ドヴァーキンのヒーローアカデミア   作:Ghetto

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そういえばAFOの能力を模したMODがあるらしいですね。
当初ドヴァーキンはヴィランとヒーローサイドを行き来する、という案もあったのですが……終わりが見えなくなるので没になりました。


17話:ドヴァーキン、ヒーロー基礎学を受ける。

「しかしすげーな、この食堂。広さもクオリティも、色々規格外だぜ」

 昼食を一緒に食べに来た上鳴君が、周りを見渡しながら呟く。

 彼の言う通り雄英高校の食堂は非常に広く、開放的な間取りも相まって、まるでホテルのロビーラウンジに併設されたレストランのようだ。学校紹介のパンフレットによれば、食事を作っているのもまた“ヒーロー”であるらしい。

「そうだな、個人的にはこれだけ広いとちょっと落ち着かないかもしれない。まぁそのうち慣れるとは思うけど。……峰田君はどう思う?」

 そう言って峰田君の方を見ると、彼ははす向かいの席に座っているスタイルの良い女子生徒を熱心に観察していた。さすが峰田君、抜かりない。

「あん? なんだよ土羽。オイラは午後のヒーロー基礎学の授業に向けて、あの女子の個性が何であるか研究を──おぉっ、ソーセージを食べる仕草も中々──」

 

「峰田伏せろ!」

 上鳴君の指示、直後に峰田君が椅子から半分降りる形で体を机に隠した。こういう時に彼の小さな体躯は有利に働くようだ。

 刹那、峰田君の頭があった場所を、通路から伸びてきたプラグが通り抜けた。

「……よっ。上鳴、勤。隣いい?」

 通路の方を見ると、能面の響香とニコニコ顔の瀬奈と芦戸さんがトレーを持って立っていた。

「え? あ、あぁ。どうぞどうぞ」

 上鳴君が若干引き攣った笑顔で、テーブルの上にあった食器を自分の方に引き寄せた。

「あんだよ耳郎! オイラおめーに何もしてないじゃないか!」

「今ジロジロ見てただろ、そこにいる子」

「別に見るくらい──やめろぉ! 目は! 目はやめて!」

 

 

 ==========

 

 

「あ、それ知ってる! ランチラッシュでしょ!」

 またしても目を射抜かれて突っ伏している峰田君はさておき、この食堂で料理を作っているプロヒーローの事を何か知らないかと皆に話したところ、芦戸さんが答えを教えてくれた。料理を作るヒーローか。戦いではない舞台で活躍するというのも、大いに興味深い。普通の料理人とは何かが異なるのだろう。

「すげーよな雄英。さっきの授業もそうだけどよ、教員が現役のヒーローってだけじゃなくて、食堂のスタッフにまでヒーローがいるなんてよ!」

 上鳴君が興奮気味に話している。確かに彼の言う通り、この高校にはプロヒーローと呼ばれる人がとても多い。それらのスタッフや癖の強い教員を束ねる校長は、一体どんな人物なのだろうか。入学式、出なかったから会えなかったのだが。まぁそのうち何かしらの機会があって会えるだろう。

 

「……そうだ、響香。話は変わるんだけど、昨日家に帰ってからこれ作ってみたんだ。試しに使ってみてよ」

「お、何々? こんな所でプレゼント? いいなぁ! 私も男の人からプレゼント貰ってみたいなぁ!」

 昨日のファーストフード店で発覚したのだが、芦戸さんはその手の話に持っていくのがどうにも好きらしい。

「バカ、そう言うのじゃないっての。……これ、見るからに不味そうだけど、効果は?」

 恥ずかしがる動作から一転、瓶の中身を中空に透かして眺めた響香が真顔で尋ねてきた。否定的な文言から入るあたり、前科があるため警戒されているようだ。

「走っても疲れにくくなる。味は──甘ったるいが俺は嫌いじゃない。受験前の反省を活かしてね、野草と果物だけで手軽に作れるポーションは無いかなって試してみたんだ。そしたらそれができたって訳」

「何だそりゃ、クスリ? お前って声の個性じゃないのか?」

 復活した峰田君が不思議そうな顔をして聞いてきた。

「あー、話すとややこしいんだけど──って、勤。これ皆に話しちゃっていいの」

 響香が瀬奈と俺を交互に見た。

「はい。いつまでも内緒にしておくことなんてできませんし、クラスメイトにだったら隠すような事でもないでしょうから。もしかしたら新たな発見や、クラスの皆様の役に立つ事もあるでしょうし。お兄様と相談して決めましたから、大丈夫ですよ響香さん」

