大っ嫌いな戦闘シーン!楽しいけどやっぱり辛い!
ところで響香ちゃんは原作以上に成長しているのでしょうが……。習得した技能は癖の強いものばかりですので、活用方法が試されますね。
……と、書いておいてなんですがこの小説は基本はどばきんの1人称で進んでまいりますので、本編ではあまり触れません。もしかしたらサイドストーリーで……。
錬金術のレクチャーが終わった後、俺が次にやった事は響香がマジカを使うことができるようにする特訓だった。当初は“ほんのおまけ”ぐらいの立ち位置だったこの特訓だが、錬金術の“手法と概念”だけ習得したとしても、薬効を自分の力で確認し、それを発現させる事ができなければ入試への持ち込みは認められないかもしれないと考え直し、本格的にやろうという事になったのだ。そしてこの特訓はシャウトの時とはまた違った困難さがあった。魔力の概念がない世界の人間に、マジカの使い方を教えるなんて前例がないのだ。完全な手探り状態になる事を響香に伝えると、それでも頑張りたいと。弟子の熱意や良し。ここからは先生の腕の見せ所である。
まず特訓数日前から事前に用意しておいた“マジカ増強薬”を継続して服薬してもらう。薬効は長くても10分程度で切れる代物だが、これはまず体にマジカの存在を覚えさせるための処置だ。このポーションは例によってとても不味く、響香は最初は半泣きになりながらちびちび飲んでいたが、特訓初日にはなんとか飲み下せるようになっていた。気合いってすごい。
次にマジカ増強薬を服薬した状態で、魔力を放出する練習をひたすら行う。苦戦はするだろうなと予想はできていたが、シャウトの時とは異なる厄介な問題が発生した。シャウトの場合はコツや発音を音と言葉で聞くことができていたが、魔力の放出に関しては根本的な概念がややこしくて言語化しにくく、また人によって腑に落ちるコツが全く異なるのだ。
1+1はなんで2なの?という疑問を子供から投げられた時を想像してほしい。これに対して“そういうものだからだよ。”という解答ができない状態で説明を強いられる感じだ。まさか“当たり前”を説明するのがこれほど難しいことだとは思わなかった。
さてどうしたものかと頭を抱えていた時、解決の助け舟を出してくれたのはまたしても瀬奈だった。
「お兄様。魔力の放出に拘るより、体が本能的に反応するような魔法を覚えてしまった方が早いのではありませんこと?例えば、そうですわね……私が氷の粒を生成して響香さんに向けて撃ちますので、それを個性と体を使わず防いで貰う、とか。」
なるほど。スカイリムの世界の人間が、(もちろん種族や個人の適性にもよるが)魔力の放出が自然にできるという事実を逆手に取るのか。行き詰っていた俺と響香は諸手を挙げて賛成。斯くして地獄?の氷結ノックが開始された……と言ってもなんの事はない。瀬奈の発言通り、当たるとちょっと痛い氷が飛んでくるので、これに手をかざして迎撃ないし防御を試みるだけである。もちろん服薬もセットで。
結果これが大成功。開始してから数日経ったある日の事、瀬奈の手から放たれた雹のような氷の粒が響香に向かって飛んで行った時、手に命中する寸前で粉々にはじけ飛んだのだ。両手でなければ発動しないという制約付きだが、響香は回復魔法に分類される防御魔法──魔力の盾が使えるようになった。魔術師としての偉大な第一歩である。
一度魔法が発動してしまえば後は坂を転がっていくボールのようなもので、翌日には安定してマジカを使うことができるようになった。連続での使用可能時間は2〜3秒と戦闘で使うには些か心許ないが、この世界で錬金術を行うくらいなら問題は無いだろう。緊急時はマジカ回復のポーションを飲みながら調合すれば良いのだ。
斯くして受験を前に、響香は戦いの激昂のシャウトと魔力の盾、そして錬金術という三つの武器を手に入れることができた。自分を強化できないシャウトと、両手で数秒しか発動しない防御専用魔法、まだまだ未知の領域が多い錬金術と、癖が強いものばかりな気がするが、そこは直前までの調整と持ち前の個性できっと乗り切れる筈だ。
