ドヴァーキンのヒーローアカデミア   作:Ghetto

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この小説を書き始めてから、段々とドラゴン語が分かるようになってきました。
会話までにはまだまだ時間がかかりそうですが。


16話:ドヴァーキン、親睦を深める。

 興味深い催し物から一転、己が進退を賭ける地獄のガチレースとなった個性把握テストが始まった。

 まずは50m走か。これは比較的対応しやすい部類に入るだろう。

「土羽君、早速だが俺と勝負してくれ! 実技試験の時は遅れを取ったが、今回は全力で勝ちに行かせて貰うぞ!」

「朝の話だね、分かった」

 先の彼の話と実技試験での動きを見る限り、相当な敏捷性がある筈だ。となると……。

 

「飯田、3.04秒」

 速い。もちろん個性の力という事なのだろうが、体の動きがしっかりしており体の軸がブレていなかった。相当体幹を鍛えるトレーニングも行っているのだろう。

「うむ! まぁこんなものか。さぁ、次は土羽君、次は君の番だ! その個性を見せてくれ!」

「あぁ。こっちも全力で行かせて貰うよ」

 彼の様子を見る限り、スピードは彼の個性でありアイデンティティだ。この世界の人間、とりわけヒーローを志す人間は自分の個性に誇りを持っていると見て間違いないので、勝負を受けた以上はこちらもきちんと応えなければ失礼にあたるだろう。

 

「次、用意しろ」

 そうこうしているうちに俺の順番が回ってきた。

「相澤先生、予備動作はスタート前にやって良いですか?」

 旋風の疾走を第三の言葉まで紡ぐ場合、最初の言葉をどのタイミングで使うかにより大きくタイムはズレる。願わくば──

「あー、うん。好きにしていいよ」

 よし、言質取ったぞ。この勝負、恐らく貰った。

「もう良いな、早く始めろ」

 走者がそれぞれ前傾姿勢や、クラウチングスタートの姿勢に入った。

 少し腰を落として重心を調整。呼吸を整える。

 

「位置について、用意──」

「Wuld……」

 第一の言葉、旋風。呼吸を止める。

 

「スタート!」

「Nah Kest!」

 合図の音とほぼ同時に肺に残っていた空気を吐き出し、第三の言葉まで一気に紡ぐ。

 体が風を切った。

 

「土羽、1.08秒」

 辛うじて失速しなかったが、ゴールギリギリか。スカイリムにいた時は特に測定なんてしていなかったので、これはちょっとした発見だ。

 旋風の疾走は第三の言葉まで紡いだ場合、50m程前進できるらしい。

「何だよ今の! 土羽の奴、なんか叫んだらその姿勢のまま前にすっ飛んでったぞ!」

「すごーい! 土羽君、あんなスピードで動けるんだ! 声もなんか響いててカッコよかったね!」

 クラスメイトから驚きの声が上がる。

 

「くっ、またしても俺の負けか! 土羽君、完敗だ!」

 飯田君がカクカク動きながらお辞儀をして来た。彼にはスピード以外にも、ロボットみたいな動きをする個性でもあるのだろうか。

「いや、これは50m走だからたまたま勝てただけだ。これ以上の距離だと俺の個性じゃ失速するから、総合的なスピード勝負じゃあ飯田君には勝てないよ。それに飯田君の場合は自分の足でエネルギーを生み出しているから、個性の力と脚力がもっと合わさるように調整すればもっと記録を伸ばせると思う。対して俺はこれで“ほとんど固定”だから」

「むっ、そうなのか……。しかし個性の形はどうであれ、その瞬発力は素直に羨ましいよ。ならば次の機会があればまた50m走で勝負しよう。今度は勝たせてもらうぞ!」

 ストイックだなぁ。敢えて相手の土俵で戦うなんて、俺は絶対にしないし想像できない。それだけ自分の個性に自信と誇りを持っているのだろう。

 対して素質があったとは言え、俺にとってシャウトは後から偶然手に入れた力である。手段として活用こそするが、その力に誇りを持っているかと言われたら怪しい所だ。そういう意味では、飯田君が羨ましい。

「あぁ、いつでも受けて立つよ」

 そう俺が言うと、飯田君はシュッと右手を差し出して握手。

 おぉ、なんか良きライバルっぽい。……これが青春か、瀬奈が憧れていたのも頷ける。

 

 

 ==========

 

 

