最初期のプロットではクラスメイトにウルフリック西尾さんを呼ぶ予定でしたが、どばきんとキャラが被ってしまうのと魅力が分散してしまうので没になりました。許せ上級王。
【お知らせ】
後半部分を少し編集しました。
カニの説明を追記しましたが、本筋に直接影響はありません。
実技試験の後、響香と瀬奈に会ってから一番最初にしたことは土下座だった。あの茶髪の子の土下座が実に綺麗だったからトレースした!……訳ではない。三人で一緒に雄英に行こう!と誓い合ったにもかかわらず、余裕がないのに他人を助け、根拠がないのに共同撃破を選択し、あげく巨人に立ち向かったためである。しかもその巨人をいの一番に倒そうと決断し、行動不能だった受験生を救う事を選択したのはチャレンジャー君で、俺は彼に追従してトスをあげただけに過ぎない。
「スマン!やらかした!実技ダメかも!」
会って早々急に土下座を繰り出した俺を見て、瀬奈と響香は暫く俺の事を見た後、二人で顔を見合わせてから笑って手を差し伸べてくれた。
「どうせそんな所だろうと思ったよ。ウチもさ、最後の3分で叫んじゃったんだよねー。戦いの激昂のシャウト。そしたら皆凄いスピードで逃げちゃってさ。ウチはデカいのを皆で抑えるために使ったのに、戦おうしたのは数人しか残らなくって。しかも結局時間切れ!」
「ほら響香さん、私の言った通りでしょう?響香さんが気に病むことはありませんと。お兄様は響香さんの上を行く“しょーもなく単純でお人好しな”人ですから。」
それにさ、と響香が続ける。
「実戦じゃなくて実技試験だったとしても、今日ウチは自分の力──個性を使って誰かを助ける事が出来たんだ。これで落ちても悔いはないから。だからさ──。」
「もしダメだったらダメで、皆で他の高校に行きましょう?って響香さんとお話してましたの。人助けを評価されない学校なんて、こっちから願い下げですわ。」
彼女ら二人に後光が見える。まぶしい。俺には勿体ない、最高の親友と妹だ。結果がどうであれ、この三人でここまでチャレンジできたという事実は俺の一生の宝物になるだろう。
「そっか。……うん、それもそうだな。別に雄英じゃなくてもヒーローにはなれるし。それじゃあ諸君。この後の事についてなんだけど──。」
気恥ずかしさから話題を転換させるや否や、響香と瀬奈の顔に邪悪な笑みが浮かび始めた。
「ウチら、駅前にあったビルの最上階。あそこのレストラン行きたいなぁって話してたんだけど?」
「お兄様、せっかくですから普段行かない場所が良いですわ。」
前言撤回。こいつら、少しは遠慮という物を知ったほうが良いと思う。
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「……お兄様、いくら受験が終わったからってダラダラしすぎではありませんか?」
掃除機をかけながら瀬奈が呆れ顔で話しかけてくる。
「良いんだよ、たまにはこういうのも。どうせ高校が始まったらこんな事できなくなるんだし。」
雄英の入試から数日後、俺達は滑り止めを含む全ての志望校での受験を終えて休みに入っていた。肝心の雄英の合否通知は未だに来ず、心の靄が完全には晴れないままというのが癪だが、今日は学校も無いのだからダラダラする権利くらいはある。
「そういう事を言っているのではなくてですね?」
掃除機で床に寝そべっている俺を突っついてきた。痛い。
「掃除の邪魔なので、どこかへ行ってください、と言っているのですわ。」
「昨日してたじゃない、掃除。」
我が家の人間は比較的きれい好きではあると思うが、毎日掃除機をかけるような心情は俺には理解できない。ここはクリーンルームか。
「毎日掃除をしてはいけない、という道理はありませんわ。」
「それじゃあ俺が今日ここで寝そべってはいけない、という道理もないわな。」
「……ぶちころがしますわよ?」
瀬奈を挑発してからかっていると、母さんが玄関からドタドタと走ってやってきた。肩で息をしている。
「勤!瀬奈!……雄英から、手紙!ほら!」
母さんの手には雄英高校のロゴマークと“通知書”の文字。
ここで普通なら慌てて封筒をひったくる位はするのかもしれないが、実技試験がアレだったので正直期待していなかった俺は、ノロノロと立ち上がり二人分の通知書を受け取った。
「なぁ瀬奈。……どっちから見る?」
以前から瀬奈と取り決めていた事だ。結果は二人で一緒に見ようという事になっていた。
「そうですわね。……それでは私の方からで、如何でしょう。」
「オッケー。……じゃあ行くぞ?」
居間のテーブルの上に置かれた新聞と本をどかし、“親展 土羽瀬奈様”と書かれた封筒にハサミを入れる。
コロン、と手のひらサイズの機械が出てきた。映写機か、これ。
「あら、これオールマイトですわね。」
瀬奈が映し出された映像を見てつぶやいたと同時に、居間に爆音。
「 私 が 投 影 さ れ た ! ! 」
プレゼントマイクと言いオールマイトと言い、この高校の教師は適正音量というものを知ったほうが良い。声の魔法を使う俺が言うのだから、間違いない。
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結果的に二人とも合格だった。いや、勿論超嬉しいんだけど。ちょっと拍子抜けしてしまったと言うのも正直なところだ。