 瀬奈が俺の代わりに答える。

 受験を乗り越えた今、クラスメイトはライバルであると同時に戦友である。また、技術を広めることで新たな発見があるかもしれない──そう瀬奈に説得され、錬金術やシャウトを希望するクラスメイトがいれば教えてみる、という事にしたのだ。

「そっかー。ウチとしては専売特許で行きたかったけど、当人がそういうスタンスなら仕方ないか」

「専売特許? その言い方だと、まるで耳郎もできる、みたいな感じだな?」

 上鳴君がそう尋ねると、響香がしたり顔で返事をした。経験者は語りたい、のだろうか。

「そ、勤の個性はさ──他人に継承ができるんだ」

 

 

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 そこから先は、響香が自分の体験を踏まえて皆に説明をしてくれた。

 幼稚園にいた頃、1年かけてシャウトを習得した事。中学校時代に錬金術の勉強をした事。そして錬金術を扱う上で必要になるマジカのコントロールの仕方……等々。

 一通り話をし終えた後、最初に手を挙げたのは芦戸さんだった。

 

「えっとさぁ、つまり勤の個性を貰うには昨日の峰田の話じゃないけど、本人の努力が必要って事だよね? 向き不向きってあるのかな?」

「俺もまだ響香にしか試してないから、何とも分からないけど。調合の方は料理とかの感覚に近いから、勉強好きなら習得は早いと思うよ。……効果を発現させる方はちょっと面倒だけど、それでも声の個性よりは楽なんじゃないかな」

 ここからは俺が質問に答えていく事にする。シャウトや錬金術、マジカと言っても通りが悪いので、声の個性・調合の個性とでも言っておこう。

「うぇー、勉強かぁ。私勉強苦手なんだよねー」

「俺もあんまし得意じゃないなー、今の耳郎の説明を聞く限り、結構化学の知識が必要そうな感じじゃん。俺にできっかな」

 上鳴君と芦戸さんはあまり自信がないようだ。まぁ無理やり勉強を強いるつもりは無いし、自身の個性を伸ばす方に注力したほうが良い場合もあるだろう。それに相性の問題だってある。技術に対する自分の適性と活用の可能性を天秤にかけ、本人が決めれば良い事だ。

「でも興味が無い訳じゃないんだよなぁ。説明だけだとアレだし、ちょっと見せてもらう事ってできるのか?」

 今この場でシャウトはできない。となると、実演は錬金術の方になる。

「んー、効果が分かりやすいモノは……うん、これでいいか」

 鞄の中にあった小瓶を開けて、失敗作のポーションを一飲み。やっぱり不味い。

 

「すげぇ! 勤の体が透けてるぞ!」

「なんかモヤモヤってしたら消えちゃったよー! ……あ、また見えてきた!」

 上鳴君と芦戸さんが、まるで手品を見ているかのようなリアクションをしてくれた。

「これは失敗作だからすぐ効果が切れちゃうけどね。技術を身につけた上でうまく調合ができれば、30秒くらい透明になる事も不可能じゃないと思うよ」

「不意打ちし放題かよ……」

「いや、そこまで便利なものでも無いんだよね。透明になっても歩いたりする音は普通に聞こえるし、他の物や人に干渉しようとすると透明化は解けちゃうから」

「なるほどなー。……勤、ちょっと試しにやってみるってアリ?」

 上鳴君が恐る恐るといった様子で聞いてくる。それ位はお安い御用だ。

「あぁ。適性は少しやってみないとわからないだろうから。無理強いするつもりなんてないし、途中でやめてもそれは全然構わないよ」

「私も私も! 体験コースで! なんか面白そう!」

 芦戸さんも実際の薬効を見て乗り気になったようだ。後は峰田君だが──

 

「なぁ勤。オイラ、ガチでその調合を勉強したいんだけどよ」

「おぉ……随分やる気に満ち溢れているね。峰田君」

 机から身を乗り出して、目はやや血走っている。ちょっと笑顔が怖い。

「いやなに、オイラだって強くてカッコイイヒーローになるため──」

「あー、勤。コイツには教えなくていいから」

 了解だと峰田君に伝えようようと思ったら、響香からストップがかかった。

「なんでだよ! 上鳴と芦戸だけとかズリーだろ! 差別だ!」

「どーせ透明化の薬作って、ロクでもない事に使おうとか思ってんでしょ。アンタ、丸分かりだよ」

「そそそそ、そんな訳ねーし! 別に更衣室に潜入しようとか、階段の踊り場に潜伏しようとか思ってなんかねーし!」

 響香の顔がみるみるうちに恐ろしい何かへと変貌していく。とても怖い。

 それにしても、これほどまでに見事な“語るに落ちる”という状況が他にあるだろうか。さすが峰田君、分かりやすい。

 

 結局峰田君に関しては透明化の製法だけは教えないという事でオチがつき、お昼休みの話し合いはお開きになった。肝心の知識だけがお預けとなってしまい、峰田君は泣いて悔しがっていたが、彼の執念を考えるともしもマジカのコントロールに適性があった場合、自力で薬効を見つけ出してしまいそうな気がする。

 

 

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 ──私が、普通にドアから来た!! 

