ドヴァーキンのヒーローアカデミア   作:Ghetto

11 / 22
スカイリムのフィールドには色々な植物がありますね。植物系はmodが入ると別世界になりますのでお試しあれ。

ところで、この世界の素材はそのままの状態だと薬効(錬金効果)は発現しません。よって、ぺんぺん草をそのまま齧ったら火耐性アップ!とはなりません。……なったらヒーローのみんながそこら辺の雑草や虫の羽をむさぼり食うようになってしまう!という事で詳しくは作中に記載しましたが、オリジナルの設定を適用しています。


9話:ドヴァーキン、自然と戯れる。

 響香、瀬奈と三人で買い出しに行った翌朝、俺達三人は郊外にある、とある山の登山道に向かっていた。休日といえど比較的早い時間であるためか、電車の中にはそれほど人はいなかった。響香はウォークマンで音楽を聴きながらスナック菓子を頬張り、瀬奈は本を読んでいる。そんな二人の様子を見ながら、俺はゲームをしていた。少し前に話題になった、ブロックを壊して生活をするサバイバルゲームだ。

 

「ちょっと。お兄様、音が漏れてますわ。」

「それは失礼。でも少しだけ待ちたまえ。今丁度ゾンビが俺の家に……。」

「えいっ。」

 ……取り上げられた。何をするんだと抗議の声を上げようとしたら、瀬奈の悪鬼羅刹が張り付いた微笑(正しい言葉とは思えないが、これ以外の形容が見つからない)が見えたので、何も言わずに黙っていることにした。ひどい。

「ゾンビか何か知りませんが、そんなに見たければ死体さえご用意いただければ、出して差し上げますけど?」

「いや、別にいい。それよりスマホ返せ。というか、瀬奈……。お前まさか死霊術が使えるのか?」

 死霊術。この世界に来てから全く縁の無かった魔術だ。その場にある死体・死骸を一時的にコントロールする魔術で、かつてサイジックと袂を分かった魔術師マニマルコにより分類・制定化され、タムリエル全土に伝わったという。その特性から、スカイリムの世界でも多くの人間からは忌み嫌われており、“邪法”などと呼ばれる魔術である。

「えぇ。少し前に庭で倒れていたネズミにかけてみましたが、うまくいきましたわ。」

 なにしれっと危ない事してるんだ。死霊術はこの世界においても、恐らく倫理的に非常にマズい。

「まじでか。そういう事は……いや、過ぎた事を言っても仕方ないか。それはいいとしても、そういう事したんだったら早く教えろよ。」

「あら、既に知ってると思いましたわ。スカイリムで散々お見せしましたでしょう?」

 以前から……そう、“セラーナだった頃”からそうなのだが、彼女はちょこちょこ抜けている所がある。

「そうじゃなくてね?瀬奈、スカイリムでできた事がここでは出来ないかもしれないだろ?」

 そう俺が言うと、瀬奈はようやく俺が言いたい事を“理解した”顔つきになり、

「あぁ、そう言われてみればそうですわね。」

 と頷いた。全くもう。

「それよりだな、死霊術はなるべく使うな。問題になる。」

「なんの話してんの?死霊術?スカイリムってなんかのゲーム?」

 ぎょっとして窓側の席を見ると、ヘッドフォンを取った響香がこっちを見ていた。

 まずい、聞かれた。

 ……いつ、どこから?何を?どこまで聞かれた?あらゆる可能性と問題が頭の中で逡巡するが、それらを一度シャットアウトする。

 すぐさま瀬奈と目を合わせて、アイコンタクトをした。“とりあえず話を合わせろ”と、目で訴える。

「そう、今やってる俺のゲーム。瀬奈もやってるんだけどさ、ゾンビばっかり送ってきても迷惑だからやめてくれって言ってるの。」

「あら、お兄様。援軍が欲しいって言っていたでは無いですか。」

「だーかーらー、ちょっと想像してみろ。ゲームとは言え拠点でのんびりしてたら外から“あー”“うー”って呻く声がサラウンドで聞こえる──」

「ん、わかった。もういいよ、その話はやめよう。」

 必死に瀬奈と誤魔化す会話をしていたら、途中で響香からストップがかかった。

「ごめん、うるさかったってこと?」

「いや、そうじゃなくて。……えっと、ほら。その、ウチ、ゾンビとかお化けとか、ゲームでもちょっと、ね。」

 目を合わせず窓の外へ顔を向けて、そして小さめの声で響香がそう呟いた。ああ、ホラーダメなんですか。幼馴染の意外な一面が発覚した瞬間である。

「あら。響香さん、お化けダメなんですのね。ふふっ、良い事聞きましたわぁ。」

 おい瀬奈、うまいこと誤魔化せたからって茶化すな。

「な、なにさ。そういう映画とかはウチ、絶対見ないからね。瀬奈が頼んできても絶対嫌だから!」

「ではお泊りに行った時に、こっそりテレビに忍ばせておきますわ。」

「ひどくない?!」

 お化けのネタで盛り上がり始めた二人を見ながら、そっと会話の輪からフェードアウトした。……もしも瀬奈が死霊術を使って人を動かし、更に灰にしている所を響香が見たとしても、親友でいてくれるのだろうか。いろんな意味で。