なんでもロボットを倒した事以外に他者を助け、サポートした事が高評価だったらしい。最初からそう言ってくれ。
瀬奈の方は単純にロボットを倒した数が評価されたようで、俺の方はレスキューポイントがちょっと高かった。ヴィランポイントは自己採点よりも少し低い。どこで足切りされているかはわからないが、随分と危ない橋を渡ったようだ。
そういえば、あのチャレンジャー君はどうだったのだろうか。彼の事については映像で特に触れられていなかった。まぁ、直談判したとは言え他の受験生──他人の情報だ。おいそれと共有したりはしないか。……受かっているといいが。
「それでは土羽少年、待っているぞ。ここが君のヒーローアカデミアだ。」
映像の中のオールマイトがそう話したのとほぼ同じタイミングで、スマートフォンに電話がかかってきた。
「……もしもし?響香?……え?あぁ、ちょっと落ち着いて。……なに?──うん、うん。……そうだよ、俺達二人も合格──。」
「 私 が 投 影 さ れ た ! ! 」
「瀬奈ーっ!そいつを早く止めてくれ!奴はオートループだ!……え?あぁごめんごめん、ちょっと映写機の音声がうるさくて。あぁ、うん。おめでとう、響香。また俺たち三人、一緒に登校だね。──え?この後?大丈夫だけど──うん、瀬奈も。わかった、とりあえずまた後で。……じゃあ。はいはいー。」
「お兄様!響香さんも合格でしたのね!」
隣でオールマイト、もとい映写機を氷漬けにして黙らせた瀬奈が満面の笑みでこちらを見ていた。いや、ボタン押して止めようよ。なんですぐ力技に出るのさ。
「あぁ。そうみたいだよ。……で、響香の家でおじさんとおばさんがお祝いしてくれるから家族皆で来い、だってさ。」
「まぁ、それは楽しみですわね!お母様とお父様にも伝えてきますわ!」
瀬奈が子気味良いテンポで階段を駆け上がっていく音を聞きながら、俺は次にやるべき事を考えていた。
というのも、入学までの短い期間に雄英高校のサポート会社にコスチュームのデザインと要求仕様書を、まとめて提出しなければならないのだ。
俺のスカイリムでの経験を活かすとなると、ネックになるポイントはいくつかある。武器類は刃を入れて貰えるのか、そもそも帯剣が許可されるのか、という武器に関する問題がどうしても発生するのだ。
これ以外にも材質や重量、付帯機能の要望をどこまで受け入れてもらえるのかも、貰った資料からでは判読できない。これは一度、サポート会社を訪問した方がいいかもしれないな。
……しかしまぁ、刃物を振り回しヴィランを切り伏せる戦闘スタイルというのは、ヒーローであるならまだしも一介の学生が持つコスチュームや武器としてはどうにも受け入れてもらえなさそうではある。……となると。
「やっぱり魔力の剣からは離れられない可能性が高いかぁ……。代案も考えておく必要があるなぁ。」
そう呟いた俺を、テーブルの下から顔を出した生物──“ノコギリガザミのまーちゃん”がリュックサックを揺らしながら、不思議なものを見るような目で見つめていた。
こいつは母さんが少し前に市場で“買ってきた”カニで、我が家のペット兼アシスタントとして暮らしている。背中のリュックサックは母さんが作ったもので、掃除道具からテレビのリモコンまで色々なものが入っている。更に背中の荷物を、カニが自分で整理整頓しているのだから驚きだ。さすがは母さんの“カニを使役する”個性である。
こいつを眺めていると、水族館でアルバイトさせればウケそうなのに勿体ないな、と常々思う。様々な玩具が入った鞄を持たせれば自分で勝手に手を変え品を変え、色々な芸を披露してくれる自動客寄せパンダならぬ、客寄せガニの完成だ。
「アタッチメント──バックパック──スイッチ──そうだ!」
ちょっと良い事を思いついた。元々正面切って戦うのは凄く得意という訳ではない。無理に近接戦闘力を強化しなくてもいいのではないか。
その後俺は瀬奈に呼ばれて家を出るまで、紙に鉛筆を走らせ続けていた。装備をあれやこれやと考えるのは、結構楽しいものである。
???「後書きのネタは底を尽きかけています。魔法、シャウト、寸劇……。どのカテゴリーも在庫不足です。」
???「じゃあ、今日のシャウトのコーナーは休刊にしたらいい。それが執政としてのお前の仕事だろう?どうしてこんな細々したことで、俺の手を煩わせるんだ?」
???「この小説の刊行当初よりこちら、後書きに要する時間は2倍に跳ね上がっています。小ネタを十分に賄うには、より多くの執筆時間が必要です。」
???「書き溜めはほぼ空の状態だ。衛兵に支払う給料もほとんどないが、この大変な時期に1人も減らせない。だから今日のネタはカニだ。」
【今日のカニ】
・ノコギリガザミのまーちゃん
ノコギリガザミという名は、甲の縁に鋸の歯のようなギザギザがついていることに由来する。スカイリム世界のマッドクラブと瓜二つ……というか英名がマッドクラブ(泥蟹)。
生きたまま市場で売られているのを勤の母である土羽為美が見つけ、その場で買ってペットにしたらしい。そして為美に訓練?という名の家事に関する手ほどきを受け、土羽家で荷物持ちや掃除をやらされている。
名前の由来はTES3【モロウィンド】に登場した、カニの行商人(merchant)から。
どうしても登場させたかった。ショールの血にかけて、後悔はしていない。(2回目)