 50m走の次は、立ち幅跳びの測定に入った。おそらくこれも問題なく対応可能だ。距離を稼ぐとなると旋風の疾走を使う事になるが、こいつには地面に対して高度を維持したまま平行移動をする特性がある。

 ジャンプしながらシャウトを繰り出せば、失速するまではその高度を維持できる筈だ。

「あー、土羽。ちょっといいか」

 相澤先生から声が掛かった。

「はい、何ですか相澤先生」

「お前、立ち幅跳びでもさっきの個性、使うのか」

 もしかして使用禁止とか言われるのか。そうなると脚力を強化する手段は、ポーションも持ち合わせがない現状皆無なので、記録が大きく落ちてしまうのは避けられないだろう。

「そのつもりですが。何か問題でも」

「いや、別に良い。好きにやってくれ。次はお前の番だ、準備しろ」

 今の問答に何か意味があるとは思えなかったが、一応使用はオッケーらしい。ありがたく使わせて貰うとしよう。

 

 白線のラインに足を合わせ、深呼吸。

「Wuld……」

 さっきと同じように呼吸を止める。

 軽く屈伸。

 跳躍。

「Nah Kest!」

 僅かな高度を維持したまま身体が前進して行く。

 よし、接地してない。

 

「土羽、50.6m。……ちょっとこっち来い」

 測定後、再び相澤先生から声が掛かる。もしかして白線を超えていたのだろうか。計り直しか? 

「お前、今個性を使う直前と使った瞬間に、何か違和感は無かったか?」

「いえ、別に何も。いつも通りだったと思いますが」

 そう答えている間も、相澤先生は俺の方をじっと見ている。正直怖い。やらかした事とか、特に思い当たる節が無いので余計に怖い。

「そうか、分かった。なら戻っていいぞ。──次、爆豪」

 ……よく分からないな、この人。ともあれ、この2種目でそれなりに成績は残せた筈だ。最下位は無い、と信じたい。

 

「お兄様、先生に何か言われていたようでしたが?」

 測定が終わった後、クラスメイトがたむろしている所に戻る途中で瀬奈から声を掛けられた。

「あぁ、今シャウトを使った時、違和感が無かったかって聞かれてね。特にいつも通りだったとは思うんだけど。後は測定前に、個性を使うかどうかの確認をされたな」

 経緯を簡単に伝えると、瀬奈は少し考えるような素振りを見せてから話し始めた。

「お兄様は実技試験の時、色々なシャウトをお使いになったのでしょう? それに私達兄妹は両親と個性が異なっているという事実もありますし。先生方がどこまで調べているのか分かりませんが、私達の能力やルーツを不思議に思う事は自然だと思いますわ。私も個性の事でホームルーム前に、先生とお話しましたもの」

 朝いなかったのはそう言う事だったのか。

「なるほどな……。あれ、じゃあ通学路で別れたのはなんでさ。その話をしたのは学校で、だろ?」

「あぁ……。あれは、ちょっと気になるお店を見に行っただけですわ。私達が住んでる街よりも、此処は素敵なお店が沢山ありますから」

 確かに雄英高校があるこの街は、首都圏の中でもかなり栄えている所だ。巨大な百貨店から小さな雑貨屋まで、少し足を伸ばせば欲しいものは粗方手に入るだろう。

「そっか。……ところでそっちは個性把握テストの方は大丈夫? 二人とも基礎体力は問題ないとしても、個性を活かし切れないんじゃ無いかって思ってね」

 俺が瀬奈に尋ねると、後ろから聞き慣れた声が割り込んできた。

 

「勤。アンタってホントに他人の心配というか、フォローするの好きだね。心配されなくても、ウチらはウチらで何とか乗り切るから」

「あぁ、ごめん。別に響香と瀬奈の実力を低く見てる訳じゃ無いんだ。ただ──」

「分かってるよ。勤がそういう奴じゃなくて、本心からウチらの事を心配してるって事ぐらいさ。……情けない話だけど、最初は何かポーションでも融通してもらおうかなって思ったんだよね。でもさ、これからヒーローになるって言うのに、アンタの力に頼って除籍を免れてもなんの意味も無いよねって思ったんだ。だからこのテストは、ウチ一人の力で乗り切ってみせる。……だからさ、そんな心配すんなよ、先生!」

 響香はそう言ってニヤリと笑うと、瀬奈を連れて歩いて行ってしまった。

 やっぱり彼女は努力家だ。成長したなと思うと同時に、幼稚園の頃から変わっていないな、とも思った。

 

 

 ==========

 

 