 

 

 ==========

 

 

「はぁー!やっと着きましたわー!電車というものは未だに慣れませんわね。お尻が痛いですわ。」

「お前は何処の御令嬢だ。良いから行くぞ、瀬奈。」

 ホームから出て、駅前のロータリーで伸びをしている瀬奈を小突いて先を急がせる。帰りの時間や休憩時間、帰宅後のレクチャーを考えたら意外と時間は少ないのだ。明日は学校だから泊まりは流石にマズい。となれば、効率的に動かなくてはならない。

「そんなに焦らなくても、素材は逃げませんわ。」

「ここで素材集めするだけじゃ無いんだぞ。帰って調合と精製までやるんだから。休憩時間を削りたいんなら別だけど。」

「それは嫌ですわね。」

 そう言いながら、瀬奈は体をくねくねさせて歩き出した。柔軟体操のつもりなのだろうか。傍から見たらなんて事はない。ただの不気味な踊りである。

「ちょっ。瀬奈、何その動き。ウケる。」

 後ろで響香がツボに入ったようで、ゲラゲラ笑っている。うん、ダメだ、こいつらに合わせてたら時間が無くなる。あえて突っ込みを入れず、俺はそのまま説明を始めた。

「はい注目。とりあえず今日は植物と昆虫をメインに見ていこうと思う。山頂までは登る予定はないから、そんなにキツくは無いと思うけど。うん、響香笑ってないで話聞いて。……んで、素材についてなんだけど、本来は未知の素材だとその場で判別したりもするんだけどね、今回はこんな感じだよーって見本を見せるだけにするね。薬効の種類を理解しないと、素材の判別はできない事はないんだけど、覚えにくいし効率悪いから。で、集めた素材を加工する手順は昨日言った通り家で──響香聞いてる?話続けるよ?……レクチャーする感じかな。素材と効果の組み合わせによっては凄い見た目になるから覚悟してね。」

「ん、オッケーオッケー。任せて。」

 この子絶対ちゃんと聞いてないと思う。昆虫は場合によってとんでもない味がする事があるから、効果の判別が難しかったりそもそも分からなかったりするんだけど……まぁ、ヒーロー志望だし大丈夫か。

「じゃ、説明は以上。早速山道から入って素材を探してみよう。」

「お兄様、山で気をつけるべき事を教えてさしあげましたら?」

 いつのまにか真人間に戻った瀬奈が、至極まともな提案をしてきた。

「あぁ、それもそうだね。響香、植物とか探すのに夢中になって蛇とかに噛まれないように気をつけてね。まぁ俺らがいるから、もしもの事があっても解毒の心得はあるから大丈夫だとは思うけど。」

「ウチ噛まれるの前提?!その前に助けてよ!」

「ヒーロー志望でしょ、噛まれる前に撃退しなきゃ。」

 無茶苦茶だ、と反論する響香を宥めつつ俺達三人は山道へと歩みを進めていった。

 

 

 ==========

 

 

「なんかこうして三人で歩いてるとさ、遠足に来たみたい。」

 響香が周りを見渡しながら呟いた。

「小学校の?まぁ確かにこんな感じだったかもね。」

 山道に入って20分程歩いただろうか、少し広場のようになっている場所に出る事ができた。ちょっとした休憩スペースも兼ねているのだろうか。倒木を利用したベンチがある。

「よし、この辺りから探索してみよう。家の周りとか公園には無さそうな植物とかを見つけてね。」

「オッケー。」

 特に疲れた様子もなく、響香は持ってきた軍手をはめて地面に手をついた。地肌が露出している部分からキノコ類を探している。こういう事に抵抗が無いのは、おそらく小学校時代から少しずつ教えていたフィールドワークの賜物だろう。クラスメイトによっては、顔に草がかかるだけで飛び上がる奴もいるんだから大したものだ。

 

「あのさ勤、これって……どう?」

 そう言って響香が見せてきたのは、手のひらサイズの赤いキノコだった。さて、どうだろうか。俺も見たことがない。というかこの世界のキノコはよく見分けがつかない。似てるものが多すぎるのだ。

