ドヴァーキンのヒーローアカデミア   作:Ghetto

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さて今回で錬金術レクチャーも、おしまいです。
錬金術も学んで、シャウトもできて。入試までもう少し。

後半部分、そんなあからさまな描写でもありませんが。
虫が苦手な方はご注意下さい。


10話:ドヴァーキン、錬金術をレクチャーし、殴られる。

 かれこれ1時間ほど周囲の探索と素材収集をしただろうか。休憩がてらベンチに腰掛け、三人でお互いが集めた素材を確認する事にした。

「結構集まったね、じゃあまずは響香のやつから薬効を調べるついでに見て行こうか。」

 響香の持っていた袋を受けとり、ブルーシートの上に取り出してみる。植物と苔類をメインに集めたようだ。種類がばらけている点と、山中にしかない植物がいくつか入っていたので、これは高得点として良いだろう。その場で薬効を判定できないなりに、工夫はしていたようだ。

「なるほど、結構たくさんとれたね。どれが当たりか分からないから、一つの種類をひたすら採るんじゃなくて、色んな種類の素材を少しずつ採る。いい考えだと思うよ。」

「よし!」

 響香が小さくガッツポーズをしていた。思うに、俺が錬金術を始めた頃より彼女はずっと優秀である。最初は薬効も希少価値も分からず、とりあえず加工しては失敗ばかりしていたものだ。もしくは腹が減って食べたか……。

「瀬奈の方は──うん、良いんじゃ無いかな。」

「お兄様、私も響香さんみたいに解説して欲しいものですわ。」

 いや、お前経験者じゃん。と思ったが言わないでおこう。

「わかった。……瀬奈の方も量は問題ないんじゃ無いかな。気になるのは、薬効にかなり偏り──特に体力増強に効果があるものが多いけど、これは?」

「あら、いけませんでした?ある程度種類を絞った方が良いかと思いましたの。響香さんが後で楽になるかと思いましたし、試しに飲むのであれば効果が分かりやすくて負担が少ないものがいいかと。」

 あぁなるほど、そこまで考えていたとは。こういうところを見ると察しも良くて非常に優秀だと思う。死霊術の件とか、何故かたまに抜ける所があるけど。 

「いや、良いと思う。同じ薬効のものを凝縮すれば効果も高くなるからね。多分飲んだ時凄くわかりやすいと思うよ。」

「さすが瀬奈!やっぱり持つべきは友達だね!」

 響香からも称賛されて、瀬奈も嬉しそうだ。錬金術に限った事ではないが、誰かと一緒に学ぶというのは良い相乗効果を生むようである。次からはもう一人位弟子を増やそうかな。

「じゃあ、少しポイントを変えようか。ここだと見晴らしも悪いし、もう少し上にあがってみよう。」

「わかったけど……。見晴らし?」

「さすがに日が当たらなくてジメジメしたところでお弁当、ってのもアレでしょ。せっかくこんな遠くまで来たんだし、多少は景色があった方がいいんじゃないかな。」

 確かに、と二人が頷く。素材集めとは言え、せっかくの休日を使った活動だ。環境の良い所で、楽しんで食事をするのも大事な事である。

 これは個人的な見解だが、俺がドヴァーキンとしてスカイリムの世界でそれなりに活躍できたのは“旅をしながらの活動だった”からだと考えている。確かに旅は危険と隣り合わせで、野盗の襲撃やドラゴンとの遭遇戦も少なくなかった事は間違いない。それでも仲間と共に様々な場所を旅した事が、必要以上に精神を磨耗せずに済んだ要因だと思うのだ。尤も、これは自身の嗜好に起因している部分が大きいかも知れないが。

 

 

 ==========

 

 

「……ねぇ、何か聞こえない?」

 休憩ポイントまで歩いている途中、急に響香が耳のプラグを空中に向けて尋ねてきた。さすが響香、個性もさることながら耳が良い。勘の良さもあるかもしれない。

 注意して周りを見渡してみると、風下の方向に動物の気配がする。鹿か、それとももっと大きな動物か。この辺りでは猪は出ない筈だ。もしくは──考えを巡らせていた矢先、茂みが急に揺れたかと思うと、広場に黒っぽい毛むくじゃらの物体が飛び出してきた。あぁ、これは……。

