐前だってのに………」

 

 

 鈍感らしい。まったく変化に気付いていない。

 

 

 でも、これ以上重力を増やすこともしない。

 

 

「お? ガウルフの群れだ。」

 

 ソールが声を上げた。

 群れとなると、遠回りしても意味ないかもしれないな

 

 

「ゼニス。どうするの?」

「うむ。ガウルフは所詮Dランク(ブルー)だが、群れでの行動はBランク(イエロー)に相当する。

 Cランク(グリーン)Dランク(ブルー)相当のクロ―リーが居るなら、避けるべきだろう。」

 

「………すまない」

 

「うむ。お前のせいだクロ―リー。」

 

 

 軽口をたたいてガウルフを回避しようと遠回りを選択する。

 

 しかし

 

「おいおい、Sランク(レッド)様が甘ったれたことを言ってんじゃねェよ。俺たちがあいつ等全部狩ってくるからよ。そこで黙って見てな!」

 

 ソールだ。

 相変わらずウザい。

 

「ゼニス、いいの?」

「構わんだろう。狩るというなら、任せよう。」

 

 

 僕は闇魔法を1.25倍のまま使用し続けた

 

 どこまでやるんだろう。あの連中。

 

 

「うらあああああああ!!」

 

 ザクッ!

 

「こいやああああああああ!」

 

 ドスッ

 

「《石弾《ストーンバレット》!》」

 

 バキッ

 

「《火球《ファイヤボール》!》」

 

 ゴウ!

 

 

 見た感じ、力のゴリ押しでこいつらAランク(オレンジ)に上がったっポイ。

 

「くそっ! やっぱり体が重い!」

「体調悪いなぁ………」

 

 何度か危ない所があったものの、しかしさすがにAランク(オレンジ)

 切り抜けやがった。ちっ

 

 怪我くらいすればよかったのに

 

 

 毛皮を剥いで牙を抜き、火魔法で灰にして終了。

 ここまでしないと、ゾンビガウルフになっちゃうんだって

 僕たちの時は、毛皮を剥いで肉を全部食ったからゾンビにはならないよ。

 

 ここからは何かが現れればAランク(オレンジ)に任せて、僕たちはのんびりと先に進むことになった

 

 もちろん、1.25倍の重力でAランク(オレンジ)を常に圧迫してるけど。

 

 

 Cランク(グリーン)の豚頭族《オーク》が20匹で現れた時に、ようやく怪我した。

 

 いいぞ豚どももっとやれ。

 

 

「りおー………」

 

 ルスカは戦ってみたいらしい。

 

 でも、ごめん、ここでルスカの異常性を知られるわけにはいかない。

 まぐれとはいえ、単体で魔法抜きでガウルフを狩れたんだ。そんな幼女が居てたまるか。

 

「ごめんね、ルスカ。我慢して。」

「………うん」

 

 できればルスカには暴力的な子には育ってほしくない。

 ローラやピクシーみたいになったら嫌だ。

 

 僕はああいう人たちが大っ嫌いだ。

 

 生前を思い出す。

 

 

 でも、僕も少し暴力について抵抗が無くなってしまっている。

 生きるためには、殺すことは必要なことだから。

 

 Aランクの戦い方を見ていると、剣士のリーダー。ソールはかなり早い。

 

 踏み込んだ一瞬で時速80kmくらいは出してるんじゃないかな。1.25倍の制限を受けてなおだよ。

 どうやってるのか聞いてみよう

 

「ねえねえ」

「なんだクソガキ」

 

 なんだとはなんだクソ剣士

 

 

「はやく走るのって、どうするの?」

 

「速く走る? ああ、《ブースト》だ。」

「ブースト? どうやるの?」

 

 思った通り、ブーストだった。でもやり方がわからない。

 

「はん、魔力の扱い方も知らないお前に教えても無駄だ。」

 

 

 そっか。魔力を扱うのは、早くても7歳か

 

 それ以外は、結局10歳くらいから魔力について習って、そこで才能があるのかどうかを調べるのかな

 

 1歳で属性判定をするのは、この世界での通例か。

 どうせ、子本人より、親の方が自分の子供の属性を知りたいからだろう。

 1歳って自我ないし。

 

 ということで、ゼニスに聞いてみることにした

 

「ブーストってなに?」

 

「うむ。ブーストとは、一部の身体能力を瞬間的に上げることだ。」

「ソールとかいうのを蹴るときにも使ったの?」

「いや、使ってはいない。あれはもともと私の身体能力だ。」

 

 ドラゴンの脚力ェ

 

「まぁ、その時にブーストをしていたとすると、地面を踏む瞬間と、ソールを蹴る瞬間。2回発動するのだ。部位ごとにな。」

「ブーストってのは、本当に一瞬で終わるんだね」

 

 じゃあ、Aランク(オレンジ)の冒険者になるには、そのブーストってのを鍛えないといけないんだね

 

 自然と踏込の瞬間とインパクトの瞬間に、別々の箇所にブーストを入れられるようになってこそ、Aランク(オレンジ)にたどり着けるだろう。

 

 それができるなら、ホワイトベアーくらいなら頑張れば倒せそうだ。

 もちろん、僕に筋力がついて18歳くらいになったらだけど。

 

「しかし、ブーストを使うのは前衛職の連中だな。」

「そっか。じゃあ、魔法使いの人たちは使えないのかな」

「使えるものもいるかもしれんが、剣士の連中の、一握りしかできんだろう」

「ゼニスはできる?」

「当然。」

 

 つまり、性格はあれだけど、Aランク(オレンジ)パーティ『グレイ』は本当に優秀な冒険者ってことなんだろうな。

 

 ゼニスにブーストを使わせたら、僕も殺されるだろう。

 普通の脚力だけで見失いそうになったし

 

 やり方についてはよくわかんない。

 よくわかんないのはいつもの事。

 火魔法や土魔法、闇魔法糸魔法を探った時と同じだ。

 

 なんとかやってみよう

 

 

 


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