 その後も個性把握テストは順調に進み、全八種類全ての測定が終了した。この一連のテストの中で、特に印象に残ったのは次の二つだ。

 まず一つ目に、緑谷君がボール投げをする時に相澤先生が個性を“消した”事。よく話は聞こえて来なかったが、

「あの入試は合理性に欠く。お前のようなヤツも入学できちまうからな」

 こんな感じの事を緑谷君に伝えていたと思う。

 周りにいたクラスメイトの話によると、相澤先生は抹消ヒーロー“イレイザーヘッド”として活躍している現役のヒーローで、見た者の個性を消すことが出来るという。どうやら実技試験の時にあった、緑谷君の個性を使うと身体が壊れるという特性を危惧していたようで、先生は彼にやり直しを指示。

 すると緑谷君は機転を利かせて一本の指だけに個性を発動させ、残りの種目もなんとかこなして見せたのだ。そういえばボール投げの後、爆豪君が緑谷君に無個性の癖にと言いながら突っかかって行ったが、緑谷君は以前無個性だったのだろうか。

 

 次に二つ目。皆の個性が凄まじい。なんかもう、シャウトなんて目じゃないくらい凄い。確かに50m走など、比較的好成績を収めることができた事も事実ではあるのだが、アレは飯田君に説明した通り“あの条件だったから”できた結果だ。こっちの世界でも俺は器用貧乏になりそうな気がする。魔法の練習は続けないとダメそうだな、これ。

 

「それじゃパパッと結果発表。点数は単純に各種目の評価を合計した数だ」

 相沢先生がそう言うと、ランキング表が皆の前にディスプレイされた。反射的に自分の名前を探したが……丁度真ん中よりも少し上くらいだった。瀬奈と響香はやや下位、そして緑谷君が最下位だったようだ。個性をコントロールしても、結果は覆らなかったという事か。

「ちなみに除籍はウソな。君らの個性を最大限に引き出すための合理的虚偽」

 後ろの方でちょっと考えれば嘘だと分かる事だ、という意見も出ていたが……普通に分からなかったぞ。担任が入学式をボイコットさせるような学校なら、本当にそういう事をやりかねないと思ってしまったのは自然な事である筈だ……多分。

「じゃ、各自解散。今日はもう入学式も終わってるし、そのまま帰って良いぞ」

 相澤先生はそう言うと、ディスプレイを切りそのまま校舎の方に歩いて行ってしまった。

 

「何だよ相澤先生、驚かせやがって。俺もう退学かと思ってヒヤヒヤしたぜ!」

 全然ヒヤヒヤしている風に見えないぞ、上鳴君。

「全くだね。俺もまんまと騙されたよ」

 そう俺が同調すると、足元から反論が上がる。

「土羽テメーあんな成績で何言ってんだよ?! オイラなんてブービーだぞ、ブービー!」

 いや、君の個性って見る限り運動向きじゃ無さそうだし、相性の問題だからそんなに気にしないでも。

「まぁその……うん。峰田君、なんかすまん」

「だぁぁぁ! オメーまた謝りやがったな! クソっ! ……まぁいいや、土羽。話は変わるけどよぉ、更衣室での話、覚えてるよな?」

 えぇもちろんよく覚えていますとも。さすがは峰田君、抜かりないね。そんなに楽しみだったのだろうか。

「あっ! そうだった! 土羽、この後どうすんだ?」

 上鳴君も個性把握テストが無事に終わり、さっきの話を思い出したらしい。

「あぁ、うん。分かってるよ。とりあえず瀬奈に声を掛けてみるから。校門前で落ち合おう」

 

 二人を先に更衣室に向かわせ、少し離れたところでクラスメイトと話している瀬奈の所に行って要件をかいつまんで伝えた。無事に個性把握テストも終わったし、自己紹介がてら俺達と駅前のファーストフード店にでも行かないか? と伝えると、

「もちろん行きますわ! 響香さんと三奈さんも一緒に如何ですか?」

「良いよ、ウチも行く」

「行く行くー! ……あ、私芦戸三奈! よろしくね、瀬奈のお兄さん!」

 大変テンションの高い、ピンク色の肌と黒目の女子──芦戸さんも一座に加わった。

「ところで、俺達っておっしゃいましたけど。お兄様、誰か他に誘ったのですか?」

「あぁ、峰田君と上鳴君」

 瀬奈は少し頭を捻ると、

「と、言われてもまだわかりませんわ。せめてクラス名簿と写真があれば……」

 との事。……入学式もガイダンスもホームルームも、全てすっ飛ばしての個性把握テストだ。名前と顔が一致しないのも当然か。

「まぁほら、“そのための親睦会”って事で」

「それもそうですわね」

「じゃあ、着替えたら校門の前で待ってるから。また後で」

 集合場所を伝えて三人と別れた。これだけ集まれば彼らも満足だろう。

 