「熊だね。響香、落ち着いて。急に動くと向こうもびっくりするから。瀬奈、いつでもアイススパイクが出せるようにしておいて。」

 通常は人間の匂いを感知すると、この世界の熊はそれを避けると聞いたが。風向きが悪かったのだろうか。

 熊は警戒こそしているものの、こちらに飛び掛かってくるような様子もない。さて、何もせずいなくなってくれればいいのだが。

「ちょっ……。なにこれ、この山クマ出るの?勤、やばいってこれ!」

 響香は動物園以外で熊を見るのは、おそらく初めてだろう。そして凡そ20m位の至近距離。これは“落ち着け、取り乱すな”と言う方が難しいか。

「そ、そうだ!ええっと……死んだふり!死んだふりすれば、クマっていなくなるんじゃなかったっけ?」

 それって迷信では無かったかな。少なくともスカイリムの世界の熊であれば、近付かれた挙句クマパンチが飛んできてお陀仏である。試す気にはなれない。

「それはリスクが高いと思うよ。それよりも落ち着こう。脅かさなければ、向こうから去ってくれるかもしれない。」

「そうは言っても……ひぃっ!こっちきた……!」

 響香の抗議を打ち消すかの様に、熊が唸った。それほど大きな声ではないが、威圧感はある。その姿と声に気圧されたのか、響香がプラグを熊の方に向けて構えていた。とがった物を向けては駄目だ──とは思ったが時すでに遅し。こちらの敵対心を感じ取ったのか、唸り声をあげたまま熊が少しずつこちらに近づいてきた。そのまま去ってもらうのを期待するのは無理そうだ。

「響香、俺の後ろに。瀬奈、そのまま動くな。」

 短く最低限の指示を出し、呼吸を整える。

 距離充分。周りに他の人はいない。よし。

「Kaan……Drem。」

 あまり声を張らず、熊に呼び掛けるようにシャウトを繰り出す。熊はシャウトを聞くと動きと唸り声を止めてその場で暫く停止した後、ごろんと横になった。成功だ。

「は?え?なにそれ……。シャウトってこんな事もできんの?」

「詳しい話は後でするよ、数分で効果が解けるから。響香、瀬奈。今日はここまでにして一旦降りよう。」

 シャウトが聞いている間なら背中を見せても問題は無いだろう。問題があるとすれば臭いを辿って追いかけられる事だが、その場合は仕方ない。揺るぎなき力等の攻撃的なシャウトで追い払う事も視野に入れる必要がある。いずれにせよ……今はこの熊となるべく距離を取る事が先決だ。

 まだ興奮状態である響香の手を引きながら、俺たち三人は下山を開始した。

 

 

 ==========

 

 

 その後、熊はそれから現れる事無く、無事に下山することが出来た。予想よりも素材の量が少なくなってしまったが、まだ受験には時間がある。またここに来ればいいだけだ。残念な事と言えば、お昼ごはんは駅のベンチで食べる羽目になってしまった点だろうか。風情も何もあったもんじゃない!

 帰りの電車では二人は疲れが出たのか、あまりしゃべる事もなく寝てしまっていた。二人で互いにもたれかかって寝ている様子は非常に微笑ましいものだったので、こっそり写真を撮っておいた。しかしながらそれを教えたら怒られそうな気がしたので、二人が起きてからも写真の事は特に伝えはしなかった。少し時間が経ったら思い出の写真として、送ってやろうと思う。

 

 結局、熊と遭遇するというアクシデントはあったものの、最低限の素材が集まった事と比較的早い時間に帰って来られたので、薬の調合にかけられる時間にはかなり余裕があり、その結果帰宅後のレクチャーは余裕を持って進めることが出来たのだ。

 調合に際して響香に教えた事は2つ。基本は目的の成分を凝縮して濃度を上げていく事と、試行した組み合わせをひたすらメモし、最適な答えを見つけていく。これだけだ。文字にすると簡単だが、組み合わせを考えるのが手間で、そして奥が深い。全く予想もしなかった薬効が発現する場合があり、そこから組み合わせのパターンがさらに増えていくのだ。そして使用する素材の種類や数等の要素が複雑に絡み合い、ノートが文字で埋め尽くされていく。

 

 響香は非常に興味を持って話を聞いてくれて、抽出作業も積極的に手伝ってくれていた。しかし作業後半でアクシデントが発生する。瀬奈が集めた素材の中に、山間部に生息する蛾の羽が入っていたのだ。

「あのさ。この羽ってさぁ、素材なんだよね……?」

「うん。調べた限り体力増強の効果が含まれてるから、次のポーションはこれを使おう。」

「うっ……わかった。これも合格のため……。」

 あまり顔色が宜しくないようだ。虫の羽とは言え、生物の体の一部。それを砕くとなると、この世界の人間……それも15歳の少女には厳しいかもしれない。

「最初は抵抗あるよね。あんまり気にしなくていいよ。なんなら少し外に出て貰っても……。」

「いや、大丈夫。ありがと。でも最後までやる。」

 響香はそう言って蛾の羽を持ち、すりこ木で細かく砕いていく。白みと光沢のある、薄い青色の粉が出来上がった。

「準備はできたみたいだね。それじゃあ今砕いた羽と35番の赤カビ、18番の青い木の実を組わせてみよう。」

 指定された材料をフラスコに入れ、加熱していく。

「これで10本目。そろそろ使い物になるポーションができて欲しいものだけど……。」

 ここまでの組み合わせでは多少の薬効が発現するポーションを作ることが出来ていたが、戦闘で使うには些か心許ないものばかりだった。薬効の発現時間や強さが芳しくないものばかりなのだ。