「うーん。このキノコは多分見たことないな。ちょうどいいや、調べてみるよ。ちょっと貸して。」

 左手でキノコを受け取り、右手を添えるようにかざす。少しだけマジカを放出すると、青白い光がキノコを包み5秒ほど発光した後、元の色に戻った。うん、成功だ。

「え、今何したの?」

 きょとんとした顔で響香が聞いてくる。そういえば俺が魔法を使うのを見るのは初めてか。

「えっとね、瀬奈の個性に近いんだけど、植物とかキノコの薬効を引き出すためのテクニック……みたいなもんかな。あぁ、安心して。薬効の組み合わせさえ覚えちゃえば、この場でこれをやらなくても作業台で薬は作れるから。」

 これがこの世界で錬金術をしようと思った際に発生した“問題”である。この世界の植物や動物はスカイリムのものとは異なり、魔力の影響を受けていないためなのか薬効が発現していない。発覚した当初はかなり面食らったが、これを解決したのは瀬奈の偶然の行動だった。瀬奈が素材の近くで一定時間マジカを放出した際、素材の性質が変わり薬効が現れたのだ。

 この発見により、微量のマジカでも良いので魔力の下に晒す事で錬金素材として使える事が明らかになった。尤も、全ての素材に薬効が発現するとも限らないのだが、これはスカイリムの世界でも同様なのでさして問題にならないだろう。

 毎回調合する際にマジカを微量とは言え消費するのは地味に手間だが、森や公園が宝の山になる方がありがたいと言える。薬を調合するまでの何処かで必ず必要な工程である事と、一定時間素材に魔力を当て続けなければならないため戦闘中に素材を薬として応急使用する事はできないが、入試の実技試験など事前に用意できる時間があるシチュエーションであれば、普通に使えるだろう。

「その、テクニック?ウチも使えるようになるかな?」

「どうだろうなぁ……。人によって素質はまばらだから。ただこれに関しては──」

 瀬奈の方が詳しいし、と言おうとしてやめた。瀬奈まで個性を引き継げるなんて勘違いをされると、話がややこしくなる。

「うん、なんとも言えないかな。錬金術とは全く別の問題だから、受験までの間に時間が有れば試しに教えてみようか。」

「サンキュ。楽しみにしてる。……ところでそのキノコ、どんな効果があるの?」

 あぁ、そうだね。話が脱線するところだった。錬金術において素材の薬効を確認する最も手軽な手段。それは……。

「その点について説明するね。さっき駅前で話した通り、未知の素材の場合はまず薬効を確認しないといけない。わからないままでも実験するっていう手はあるにはあるんだけど、最初は素材がもったいないからお勧めはしないかな。そこで……。」

 話を一時中断し、手に持ったキノコの傘を少しだけ捥ぐ。それをそのまま口の中に放り込んだ。……うん、不味い。

「こうやって食べてみる。薬効さえあれば比較的すぐに効果が現れるはずだから、それを確認するんだ。慣れてくると、複数の薬効がある素材でも、それぞれわかるようになると思うよ。……あれ、響香?聞いてる?」

 響香が口を半開きにしたまま固まっている。

「あぁ……もし毒キノコだったらどうするんだよ、って思った?その点については安心して。さっきのテクニックを使えば元々あった成分とかは無くなるから。まぁ、代わりに出てきた薬効が“麻痺毒”だったりするんだけどね。あ、このキノコは筋力増強に効果があるよ。」

「ちょっと待って、勤。って事はさ、もしてかして虫とか……。」

「素材は変わってもやり方は同じだね。まぁさっき説明した通り、薬効を一通り体感するまでは響香にやってもらってよくもわからないだろうから、今日は俺が調べてくよ。だから、素材集めの方はよろしくね?」

「あ、うん。今日は勤が調べるのはやってくれるんだ。……わかった。」

 随分と安心した表情で探索を再開した響香を見て、俺はこう理解した。

 なるほど、さっきのキノコを食べた時に、うわ不味っ!て顔をしたのは良くなかったな。実際は無味なものも多いし、仮に不味くても飲み下し方を工夫すれば大分軽減できるから。その辺りを解説……というかフォローしても良かったかもしれない。

 

 ……今思えば、ここで“そうじゃない”という事に気づくべきだったのかもしれない。




【今日の魔法】

・死霊術
死者の蘇生や人間の魂の利用を目的とした魔術形態。作中説明の通り、マニマルコにより分類・制定化され、タムリエル全土に伝わったという。スカイリム世界では召喚魔法の一つとして位置付けられているため、似たようなものと認識したくなるが全くの別物。
死体を操るという特徴から、法規制はされていないものの邪法であるとして忌み嫌う者が多い。セラーナを連れて冒険に出かけるとこれを多用するため、山賊と戦うといつの間にかゾンビになった山賊が味方に付いている。そして気づいたら灰になっている。
ちなみに、死霊術で蘇らせたゾンビはしゃべる事がある。噂によると、ゾンビ状態の死体を殺害?すると、ゾンビから御礼を言われるのだとか……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。