 

 ==========

 

 

「へぇ! 耳郎って土羽兄妹と同じ中学校なのか!」

「そ。もっと言うと、幼稚園から一緒。家が近かったから」

「すごーい! 幼馴染で三人とも雄英に入っちゃうなんて!」

 ヒーロー科の親睦会だ。きっと自己紹介もほどほどに、個性に関する話題が中心になると思っていたが、まず話のネタに上がったのは俺たち三人についてだった。尤も、自己紹介の時に俺がうっかり響香を下の名前で呼んでしまった事に端を発しているため、俺のせいといえばその通りなのだが。

「土羽、じゃなかった。勤! 4歳の頃からハーレムとか卑怯だぞ! オイラなんて女子にモテようと思ってもなぁ……!」

 これはクラス替えや入学時のお約束なのだが、二人が同じ空間にいる時は俺達兄妹の事を、下の名前で呼んでもらう事をお願いするようにしている。名字で呼ばれてしまうと、二人が同時に振り向いてしまうためだ。

「峰田さんは、異性に好かれたいのですか?」

 芦戸さんとスマートフォンを見ながら話をしていた瀬奈が、峰田君の様子を見て唐突に会話に参加してきた。

「もちろん。まぁオイラとしてはできれば一人じゃなくて大多数にモテたい」

「女子の前で言うか、それ」

 響香が冷静に突っ込む。

「そういう事でしたら峰田さん、私にお任せくださいまし。あらゆる女性を自分のファンに取り込める術をおかけしますわ!」

「マジっすか瀬奈さん! 是非オイラにその秘術を!」

「ちょっと待て瀬奈ァ! アンタ自分が何を言ってるかわかってんの?!」

 響香が慌てて瀬奈の肩をつかんだ。

「安心しろ耳郎。オイラ、グラマr──」

「それ以上言ったら殺す」

「まぁまぁ、落ち着いてくださいまし。お二人とも。そんなに危険な物ではありませんわ」

 まさか魅了効果のあるポーションでも渡すのだろうか。いや、そんな効果は聞いたことがないし、見た事もない。

 

「では峰田さん、お隣失礼しますね」

 瀬奈が峰田君の隣に腰掛け、肩に手を置いた。

「おふぇっ?!」

 峰田君が変な声を上げた。

「わー!」

 芦戸さんは興味と期待を込めた目で成り行きを見守っている。

「では峰田さん、私の目をよーく見ていて下さいね。目、閉じては行けませんよ?」

「は、はいぃ!」

 肩に手を置き、互いに目を合わせたままどんどん顔の距離が近づいていく。

「ちょっ、ちょっと。勤、アンタ瀬奈の兄貴でしょ。いいのこれ?!」

 響香がこっちに突っかかって来た。個人的には何をするのか非常に興味があるが、これは止めた方が良いのだろうか。

「わぁー!」

「芦戸、お前さっきから語彙力皆無だぞ」

「そう言うアンタも無言でガン見しるだけでしょーが! 上鳴! ……あぁもう! 勤、瀬奈を早く止め──」

「響香さん、もう終わりましたよ? 後は仕上げだけです」

 瀬奈がニコニコしながらそう言った。

 

 峰田君を見ると、目を開けたまま固まっている。

「峰田さんは、女性の事を守れる、紳士のようなヒーローになりたいのですよね?」

 瀬奈がゆっくりと峰田君に問いかけた。

「ハイ、ソウデス」

 抑揚のない声で峰田君が応答した。

「なぁ勤。瀬奈ちゃんって、催眠術みたいな事できんの?」

 上鳴君が峰田君の顔の前で手を振ってみたりしながら尋ねてきた。

「ど、どうなんだろうね。俺も見るのは初めてだよ。でも、多分そういう事じゃないかな?」

 俺がそう返答すると、それを聞いた瀬奈がニコニコ顔のまま上鳴君に、

「はい。先日テレビでやっていた催眠術なのですが、うまく行きましたわ」

 と、回答した。

「すげーな。俺、生でこういうの初めて見たわ」

「私も初めて見た!」

 素直に感心する上鳴君と芦戸さんの横で、瀬奈は峰田君に質問を続けていく。

「峰田さんは、やるべき時には誰よりもガッツを見せて下さる勇敢な方ですよね?」

「ハイ、ソウデス」

「峰田さんは、私達が危機に陥った時に、どんな状況であれ駆けつけて助けてくれますか?」

「モチロンデス。ドンナ敵であってもマヨウ事なくってえええ?! 何? 何いまの! ……あれ?」

 