 

 オールマイトのこの一声から始まった午後の“ヒーロー基礎学”であるが、この教科はヒーローとしての素地を作るためのものらしい。

「早速だが今日はこれ! 戦闘訓練!」

 初っ端から戦闘訓練、やっぱり色々と凄い高校である。

「それじゃあ各自コスチュームに着替えたらグラウンドに集合してくれ!」

 渡りに船とはまさにこの事で、コスチュームを使えると言うことは、早速試しに作ったポーションと弓の使用、そして実地試験の両方が出来るという事を意味している。これは非常にありがたい。しかも芦戸さんや上鳴君、峰田君に実演という形で効果や活用方法を見せる事もできる可能性が高い。

 どんな訓練かは分からないが、これはとても楽しみだ。

 

 納品されたコスチュームに袖を通し、感触を確かめる。以前身に付けていたものとは見た目はそれほど離れていないものの、質感や重さは随分と異なる印象を受けた。勿論良い方の意味で。

「勤のそれ、目出しの兜……か? なんかローマ帝国の剣士って感じだな」

 後ろから上鳴君が声をかけてきた。確かにこの世界、この時代では異色のデザインかも知れない。だが──

「これじゃないと落ち着かなくてね。中々どうして気に入ってるんだよ、この兜」

 俺がヒーローになると言うのであれば、この鉄の兜だけは譲れない。

 

「あ、勤。そのコスチュームって──えぇっと、剣闘士?」

 上鳴君に引き続き、校舎から出てきた響香にも似たような事を言われた。そんなにローマ時代の鎧に見えるのだろうか、これは。

「んーまぁ、そんな所かな? 兜はどうしてもこのデザインが良くてね。それに合わせたらこうなった」

「へぇ。勤らしいね。格好良いんじゃない」

 つまるところ俺の輪郭や顔の作りは古代ローマ人のような感じ、という事なのだろうか。ともあれおそらく似合っている、と言う意味で受け取って良いだろう。

「ありがとう、そっちも──」

 言いかけて響香の顔を見たら、一瞬言葉に詰まってしまった。

「ん」

 涙の形を模したフェイスペイントか。よく似合ってるというか──

「何だよ、急に黙って」

「あ、いや、そのフェイスペイント。ギターのピックって事かな、似合ってると思うよ」

 数秒の沈黙。

「ん、ありがと」

 グラウンドの方へ歩いて行く黒コート姿の幼馴染を見送る。

 流石にヒーローのコスチュームに対して、“可愛い”は失礼だろう。

 

 

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 グラウンドに集まった俺達生徒に向けて、オールマイトが話し始める。

「君達にはこれから、ヴィラン組とヒーロー組に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう。状況設定はこうだ。ヴィランがアジトのどこかに核兵器を隠していて、ヒーローはそれを処理しようとしている。ヴィランは核兵器を守り抜くかヒーローを確保する事。ヒーローはヴィランを制限時間内に確保するか核兵器を回収する事。制限時間は15分。ペアはくじ引きね」

 

 錬金術云々より優先すべき事柄が一つ増えた。このルールでは速攻でやられてしまっては、学びも何もあったもんじゃない! しかも初回の授業で対戦型の訓練とは、いくら何でもスパルタが過ぎるのでは無かろうか。てっきり実技試験のような、ロボットや無人標的のようなものを想像していたのに。

 何とかして初手完封、というような事態は避けなければ。俺の技術が最も活用できる場面は、不意打ちを仕掛ける時か実力が拮抗している時、この二つだ。どうにかしてこの状況を作り出さなければ、勝つ事は難しいだろう。

 そうなって来ると、先日の個性把握テストや入試の時に見た、何人かの“人間離れした”個性を持ったクラスメイトの事を考えた場合、何かしらの対策は必須だと断定できる。

 例えば緑谷君の規格外パワーの前では、多少薬効で筋力を増強した所で敵うわけも無いし、飯田君とスピード勝負を展開したが最後、失速した所を付け込まれてしまうだろう。他のクラスメイトの個性も分からないことばかりで、もしかしたら“もっとヤバいやつ”がいるかも──。