もちろん実技対策以外の時間は筆記試験の勉強もしてきた。この点に関する功績は瀬奈にあるだろう。理数系は何とかなるのだが、文系は俺一人では到底やり切れなかったと思う。
学校、特訓、勉強、調合。自分の部屋以外でのプライベートは最早なく、ひたすらこの4サイクルをこなす日々。
月日は矢のように流れていき、いよいよ入試当日となった。
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当日の朝。いつもより少し早めに起き、少し早めに朝食を食べた。
出かける前、瀬奈と一緒に荷物をもう一度チェックする。
「筆記用具、ノート、ポーション、ベルトポーチ。うん、全部あるね。」
「私も問題ありませんわ。」
それじゃあ、と出かけようとしたら母さんに二人とも呼び止められた。
「勤も瀬奈も、ここまでよく頑張ったのはお母さん知ってるから。悔い、残らないようにね。がんばれ。」
そう言うと両手で俺達を軽く抱き寄せてくれた。腕の中で瀬奈と目が合う。
“いま、とっても、しあわせ。”声に出さず口だけ動かして瀬奈が笑った。
「ありがとう、母さん。じゃあ、行ってくるから。」
家のドアを開けた。
約束通り、響香が家の前で待ってくれている。
思えばこの11年間、どこに行くにも何をするにも三人で一緒だった。
それが今年最後にならないように。
これからもそれを続けられるように。
三人でまた笑い合いながら登校できるように。
いざ、雄英へ。
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無事に試験会場に到着し、筆記試験と面接を終えた俺達は次に講堂のような所へと通された。ここで実技試験の説明が行われるという。講堂には沢山の受験生がひしめき合っており、この高校の倍率と人気の高さを改めて実感した。これでも一部だというのだから驚きだ。
しばらくして教員が講壇に立ち試験の説明を開始したのだが、これがとても喧しかった。というかうるさかった。筆記試験のアナウンスで使われていた電子音声が懐かしい。確かこのヒーローはプレゼントマイク、と言ったか。多くの受験生は今この瞬間人生の岐路に立たされていてガチガチになっているのだ、ノリが悪いと言われても困るだろうに。
ともあれプレゼントマイクの説明を聞くと、試験内容はこういう事になる。
市街地を模した演習場に配置された“敵”──ヴィランをこれまた模したロボットを倒していく。そのロボットには強さに応じて得点が決まっており、1点から3点までの3種類。これらの他にとても強いとされるロボットが各会場に1体だけ配置されており、これは倒しても0点だと言う。まるでホワイトランの傍でキャンプする巨人である。こいつには触れるな、という事か。ちなみに他者を妨害するなどのアンチヒーローな行為はしてはいけない、との事。
そうとなれば……よし、方針は決まった。このルールなら序盤は優位に戦えるはずだ。
もちろん試験という事で多少の緊張感はあれど、少しだけ実技試験が楽しみだったりする。筆記試験や面接で蓄積された、フラストレーションを吹き飛ばすくらいの事は思ってもバチは当たらないだろう。唯一心配があるとすれば……他の受験生が軒並み化け物でないかどうかだ。自分でもよく分かっていることだが、俺の戦い方は火力でゴリ押しにするようなスタイルではない。かと言ってスピードに特化している訳でもない。
「要するに他の受験生より早く敵を見つけて、早く倒せばいいってことか。」
響香がとても小さな声で誰に言う訳でもなく呟いた。
“そういう事。まずはスタートダッシュを決めてから、索敵をした方がいい。”
ペンを走らせ、響香の肘を突く。瀬奈も響香も別会場なのでライバルになる心配はない。これくらいのアドバイスは別にいいだろう。
“オッケ。”今度は声を出さずにこちらを向いて口の動きだけでそう伝えてきた。サムズアップつきで。彼女もなんだかんだわくわくしているのだろうか。
「……それでは諸君、よい受難を!」
プレゼントマイクの説明が終了したタイミングで受験生たちが次々と席を立ち、各自の試験会場に流れていく。俺達もそれに続いて席を立って会場へと移動を始めた。……いよいよ実技試験だ。
