アンチ・ヘイトは念のため。

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キーファ「俺も老いたな……」

 

 

 

 短編。こうなったらいいなと思っていた人も、ひょっとしたらいるかもしれない。

 

―――― ―――― ――――

 

 

 

 ユバールの民の朝は早い。

 だがしかし、この日はいつもより早くから皆が忙しそうにしていた。

 なぜなら――――現族長キーファが、今日を持ってその役割を息子に譲渡して、この集落から離れる。そういうことになっていたからである。

 つまりは、別れの祭りである。

 

 

「ライラ……」

 

 

 皆の挨拶を受けて、祭りも終わり、最低限のものだけを持って集落を後にするキーファは、もう帰らぬ人となってしまったライラを想う。

 移動民族である俺たちには、墓という概念がない。人は死せども魂は滅せず、その教えのもと死んだ人間は、自然の中に戻される。今や俺に残されている彼女のものは、彼女が晩年よく付けていた髪飾りだけ。

 

 息子たちはもう俺よりも強い。俺も老いて子供たちに面倒を見られるのもイヤだったし、長く慣れ親しんだ彼らから離れるのは、悲しいが耐えられることだ。

 

 センチメンタルになっているからか、懐かしい記憶が甦る。

 王子として生まれ、それに嫌気をさして、幼なじみたちと過ごした冒険の日々。彼らは元気に過ごしているだろうか。妹は、良い晩年を過ごせているのだろうか。父は……何を思って死んでいったろうか。

 

 

「俺も老いたな……らしくないぜ」

 

 

 バカみたいに突っ走って、どうすることもできない今更、過去を振り返る。

 愛する人が死んで、自分で見つけた役割もこなして、何も――何もまわりに無くなってから、自分の身勝手さを知る。

 

 ただ、もしも許されるならば――ムシのいい話だとわかっている――それでも、願いが叶うのならば。

 

 

「もう一度、会いたい……アルスたちに」

 

 

 そうつぶやいた瞬間。俺の身体は光に飲まれた。

 

 

――――――――

 

 

 先程解放した大神官のフォズにもらった、祈りの宝石なるもの。それは精霊の力が宿っており、祈りを捧げると過去・未来問わず、その者の力となってくれる存在を呼び寄せる、というものだ。

 

 

「まさか、もらった矢先に使わなきゃならないなんてね……」

 

「ああもう、あの元王子がいてくれたら少しはラクだったのに! はあっ!」

 

「気持ちはわからなくもないけどさあ……つっ!」

 

 

 現在、イノップとゴンズというとんでもなく強い二人に追われたアルスたちは、この切札を切らなければいけない状況に放り込まれてしまった。フォズの術を持ってしても、奴らは並の鋼の剣では致命に至らず、攻撃は変わらず強力だ。相変わらず特技も使うことはできない。ガボは回復で手一杯。助っ人のカシムも、突破口を開けるわけではない。

 

 

「ええい、ままよ!」

 

 

 祈る。誰でもいいからどうか、僕たちを助けてくれ。

 ほんの少しキーファのことが頭によぎる。戻ってきて欲しいんだけど、あいつは一度決めたら突っ走るからなあ。

 宝石が光を放つ。その眩い光が、洞窟を埋め尽くさん勢いで広がってゆく――――

 

 

「いってぇ!」

 

 

 瞬間。誰かが空中から降ってきた。

 その人はかなりの歳を召しているように見える。髪もすっかり白い。しかしながら、その全身の筋肉と傷は、歴戦を突破した猛者の証。

 服はかつてどこかで見たことのある……ユバールのもの。だけどもその瞳はどこか見覚えのある、懐かしい色をしていた。

 

 

「ははん、なるほど。後先短い老いぼれの願いが叶ったってことか……粋なことするね、精霊サマも」

 

「目眩しかと思ったら、なんだこのジジイ! また一人死ににきたのかあ?」

 

 

 そんな彼にイノップたちが反応する。

 危ない!いくら強そうな彼でもあの二人の不意打ちを食らってしまってはタダでは……と思った矢先、彼は音もなく消える――――気づけば彼はイノップの上空に移動、剣を構えていた。

 そして、懐かしい声が響く。

 

 

「火炎斬りっ!!!」

 

 

 剣筋は見えなかった。だけどあの独特の口上は、()のものだ。彼以外あり得ない。

 

 

「遅いよ……キーファ」

 

「わりぃ親友、ちょっと遅くなっちまったな……五十年振り、くらいか?そういうお前はあの頃とあんまり変わらんな」

 

「アンタが遅すぎるのよっ!このダメ王子!」

 

「怒るなってマリベル、いや……ホントにすまなかった」

 

「もしかしてキーファ……か?」

 

「おおーガボ、久しぶりだな!」

 

「そんなに悠長にしてる場合じゃないよ!」

 

「GUOOOOOOOOOO!!!」

 

 

 人ならざる雄叫びが場に響く。先程キーファに切られた、イノップのものだろう。

 

 

「わかってるよアルス。ようはあのデカブツ、叩きのめせばいいんだろ?昔と同じように」

 

 

 思い出されるのは、彼との冒険の日々。

 ウッドパルナのゴーレム・マチルダさんの最期。

 新たな島の出現。隠れて作った船での航海。

 エンゴウでのホムラ祭りに、炎の巨人。

 魔物により石化した街。老人の願い。

 デス・アミーゴとかいうやつとの戦闘。新たな仲間ガボとの出会い。

 からくり兵との激闘に、デスマシーンの恐怖。

 悲しき恋の結末を見せられたグリンフレーク。

――――そして、ユバール。

 

 最後は別れてしまったけど、あの時の未知へのワクワクは、街を壊す魔物への怒りは、間違いなくみんなが共有していたものだ。

 

 老いたキーファが敵に向かって駆け出す。その様子は昔以上に力強い。彼は年の分だけ色々なものを見て、学んできたのだろう。

 

 

「たたかいのうた」

「マッスルダンス!」

 

 

 全身を力がみなぎる。歌の効果だろうか。歌いながら踊る彼に、イノップ・ゴンズの攻撃は届かない。かえす刀で、踊りに合わせた蹴りがイノップの顔面に入る。キーファは本気だ。歌や踊りを戦いに組み込む術はおそらく、ユバールで彼が身につけたもの。

 

 

「きあいため」

「――――つるぎのまい!!」

 

 

 踊るような見たこともない剣術が、二匹を切り刻む。また、大ダメージを受けたゴンズが、いきなり踊り出すのを見てキーファは、昔のような表情でニヤリと笑う。

 

 

「ユバールの剣、なかなか効くだろ?レプリカだけどなあ」

 

 

 彼は振り返る。その顔は老けたけど、神殿に繰り出していたときと、そっくりだった。ああ、なんで頼もしい。彼とならば、この難局もきっと打開できる、そう思わせる。

 

 

「土産話も、謝りたかったこともいっぱいあるんだが……とりあえず手伝ってくれ、俺が壁になる」

 

 

 

―――― ―――― ――――

 

キーファ

 Lv30 AI2回行動 バトルマスター☆5

 武器 ユバールの剣・レプリカ(攻撃+45,踊り付与)

 

他職歴

 戦士   マスター

 武闘家  マスター

 踊り子  ☆5

 吟遊詩人 ☆5

 

* マッスルダンスについては、おそらく独自解釈。

 

 


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