 効果が解けて呆けている峰田君に、瀬奈が笑顔で話しかける。

「おはよう御座います、峰田さん。貴方の深層意識に、ちょっとしたおまじないをかけました。後は峰田さんの努力次第ですが、沢山の女性にモテるヒーローになれると思いますわ」

 数秒の沈黙。

「えっと……。つまり、今のままじゃ何の意味も無いって事?」

「その通りですわ、芦戸さん。結果が花開くかどうかは、今後の峰田さんの頑張り次第ですわね」

 なるほど、暗示をかけたのか。まず女性慣れしていない峰田君の肩に手を置き、動揺した所で顔を近づける。更に精神が動揺した所で、鎮静の幻惑魔法を軽めにかけた、と。……また勝手に新しい魔法を使ったな。

「だ、騙された!! くそぅ、土羽瀬奈に騙されたぁぁぁ! せっかく1年A組の女子をオイラの物にできると思ったのにぃぃぃ!!」

 峰田君が泣きながら机を叩いている。恐らく彼は洗脳かそれに近い能力を与えられると勘違いしたのだろう。……それこそ少し考えれば違うと気づきそうなものだが。

「ハッ、いい気味じゃん。あーあ! 心配して損した!」

 響香がそんな峰田君を見て鼻で笑う。

「だから耳郎は安心しろって。オイラが興味あるのはもうちょっと胸g──」

 最後まで言い切る前に峰田君の目へプラグ攻撃が炸裂し、声にならない叫びが店内にこだました。

 

 

 ==========

 

 

 その後は各自の個性の事や目指すヒーロー像、今日の個性把握テストで印象に残ったクラスメイトの話など、とりとめのない話題にシフトしていき、時間もいい頃合いに差し掛かったという事でお開きになった。

 入学初日にしては、かなり仲良くなれたのではないだろうか。

 

「でも良かったー!」

 ファーストフード店を出てからも尚、響香に対して口の減らない峰田君と、そんな彼に容赦なく制裁を加えていく響香の様子を見て、芦戸さんが笑顔で呟いた。

「よかった? どう言う事?」

「だって天下の雄英でしょ? みんな真面目で怖い人ばっかりだったらどうしよう! って思ってたけど。面白い奴もいるんだって安心した! 今日は誘ってくれてありがとうね!」

 なるほど、確かに芦戸さんの言う通り、クラスメイトが文武両道のサイボーグばかりだったかもしれない訳だ。しかしこの状況を見るに、その心配は杞憂だろう。今日声をかけられなかったクラスメイトも沢山いるが、自然と仲良くなれそうな気がする。

「俺も楽しかったわ! またこのメンツでどっか行こうぜ!」

「あぁ、こちらこそ。また折を見て誘わせて貰うよ」

 

 こうして俺の登校初日は個性把握テストから始まり、親睦会で終わる事になった。

 普通の学校より雄英は大変だと思うが、それを差し引いてもこれからの高校生ライフが非常に楽しみである。




???「盗まれた物の中に俺の“今日のシャウトの原稿”もあった。まだほんの子供の頃にお袋がくれたんだ。この寒い国で唯一、故郷を思い出せる品なのに。」

⇒ 原稿を取り返してやろう。

???「ご親切にどうも。あの山賊はたぶんこの辺りに根城を構えている奴らの一味だと思う。無理はするなよ。原稿は確かに惜しいが、命と違って取り替えが利くんだから。」

???「得ては失う運の巡りには慣れている。これぐらい災難のうちに入らないさ。という訳で今日はこれだよ。」

【今日の魔法】

・鎮静
見習いランクの幻惑魔法。
戦闘状態を強制的に解除し、一定時間戦闘に加わらなくなる。
幻惑魔法が強力と言われる所以が、この魔法の存在。
一定のレベル以上の標的には無効であるという制約があるものの、この魔法がかかりさえしてしまえば、目の前でアイテムを強奪しようが仲間を手にかけようが応戦して来なくなる。
一部のモンスター・ドラゴンを除き、あらゆる生物が対象となる点も魅力的。
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