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会場前の入り口──ゲートのような所がスタート地点になっているようで、多くの受験生が既にスタンバイをしていた。周りを見渡してみるがそれほど特徴的な人間はいないようだ。尤も実際に戦闘が始まってからでないと真の実力は分からないが。少なくとも“化け物じみているような奴”はいない気がする。多分。きっと。
ふと話し声がしたので後ろを振り返ると、受験生が2名言い合いをしているようだ。それを見ていた何人かが笑っていたが、どうでもいい事だ。視線を前へ戻す。
一度思考をシャットアウト。もう周りを見なくていい。
そう、ドラゴンを殺すときと同じだ。やるべき事を最適のタイミングで。
「それではスタート!」
アナウンスの声が聞こえたと同時に短く息を吸う。先制攻撃からの陣地確保は俺のお家芸だ。
「Wuld Nah!」
開けた区画を右斜め前へ一気に直進。“旋風の疾走”と呼ばれるそれは伊達ではなく、後ろにいる集団からは一歩リードができたようだ。
しかし瞬発力があっても最後まで発声をしていない。距離はそれほど大きく離れていない筈だ。おそらくすぐに追いつかれるだろう。だがそれは想定内。
走りながらポーチを開けて一つ目のポーションを口に含む。
交差点の角で停止。
今度は大きく息を吸って──そっと吐いた。
「Laas……Yah……Nir……。」
視界が一時的にグレーアウトし、標的の所在を赤く映し出していく。
右に4体。これは1ポイントと2ポイント。左からは3ポイントが2体、すぐそこの建物の裏だ。前方は──遠いな。あれは気にしなくていい。
左の敵を倒して右に行くか……?敵の強さにもよるが、これはおそらく間に合わない。ならば。
「みんな!右から4体敵がこの通りに向かって来る、これを抑えてくれ!」
シャウトを発声するわけではなくとも、俺の声はそれなりに通る。先頭集団の一部がそれに反応し、手前で右の路地に抜けていくのが見えた。赤い光点が二手に分かれる。一人が群を抜いて速いな。そういう個性か。
そのまま交差点を左へ。建造物と家屋の間をすり抜けると、左右にヴィランを模したロボットがこちらを見て佇んでいた。こうしてみると結構でかいな。だが……!
「遅い!Yol……Toor Shul!」
発声と共に口から炎が放たれ、2体の標的を包み込む。
……反撃は来ない。まずは6ポイント。少し喉が痛むが、問題なし。
索敵。
まだオーラ・ウィスパーの効果は残っている。
見つけた。次の分岐路を左か。
後ろはまだ追いついていない。
もう少しリードさせてもらおう。
???「当ててやろうか 。誰かに今日の魔法の原稿を盗まれたな?」
【今日のシャウト】
・オーラ・ウイスパー
①Laas(命)②Yah(捜索)③Nir(狩り)で構成されるシャウト。
シャウトではなくささやく声が、生けるもの全ての姿を明らかにする。
壁や障害物を通り越して周囲の敵・味方の位置を瞬時に把握できる、叫ばないシャウト。生けるもの全て……と説明にはあるが、アンデッドやドワーフのオートマトンも全て探知可能。
幻惑魔法の“無音の唱え”とセットで使用すると、ダンジョンの攻略が恐ろしく簡単になる。索敵以外にも、戦闘を避けるという使い道があるので隠密系ドヴァーキンにも高評価。
欠点があるとすれば囁き声とは言え音が出るのと、対象は全て赤く見えるので敵味方の区別はつかないことくらいか。
・旋風の疾走
①Wuld(旋風)②Nah(暴風)③Kest(大嵐)で構成されるシャウト。
スゥームは前進し、嵐のような速度で前へと運ぶ。
ものすごい速さで前進ができるシャウト。重量オーバーもお構いなしにドヴァーキンはカッ飛んでいく。足場が悪くてもコケない。
単純にスタートダッシュを決めたり、遠隔攻撃を仕掛けてくる敵との距離を詰めたり、中距離戦の中で相手の後ろを取ったりと、活用次第で色々な使い方ができる。但し術者の高度を維持したまま前進するので、高低差のある場所で考えなしに使うと、落下して足を痛める事になるので注意。