ドヴァーキンのヒーローアカデミア   作:Ghetto

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幼稚園フェーズ、もうちょっとだけ続きます。


4話:ドヴァーキン、弟子を育てる。

 ここはソブンガルデじゃない。

 ……思い返せば記憶を取り戻してからいくつも違和感があったので、それほどショックは無かった。言ってしまえば、理の異なる妙な世界に生まれ変わってしまっただけだ。今はそれについて考えるよりも、現状を受け入れて生活していく方が大切だと思う。

 そんなこんなで俺がこの世界に来てから一年と少し経ったが、この間に二つの大きな出来事があった。

 

 まず俺達双子の個性について。

 響香ちゃんとの一件から数日後、俺と瀬奈は個性の診断と言う事で街の比較的大きな病院に行く事になった。

 そこの医者曰く、どうやら俺は無個性としての特徴を持っているらしい。よく分からなかったが、何でも足の関節がどうとか。

 ところが俺はシャウトや魔法が使える。しかも両親の個性と全く関係ないものであるという事で、非常に珍しい事例だと驚かれた。

 ドヴァーの事や竜の血族について説明をしようかとも一瞬考えたが、黙っておく事にした。仮に事実をありのまま話したところで、子供の妄想だと一笑に付されてお終いだろう。変人の烙印を押されても困る。

 結果、俺は周囲のエネルギーや元素、音波を力に変える複合型の個性という、微妙に長い名前をもらう事になった。個性、ドヴァーキン。これぐらい短い方がいいのに。

 瀬奈も両親とは全く関係のない氷の個性という事で、更に医者を驚かせていた。こうして、土羽家は医学史上相当なレア家系に昇華した。……当事者としては別に嬉しくもないのだが。

 

 次に響香ちゃんとの特訓について。

 幼稚園でシャウトを使うと周りが驚いてしまうと言う事から、幼稚園が終わってからお互いの両親の都合が合う時にどちらかの家で特訓をしよう、という事になり、俺は初めてグレイビアードに会った時の記憶を手繰り寄せ、その時貰ったアドバイスを伝えながら教えてみることにした。

 最初に精神統一の方法からシャウトを発する時の呼吸法など、自分が日頃から意識していた事を一つずつ伝えて練習、実践。

 そしてそれらを一通りレクチャーした後、“戦いの激昂”の第一の言葉──忠実の意味を持つ言葉の発声を教えていく。

 最初は揺ぎなき力を教えようと思ったが、このシャウトなら比較的安全に使える……と考えた結果だ。

 当たり前の話だが、力の無い者がドラゴン語を用いて声を出しても何も起こらない。響香ちゃんも何日かやって芽が出なかったら諦めるかもな、と思ったがそうでもなかった。

 無論毎回特訓をしていたわけでもなく、歳相応の遊びをするだけの事もあったが──なんの成果が得られないまま一年近くが過ぎていったにもかかわらず、一度ももう飽きた・やめたいとは言うことは無かったのだ。

 ……そんなわけで幼稚園生活最後の春休み、お供の瀬奈を連れて今日もこれから特訓である。

 

 

 ==========

 

 

「……もう少し声を張ってみよう!Mid!」

「みっど!」

「息を深く吸って、もう一回!」

「みど……うぇー、喉渇いたー!」

「よし、休憩にしよう。……ごめんね響香ちゃん。俺の教え方がへたくそで。」

「んーん。いいよ、ウチ勤とのしゅぎょー楽しいから。」

 水筒のお茶を飲みながら、響香ちゃんが笑って答える。そういえばいつの間にか、響香ちゃんは俺の事を下の名前で呼んでくれるようになった。

「でもなぁ。せっかく一生懸命やってるのになぁ。」

 発音、呼吸、発声。あらゆる事は試してみたけど中々うまくいかない。

 正直なところ、完全に行き詰っている。

「やっぱりただ真似をするだけじゃダメだよな……。とは言えドラゴン語の石碑なんてある訳ないし、グレイビアードがやってたシャウトを地面に描くやり方もようわからん。うーん……。」

 

「ねぇお兄様。言葉の本質を伝えて、それから最後まで聞かせてみてはどうでしょう?」

 一人で氷を出して遊んでいた瀬奈が、急にアドバイスをくれた。

 いつもは会話の中に入らず、個性の練習をしているのに珍しい。

「瀬奈ー、ほんしつってなぁに?」

 響香ちゃんはわからないようだ。うん、多分それが普通だと思う。お兄様といい、どこでそんな言葉を覚えたんだ。

「そうだなぁ。響香ちゃん、今練習してたシャウトはね、忠実・勇気・激励の3つの言葉を重ねて使うものなんだ。」

「んー。よくわかんない。」

「ごめんごめん、むずかしいか。それじゃあ……響香ちゃんは、どうしてシャウトを覚えたいのかな。」

「えっとねー、ドーンってしてかっこいいから!」

 二年前と同じ答えだ。言葉の本質……ここを掘り下げてみよう。

「どうしてかっこよくなりたいのかな。」

「ヒーローになりたいからだよ!ウチ、おっきくなったらヒーローとお歌やるの!」

「歌とヒーローか。なるほど。……じゃあ響香ちゃん、もしヒーローになったらお父さんとお母さんを悪いやつから守れるかい?」

「うん!二人を悪いやつからしっかり守る!」

「よし。その守る!って気持ちをこめて、もう一回だけやってみよう。」

 響香ちゃんの顔が真剣になってきた。

 力の言葉のうわべをなぞるのではなくて。言葉の持つ力、その本来の意味を理解できるように誘導していく。

「俺とか瀬奈、響香ちゃんの三人で、お父さんとお母さんを悪いやつから守るんだー!っておっきい声で言ってみて。」

「ウチらはヒーロー!みんなをまもるんだー!」

「そう!俺達は皆のヒーローだ、みんなを守る気持ちをこめて!」

 

「ミィーッド ウァシャン!」

 

 刹那、空気が震え風が吹き荒れたような感触の後、神経が研ぎ澄まされる感覚が体を駆け抜けた。……発声の証として俺と瀬奈の体が青白い光を纏っている。

「響香ちゃん……!成功だ!これ、シャウトの光だよ!」

「できた?ウチできたの?!……やったぁ!」

「さすが耳郎さんですわ!これでヒーローになれますわね!」

 三人で手を取り、ぶんぶんと振り回した後、皆で笑い合った。

 

 常識を努力で打ち破ったのだ。きっと彼女は最高のヒーローになると思う。




やったね耳郎ちゃん!門外不出の秘術、シャウトが使えるよ!

【今日のシャウト】
・戦いの激昂
①Mid(忠実)②Vur(勇気)③Shaan(激励)で構成されるシャウト。
スゥームが近くの仲間の武器を強化し、攻撃を速める。
味方の戦闘力を強化する、支援型シャウト。フォロワーを複数従えるパーティ好きなドヴァーキンに好まれる他、敵味方が複数入り乱れるような戦闘で力を発揮する。
スカイリム世界では近接武器の攻撃速度が上がるものだったが、こちらの世界ではどうやら反射神経と身体能力があがるようだ。
自分ではなく戦友を鼓舞し激励する、まさにヒーローにおあつらえ向きのシャウトだろう。
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