 

 いや、これはただの授業だ。難しく考え過ぎるのも良くないな。

 そう思い直し、オールマイトが持っているくじ箱に手を差し込んだ。

 

 

 =========

 

 

「土羽とペアか、今日はよろしく」

 俺のバディは何とも強そうな尻尾を持つ細マッチョなイケメン、尾白君に決定した。見るからに前衛型だ。相性は悪く無いだろう。

「こちらこそ、よろしく尾白君」

 他のクラスメイトも続々とペアができていく。問題は対戦相手なのだが──

 

「最初の対戦相手はこいつらだ!」

 

「まずはBか──って、早速俺らだね。相手は……」

「Cチーム──耳郎さんと轟のとこか」

 尾白君がボールを見て、いち早く教えてくれた。

 

 よりにもよってここで当たるか。

「勤、手加減すんなよ」

「するわけないでしょ……。というかできないよ」

 手の内が半分近くバレているのだし、何より全力で当たらないと尾白君や轟君に失礼だろう。

「冗談。でもウチ、アンタが本気出しても簡単には負けないから」

 響香と轟君がスタート位置に歩いていく。

 

「なぁ土羽。耳郎さんと知り合いなのか?」

 ビルの中を移動しながら尾白君が訪ねて来た。

「うんまぁ、幼馴染というか。幼稚園から一緒でね」

「へぇ、そうなのか」

 尾白君はそれだけ言うとそれ以上の詮索はして来ず、話は作戦会議へと移っていった。

 

「──ところで作戦はどうする? 俺の個性はこの尻尾。打撃、移動、防御に使うことができる。土羽は?」

「声を出してエネルギーに変換するのと、薬品の調合。尾白君みたいなパワーは出せないけど、状況に応じて索敵から攻撃まで、色々。薬品関係はこの弓を使うよ」

「という事は、俺の方が前に出て戦うって感じで良いのか」

 さすが尾白君。非常にありがたい申し出だ。

「うん、それがベストだろうね。後ろからのサポートと遊撃はこっちに任せてくれ。尾白君は核に相手を寄せ付けないよう、積極的に前に出てくれると助かるよ」

「わかった。それでいこう。……最初はどうする、二手に分かれるか?」

 散開して奇襲のリスクを減らすべきか。それとも各個撃破を警戒して端から二人で核を守るか……。

「二人でここにいたいな。俺の個性は味方が近くにいるとより有利に働く事が多いから。どうだろう?」

「あぁ。それくらいなら土羽に合わせるよ。ただ、閉所で更に複数人での戦闘になると射線の管理がネックにならないか?」

 もしかしなくても、尾白君はすごくデキる奴なのではないだろうか。最低限のコミュニケーションでコンセンサスが取れるという点は勿論、この短時間でこちらの特性を判断して、逆に提案までしてくれるとは。射手を気遣う前衛なんて、スカイリムの世界ではまず有り得ない光景だ。これが雄英の生徒か……。

「そこは問題ないよ。後で話すけど、ちょっとした秘密兵器を用意した。後は……尾白君、場合によっては君の尻尾やお尻に矢が刺さるかもだけど、サポートのためだからね、避けないでね」

「俺にも飛んでくるのか、それ」

「まぁね、あんまり痛くないから大丈夫、大丈夫」

 

 ──ヴィランチーム、準備はいいかな? 

 

 オールマイトの声がインカムに入ってくる。

 尾白君の方を見た。

 頷く。

 

「こちらヴィランチーム。いつでも大丈夫です」

 

 

 ――それではBコンビ対Cコンビによる屋内対人戦闘訓練、スタート!

 

 戦闘が始まった。




???「駄々っ子は連れて行かない事にしてるの。同胞団になる資格があると思うのなら、今日の後書きを面白く書き上げる事ね。」


【今日の魔法】

・透明化
熟練者レベルの幻惑魔法。自分の姿を透明にし相手から気づかれなくなる。効果時間は30秒程度。透明化をしても自分から攻撃したり、アイテムを拾ったり、扉を開けたり等、他の存在に干渉するようなことをすると解除されてしまうので注意。また音も消えないので、重装備をしていると移動音でバレる。
錬金術で同様の効果を得ることが可能。マジカの消費や詠唱のスキを考えると、錬金術で使った方が良い場面が多い。

幻惑魔法に分類されていることから、自身の姿に作用するのではなく、もしかしたら相手の精神に作用して姿を消しているのかもしれない……?
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