「でもさぁ。成功したとして、もう同じ素材がないよ?」

「大丈夫、受験までに数を揃えられればいいから。また素材集めに行くつもりだし。」

「そっか。そん時は言ってよ。付いていくから。」

 ありがたい申し出である。あんな思いをしたのだ、もう行きたくないと言われるかと思っていた。

「わかった。……っと、そろそろいいかな。そっちのフラスコ頂戴。」

 響香に凝縮器側のフラスコを取ってもらい、右手でそれを受けとる。少しだけ魔力を右手に込めた。

「……すごい、色が!」

 響香が驚きの声を上げる。

 今まで作った薬とは異なり、紫と緑色のグラデーションを持つ液体に変化した。複数効果が発現した証拠だ。

「成功だ。元々想定していた薬効以外に何か別の効果が混じると、こんな感じでグラデーションがかった見た目になるんだよ。」

「それでお兄様、その薬の効果の程は?」

 瀬奈が机の向こうから聞いてくる。未知の薬の薬効を調べる。最も手軽かつ確実な方法は──

「じゃあ、錬金術レクチャー最後のステップだ。響香、これ飲んでみて。」

 刹那、響香の顔から表情と血の気が消えた。

 

「あの……本当にこれ、飲むの?」

 

 

 ==========

 

 

 そして話は振り出しに戻る。

 

 道具の買い出しから素材調合まで、ここ数日間の出来事を一通り思い出してみたが、なるほど。響香としては虫素材が使われている事に抵抗があったらしい。……とは言え魔力の元に晒して別の物質に変性しているのだ。薬になってしまえば問題無いと思うのだが。見た目は……まぁ、うん。

 しかしこのままでは埒があかない。何より錬金術を学ぶ上で素材によって薬が飲めなくなるのは、非常によろしくない。

「仕方ない。響香、気が進まないけど今日の熊みたいに言うこと聞いてもらうね。kaan──」

「あっ!ひどい!シャウト使ってウチのむぐっ?!」

 うん、惜しいね。カイネの安らぎは動物“にしか”効果がない。昼間自分にはかからなかったろうに。ダメ元で考えついた、特に意味のないシャウトを発声させて動揺した所を狙い、口に薬をねじ込む作戦だったが、あっさり成功した。

「瀬奈、拘束解いていいよ。お疲れ様。」

 さて、効果の程は……。

 

「だーまーしーたーなー!くたばれぇぇぇぇ!」

 見えない縄に手を取られたかと思ったら、鳩尾に強力な一撃。不意打ちと言うこともあり、1メートル程引きずられてそのまま膝をつく結果となった。

 とても痛い。

 

 

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 ○月△日 試験結果

 

 ①オオミズアオの羽

 ②赤カビの胞子

 ③イヌツゲの実

 

 発現効果……

 体力増強 中程度(主観)

 筋力増強 かなり強力。但し身体への負担も高い。

 透明化 5秒程

 

 死ぬほどマズい。あと喉に絡んできもちわるい。

 

 薬効は不意打ち、正面戦闘時どちらにおいても有効と考える。

 筋力増強の効果が強力である分、コントロールを誤ると怪我をすると思われる。また、透明化は効果のかかり始めは完全不可視とはならず、注意が必要。但しどう言う訳か身につけている服ごと透明になる。すごい。

 

 仕返しにパンチしたらモロに入ったみたい。ウチを騙した罰だ。ざまーみろ。ばーかばーか。

 

【耳郎響香の錬金メモより抜粋】




???「今日の原稿を持っていけ。後書きの本当の素晴らしさは闇雲なネタバレではなく、その解説にあるということをダニカは理解したくなるはずだ。」

⇒ 取る エルダーグリームの原稿



【今日のシャウト】

・カイネの安らぎ
①Kaan(カイネ)②Drem(平和)③Ov(信頼)で構成されるシャウト。
声は野生の獣をなだめ、戦闘や逃走の意欲を失わせる。
動物の忠誠と効果が似ているが、あちらは戦闘時に味方になってくれるのに対して、こちらは戦闘意欲を失わせるだけの効果となる。但しこちらのシャウトの方が、効果時間が長い。
スカイリムの世界では、特に戦力が整っていない序盤に重宝されるシャウトである。紡ぐ言葉が増えると、効果時間と有効距離が伸びていく。
作中の通り、人間には効果が無い。
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